俺とミーの鎧を新調した。ベースはワイバーンの皮でサイラスの甲殻で作ったっす。おやっさんが。
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冒険者ギルドからおやっさんの家に向かってる道で、以前購入したうなぎ屋と違う店を発見したので、また容器を渡して10人前を持ち帰りでいただく。
ここもウナギの蒲焼のタレが販売されていたので5本ほど購入した。
カランコロンとカウベルのようなベルをならして店内に入ると、今日は受付におやっさんが座っていたのでビックリしてたずねる。
「お久しぶりです、おやっさん。おかみさんは?」
「あぁ、ピニリーは以前言っていた査察だ。抜き打ち検査で今日は教会に行ってるよ。今回は教会の内部の事務方の方の抜き打ち検査でな、ピニリーは朝から張り切っていたよ。『アマテラス様を汚す事を内部の人間がしくさりやがって』って以前からかなり興奮していたからな」
「確かに教会内部の人間がアマテラス様に泥を塗る行為だったからな・・・おかみさんみたいに怒っている人もたくさんいそうだな」
「間違いなくいつもの査察レベルじゃないってぐらいの人数になったらしいな。総勢50名ほどで総ざらいしてくるって昨日から張り切ってた・・・それで今日は何の用だ? 俺はこれから昼にでもしようと思ってるんだ」
「オーク肉が大量に手に入ったから、おやっさんさえ良ければ俺がとんこつラーメンとチャーハンのセットでも作ってやろうか?」
「おおお、転生者の正当なラーメンが食えるのか? ぜひとも頼むよ。出来ればもうすぐ昼休憩で戻ってくるピニリーの分もお願いできるか?」
「お安い御用だよ」
俺はアイテムボックスから必要な食材を取り出してササッと作って渡した。
おかみさんの分はおやっさんが自分のアイテムボックスに仕舞ってる。
チャーシューも2本丸ごと渡しておく。
これがあればつまみにもいけるからな。
無言で食べつくして今は食後の緑茶を飲んでる。
「流石だな・・・これが本場を知ってる人間の作ったとんこつラーメンか。ピニリーも大喜びするよ」
「俺からすれば『ちょっと足りない』だ・・・紅生姜がないんだよな。まだこの世界に来て生姜はあっても『シソの葉』を発見できてない。シソの葉がないから梅もあるのに『梅干』すら出来ないし、梅酢がないから紅生姜が作れない。紅生姜のないとんこつラーメンもチャーハンも、俺に言わせると『ちょっと足りない』になってしまう」
「梅干? それなら首都シーパラで以前見た記憶があるぞ?」
「なんだって?」
「あぁ、早乙女が言ってるシソって言う葉っぱは紫色のヤツだよな?」
「そう、それだよ。シソの葉」
「首都シーパラはシーパラ半島の付け根にある都市だ。そのシーパラ半島の反対側の外洋側の付け根にあるのが都市『ドルガーブ』だな。ここは外国の玄関口の都市として発展している。そこのドルガーブの周辺でシソは栽培されているから、ドルガーブには『梅干』が名産品として生産されている。このヨークルにはなかなか入ってこないけど、首都シーパラに行けば普通に売ってるよ」
「マジで! よっしゃ!! 夢が広がるな」
「早乙女はホントに食に貪欲だな。それで今日の用はなんだったんだ? まさか俺とラーメンを食べに来たわけじゃないだろう」
「ラーメンはついでだよ。今日は珍しい素材が手に入ったんでおやっさんに渡しにきたんだ」
「珍しい? それなら奥の工房に行こう」
おやっさんがそう言ったらちょうどおかみさんが休憩しに帰って来たので、昼食で俺の手作りのとんこつラーメンとチャーハンを食べ始めた。
俺とおやっさんは奥の工房で素材を見る。
「まずはワイバーンだな。これは頭部だけの損傷で済んでるので素材としては極上の部類だろう。少し標準より小さいからまだ若いワイバーンだな」
1体のワイバーンを工房に広げた。
おやっさんは久しぶりに見たと大興奮だった。
ワイバーンをアイテムボックスにとりあえず戻す。
・・・デカくて邪魔だからな。
次に出すのもデカイし。
「次はサイラスの全身の皮と角のセットだ。これはダンジョンのドロップ品だな」
「全身だと!」
俺が工房いっぱいにサイラスの全身皮の角付きを広げる。
おやっさんの大声に、早くも食べ終わったおかみさんまでが工房にやってきて大声をだす。
「凄いねこれ。全身ってここまでの大きさは初めてかもしれないね」
「ああ、そうだなピニリー。間違いないよ。俺もこのサイズのサイラスの全身皮を見たのは初めてだ」
「それで、俺もせっかく貴重な物を取れたんだから、おやっさんにこの2つで俺専用の鎧を新調しようと思ったんだ」
「俺が作っていいのか? ・・・ありがてぇな。早乙女はどんな感じに仕上げたい? リクエストはあるか?」
「今俺が着てる甲殻鎧の進化版でお願いしたいな。甲殻の部分をサイラスの甲殻で。ベースの皮の部分はワイバーンの皮と羽の皮膜で。繋ぎ部分は森林モンキーの尻尾ってのはどうかな?」
「ああ、基本シルエットは同じなんだからすぐに出来るぞ。で、また悪いけど作る料金は余った部分が欲しい」
「サイラスは補修用に半分は取っておきたいから残りの半分でいいか? それじゃあ、追加でワイバーンをもう1体出すよ」
「サイラスは構わないけど、ワイバーンをもう1体? 早乙女、何頭捕獲したんだ?」
「俺が捕獲をしたのはは3体だな。だから俺の手元に1頭分あればいいから2頭はおやっさん達に渡すよ。おかみさんと自由に防具を作ってくれ」
「ありがたいねぇ。でもそれじゃあ、私達がもらいすぎだから、私が今みんなの分のブーツをワイバーンの皮で作ってあげるよ。サイズの微調整は早乙女君がしてね」
「それは構わないけど・・・おかみさん時間は大丈夫なの?」
「ブーツを4つ作るだけだからすぐだよ」
おかみさんがあっという間に4足作ってくれた。
おかみさんはうれしそうな顔をしながら出かけて行った。
「じゃあ、俺もサッサと作ろう、流石に食事中って長時間店を閉めておくわけにはいかないからな」
とおやっさんは言ってたが・・・そこから俺の新型サイラスの甲殻鎧を作ってから仕上げるまでには、1時間も時間をかけてた。
最終チェックはまた裏庭で動きを確かめつつ仕上げる。
今までのサソリオオクモの甲殻鎧はくすんだ緋色だったが、今度はサイラスの甲殻鎧になったのでくすんだ白色でグレーのちょっと手前って感じで白色でも派手ではない。
このちょっと地味な感じが俺の中二病をくすぐってくる。
サイラスの甲殻鎧でベースがワイバーンの皮になったから防御力はサソリオオクモの甲殻より3倍ぐらいに跳ね上がる。
元の防御力に違いがありすぎるからな。
アイリが装備しているオーガナイト鋼のフルプレートアーマーに匹敵しそうなレベルだ。
あっちはオリハルコンコーティングをしてあるのでさすがに負けるが。
おやっさんがミーの分のサイラス甲殻鎧も作ってくれた。
サービスだそうだ。
微調整は俺の仕事だけど。
出来に満足したおやっさんと、見た目の地味さに満足した俺はそれで用事が済んだと店からアゼット迷宮に転移する。
アゼット迷宮内に入り嫁達の気配を探りながら念輪で話しかける。
「みんな、今ちょっといいかな? アゼット迷宮に到着したよ。おやっさんにミーの分のサイラスの甲殻鎧を作ってもらったんで届けに来た。みんなどこにいる?」
「・・・私の鎧だって? ホントに? やったね!! 今はまた地下6階でミルクさん狩りに戻ってきたところだよ」
「わかった・・・発見できたよ。今すぐ転移する」
そのままみんなのいるところに転移した。
地下6階の休憩室に入って、ミーのサイラスの甲殻鎧を装備してもらう。
ミーに本気で動いてもらってから微調整を済ませる。
ほとんど手直しが要らないってのがおやっさんの腕だな。
おかみさんが作ってくれたブーツも皆に渡す。
アイリだけはフルプレートアーマーを装備中なので帰ってから仕上げる事にして・・・クラリーナとミーはその場で装備するので、そのまま仕上げた。
おかみさんお腕もさすがだな・・・微調整もいらないぐらいだ。
今日はクラリーナの対集団戦の訓練代わりで地下7階の『リザードドッグ』と地下8階の『キラービー』を今まで相手にしていたそうだ。
リザードドッグは全身を鱗に覆われた犬で体長は1mほど。
刃物の抵抗力が強いそうだ。
キラービーは体長50cmほどの巨大な蜂で、体表の甲殻はサソリオオクモ並に堅く、物理攻撃のみでは戦い辛い相手のようだ。
どちらも10体以上の集団で立体的な連続攻撃を組織だった攻撃を仕掛けて来るから、クラリーナの魔法攻撃の練習相手にちょうど良かったみたいだな。
まだ待ち合わせまで時間は残ってるので、時間的におやつのイチゴクレープを作って渡してあげて、俺はそのままアキューブの巣に転移した。
大草原の北側を俺も探索しようと思ったし、見たことない大陸王亀を狩ってみたかった。
まずは周辺探査の魔法で気配を探る。
いた! デカくて見たこともない反応があった。
そのまま飛翔魔法で飛び上がって、自分の気配を消して反応があった方向へ飛んで行く。
近づくとあまりの大きさに驚く。
シルバードよりデカイ。
サイラス希少魔獣ぐらいの大きさで横幅は倍以上ある。
魔法が効きにくそうなので天乃村正で大陸王亀の脳天らしき場所に突き入れる。
俺のもらった知識にもいなかった魔獣なので、弱点も何も分からないからな。
天乃村正なら魔法抵抗が強そうな敵にも切れ味が一切鈍ることなく突き刺さるから便利だ。
一撃で仕留める事が出来た。
これでとりあえずの目的は終わったな。これからは俺も遊ぶ時間だ。
ここなら誰にも見られずに遊べるからな。
俺にストーキングで追う事も不可能だし遠見の魔法は俺の封印魔法で完全に見えなくなってる。
今日は転移しまくって移動してるので全く追えてきてない。
ミノムシも今朝にはヨークル警備隊に引き渡されていたとユーロンドたちからの報告があった。
久しぶりの自由な遊び時間は大草原をホバーボードで飛び回る・・・だな。
護衛依頼中はそんなに遊べなかったし、今日はハメを外して遊ぶ事にする。
腰に装備したカタナをアイテムボックスに入れて、今まで履いていたおニューのブーツも脱いでアイテムボックスに入れる。
替わりにホバーボード専用のブーツを取り出して装備する。
そのままホバーボードに乗ってジョイント部分を固定してから動き出す。
最初は久しぶりだったのでゆっくりとホバーボードを動かす。
世界規格外スペックはすぐに勘を取り戻して、自由自在に動き出した。
時間を忘れて遊びまわるために俺の脳内のタイマーを待ち合わせ時間の10分前にセットして・・・ハメを外した。
時速100km以上のスピードを出して最高速の確認。
地上では時速130kmぐらいなら何とかなりそうだな。
水上だと時速100kmにいくかいかないかってぐらいだったしな。
今日もアドレナリンがドバドバで気分爽快だ。
「いぃーーーヤッッホーー! だーーーッハッハッハ!」
「すっげぇ!! アーッハッハッハ」
楽しくて完全に頭がおかしい人になってる。
笑いも止まらないし。
時間が来て電気音のタイマーがピーピー鳴るまで、完全にトリップ状態だった。