もふもふ天国の店舗の土地購入したら隣の倉庫まで付いてきたっす。
7・9修正しました。
もふもふ天国ヨークル店の話。
初めに決めなきゃならないことがたくさんあるからな。
従業員の人選がないだけマシなのかもしれないけど。
「お店を出したい場所って決まってますか?」
「場所は何も考えてません。なるべく騒がしくない場所で・・・ただ、小さくてもいいので一軒家でお願いします。賃貸だとあまり改造も出来ませんし、お金があるうちに設備投資をしておいてゆっくりと時間をかけて回収していく方が楽かなって思ってます」
「なるほど、そのための準備資金ですか。閑静な場所・・・ここなんていかがですか?」
リーチェがアイテムボックスからヨークルの詳細な地図を取り出して指差した場所。
「って、元アントローグ商会の店舗じゃねーか!」
「・・・早乙女さんご存知なんですか?」
「俺にちょっかい出してきて、捕まったと同時に店舗&倉庫に強制捜査が入って崩壊した商会ですよ。倉庫は自宅の隣で、そのまま空き倉庫になってます」
「倉庫もセットで今朝になって私のところに回ってきたんですよ。上層部は早く売ってほしいから安くしても構わないから君に頼むって。今なら早乙女さんの隣の倉庫もセットで1億2000万Gでいかがですか?」
「ここって、倉庫だけでも早乙女邸の敷地の倍以上はありますよ。安すぎませんか?」
「早乙女さんが相手だから話をぶっちゃけますと・・・商業ギルドでの買い取り価格を相手の足元を見て店舗と倉庫のセットで7000万Gって安く買い叩いて入手した物件なんです。ギルドの儲けを乗せて8000万G。この金額の物件ですと税金で半額の4000万Gかかりますので1億2000万G。今日私に話が回ってきて今日販売しちゃうんですから、ギルドの儲け分は全額私のボーナスになりますので、よろしくお願いします」
リーチェが会議室のテーブルに当たりそうなほど頭を下げてきた。
この金額で隣の倉庫まで手に入るのなら、マジでお買い得だ。倉庫だけで儲かってるレベルだ。
店舗がおまけになるな。
店舗の土地もそこそこあるし、表通りに面した部分に喫茶店。それだけじゃなくて早乙女商会の事務所も店舗の奥に建物を作れるな。外から見えなきゃ邸宅建築スキル魔法ですぐに作れる。
自宅の隣の空き倉庫は倉庫としてはそこまでの大きさはないが、港の部分がかなり広くて大型船も横付けできる。
うちの商会に倉庫なんてまったく要らないしな・・・俺のアイテムボックスだけでも充分。
これなら船を作るのに大きさを気にしないで作れそうだな。
リーチェのボーナスぐらいは気にもならないほど。
「ボーナスおめでとうございます。両方セットで買いますよ。店舗部分もおやっさんの店に近くて閑静な場所だし、近くに競合相手の喫茶店もないですし。良い物件をありがとうございます」
「いいんですか? それなら今から見に行きますか?」
「見に行くのは、もう少し話をつめた後にしましょう。今行ってもまた戻ってこないといけなくなりますし。先に購入だけしておいても良いですよ」
「それでは先に購入をお願いします。それから店舗の話をつめていきましょう」
これもリーチェがアイテムボックスから契約書を2枚取り出して説明してくれた。
説明後に2枚の契約書に俺の名前と早乙女商会代表と書いて終了。
魔水晶で先ほど作ったばかりの商業ギルドカードで支払う。
早乙女商会の資産になったな。
1枚は俺の分で渡されたのでアイテムボックスに入れておいた。
隣の倉庫も改造しないとな。塀は広げる必要があるし、やる事が多過ぎて笑うレベルだな。
倉庫番のゴーレムも作る必要も出てくるし・・・魔結晶も集める必要があるぞ。
「それでは店舗の話を進めましょう。癒しがメインの売り物って早乙女さんはおっしゃいました。・・・が、この子たち愛玩ゴーレムで癒される事は理解できるのですが、コレをどうやってお金に変えるのですか?」
「通常の喫茶店とはシステムからして違ってます。喫茶店はドリンクと軽食が売り物なんですが、うちの店では癒される時間を買うのです。ですので店内には1ドリンク500Gを購入して入ります。店内に滞在できる時間は30分です。その間はゴーレムに触り放題ですが、時間が来ると店員によって連れ出されます。ドリンクもコーヒー・紅茶・緑茶・ハーブティーと種類はあえて少なくします。ホットとアイスぐらいはアレンジしますけど。ドリンクにクッキーを2枚サービスでつけます。一日50杯の数量限定でスペシャルドリンクが1000Gと特別料金設定があるぐらいですね。今のところ俺が考えてるのは『ミックスジュース』です。・・・コレもリーチェが試しに飲んだほうが早いな。ブラウン、リーチェにミックスジュースをお出しして。イエローはクッキーをお出しして」
「はい。ご主人様。リーチェ様どうぞ、こちらがスペシャルドリンクのミックスジュースでございます」
「はい。ご主人様。リーチェ様どうぞ、こちらがサービスのクッキーでございます」
「あ、ありがとう。・・・んん。このドリンクは冷たくて・・・甘いだけじゃなくて酸っぱさとかも混じってて美味しいね。クッキーは・・・んー、味が二つとも違うんだね。ボクはこのちょっとバターの塩気が感じるこっちのクッキーの方が好きだな」
「さっきリーチェが飲んだ紅茶のように、特別な素材は一切使ってない。丁寧な作業で美味しく感じさせてるだけだ。茶葉もコーヒー豆も市場で手に入る安価なものばかりだよ。クッキーも一緒です。バターだけは流通量が少な過ぎて自家製になってしまってるけど、特別な素材は全くないから・・・クッキーも込みで1杯30Gほどのコスト。味はそこまで高級店に劣っていないという自負だけはあるけどね」
「美味しかったよ。ありがとう。でもこれじゃあ、儲けが出るまでに相当時間がかかると思う」
「最初に言ったように儲けは完全に度外視でいい。店はもう土地も購入済みで店舗の改装は自分で出来る。店舗の購入資金も・・・セットで購入した自宅の隣の倉庫だけでもう既に儲けが出てると思う。食器も自分で作れるしコストは店舗購入以外は人件費もないんだから」
「俺達は客商売の経験がまったくないから、客を始めから一気に引き込もうとすると問題点が多過ぎる。どこに問題があるのか予想が出来てないって言うのがまず問題だ。問題が起きた時に対処する時間があって、それが改善されて客がゆっくり増えていくってのが理想的なんだけど」
「そうですね理解できました。店舗の営業時間はどうします?」
「法律ってどうなってますか? 営業時間って法律で規制されたりするのですか? 正直に言いますと営業時間っていっても、うちの店は従業員が全部ゴーレムなんで休憩も交代もなしで24時間営業可能なんですけど」
「法律による営業時間の規制はありません。自由で全部自己判断ですね。深夜は流石に客が来ないと思いますし、酔っ払いなどのトラブルを引き込む可能性があるので避けた方がよろしいかと思います」
「言われてみれば確かに深夜も営業すると余計なトラブルまで引き寄せそうですね。そうなると・・・朝6時から20時ぐらいがいいのかな」
「ずいぶん早い開店時間ですね。意味はあるんですか?」
「仕事前に一服ってイメージですね。ゴーレム店舗で食事を出さない店ならではですけど」
「なるほど、それは理にかなってますね。仕事前に心を癒す時間・・・必要な人も必ずいると思いますし。この店舗が出来る場所は職人達が多くて朝早くから通ってる人達が多い場所柄ですので」
「冒険者ギルドでは成功報酬が既に税金を払った金額って聞いてるんですけど・・・商業ギルドの税金ってどうなりますか?」
「こういった店舗営業の場合初期の設備投資金額によって変わってきます。早乙女さんの場合は店舗と倉庫の購入資金が税抜きで8000万Gです。8000万Gと・・・ここに本来なら人件費・・・早乙女さんの店の場合は『ゴーレム製造費用』や改装費なんかも必要経費として計算される事になるんですけど、早乙女商会から早乙女さんに依頼して作ったという形にすれば必要経費に入ってきます。ですが、この場合は間に商業ギルドを頭して早乙女さんという『ゴーレム職人』に依頼して作ってもらう形にしてもらわないと『脱税』とみなされてしまいます」
「間に商業ギルドを通せって事ですね?」
「そうです。そういう事にしないと脱税が増えるための対処法ですね。国としては商業ギルドが間に入って金の流れをわかりやすい形にして商業ギルドに手数料を取らせて商業ギルドからも税金を取るって寸法です。でも、こうするのはあまりお勧めできません。なぜなら早乙女さんが職人ギルドに登録してないので、すぐに登録してもらっても、今度はゴーレム制作費を職人ギルドに提出しないといけなくなりましてさらにややこしくなります。ゴーレムは従業員として登録してある今の形の方が税金がかかりますけど、手間はかからないです」
「手間がかかるのは勘弁して欲しいですね。それと職人ギルドへ登録しちゃうとゴーレム作製依頼がきちゃいそうなんでもっとイヤですね。初期設備投資の経費は税金にどんな影響があるんですか?」
「初期設備投資の経費は商会持つ資産の『借金』という形になるので税金が免除されます。儲けが借金返済に使われるっていう『必要経費』に入るのです。早乙女さんの場合は珍しくて普通はどこかで金を借りて商会を立ち上げるパターンがほとんどです。総売り上げから経費を差し引いた額が利益になるのですけど、普通はこの経費の中に人件費や借金の返済金などが入ります。早乙女商会の場合はこの2つがありません。1年間の利益の3割が税金として来年の今日に商業ギルドが引き取り国に治まる形で税金が支払われます」
「うちでは設備投資の経費って・・・もうかからないからなぁ。俺が店を改装して作るし、家具とかも全部俺がスキルでつくるんだけど、もしどこかで早乙女商会の倉庫や店舗に使う資材を購入したら経費に入るんだよね?」
「それはもちろんです。その場合はこれからは商業ギルドカードで早乙女商会の資産で購入してください。そうでないと経費として認められなくなる場合がありますので」
「了解です。でも今のところの購入する予定のものって小麦粉とか茶葉とかかな。ハーブなんてゾリオン村の方に行けばいくらでも生えてるし。残念だけど買うモノがないよ。そういえば早乙女商会は幹部が夫婦になるんだけど、外での食事は経費で落ちるの?」
「経費で認められる外食は10日で3回ぐらいが限度ですね。いくら外食産業の多い都市ヨークルでも限度はありますので」
「都市ヨークルだからそんなに出来るのか。そもそも俺ってほとんど外食しないので大丈夫ですよ。聞いてみたかっただけです」
「そう言われてみれば、しんちゃんと外に食べに行ったのってとんこつラーメンぐらい?」
「そうね。後は護衛依頼中の『おにぎり』ぐらいでほとんど自宅で作って食べてるし、外でも自宅で作ったものを食べてるイメージしかないね。しん君って外食嫌いなのかと思ったよ」
「しん様の場合は外で食べなくても、自分で作ったほうがもっと美味しいモノが出来ますから」
嫁が話に加わってきた。リーチェがそれに乗っかってくる。
「早乙女さんの料理ってそんなに凄いのですか?」
「はい。元々この喫茶店でもデザートを出すって言っていたのを、暴動が起こる可能性を考えて私達全員で辞めさせました」
「だよねアイリ。あのイチゴクレープはヤバイ。死人が出る可能性すらある」
「ミネルバさんの言ってる事がよくわからないんですけど・・・」
「コレばかりは食べないと理解できないと思います。しん様、みんなの分のイチゴクレープを作ってくれませんか?」
「またまたぁ、みんな大袈裟なんだって。まぁ、食材はあるんで今作ってあげるよ」
アイテムボックスから食材を取り出して皆の分のイチゴクレープを作ってあげる。
「り、料理スキル魔法ですか!?」
リーチェが叫んでるけど気にしないことにする。
今日は余裕があったので皿に乗せてパティシエ風にアレンジして出してあげた。
4人の女性が全身全霊でクレープを味わって食べる姿が見られるとは思ってもいなかった。
ちょっとしたサービスのつもりだったが激しく方向を間違えてたみたいだ。
「リーチェさんどうですか? 死人が出るって理解できますよね?」
「皆さんこんなのばかり自宅で食べてるんですか?」
「タマによタマに。しんちゃんが作ってくれるのはタマに。でも自宅でセバスチャンやマリアの作ってくれるのも料理スキル魔法だからコレに近いぐらいは毎日毎食食べてる。しんちゃんと結婚してから外で食べようって気がまったく起きないのよ」
「こんなの喫茶店で出したらどうなると思う? しん君は手加減しないからこれ以上のデザートが並ぶ可能性があるのよ? 食べられなかった人間が確実に暴動を起こすと思う」
「・・・それは言い過ぎだろう。でも食材がもっと色々入れば色んなものが出来るけどね」
「コレを販売するのは商業ギルドでは絶対に停めざるをえませんね。とんこつラーメン以上の事が確実に起こります。ミネルバさんたちがおっしゃる『死人が出るレベル』ってここまでだとは・・・想像以上でした。美味しかったです。ありがとうございました」
リーチェが立ち上がって深々と頭を下げた。1000万のボーナス以上の対応だ。
イチゴクレープ(パティシエ風)あなどれんな・・・。