護衛依頼2日目の午前。今度はクラリーナ、最後にミーの話っす。
12・8修正しました。
次に運転席に上がってきたのはクラリーナだった。
「おおぅ! 白熱したじゃんけんに終止符を打ったのはクラリーナか」
「はい。しん様。私がミーさんにトドメを刺したんです」
「何度も『あいこでしょ』って声が聞こえてて白熱してるのがわかったよ」
「チョキでした。私のチョキが勝負の明暗を分けたんです!」
そんなに力を込めてチョキをしなくても・・・手がプルプルしてるぞ?
「ただの順番を決めたじゃんけんに勝っただけだよ。意外とクラリーナは負けず嫌いなんだな」
「しん様に対してだけだと思います。・・・ミーさんとお互い必死になってじゃんけんしてました。何か必死になりすぎてて恥ずかしいですね」
そういって少し顔を赤らめるクラリーナが可愛い。
「ふふっ、クラリーナは何か俺に不満とかはないのか?」
「私がしん様に不満ですか? ないですね」
「即答かよ。妻に不満がないってのは夫としては喜ばしいことだけどな。まぁ、これを機会に俺に聞いてみたいことでもいいよ」
「聞きたいこと・・・それなら、ありました。しん様は私に不満はないですか? 私は・・・しん様に『結婚してください』ってお願いした時、私の頭で考えていたことの半分以上は打算でした。しん様はダンジョンで死んだ元結婚予定の人達と違って優しそうだったし、お金もたくさん持ってそうだったし・・・あのときの私には帰る場所がなくて、両親からも捨てられて・・・見ず知らずの私を善意だけで助けてくれたしん様に逃げ込んだんです」
「うーん。俺は結婚っていろんな形があると思ってる。大恋愛して長い時間をかけて恋と愛を育んだ結婚だけが夫婦の形って決まってる訳でもないしなぁ。結婚しておしまいって物語じゃないんだから、結婚後に愛を育んでも良いと思うよ。それに俺だってクラリーナのことを肉欲で見てる部分があったよ。クラリーナと結婚したらこの体は俺のものだ! って考えてたからな。・・・俺の方が酷くないか? エロ魔人じゃねぇーか」
「うふふふ。大丈夫ですよ。私にも不思議だったんですけど、しん様にお風呂で少しエッチな目で見られて凄く嬉しかったんです。嫌悪感がまったくありませんでした。逆にしん様が私から目をそらされて、アイリさんやミーさんを見てるしん様を見ると『スタイル良くてうらやましい』って悔しい気持ちと『やっぱり私じゃ・・・』っていう悲しい気持ちになりました」
「そりゃそうだろう。結婚したばかりの2人の嫁が裸で左右にいて、正面のクラリーナの裸ばかりジロジロ見てたら頭がおかしいって」
「私もホントに不思議な感覚だったんです。お風呂で興奮されてるしん様の男性自身を見て『私の裸で欲情できるこの人なら結婚できるかも!』って事しか考えられなかったんですから。だから・・・私は打算と肉欲にまみれたエロ魔人ですね」
「似たもの夫婦ってことか」
「はい。おんなじです。そういえば・・・ダンジョンでしん様に助け出された後、教会に行ってシスターに事情を話して、私の中を洗浄と浄化をしていただいたのです。洗浄してくれた時に言われたのですが・・・普通は複数の人達に何十回も無理やり強姦されているのに、ここまで綺麗な状態のを見たことがないって、そうシスターに言われたんです。しん様なら理由がわかりますか?」
「ああ、そういえばクラリーナには事情を全部話してなかったな。今から全部説明するよ」
「え? 事実と違うのですか?」
「事実っていうか、隠してたことがある。クラリーナを救出に行ったとき俺たちは君達のチームは全員死んでると思っていたんだ。全部の死体を確認していたわけじゃなかったけどね。俺たちが到着したときはオーガ11体、オーガナイト3体、オーガナイトロード1体の計15体に君たちーチームの人間はオーガ集団が踏みまくっていたんだよ。それでオーガをすべて殺してからオーガのドロップアイテムを拾っていたら、クラリーナが声を出してそれで君がまだ生きてるってことに気付いたぐらいなんだ」
「・・・え?」
「その時の君の状態は・・・骨折30箇所以上の複数、内臓破裂が4箇所あって・・・まぁホントの死ぬ寸前だな。クラリーナから声が出たのも不思議なぐらいで、あと10秒ほっておけば間違いなく死んでる。それでとっさに『エクストラヒール』を使って怪我を完全復活させたんだ。でも流れ出た血は戻らないから、ハイポーションを君に俺が口移しで2本飲ませた。俺がエクストラヒールを使えるってことは公表したくなかったから『ハイポーション2本で助けた』って報告したんだよ。実際に最後にハイポーション2本を使って君を助けているんだから、たとえ真偽官の目でも見抜くことは出来ない『ウソではない真実』だからね」
「・・・そんなことがあったんですね」
「ああ、今まで隠しててゴメンな。クラリーナに伝えるのを忘れていたよ」
「私が今、生きてるのは正真正銘、しん様のおかげなんですね」
「そこまでたいしたことじゃないよ。君の命をアマテラス様が救おうとなされて俺をあの場所に送り込んだんだろうな」
「でも私はシスターに『綺麗ですよ。どこも傷付いてませんよ』って言われて嬉しかったです。あ、ちょっと時間が過ぎちゃいましたがそろそろ私が運転する番ですよ」
「うん。わかった頼むよ」
クラリーナとキャンピングバスの運転をかわる。
「しかし、何十回も強姦されていたとわなヵ・・・ひっでぇーヤツラだな」
「アイリさんとミーさんに聞いたんですけど、女の子が大人になるときって凄く痛かったって・・・私は強姦されてるのに、全然痛くありませんでした。・・・あの人達、しん様のように大きくなかったんです。半分もなくて、長さも太さもこれぐらいでした」
クラリーナが人差し指を立てた。
「うそ! それはそれは・・・」
「ですので、しん様と初めてのときにしん様に指を入れられてビクってしたのは、思い出してしまったんです。ダンジョンでチームの人達が私の中に入れてすぐに出して、交代してすぐにまた・・・ってことを思い出しちゃったんです」
「たしかにクラリーナは狭くて指一本でもきつかったしな」
「凄く早かったのは覚えてます。ガクガクって動いたと思ったらビクビクって出して、すぐに交代してまたガクガクって・・・彼らに出されて穢れてしまったんだと自覚しました。今はしん様に綺麗にしていただきましたので穢れも消えました」
「いやぁー、俺の方が汚いかもよ。エロ魔人だし」
「私もエロ魔人なんでまったく問題ないですよ。私は親に捨てられてしん様の元に逃げ込んだんですけど・・・今はその幸運をとても嬉しいと考えてます。両親と弟の前で宣言したように幸せいっぱいですね。毎日幸せが増えていってます」
「そうだな、俺達にはこれから永遠って時間がある。これからも幸せをたくさん増やそうな?」
そういって運転するクラリーナの横顔に俺がチュッとキスをした。
「しん様。今、また幸せが増えました」
2人でキャッキャウフフをしているとミーが上に上ってきて声をかける。
「はいはーい、お邪魔虫が来ましたよ。クラリーナ、じゃんけんで勝ったのは順番だけで時間の延長はございません」
「あ、ミーさんゴメンなさい。替わりますね」
慌ててクラリーナがキャビンスペースに降りていった。
恥ずかしかったみたいだな。
空いた運転席にミーが座る。
「うふふっ、お邪魔して悪かったかしらねぇ~」
「こらこらミー、何言ってんだよ。新婚ホヤホヤで新妻を邪魔者扱いする旦那はいないって」
そういってミーの耳にチュッとキスをした。えへへっと喜ぶミー。チョロ・・・
「なんか言った?」
「イエ、ナニモイッテマセン」
「んもー、なんで急にカタコトになるのよ。・・・まぁいいや。だけどクラリーナもしんちゃんとの結婚は打算だとはね」
「も?」
「そうだよ『も』だよ。私『も』アイリ『も』しんちゃんには打算で近づいた部分は間違いなくあるよ。知り合いで冒険者の男がつい最近結婚したんだけど、私達と同い年の男なんだけど奥さんが17歳なの」
「ロリコンか」
「そうかもねぇ・・・でもそいつがさぁ、私とアイリに奥さんを紹介するときに『やっぱ、女は若いのに限る。会うやつ会うやつに若返ったな! なんて言われるよ。あっはっは。アイリとミネルバも若い男と結婚すれば少しは若返れるかもな!』って暴言を言ったのよ。流石にムカついて殴ろうと思ったら『女に向かって何てこと言うの!』って奥さんにボッコボコにされてたけど、それでもそいつは嬉しそうに殴られてるの」
「ロリコンのドMか? もはや手遅れだ。医者に見離されるレベルだな」
「ま、そいつの特殊な性癖はどうでもいいんだけど。やっぱり私もアイリも悔しくてね。そんな最中にカタリナ母さんの騒動が起きて、しんちゃんがサクッって解決してくれてホッとしたら、目の前の恩人が私好みの童顔な男がいたの」
「お、おれ?」
「そう。すごく若いのにおやっさんの店の裏庭訓練場で見た戦闘力は凄まじいし、サクッて簡単に私達の問題を解決しちゃうぐらい頭もいいし、騙されたとはいえ1泊20万Gもするスイートルームに3泊も出来ちゃうような経済力もあるしって、そりゃもう必死よ必死。おかみさんにも助けられてしんちゃんを確保できたときはマジで涙でそうなほど嬉しかったわよ」
「確保って・・・」
「そう、必死だったからね。後でアイリにも聞いたけど同じ事考えてたって。目の前の若い男を逃がしてなるものか! って考えてたみたいよ。若くて魅力的な男を大人の女性のテクニックでメロメロにして、私も若返ってあの男に自慢してやるって計算してたのよ。ここまでは」
「ここまで?」
「新婚前夜に3人でお風呂にはいって、しんちゃんのマッサージを受けて快感で天国にいかされてしまうまでは、色々計算して頭の中で微笑んでたよ。あのマッサージで私の中にあった計算とか何もかもがドロドロにとかされて逆にメロメロにさせられちゃった。だけど今でもなんだけどしんちゃんにメロメロになっている自分が愛おしいほどに誇らしくて、たまらなく嬉しいの。ドンドン好きになってるの」
「お、おう」
「あ、そろそろ運転かわって!」
「お、おう・・・時間過ぎてたようだな、ありがとう、嬉しいよ。でも、それならミーとアイリに若い男を作れっていった冒険者に自慢しにいったほうがいいんじゃない?」
「それはもう、終わってるのよ」
「・・・え? いつ?」
「初めてしんちゃんとアゼット迷宮に行ったときに歩いていったよね?。 その時に「若い男のエキスを吸い過ぎで若返り過ぎてる」って言ってた男がいたでしょ?」
「ええっ? あぁ・・・いたな。言った後で後ろにいた大きな獣人女性に蹴られてた人だよな?」
「そうそう、アレが自慢してた奥さんなんだ」
「あれが? ミーとアイリの同い年って28だよな? 40ぐらいいってる先輩冒険者さんだと思ってたよ」
「そうなのよ。結婚当初は若返ってるなんて言ってたけど、どんどん老けていってるように思うんだよね。奥さんは狼の獣人で彼女達は夜が激しいっていう噂だし、獣人って150年以上生きるのに・・・どうなっちゃうのかな?」
「どうなっちゃうもなにも、本人が選んだ道だしな。『ガンバレ』って応援するしか出来ないな・・・奥さんに」
「ぶはは、しんちゃん! 急に変なこと言わないでよ、もぅー」
「なんなら本でも買ってあげれば? 『簡単にマミーになる方法』とか『ゾンビの楽しい生き方』とか?」
「死ぬ前提じゃん!」
「違うって『死んでもガンバレ!』ってこと」
「あははは、酷過ぎるけど、面白くて笑える」
「もしくは奥さんに『いやぁ、旦那が若いとピチピチでたまりません。やっぱ男は若いのに限る』っていったほうが生き残れる可能性がある。いや・・・その道しか残ってないかもな」
「しんちゃん! マジメな顔で運転しながらへんなこと言わないでよ」
「ウナギとか山芋なんかを差し入れするしかないな・・・奥さんに」
「もぅー、しんちゃんに言わせると早死にしか残ってないよ」
「仕方がない・・・俺は元日本人だから。日本で28歳で17歳の嫁さんをもらったっていうと『死ねばいいのに』とか『ロリコンは滅べ』って間違いなく言われるよ。親しい人からは目を見てハッキリ言われるよ『よう、ロリコン。捕まる様な事だけは今後も絶対にするなよ。親友からの真剣で真面目な忠告だ』って絶対言われるよ」
「じゃあ、しんちゃんも一緒じゃん! ていうか、しんちゃんのほうが年の差はあるよ。しんちゃん元35歳でしょ? クラリーナは18歳よ!」
「フッフッフ、年の差が問題なんじゃない『相手が17歳』ここに問題があるんだよ、フッフッフ」
「どういうこと?」
「日本では女は16歳から結婚は出来る。でも世間の認識として18歳以下は子供って括られてる。この18歳以下ってのが重要なポイントなんだよ(ウソ)」
「何で真面目な顔で語って、ウソって自分でも言ってるのよ」
「まぁ、ここは聞け。『18歳以下は子供』だから、男が50過ぎて18歳の奥さんをもらうと『若い女が好き』って世間の認識になるんだよ。『男の年齢が25以上で、なおかつ18歳以下の女に興味がある』これがロリコンと呼ばれる原因になるんだよ(大嘘)。世間一般が『ロリコン』という定義に当てはめるのはな」
「なんで、しんちゃんは時々クソ真面目な顔でよく意味がわからないことを熱く語ってるのよ。しかもまた自分で(大嘘)とか言ってるし」
「しん君ってこういうことは真面目な顔して語るよね。『おっぱいに貴賎はない』ってことも熱く語ってたし」
「私はしん様の真剣な顔は大好きです。横顔もカッコ良いです」
「いやクラリーナ、真剣な顔がカッコイイのは認めるけど、言ってることがほとんど理解できないのが問題なのよ」
「ミー、凄くわかるよ。クラリーナが言う様にカッコイイのもわかるの。でも言ってることがわからないのよ。何でしん君はこんなことで熱く語っているのか、理由もサッパリわからないことが問題なのよ」
・・・ん? 気付いたらアイリとクラリーナまで運転席に来ていた。
「あれ?」
「アレじゃないよ。そろそろ昼の休憩する場所に到着しそうだよ! ほら、しんちゃん。あそこ」
おっと、また我を忘れて熱くなって語ってしまったな。
昼の休憩場所が見えてきた。
昨日の昼食はハンバーグカレーだったけど、今日のお昼ご飯は何だろう。