もふもふ天国ってどこにありますか? 自分で作っちゃう? っす。
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雨の中のキャンピングバスの運転に慣れてもらうために30分交代で皆にも運転してもらう。
嫁も最初は戸惑ってるけど、最初だけですぐに慣れるんだよな。
3人の嫁の能力が高いのか、ここの世界の人達が全員能力が高いのか・・・比較する人がいないからよくわかんないな。
俺からすれば、郊外の街道も都市ヨークルの中でも、このシーパラ連合国では馬車は日本と同じで『左側通行』ってのがありがたい。
俺はリアルでは左側通行でしか運転した事がないからな。
右側通行なんてゲームの中でしか運転したことないから難しいだろう。
天気が悪くてもこの展望席からの眺めは良い。
天候の悪さで遠くの山々は霧でかすんで見えないが、それがまた幻想的な空間を作り出している。
・・・この幻想的な空間に感動しているのに、遠見の魔法で俺を見ようとするのは止めて欲しい。
流石にイラついてきたぞ。
自重を放り投げて自分の趣味の旅をする為にキャンピングバスを作って街中を走りまわったり、滑らかに動くクマのゴーレムを連れて街中を練り歩いたりしたから、完全に自業自得なんだけど・・・認識阻害の魔法で薄っすらとしか見えないようにはしてある。
これも俺がこの世界で学んだことだな。
完全に見えないように認識阻害の封印まで施して生活してると、どんな理由かは知らないがストーキングしてくるんだよなアイツら。
アイツらは俺に突っかかってきて無様を晒した『アントローグ商会』の連中みたいに、俺にケンカを売ってこないから逆に厄介だ。
流石にちょっとムカついてきてるがな。
昨日までの護衛依頼中はガルディア商会のヨークル支部からも遠見魔法で覗かれていたが今朝には消えていた。
まぁ、アレだけ大量に物資を運んでいた最中という、理由があったから我慢が出来るんだけど。
今も必死になって覗こうとしている5つのうちの、ひとつは俺の記憶にもある首都シーパラの冒険者ギルド本部から覗かれている。
・・・俺は監視対象になっているんだろうか。
盗賊も迷賊も殺しまくっているので逆に不信感を持たれているのかも。
チーム早乙女遊撃隊での行動が監視されてるわけじゃなくて、俺だけが冒険者ギルド本部から監視されてるから・・・まぁ、そういうことなんだろうな。
今日、ヨークルに帰って夕方に1人で冒険者ギルドヨークル支部のギルドマスターのラザニードに会って聞いてこようかな。
バイド村で退治した盗賊の遺体も売りたいし。
ギルド以外の4つはまだよく調べていない。
俺が逆に遠見魔法で覗いてやると、向こうは慌てて覗きを止めるんだよな。
それも4つとも。
接触もしてこないし敵対行為もない。
どこかの商会だと思うんだけど・・・ただ覗かれてるだけだから厄介だ。
鑑定の魔眼を持つビッタート卿や真偽官が近くにいるときは絶対に覗いてこないから、自分達の安全を守るために徹底されている。
もしかしてこっちからやってくるのを待っているのだろうか?
そろそろケンカを売った方がいいかもな。
キャンピングバスの中は覗けないようにしてあるし、話し声も完全封印してある。
俺がこんなことを考えながら嫁達と会話している内容なんて聞かれたくない。
俺の中にある転生者の記憶や経験も厄介な相手として俺に警戒を訴えてくる。
るびのや嫁が狙いならこっちから戦争を仕掛けるのに。
そう思って問題を先送りしてるだけかもな。
・・・面倒だからやっちゃいますかね。
ストーキングさせて相手の動きを探った方がいいのかも知れんな。
俺は自分と嫁に認識阻害の封印をかけた。
遠見の魔法の阻害魔法もかける・・・これで完全に見えなくなるだろう。
・・・ヤツラが慌ててる感じがする。
「しん君、急にどうしたの? もしかして前に言ってたようにまた覗かれてる?」
「ああ、もう依頼は完了させたからな。これからはこっちから攻めることにするよ」
「大丈夫なんですか?」
「クラリーナの心配も分かるけど、そろそろ俺もムカつく。人のプライベートを覗きまくりやがって。これからアイツらはストーキング行為にくると思うけど、こっちから全員のトイレの中の行動まで完全監視してやるよ」
「トイレの中まで?」
「ああミー、もう手加減もしない。完全に監視下におくことにする。冒険者ギルドの人間も手加減なしだ。自分たちが絶対に敵わない相手が存在しているってことを骨の髄まで叩き込んでやんよ」
「アントローグ商会を相手にしたときみたいに『戦争状態』にするって事なの?」
「ああ、ちょっと待っててくれ。後で詳しく説明するから・・・これから宣戦布告をする」
そういうと今自分たちにかけた封印を全て解き、キャンピングバスに仕掛けた魔法も封印も一時的に全部を解除した。
『おい! 俺を覗いているお前等。これは俺からの宣戦布告だ』
『毎日毎日、断りもなく覗きやがって。いいか、聞こえてるんだろ?聞こえるようにしてやったんだからな! これからはお前達全員と戦争状態に突入だ。どういうことが分かるか? お前等全ての人間を敵と見なして、これからは俺も完全に監視することにする。脅しじゃないからな。冒険者ギルド本部の人間は偉いのか? なぁそこの会議室って封印してあるから覗かれないとでも思ってるのか?』
『いいか? 俺を舐めるなよ? そこの会議室にいる5人のオッサン。全部丸見えだぞ? アッハッハッハ、慌てて今頃魔法で封印しても無駄だし無意味なんだよ! いいか? そこの会議室にいるエルフのジジィ。お前なら分かるだろ? 魔法ってのは格上の存在には封印も阻害も無効化されるんだよ』
『知ってるんだろ? 会議室で偉そうにしているエルフのジジィ。お前は俺よりも格下なんだからお前の認識阻害の魔法も封印も俺には効かないんだよ。600年以上生きてても分からないのか? クックック、慌てて精霊様に聞いても無駄なんだよ。その『精霊ウンディーネ』よりも俺の方が格が上なんだから、全部無駄なんだよ。馬鹿には話だけじゃ理解できないからな・・・試してやるよ』
『召喚する。来い! 精霊ウンディーネ』
俺の目の前に薄いヴェールをまとった水の精霊が姿を現す。
「早乙女様、召喚していただきありがとうございます」
『エルフのジジィ、ウンディーネの声が聞こえただろ? わかったか? お前が契約させてもらって力と能力を貸してもらっている精霊は、俺が呼び出せる数々の精霊の一つに過ぎないんだよ。よし。ウンディーネご苦労さん。精霊界に帰還しろ』
「了解しました」
『こういうことだ、分かったか? 今まで優しくしてやればつけ上がって調子に乗りやがって。これからはこっちから攻めるからな? お前らは俺の存在を舐め過ぎて『逆鱗』に触れたんだよ。俺がお前らにドラゴンよりも恐ろしい存在って言うのはどんなモノなのか、これから俺が直々に教えてやるから身をもって知れ。謝っても許さんからな? これが俺からの宣戦布告だ!!』
最後に大声を上げるともう一度、全部の魔法と封印をかけキャンピングバスの魔法も再起動させた。
魔法の設定が終わったので俺が運転手に戻る事にした。
「しん様は、せ、戦争、しちゃうんですか?」
「アレは脅し。なんもするつもりはないよ。たまに監視するぐらいでそれ以外は何もしない、今までと同じかな。しばらくはビビッて逃げ回ってくれるだろ。ストーキングしてきたら全員魔法で眠らせるだけだし。るびのや俺の作った全部のゴーレムは元々安全の為に封印はしてあるしな」
「じゃあ、今回のは脅しで次があったら宣戦布告に則り戦争状態になるって事?」
「ああ、アイリそういうことだ。だからこそ前もって宣戦布告をしたんだ。俺と戦争になっても良いって決意してから情報を集めに来いってことだよ」
「なるほどねぇー。じゃあ、冒険者ギルドカードに入ってるチームのお金はどうするの?」
「もう少ししたらゾリオン村に到着するからビッタート卿に話を聞いてみるよ。面倒になりそうだったら商業ギルドに登録して『早乙女商会』でも立ち上げようかな」
「商業ギルド? 仕事は・・・ああ、物資の輸送ならこの国で1番ね」
「そうだよミー、俺達なら何でも出来る。メイドゴーレムをいくつか作ってレストランでも大丈夫」
「そういわれてみれば・・・しん様ならゴーレムで人員募集で信頼できる人間を集める必要すらないですもの」
「しかもゴーレムだから24時間いつでも開店が可能だな。休憩もいらないし。おやっさんにお願いしてリーチェに居抜き物件を紹介してもらえば、喫茶店とかの店舗ぐらいなら明日にでも開店できるよ」
「喫茶店で何を売るの? しんちゃんが作ったデザートなら10日後には伝説が生まれるよ。とんこつラーメン以上の伝説が」
「まさかぁー・・・ないよね?」
「伝説は出来ると思いますね。それが良い事か悪い事かは別の話ですけど」
「クラリーナの言う通りね。しん君にはデザートだけで人を狂わせる能力があるってことを、もっと自覚した方がいい」
「俺が前に住んでいた日本って国は、食に対して貪欲な民族でね・・・デザートだけでも世界中のいろいろなのがあるんだよ。それに、ミルクさんのミルクの中には脂肪分が豊富に入っていたから『生クリーム』も『バター』も分離して作ることが出来た。昨日、マリアがレモンも大森林で発見してきてくれたから、チーズも自作が可能だ。これだけあればデザートはいっぱい作れるよ」
目の前でイチゴクレープを3つ作って渡してあげた。ガツガツって、すぐに食べ終わる嫁3人。
「これはヤバイって、しんちゃん・・・死人が出るって」
「ミーの言ってることが理解できるわね。これはホントに伝説になるわ。殺し合いが起きる可能性がある」
「これを喫茶店で出すんですか? 食べられなかった女同士の殺し合いに発展する未来しか見えませんね」
嫁に酷い事言われてるな俺。とりあえず言い訳しとこう。
「これは俺の嫁への愛情が詰まった手作りだけど、もし喫茶店を作って店に出すとするなら味も品質もスキルレベルも俺には及ばないゴーレムが作るヤツだぞ?」
「・・・ああ、それなら大丈夫・・・かな? 自信ないけどミーはどう思う?」
「私は止めた方がいいと思うなぁ。またひと騒動起きそう・・・クラリーナの意見は?」
「私は・・・そうですね。デザート系は止めた方がいいと思いますね。甘いものに関しては女は見境がなくなる生物ですので」
「クッキーぐらいなら・・・」
「「「却下で」」」
3人に即答で全否定されてしまった。
「それじゃあ、モフモフ喫茶は?」
「なんですかその、魅惑の魔力がある名前は」
「おう、アイリ。店内を俺が作ったゴーレムが徘徊するだけだ。初日のるびののように大きさは30cm弱ぐらいで、形はるびのやグリーンウルフとか銀大熊の、生まれたてのホヤホヤ子供サイズだな。全身を俺が作るモフモフ毛皮で覆った、動くぬいぐるみだ。もちろんヨチヨチ歩きで時々転ぶって言うニクイ演出ありで。店内ではおさわり自由だ。店は30分の時間制でドリンク1杯1000G。名付けて『もふもふ天国・ヨークル店』だな。略して『もふ天』・・・ってのはどうだ?」
「初の店舗がヨークル店って・・・略してって・・・しん様が目指してる先が見えません」
「しんちゃん、それって儲かるの?」
「儲かんなくてもいいんじゃない? 俺の趣味オンリーだ」
「しん君がいう『もふもふ天国』って名前だけでも惹かれてしまってる自分がちょっと悲しいわね」
「持ち逃げされそうなんですけど」
「クラリーナ、その心配はいらない大丈夫。店内のゴーレムの全部に移動禁止の封印をかければ店舗の中でアイテムボックスの亜空間に入れる事も出来ないよ・・・そろそろゾリオン村が見えてきたな。臨時の駐車場に行けばいいと思うけど」
俺たちのキャンピングバスが指示されたのはやはり臨時の駐車場だった。
キャンピングバスを停車して村へと全員で歩き出す。