嫁の3人とこれからの旅の相談をしたっす。
10・21修正しました。
「旅? 依頼で隣町のゾリオン村や首都のシーパラは行った事があったわね」
「アイリ、ヨークル川の先にある鉱山の町『グレンビーズ』にも行ったよ」
「そうそう、あの辛気臭い町ね。鉱山って言っても鉄と銅しか出てないしね。鉱山での労働者は犯罪者ばかりだし。あれは犯罪者を閉じ込めておくための牢屋替わりの町よね」
「私は旅というのは首都シーパラに船で行ったことしかありません。小さな時のボンヤリとした薄い記憶しかありませんので、ヨークル以外は行ったことないって感じです」
「俺はこのイーデスハリスの世界に転生してきて1番始めに思ったことは『見たこともない世界を旅して回りたい』だな。俺さぁ、ここにくる前にいた世界でも旅が好きだったんだ。俺が作ったゴーレム馬車みたいな『車』ってヤツに乗って移動できる旅が好きなんだ」
「それはここに行きたいから旅をする。じゃなくて旅がしたいから行きたい場所を探してるってこと?」
「ああ、アイリ。今の俺はそんな感じだな。そもそも俺はこの世界のどこに何があるのかも知らないしな。今の現時点で目的地もないよ。この世界に何か目的があって来たんでもないし。俺は旅がしたいんだから場所はどこでもいいよってな感じだ。だからみんなに聞きたいのは『どこか行きたい場所はある?』と、3人の意見が聞きたい! だな」
ここで考え込む3人の嫁。
「どこそこに行きたい! じゃなくてもいいよ。目的は何でもいい。見たい風景だとか食べたいものでも」
「では、私は『海が見たい』ですね。小さい時の記憶しかなくても海に日が沈んでいく景色を、宿泊した場所から見ていたことはまだ頭にあります。同じ場所からじゃなくてもいいので今見たい景色は『海に沈みゆく夕陽』ですね」
「ほうほう、クラリーナは『海の夕陽がみたい』だね。私は逆だな・・・山小屋から外にでてから見た朝日だね。私の父さんと母さんが亡くなって帰ってこれなくなって、何ヶ月も塞ぎ込んでた私を見かねたカタリナ母さんとモルガン父さんが連れて行ってくれた山で、アイリと2人で早起きして見た朝日は永遠に忘れないよ・・・私はあの時に生まれ変わったんだ」
「ミーはその話が大好きだよね、あの朝日は私の記憶にもあるよ。キレイだったよね・・・でももうあの場所に行けないんだよね」
「は? 何で?」
「実はカタリナ母さんもよく知らない場所なんだ。旅慣れてたのはモルガン父さんだから、全部の準備をモルガン父さんがしてて、カタリナ母さんの覚えてるのは『途中まで船で行った。到着までに何日もかかったけど、何日かかったかまで覚えていない』ぐらいだもん。一緒に連れて行ってくれたはずのカタリナ母さんが、当時3歳ぐらいの私たちとほとんどかわらない記憶しかないんだもん」
「そうだよね。私もはじめ聞いたときは我が母ながらに笑っちゃったわよ」
「船で行く町ってことで、ここから船で行く鉱山の町グレンビーズまでの護衛依頼をワザワザ受けてまでアイリと見に行ったのに・・・宿泊所の小屋は物凄くオッサン臭いし、朝日は角度的に見えなかったしで最悪の経験だったよ。私の中の美しい思い出が汚された気分にさせられる記憶を思い出してしまうから、それ以来オッサンの匂いも男の匂いもダメになったんだし」
「今言われてみればそうだね。あの日以来『オッサン臭い』『男の臭いがする』っていつも言ってたもんね。男嫌いになったのかと思って話を聞いたら、好きになった男と愛し合うことが出来ないから悩んでるって言われてビックリしたわよ。だけど一緒にセックs『あーアイリ、いいからその話は』あ、ああそうね」
アイリの話をあわてて止めるミーが可愛かったので少し微笑んでしまった。
「ミーが山の朝日・・・クラリーナが海の夕陽・・・ってことだな。アイリは?」
「んー、私は今のところコレ! ってものがないわね・・・しん君と一緒かな。旅してみたら行きたいところが出来るかもしれないから、今は保留で」
「うん、了解。まぁ今すぐ決めるって話でもないし、アイリだけじゃなくてミーもクラリーナも後に追加してくれてもかまわないよ。俺たちには永遠って言ってもいいぐらいの時間があるし」
「わかったよ、どこか生きたいところが出来たら言うね。でもそうなると・・・私の行きたい場所の山って情報が少な過ぎてサッパリわからないよね。だからひとまず保留ってことで今回は海にしない?」
「ミーいいねぇ、私も久しぶりに海に行きたいな。海だと美味しい食べ物が多いからね」
「私の行きたいところが目的地でいいんですか?。でも、嬉しいです」
「そうだな俺も久しぶりに魚介系のバーベキューとかしたいし。それなら、まずは首都シーパラに決定しよう!」
「「「おおお。パチパチパチ」」」
3人も拍手をして納得してくれたみたいだな。
シーパラまで行けば美味しいものもたくさん集まってきてそうだし心が躍ってくるな。
「でも、そうなると移動は馬車? 船? しん君はどうする?」
「それについて聞きたいことがあるんだけど、俺の『転移魔法』を使えばみんなで、ここの早乙女邸にいつでも好きな時に帰ってこれてしまう。なんだったら日中は馬車で移動して夜はここに帰ってきて寝る、ってことも可能なんだ」
「物凄く便利なんですけど、そこまでいったら旅の楽しみも半減しちゃいそうですね」
「そうなんだよな・・・クラリーナの言ってる通り便利なんだけど何か違うって俺も思ってる」
「でも、女性にとって旅の大敵は『トイレ』と『風呂』と『着替え』だからね。今までの旅で散々苦労させられたわよ」
「そうねぇ・・・その3つがトラブルの元だったねぇ。風呂は我慢できても、トイレはムリだし。移動の休憩中にトイレに行こうとすると覗きに来た馬鹿が何人もいて、アイリと2人で何人半殺しにしたことやら」
「ああ、女性の旅の辛さはトイレにあるって言っても言い過ぎにならないぐらいにトラブルが多いって、俺がもらった記憶と知識の中にもあるよ。だから俺はキャンピングバスの中にトイレを設置したんだし」
「なるほどですね。私は旅をしてないので知らない情報でしたね。馬車の中にトイレがあるって不思議に思っていたのですが、旅で使うためのトイレだったんですね。なるほど納得です」
「私も不思議に思ってたよ。町を走るゴーレム馬車になんでトイレがあるんだろうなって。でも、アイテムボックスに全部入っているんだからメチャクチャ便利よね。スペースがあればダンジョンでもつかえるし」
ダンジョンでキャンピングバス・・・シュールだな。滑稽の方か?。
じゃあ、明日からはその準備をしようってことでここで寝る。
ベッドでのエッチはなし。
翌日、イーデスハリスの世界に転生してから10日目の朝。
今日は午後から買いだしに行く事にした。
キャンピングバスでの旅で必要なものだけでなく早乙女邸の食の充実のためでもある。
午前中は早乙女邸の地下にあるワインセラーの改造。
巨大なワインセラーがあるが、正直ほとんど必要なし・・・少しは使っているのだがここまでの大きさは必要なかったので、早乙女邸の地下はデッドスペースになっていた。
それで思い出したのが寝室で俺があげた槍を振り回していたミーの姿と、翌朝からの雨を見て庭で槍の練習が出来なくてショボーンとしているミーの姿をあわせて思い出したのだった。
地下練習場でも作りますかね。
まずはワインセラーの改造をしていく。
階段沿いの部屋の1/4の広さもあれば充分なので細長いL字型の部屋に。
片方の壁には棚を並べて反対側の壁には樽が入れれるような棚を奥から移動してきた。
残った棚や魔石は素材にする。
ワインセラーはこれで終わりだな。
温度管理用に棚ごとに温度を変えて設定温度を扉に表示する。
残りのワインセラーの部分だけでは地下練習場にするには狭いので掘り下げて広げていく。
掘り出した土は重力魔法で固めてから壁や天井を補強するのに使用していく。
ワインセラーと地下訓練場では温度設定が違うので、ワインセラーを壁で囲うのも忘れず行う。
地下室の床の深さが10m近く変わるために階段部分を延長。
出入り口がキッチン横にしかなかったのを、ガレージからも出入りできるように階段と扉を設置した。
・・・防空壕みたいになったな・・・防空壕としても使えるけど。
俺のサポートとして作業してくれていたセバスチャンに嫁全員を呼んできてもらう。
階段の一番下の壁の部分をさらに掘り進みシャワールームを作り終わったころにみんなが来た。
「しんちゃん、すごいのつくったねのね。これなら私が槍を振り回したり出来る広さがあるよっと! そりゃ! は!」
そういってミーは俺達から離れて本当に槍を振り回し始めた。
目標代わりにオーガ鋼の鎧を丸太につけて設置した。
「今から簡単な鎧ゴーレムを作るから練習相手にしていいよ」
「それなら私たちも練習したいから何体か作って。しん君以外でのクラリーナを入れたフォーメーションの練習にするから」
「わかりましたアイリさん。ミーさんも一緒にお願いします」
「はいよー!」
三人がシャワールームに行ってフル装備に着換えをしている間に俺はサクサクとゴーレムを作っていく。
鉄は森林モンキーの巣から回収したのは山ほどあるし・・・オーガの角や牙もたくさんある。
オーガ鋼ならユーロンド達と同型でいいな。
森林モンキーの尻尾や魔結晶など、ゴーレム作製に必要なモノをアイテムボックスからだして、スキル魔法でササッと作り上げる。
鎧型のゴーレムを5体にした。
武器は盾職型を1体・槍も1体・ロングソード型1体・杖1体・ハンマー型1体にした。
何の武器を持たせるかで悩んだが、わからないのでこの5体が使用者人口が多そうだと思い選んだ。
魔獣タイプも製造する。
狼型が2体・クマ型2体・オーガ型2体にした。
魔獣も実物と同じ動きをするように設定。
鎧型は俺の知識と経験が入ってるので実力は師匠クラスになってしまった。
弱いゴーレムを強く動かせることはできないが、強いんだったら手加減させて後で反省会でも出来るようにすればいい。
フル装備に着替えてきて出てきた嫁が3人ともにアングリしていた。
みんなに俺が今作ったゴーレムの説明する。
「まずはこのゴーレムたちは全部、オーガ鋼で作ってミスリルコーティングしてある。鎧型は早乙女邸をガードしているユーロンド達とほぼ同タイプ、戦闘技術だけならって限定的なんだけど。君達みんなに技術指導できるだけの技と経験が詰まってるから、俺がいないチーム同士の戦いだと間違いなく君達よりも強く作ってある」
「へ? しんちゃんが作ったのは練習用のダミーじゃないの?」
「ダミーなら動かす必要ないしね。動くんだったら強い相手のほうが練習には最適だと思う。それに鎧ゴーレムの杖型には全種類の初級の攻撃魔法が使えるようにした。今後の戦いで魔法を使ってくる敵もでてくると想定できるし」
「かなり本格的なんですね。もしかして私のためなんですか?」
「うん。今後のチーム『早乙女遊撃隊』はクラリーナが実戦でどこまで魔法を使いこなせるかによってみんなの攻撃力や防御力が変わってくるからね。クラリーナが実戦で戸惑って動けなくなったりしないようにトレーニングしてもらおうと思ってつくった」
「そうですねぇ、私とミーは10年以上も戦ってきたけどクラリーナは戦い始めたところだからね。そうと決まれば練習あるのみ!」
午前中をすべて戦いの練習にすることにした嫁3人。
俺は設置タイプのダミーをいくつか作って、魔獣型ゴーレムと戦いながらゴーレムの動きを調整しいていく。
嫁たち3人は練習の最後に、魔獣型と模擬戦をして今日の訓練は終了。
セバスチャンが作ってくれた昼食を食べながら練習での反省会。
それで出てきた問題点が・・・
『クラリーナが魔法を撃つのに慣れていないので命中力が低過ぎる』
解決策を考えてると、アイリから提案があった。
「こういう時は実戦あるのみよ。今だったらまだ森林モンキーの討伐依頼が残っていると思うから・・・森林モンキーで練習すればいいよ」
「おぉー! 依頼も達成できるしクラリーナのギルドランクも上げられるわね! アイリ、良い考えよ」
「森林モンキー討伐でギルドランク昇格ポイントをDランクに上がれるぐらいに溜めるにはFランクのクラリーナの場合・・・Eランク相当の依頼だと討伐数半分依頼達成回数も半分で済むから5匹×5回でEランクになる。Dランクに上がるには10匹×10回で100匹。Dになるために必要な森林モンキー討伐数は125匹以上か?。先にギルドに行って依頼の確認が必要になるけどな」
俺がギルドで説明されたことをクラリーナように再計算してみた。
「しん君、クラリーナがギルドランクアップに必要なポイントはそうなんだけど、EからDに上がるには昇格試験となる依頼を受けなる必要があるの。私達のときはゾリオン村への荷馬車護衛任務だった。だけど知り合いの話でも昇格試験はみんな護衛任務を受けてる人がほとんどだから、荷馬車の護衛依頼は昇格試験を兼ねてる事がほとんどだし、護衛依頼を選べば昇格試験になると思うよ」
「そうなんですか。まずは森林モンキー125匹討伐して荷馬車の護衛任務ですか・・・私の知らない世界の話ばかりで少し戸惑いますが、私も早乙女家の嫁として皆さんに負けないようにがんばります」
小さくガッツポーズをして気合を入れるクラリーナの姿にみんなでホンワカ気分になる・・・可愛いなぁ。
そうと決まれば午後からは買出しじゃなくて大森林に行って森林モンキー狩りだな。
先に冒険者ギルドに行って森林モンキー討伐依頼がまだあるのか確認しておく必要もあるな。
他に大森林で出来る面白そうな依頼や、素材が集められそうな依頼も捜してみる事となった。
はぁ、結局俺は冒険者なんだからギルドに何度も行かないといけないんだよなぁ。
ちょっと憂鬱になってきたんだけど。
ヨークルの冒険者ギルドでろくなことがなかったからな。