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俺の昔話。このときから俺は壊れてるっすね。

11・20修正しました。

クラリーナが運転席から降りてきた。

自分のシートを俺の横の位置に移動させて近づいてきた。


「今日は私が1番手です!」

「良かったなクラリーナ・・・でも昨日はじゃんけんで勝ってないから悔しいって言って凹んでなかったっけ?」

「それは悔しいです! けど、ミーさんにアイリさんはじゃんけんが昔から強かったって聞いて・・・リベンジは難しいかもって、またちょっと凹んでます」

「そこまでクラリーナが負けず嫌いだったのは知らなかった一面だな」

「私も自分でビックリしてます。こんなに負けず嫌いだなんて、しん様と結婚して初めて気付きました。たかが順番を決めるだけのに、ホントに自分でも知らない一面でしたね」

「まぁ、いいことだろう。今まで『貴女はお姉ちゃんなんだから我慢しなさい』って言われて育ってきたんじゃないのか? 自分の発言や感情をどこかで押さえつけられていなかったか?」

「は、はい。いつも親に言われていました。なんで、しん様はわかるんですか?」


「俺には妹がいたんだけど、俺もいっつも小さい時は言われていたんだ。『あなたは男の子なんだから我慢しなしさい』『お兄ちゃんなんだからそんなことぐらいで怒らないで我慢しろ』こればっかりだったよ。妹はウソ泣きばっかりで俺は毎回親に殴られていたよ」

「俺が10歳ぐらいの時にマジでブチ切れて妹を本気でぶん殴って、後で親父にボッコボコにされても一切謝らなかった経験があるよ。マジ切れした原因も聞かない親を殺すつもりで深夜に寝てる親父を金属の棒でボッコボコにして警察が沙汰になって、初めて俺がマジ切れした原因を大人に聞いてもらえて、うれしくて泣いた記憶がある」

「原因って何だったんですか?」

「学校って場所に勉強に行ってる俺がいない隙に、毎日俺のおやつを横取りして妹が食ってたっていうくだらない理由。でも俺が妹を問い詰めるとウソ泣きして逃げるってのを10日ほど続いて我慢が限界になってブチ切れた。妹は泣いて逃げると俺はいつも母親に怒られて、仕事から帰ってきた親父に殴られてうやむやに出来るって知ってるからな。最後の日に俺は親父に殴られた後・・・俺は絶叫して泣こうが喚こうが親父に殴られて気絶するまで妹をぶん殴った。母親は妹を病院に治療に連れて行った。俺は親父に理由を聞かれてるのに、俺が何を言っても『言い訳するな』って殴られる。これの繰り返しで失神するまで親父にボッコボコにされた」

「失神から覚めると家族が血まみれの俺を居間に放置して寝室で寝てるんだよ。俺に苦しみを与え続ける家族なんてもう要らない。今から全員殺すってそのまま庭に置いてあった金属棒で親父や家族を叩き続けたよ。誰かが何か言っても『言い訳するな!』って怒鳴りながらな」


「・・・そ、それでどうなったんですか?」

「俺にもその後はよくわからないよ。親父に殴られて血まみれの中で親父を血まみれにしてた。警察がきて取り押さえられて、そのまま病院に家族全員が連れていかれたよ。近所中で大騒動になったらしい。そりゃそうだろう10歳児が血まみれで『殺してやる』『言い訳すんな』って絶叫して大騒ぎしてるんだから。近所の人が警察呼ばなかったら間違いなく全員殺すまでやってたよ」

「退院したら即引越し。両親と妹には後で謝られたけど声すら聞きたくなかったから返事もしなかった。それからは母方のじぃちゃんとばぁちゃんに預けられて田舎で育った。そこから俺にとって親は俺が20歳になるまでの間、金だけ送ってくる存在になったよ。何度か父からも母からも妹からも手紙がきたけど1文字も読まずにすぐに燃やしたし、じぃちゃんばぁちゃんに電話で苦情を言ってもらったよ『いまさら家族ヅラして手紙なんか書くな。これ以上苦しめたいのか? お前達3人は一切あの子の話も声も聞かなかったのに今更なんのようだ?』って・・・あぁ、電話って言うのは前の世界にあった念輪みたいなヤツだな」


「私の家は代々続く聖騎士の家でした。望まない長女と、望まれて生まれてきた長男。私は女の子でしたんで殴られるってことは一切ありませんでしたが、望まない長女は弟の為に・家の為に『我慢しなさい』ってことはいつも言われてましたね。聖騎士の家の為に『弟の為に貴女は犠牲になりなさい』これが絶対のルールだったと思います。だから、簡単に捨てられたのでは? って理解できちゃう自分がいるんですよね」

「ホントに・・・家族って何なんだろうな」

「ですね。なんで家族なのに話も聞かないんですかね」

「俺にもわからんな。俺も話をまったく聞いてもらえなかった方だったからな。俺は両親には叱られた記憶はまったくないよ。いつも感情交じりに『怒られた』だな。じぃちゃんばぁちゃんは俺の話を何でも面白そうに聞いてくれた。感情で怒られたことはなく、いつも理由があるから『叱られた』だな。俺はじぃちゃんとばぁちゃんがいなかったら人間として育てられてなかったと思う。扱いがペット以下だっただろうから・・・ここの世界では魔獣ですら話が出来るのになぁ。でもクラリーナの話を聞いて、俺も昔を思い出して同情していた部分は間違いなくあるよ。クラリーナも家族に捨てられて行く場所がないんだろうって分かっていた」

「ふふふっ、仲間ですね」

「ああ、クラリーナは仲間だし家族だし妻だし愛する女でもあるよ」

「もー、妻を口説いても何もできないですよー」


クラリーナが抱きついてくるが昨日のアイリと一緒だ。

防具の上から抱き疲れても柔らかさがない。

クラリーナはシルバードの毛皮のコートだから固くはないが・・・銀大熊の毛皮なんで、いくらおかみさん特製のコートでもごわごわだ。


だけどイチャイチャするのは大好きだ。


このピンクな空間は最高だな。『ぬはははは』って気持ち悪い笑い方をしてしまう。

イチャイチャ空間は運転席のわざとらしい咳払いで終了した。


俺はアイテムボックスからコーヒーポットを出して自分のマグカップに入れる。


「クラリーナはコーヒー飲む?」

「ハイ。また半分だけください」


半分はミルクをいれてカフェオレにして渡した。

ついでに昨日の芋の3種盛りも渡しておく。


「ありがとうございます」


クラリーナもモグモグ芋を食べ始める。

ハムスターとかリスとかの小動物みたいに小さな口で食べてるクラリーナは愛らしさ満点だな。

・・・しかしよくあんな小さな口で俺の・・・おっとこれ以上はヤバイな。

頭の中までピンク色になりそうだったんで話題を変えた。


「そういえばクラリーナって教会で魔法習ってたんだよな? ここまでの魔法の才能でよく大騒ぎにならなかったな?」

「大騒ぎになりかけましたね。私が習っていた司祭様は私に魔法の才能があるって言ってくれて、首都シーパラで教会のシスターになる訓練を受け、15年も修行すれば間違いなくこの国最高の『聖女』になれるっておっしゃってくれて、私の両親にシスターにさせようって説得しにきてくれたんですが・・・父が『この子は嫁にいかせますのでシスターなんかには絶対にさせません』って何度も断ってました。シスターになったら都合のいい道具が減るとでも思ったんですかね」


「司祭様って凄いな。ちゃんと見てくれていたのに・・・息子に対する嫉妬かな?」

「弟にも回復魔法の才能はあったんですけどね。私はそれ以来・・・いっさい魔法の勉強はさせてもらえませんでした。修行すれば聖女にもなれたって司祭様に言われた! っていう言葉だけが、嫁入り道具になっちゃいました」

「だから、中途半端になっていたんだな。・・・でもクラリーナはもう既に『聖女』になってるしな」

「ですね。これでも15年の修行だと言われたんですけどね。聖女の力を全然まったく使いこなせていないんですけど」

「その使いこなすための修行が15年なんだろうね。俺と一緒に練習するからそんなにかからないけどな」

「うふっ、楽しみですねぇ。またダンジョンに行きたくなってきますね」

「そうだな、この護衛依頼が終わってから首都シーパラに旅行に行く前に1度は行こうな」

「はい、楽しみです。しん様にまたたくさん魔法を教えてもらいます」


そんなことを話していたら、もう午前中の休憩場所が見えてきた。

1時間以上もクラリーナと話をしていたな。


「クラリーナと1時間以上も話をしていたけど・・・時間は大丈夫なのか?」

「大丈夫です。昨日の短くなった時間を足してくれました。アイリさんもミーさんも了承してくれてます。休憩の後はアイリさんとミーさんが1時間ずつになってます」

「俺の知らない間に時間割が決まってたんだな」

「午後からは全員でお話がしたいってミーさんが言ってました」

「ん? ・・・でも今日は午後からは俺の運転の予定だったよな? 運転席を改造した方がいいな」

「ハイ、よろしくお願いします」


「はーい。到着!」


ミーとアイリがキャンピングバスを停車させてから、運転席から降りてきた。

俺とクラリーナもマグカップと芋の3種盛りをアイテムボックスに入れて片付けてから、立ち上がってキャンピングバスを降りる。


休憩場所の屋根だけテントに案内されてついていく。

今日は外の方が気持ち良いかもしれないな。

風があって心地良い。

ハーブティーとハーブクッキーをかじる。

クッキーも毎回味が違っていて皆で品評会みたいになってる。

溢れ変えるほどあるハーブで適当に作ってるように感じるが・・・味の好みの差はあれど、美味いからな。

どのハーブがどの味なのかどうでもよく感じてしまう。


屋根だけテントの下でクッションの上に座り、心地良い風を感じてバスケットの中に山盛りに入っているクッキーを時々かじってボーっと過ぎていく時間は早く終わってしまうな。

俺達の周りにいて一緒にクッキー品評会をしていた護衛の人達も時間がきたので慌てて動き出す。


休憩も終了だ。

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