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アイリとクラリーナの防具を新調した。ミーは新しい槍。そしてクラリーナ騒動のラスト。冒険者ギルドもラストにして欲しいっす。

10・9修正しました。

ここイーデスハリスの世界では魔法使いのローブは毛皮のマントに頭に被る部分がついてるポンチョのような服。

魔道士のローブは毛皮製のロングコートに帽子。

国や人によっては逆のパターンもある。

今のクラリーナは俺が森林モンキーの毛皮で適当に作った毛皮のコートを着てるので、おやっさんはクラリーナのことを『魔道士』と言ってるが、昨日までは魔法使いのローブを着ていた。

この魔法使いのローブはもう着たくないとクラリーナが言ってるので、俺が朝に適当に作っただけの『たびびとのふく』の毛皮版だな。


おかみさんのイメージってのがよくわからないので、俺のアイテムボックスに入ってるアイテムを何個か取り出しては見せていく。

シルバードの毛皮を見せた時に、おかみさんに取り上げられた。


「これは下地で決定ね。ほら、もっと見せて!」


興奮するおかみさんがちょっと怖くて、逆らわないでその後も見せていく。


「こ、これは何?」


声がかけられたのはオーガナイトの銀色に輝く角を見せた時だった。


「この形はオーガの角か? 何で銀色なんだ? もしかして亜種か?」


おやっさんが大興奮してた。


「うん。オーガナイトって亜種を狩った時のドロップ品。オーガナイトロードの角もあるよ」


金色のオーガの角の方も取り出した。


「これよ! イメージにピッタリだわ! クラリーナちゃん、ちょっとこっちにいらっしゃい。最高の魔道士ローブを作るわよ!」


おかみさんはそういって銀色の銀大熊の毛皮と金色のオーガの角を持ってクラリーナを工房にドナドナしていった。

おやっさんも興奮して銀のオーガの角を見つめて、俺に聞いてきた。


「早乙女、この銀の角と金の角は両方ともたぶんオーガの亜種の『レアドロップ品』だ。この国で初めて出た品だろう。俺も200年以上も防具を作り続けてきて話には聞いたことがあるが初めて見る代物だ」

「おやっさん、この銀の角を使ってアイリの防具を作るって出来ますか?」

「俺が使って作ってもいいのか? ってオリハルコンも使っていいのか? ありがたい。それなら最高の防具でお返しさせてもらおう」


オリハルコンの5kgほどの塊も一緒に渡す。アイリもおやっさんにドナドナされてしまったので、ヒマになってしまった俺とミーは店の裏庭に移動する。

俺がおやっさんに頼まれてカタナの練習を見せた場所で、サイラスの槍を振るう練習をするミーを眺める。


「ミーかあさん、かっこいいねぇ」


るびのも見とれてた。

俺とるびのは屋根の下の部分にいたが、ミーは雨の中でもかまわずに練習していたのでビチャビチャだった。

練習に満足して笑顔で戻ってきたミーにいつもの魔法3点セットでサッパリしてもらい店に戻ると、おやっさん・アイリ・おかみさん・クラリーナの全員が戻っていた。


「ミネルバ、お前の使っていた槍はチラッとだけ見たが凄かったな。まぁそれで、まずはアイリを見てくれ」


アイリを見てるがあまり替わったようには見えない。


「見た目の変化はないぞ・・・けど中身は全くの別もんだな。今までのアイリの防具はミスリルでコーティングや補強はしてあるが基本的にはオーガ鋼だった。今回のは元のオーガ鋼が違う。鋼にオーガの角を乾燥させた粉末を混ぜて鍛えるとオーガ鋼だけど、今回のはオーガナイトの銀の角で作った。こうすると強度も粘度も硬度も全部がレベルアップした。だから正確には『オーガナイト鋼』って言った方がいいな。これに早乙女からもらったオリハルコンを使って補強とコーティングをしたから、防御力は今までの2倍ぐらいで、重量バランスは変えてないから重さは今までと一緒だな。形も今までの形が使いやすいってアイリが言ってたので同じ形にした。と、こんなところだ」

「次は私の出番だね。クラリーナのコートなんだけど全身は銀大熊の毛皮の毛を除いた皮で作られてる。だから全体の下地の色は茶褐色。その皮のコートの上にベストを着ているように、もう一枚の銀大熊の毛皮を張り合わせ、こっちは毛をのこしたよ。袖の部分も一緒だけど袖はオリハルコンを薄く使っているのでかなりの防御力があるね。皮を張り合わせたつなぎの部分とコートの裏地のコーティングにオーガの金色の角の粉末をふんだんに使わせてもらったよ。これでこのコートはアイリが前に来ていた鎧ぐらいの防御力があるよ。魔道士だったら帽子は必須! だから、帽子は今まで来ていた森林モンキーの毛皮のコートを品質が思ってた以上に良かったからこんな形にしてみたよ」


ヘッドギアでもないし・・・飛行帽だなこれ。

可愛くて似合ってるから別にいいんだけど・・・暑くないのかこれ。

暑けりゃぬぎゃいいか。

これは魔道士には見えないな・・・軍人の冬季山岳部隊か『マタギ』っぽいぞ。

銀の毛皮のベストの部分があるから。もしくは初期のころの空軍パイロット冬仕様って感じだな・・・飛行帽だし。

それでも似合ってて可愛いのが意味わからんな。

さすがはおかみさんだな。

アイリの鎧も裏地の皮の部分に、今回の鎧では銀大熊の皮を使ったみたいで耐久性も上昇してるらしい。

防具の金額を聞いたら、金は要らないから今回使ったアイテムの残りが欲しいって言われたので、喜んで提供させてもらった。

オーガナイトの銀の角も追加でもう1本渡す。

あともう1本残ってるし、おやっさんなら有効に使ってくれるだろう。


それで次の目的地の前に店の隣にあるおやっさんの家で昼ごはんをご馳走になった。

昼ごはん中の会話で、ここ数日の冒険者ギルド・役所・教会・商業ギルドなどの不祥事発覚の連発する騒動でヨークルの住民の不満が爆発寸前らしい。

それで住民代表の複数の人間に真偽官を加えて問題のあった各ギルド・教会・役所の抜き打ち検査が決まった。関係する部署だけでなくあちこちの場所を不定期で行うそうだ。

それでおやっさんもおかみさんも代表者の1人に入っていて、これから何ヶ月も不定期での抜き打ち検査のために、好きなように防具が作れないとストレスがかなり溜まっていた。

だけど今日は大好きな防具を思う存分作らせてもらって、ストレスは発散できたしレアなアイテムまでもらったのでこれから楽しみだと目を輝かせて語る夫婦。

根っからの職人で似たもの夫婦だな。


「とうちゃん、にくがたべたいよ」


ミルクをゴクゴク飲んでるるびのが言ってるが、まだ歯が生えかけぐらいだったので却下した。


「もうちょっと歯が伸びたらなー」

「わかったー」


次はるびのの登録しに冒険者ギルドだ。


最近は毎日のように顔を出してる冒険者ギルド・・・依頼も受けないで登録ばっかりだけどな。

もちろん登録の窓口の女性と仲良くしたいって理由はまったくない。


今日は朝からかなりの量の雨が降ってるんで、冒険者ギルドは職員以外は誰もいなかった。

クラリーナも俺のチーム『早乙女遊撃隊』の所属になるから変更手続きがある。

るびのに付けられる首輪は色が選べたので赤にした。


るびのとクラリーナの登録はすぐに終わり・・・って言ってもるびのの登録は時間がかかった。

受付の女性が『聖獣ですって?』と大声を上げてしまい・・・上司の幹部職員に連行・・・ドナドナされてしまったからだ。

これはかなり長時間になる説教だろう。

たまたま職員以外は誰もいなかったから良かったようなものの、冒険者の個人情報を大声で叫んでるからな。

聖獣をめぐってのトラブルに発展する可能性はかなり高いだろう。

またも信用が下がるところだったな。


謝罪する幹部職員に怒りをぶつけた。

・・・俺はヨークルの冒険者ギルドへの信用・信頼度はもはやこれ以上は下がらない・・・0だからな。

ああ、やっぱり想像通りだなってぐらいにしか感じていない。

ゴーレムや魔獣の登録が義務じゃなかったらここまで来てない。

それにこのギルドで俺の秘密が守られているなんて少しも信じていない。

その覚悟でここに来てる。

個人情報を保護する気があるのになぜ自分達の処罰がヌルいんだ?

説教されて終わりなら、自浄能力なんて全くないに等しい。

ルールを守ろう! 冒険者がルールを破れば厳罰処分。

でも職員がやぶったらゴメンね、説教はしとくから許してね・・・これがお前らのルールか?

俺はオマエラの不祥事の犠牲者でケツ拭いまでさせられた。

なのに、その感謝すべき人物に対してすらこの所業なんだろ?

何でここに来るとムカつく思いばっかりしなきゃならねーんだ?

そろそろ俺もキレてもいいよな?

俺はいつまで我慢させられないといけないんだ?


全職員が無言になって俺の話を聞いていた。

俺は思っていたこと考えていたことの全部をぶつけた。


何年か前にギルドでクーデターがおきて個人情報を守るって事で信頼を取り戻そうとしたんじゃないのか?

その思いを末端のすべての職員まで徹底できないならクーデターまでした思いは霧散するぞ?

お前らギルド職員に足りないものは『教育』だな。

ルールを守って信頼を取り戻そうという思いを伝え続けていく教育が決定的に足りない。


そこまで言ってからギルドを後にする。

正直言ってここのギルドは俺にとって居心地が悪すぎる。

マジでムカつくことばかりの場所だ。


冒険者ギルドを後にしてキャンピングバスでクラリーナの実家にいく。

迎えてくれたのはクラリーナの弟だった。

みんなでぞろぞろ入っていき、とりあえず挨拶をする。

冒険者ギルドでのトラブルで俺の気分も凹んでる。

サッサと終わらせたいってのがホンネだったりする。


「姉ちゃんさぁ、家に帰ってこないのか?」

「帰る? 貴方達には初めて言いますが、もう私は今日すでに結婚いたしました・・・こちらの早乙女真一さんと。だから私は”私を捨てた”この『バスカトルの家名』をもう捨てたの・・・ほら見て」


クラリーナは自分のステータスカードを両親と弟に見せる。クラリーナ・早乙女となってる。


「今日は私の結婚を報告しにきたんじゃないの。宣言するために、このバスカトル家に来た。私を捨てた家でも・・・私をこんな素敵な旦那様に巡り合わせてくれた事にだけは感謝してます。私はもう早乙女の嫁になって凄く幸せです。貴方達も貴方達で幸せになってくださいね。以上、これが私の宣言」


笑顔で言い切った。がんばったなクラリーナ。

俺たちは席を立つ。もうここには何もすることはないから。


「「クラリーナ本当にすまなかった」」

「自己満足のために謝られても困りますので、押し付けの謝罪は一切いりません」


両親の謝罪をはねつけるクラリーナ。


「娘を幸せにしてください。お願いします」

「私はもう幸せです! その言葉はもっと前の不幸な時に聞きたかった! しあわせの絶頂にいる私には不要です。私が愛する旦那様に貴方たちの自己満足を押し付けないでください!!!」


母親の言葉に最後は怒ってクラリーナは絶叫していた。

流石に抱きしめて止めた。

震えてるクラリーナをこれ以上苦しめないためにも早く帰ったほうがいい。


「さぁクラリーナ家に帰ろう。服を持ってこなくてもいいぞ。今から買いに行こう」

「はい。ありがとうございます。でも少しは家に持っていきたい荷物もありますので」


と言って俺の手をグイグイ引っ張る。

うん。この輝くような笑顔が俺は大好きだな。

嫁3人とクラリーナの部屋に行き荷物を何点かアイテムボックスに入れて終わりの簡単引越しだな。

部屋を出ると弟君が廊下にいて俺らを待ってた。


「早乙女さん、姉さんを救ってくれてありがとうございます。姉さんのあんなに輝いてる笑顔は久しぶりに見ました。早乙女さんのおかげで姉さんが笑えるようになりました。本当にありがとうございます」

「おう、わかった。君の感謝の言葉は受け入れるよ。それにもう俺の嫁だからな。嫁の笑顔を守る為にこれから俺もがんばるよ」

「ありがとうございます。それと姉ちゃん。姉ちゃんを守れなくてゴメンな」

「あんたも謝らなくていい。私を守れなくて悔しかった気持ちをもってあんたは騎士団に入り、騎士団で誰かを守ることで悔しかった気持ちを晴らしなさい」


クラリーナが大きな弟の分厚い胸板をポンポンと叩いて諭す。


「わかったよ。ねえちゃん」

「それと、お父さんとお母さんをお願いね。あの2人は苦しくて辛くて、さらに私を犠牲にして逃げてしまったことで壊れてると思う。あんたが守りなさい」

「わかったよ。それとありがとう、ねえちゃん。俺はこのまま聖騎士団で何が出来るのか?俺が聖騎士団でいいのか? 入ってもいいのか? って色々悩んでたけど吹っ切れたよ。ホントにありがとう」


うん。これで弟君も精神的にも強く逞しくなるだろう・・・

って弟君って14歳だよな?

今の俺より年下のはずなのに・・・身長がアイリとほとんどかわらんぞ?

180以上は確実にあるぞ?


外に出たら夕日でヨークルはオレンジ色に輝いていた。さぁ帰ろう家に。その前にクラリーナの生活用品と服をいっぱい買わないとな。

時代劇でよく見るパターン(女の子が借金のカタに売られる。ヒーローが無事救出。女の子がうちに帰って終了)の変化球が書いてみたくてクラリーナを使いました。

見るたびに・・・

「それって問題解決してないよね? 何かあるとその親は何度でも子供を売るよね?」って思ってみてました。

俺も作品で書いた様にこの問題は解決って根本的に出来ないと思っています。だからこんなラストになりました。

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