はじめてのだんじょん②。人を助けるのは難しいって話っす。
7・11修正しました。
9・19修正しました。
オーガ軍団のトドメをさしてまわり、ドロップ品を回収していく。
オーガからは魔石と角と牙と肝臓。オーガナイトは魔結晶!
おおお、捜してたものが意外に早く来た。
質は・・・3個ともほどほどってとこだろう。これならゴーレム門番ぐらいならいける。
オーガナイトのドロップアイテムは『オーガの角』なんだけど色が銀色だった。
アイリもミーもこんなの見たこと無いって言ってる。
それでオーガナイトロードは綺麗な白色の魔結晶を2つもドロップした。
質もクマ以上で俺が見た最高品質だな。これでゴーレム馬車でも作っちゃおうかな。凄いのができそう。
ドロップアイテムはオーガの角で一緒なんだがオリハルコン製みたいに重量感があり、メタリックに金色に輝いてる。
アイリとミーと三人であまりの美しさに見とれてた。
俺達3人を現実に戻したのは声だった。
「ぐぅ・・・ぁぁ」
か細い声だけどありえない場所から聞こえた。
俺たちがここに来た時にオーガに殺されてた死体の方から聞こえた。
アイリもミーも警戒しながら声の方向に向かう。
死体を動かすと死体が重なった隙間に160cmぐらいのローブを着た女の子が血を吐いてかなりヤバイ状態だった。
『エクストラヒール』
躊躇しないで回復魔法をかける。バイドたちに使った時のように、女の子の全身が光の膜に覆われ、それが体内に吸収されるように消えていく。
すると、白を通り越して土気色の顔色をしていた女の子は、みるみるうちに顔の血色が良くなっていく・・・が、しかし目覚めない。
「しんちゃん、大丈夫なの? この女の子、目覚めないよ?」
「ミー慌てるな。エクストラヒールでは体を治すことはできるが、流れ出た血は補えないんだ」
そういってアイテムボックスからハイポーションを取り出して、女の子に口移しで飲ませる。
最初はゆっくりとだったが確実に少ずつ飲んでいく。
全部飲み終わって俺のアイテムボックスからボーリックさんからもらったクッションを下に置き、そこの上に女の子を寝させる。
そして無意識に彼女に『スリープ』をかけて魔法の眠りに強制的に入れる。これで彼女は半日以上は目覚めないだろう。
俺たちはこれからを相談することにする。
「彼女を成り行きで救ってしまったが、これからどうしようか? 彼女の仲間はあそこで全滅してしまっただろう。俺たちの今回の目的は『魔結晶を3個以上集めること』だったから、もうダンジョンにいる意味はなくなった。彼女を地上まで運ぶことは俺たちには簡単だ。が、俺は彼女にエクストラヒールを使って治したと言いたくない。なるべくアイリとミー以外には言いたくない。なぜかは説明できないが『エクストラヒールを使ったことを今は言うな』って俺の本能が告げている」
「もっと軽症でハイポーション2個で何とか治った。と言うしかないわね。しん君もミーもそのつもりで。言葉と情報は合わせておかないとボロが出て状況が悪くなる」
「確かにそうね。目が覚めたら知らない人間が自分の周りにいて仲間達は死体となってる。・・・誰しもが混乱する状況ね。下手すると怨まれる危険もあるわよ。『何でもっと早く助けに来なかったんだ!』ってね」
「俺もそれが怖い。もしくは『死体を生き返らせろ!』とかな。俺の中にある知識と経験が警報をとてもとても大きな音で鳴らしてるんだ。たぶんだけど・・・こうして助けて逆恨みされた経験が山ほどあるのだろう」
「そうね。こういうことは理解できるようになるまでは時間がかかると思う。だから今日は終わりにして帰りましょう。今の彼女には会わないほうが良いと私も思うわ」
アイリもミーも俺の意見に賛同してくれたし、目的も完了したんで今日のダンジョン攻略は終了とする。
死体からステータスカードを抜き取り、死体はアイテムボックスへ全部入れる。転がっていた誰のかわからない装備品など全部だ。大きいライトの魔法を飛ばして周囲を探ると指が転がっていて指輪がはまっていたから、それも回収しておく。
なにも残ってないことを確認し地上に戻る前にアイテムボックスからセバスチャンとマリアに集合場所に戻るように手紙を出す。
クッションのまま俺が彼女を抱きあげて歩いていく。隣の部屋が地上への帰還部屋だ。
彼女を抱き上げたままダンジョンを出て、出口から少し離れたところにある冒険者ギルドの出張所で彼女をおろす。
彼女を寝かせたまま抱き上げて連れてきた理由『彼女にあまり関わりたくない』ってことを話すと、ギルド職員は「え? なんで?」って感じだったが、警備を担当していた老練の警備員は元冒険者だったらしくて、俺の話すことを理解してくれた。
警備員の弟も昔、死んだ冒険者の5歳の子供に刺された事があるらしい。
「お前がもっと早く行けばお父さんは助かったんだ!」
って。死体のステータスカードを拾っただけでこれだ。
「しかし、お前も若いのにそういうトラブルの話をよく知ってるな?」
警備員さんに感心されてしまった・・・
意外と問題になることが多い話だから、ベテランだと関わり合いになりたくなくて逃げて捨てていくんだって。
ギルド職員は気を引き締めた顔をして調書を取っていく。
「個人情報は絶対に漏れないようにする」
少し青い顔をしながらそう言ってくれた。
俺はアイテムボックスに入れた全員の死体と、あの場所で拾った全ての装備品やアイテムなどを出張所に並べた。職員は全部調書に書き込みながら、ギルド所有の『アイテムボックスの箱』に入れていく。
俺も確認しながらサインしていく。それからは状況説明にうつる。
たまたま通りかかったら、叫び声が聞こえたこと。
オーガを不意打ちで全滅させたこと。
瀕死ではなくて奇跡的に重症程度な彼女がいて、ハイポーション2本で治ったこと。
などと、少しウソも交えながら説明していく。
ギルドカードにチームで討伐した魔獣は記載されているので説明は楽だった。
それで絶対に俺たちの正体を明かさないようにお願いした。
逆恨みはされたくないから教えないでくださいと説明してくださいってお願いしておく。
ついでに警備員さんの弟の経験談も説明して欲しいともお願いしておく。
感謝したければ彼女に俺たちを引き合わせた神に祈って感謝してください。貴女が神に認められれば俺たちに合えるでしょうって説明してもらう。
面倒なことは真っ平ゴメンです。
最後に調書にサインして終了。後はギルド職員に任す。
セバスチャンとマリアとの集合場所に歩きながら・・・
『アマテラスにゴッデス。お前らは俺に何をさせたいんだ?』
なんて考えている。
セバスチャンとマリア、2人との待ち合わせ場所に着くとちょうど2人もたどり着いたタイミングだった。
「「まずはご主人様に報告があります」」
と2人から先に報告を受ける。
2人ともがお互い別の森林モンキーの群れを追っていたらしい。
俺が早乙女邸の拠点防御用でゴーレムを作ると言っていたので、森林モンキーのしっぽが必ず必要になるだろうから、それで集めるために群れを狩り巣を殲滅しようとしていた。
流石の2人だな。メチャメチャ気が利く。
両方とも追っていた群れが大きい部類だったらしく、2人で500匹以上も狩っていた。
2人のアイテムボックスに森林モンキーの死体が山ほど入っている。
森林モンキーは地球のカラスみたいに光り物を集める習性があるらしく、かなりの量の魔石や魔結晶、宝石なんかもたくさん巣にあったらしい。それを持ち帰るために巣の中を探索して集めていた。
それでアイテムボックスの量を確認していたときに俺から連絡があり、セバスチャンもマリアも先に報告に来た。
今の時間(夜中の1時すぎ)的にもアイリとミーがかなり疲れてるみたいだったので、この場所で結界を張りここで夜を明かすことにした。
待ち合わせをしていた場所は意外と広くスペースがあり、平らな部分の20㎡ぐらいの場所にミスリルで作った太さ1cm長さ15cmの棒を突き刺して、認識阻害と隠蔽と防御の結界を作った。
セバスチャンとマリアが見つけた巣はお互いはなれたところにあるが、巣を俺に案内するのは1人ずつでいいので見張りはセバスチャンたちに任せれば良いと、アイリとミーには寝ててもらうことにする。
アイリもミーもクマたちの非常識な強さを見てるので安心して寝ることにしたみたいだった。
小腹が空いてるだろうし疲れたときは甘いものがいいだろう、2人に鬼まんじゅうを1種類2個で計4個渡し、前のパーティーで作った軽いお酒も渡しておく。
寝やすいようにベッドまで作った。
早乙女邸の改築で木も布も綿も意外と素材が余ってる。
これは野営じゃないね・・・って、2人がボソッと言っていたが気にしないことにする。
まずはセバスチャンに見張りをしてもらい、マリアが見つけた巣に向かう。
移動時間がもったいないので超スピードで移動する。
数分で巣にたどり着くとそこは洞窟だった。
ガウリスクの本拠の丘の洞窟と同じぐらいの大きさだ。
洞窟に入りまず『洞窟探査』の魔法でMAPに入力。
洞窟の群れは殲滅したはずだが戻ってるヤツラもいるかもしれないと、気配探査と魔力探査で生体反応を調べたが何も出なかった。
ライトの魔法を俺に2個、マリアにも2個使って巣の中のものを根こそぎ頂くことにする。
森林モンキーの巣があまりにも広いのでマリアと手分けして捜すことにするため、マリアのアイテムボックスを調べ今までガウリスクの本拠の丘周辺で集めたアイテムなども、俺のアイテムボックスの中に移動させる。ここの洞窟内に何がどれだけあるか分からないからな。
森林モンキーは夜間に狩りをして、日中は寝てるか巣穴を掘ってる。
穴を掘ってるときに出てきた鉱石や魔石や魔結晶。
狩りをする時に落ちてる貴金属なんかも巣に持ち帰ってくる。
大森林で倒れてる冒険者の武器や防具なんかも拾い集めてくるのだ。
いちいち調べてからアイテムボックスに入れるのが面倒だし、時間がもったいないので全て入れていき検証は後日にする。
1時間半ぐらいかかった。巣が広すぎだな。すぐに結界まで戻る。
アイリとミーは寝ていた。装備を外してパジャマのような服を着ていた。
マリアとセバスチャンを交代させて、次はセバスチャンの見つけた巣へ移動する。
こちらもデカイ巣だ・・・
マリアと同じようにまずはセバスチャンのアイテムボックスの中を俺のアイテムボックス中に移動して整理。洞窟探査でMAP入力。
ライトの魔法を使い手分けして洞窟内を徹底的に調べて根こそぎ奪っていく。
ここの巣は広すぎだな1時間以上かかった。
結界に戻り俺も寝ることにする。
俺も装備を外しパジャマとして使っている服に着替えてアイリとミーの真ん中に潜り込んで眠ることにした。2人の寝顔を交互に眺めて・・・2人とも童顔だな。18歳の肉体に戻ってるみたいだけど、15歳ぐらいにしか見えないな。なんてことを考えながら眠りに付く。
セバスチャン達にはここの周辺の探索を命じた。なんかいろんな植物やらありそうだしな。
朝になって目覚めた。気持ちの良い目覚めだ。
ここの結界は完全防御だ。認識阻害と隠蔽で結界内の全ては見えないし匂いも結界の外には出ない。魔力も完全に隠蔽されてる。
それでなんとなくここは避けようっていう感覚を本能に訴える認識阻害がかかっているので、まっすぐ飛んできたバッタすらこの結界を避けて通っていくのだ。
さすがに口部分は全カットになった。試行錯誤しましたが無理でした。