大森林での狩り開始したっす。
力天使達はデカい。
身長は2メートルぐらいある。
170センチほどの俺が見上げるデカさ。
体型は幅も厚みもあるムキムキなんだけど、130センチほどのちみっ子の月読と170センチしかない俺を前にして、恐怖でガクブルしている5人の力天使。
ワサワサしてる力天使の巨大な羽を月読が展開した漆黒の鎖で縛られて、逃げることも出来ずにプルプルと身を震わせている。
何もできない圧倒的なまでの能力差が全てのプライドをへし折っていたようで、力天使達は正直に全部の情報を提出してきた。
尋問? の結果は・・・
この島には40の力天使がいる。
4人の神では痕跡すら残さずに封印出来るのが、力天使40体までで限界らしい。
さらに封印結界を特定の時期に時限解除可能なのが2体までとの事。
4人の神の中に封印や結界を得意とする神はいなかったみたいで、この程度が限界という神の存在に俺と月読はガッカリしている。
力天使が40人集まると漸く1人の神の眠り解除をするための儀式が行えるらしい。
力天使以上の天使が40人いたなら数時間で解除できるみたいなんだけど、力天使の力では3日ほどの時間が必要になると聞いた。
月読を見たら頷いたから彼らの能力では間違いなくそれぐらい時間が必要なんだろう。
力天使達にゴッデスから聞いた『4人の神は消滅した』という事を説明したら納得の表情となった。
島内に残るはずの4人の神の遺跡はあれど、封印された天使達以外には神の痕跡すら見当たらないので、もしかしたら徒労に終わるのかもと覚悟していたようだ。
【貴方達はどうしますか?】
《全て月読様に従います。》
「で、月読はどうしたい?」
元々天使は神の使いでしかない。
彼らを召喚した4人の神が消滅しているので、目の前にいる神に従うのは当然の流れだな。
【んー、彼らには何の罪はありませんし、天界に帰還してもらいますか。】
月読がバイバイと手を振ると天界に帰っていった。
それからは力天使達に全ての封印場所を聞いていたから、全部封印解除して説明してから天使達を天界に帰還させた。
疲れた訳ではないが2度ほど休憩としてコーヒーを月読と飲んで雑談していたので、全てを終了させたのは夜明け前だった。
【真一お兄ちゃんとのデートは終了ですね。】
「デートではないけど、楽しかったよ月読。じゃあ、またな。」
【ではまた。真一お兄ちゃんとデート出来ましたね。フッフッフ、これでアマテラスに自慢出来ますね・・・】
「まぁ、姉妹なんだから仲良くな。」
最後に不吉そうな事を言ってたけど、全ての作業を終えたので自宅に帰る。
ゴッデスに詳細に纏めたレポートをアイテムボックス内で製作して転送魔法で送った。
仕事が完全終了したので寝る。
おやすみなさい。
3時間程しか寝られなかったけど、ゴッデスに頼まれていた仕事は全て終わっていたので目覚めは爽やかだった。
5月19日の朝は晴天。
転生してから49日。
朝の8時にはすでに少し暑くなっている。
目が覚めたらベッドには俺一人。
顔を洗いスッキリと目覚めると階段を降りてダイニングまで。
今朝の朝食はサクサクのクロワッサンとブラックコーヒー。
スクランブルエッグに少し多めのケチャップを掛けていただく。
嫁達はワシントン達に急かされて散歩に出掛けているようだ。
給仕をしてくれるクロが教えてくれた。
マリアは畑に。
るびのとフォクサは昨夜、俺を待っていたために入りそびれたお風呂に行って朝風呂を楽しんでいるようだ。
セバスチャンはるびの達の世話をしている。
朝食を終えた頃にるびの達がお風呂を終えてリビングにやってきた。
俺は入れ替わりで朝風呂を楽しむとする。
少しの長めの朝風呂を終えると嫁達がちょうど帰宅したところのようだ。
「しん君は今日は何か予定ありますか?」
「とりあえず今のところ急ぎの用事はないよ。何かあった?」
「皆で話してたけど、そろそろしんちゃんと一緒に狩りにでも行きたいなー、ってだけ。カレンさんも一緒にって考えると全然出掛けられてないし。」
「確かにね。カレンとはトレーニングばかりだ。」
「それもコミで皆で話し合ったんだけど・・・しん君のオススメの狩り場ってないかな?」
なるほどね。
うーん、どこが良いんだろう。
・・・そういえばヘルプさんの報告では、大森林鉄道再開計画において大森林沿岸部に結界を維持するための魔石付きのミスリル棒を回収する作業や、鉄道を再開させる為にレールやバラストの石を確認作業をしているのだが、日夜を問わず魔物からの襲撃が増えてきていて冒険者ギルドへ魔物狩りの応援を呼んでいるらしい。
発掘された魔石付きのミスリル棒は、俺が最高評議会にレンタルしている結界魔法封入装置にそのまま入れられる大きさが半分、残りの半分は少し手直しするだけで、大幅に作り替えることなくそのまま結界は封入出来るらしい。
俺が海の聖獣みかみを大森林地底湖から救出して海に解放したので、巨大な存在が消えた大森林内の魔獣が大移動を開始した。
その影響があちこちに出ていて大森林鉄道再開計画にも支障が出始めているとのこと。
魔獣の群れが元々いた場所に戻ろうという動きと、今いる場所とは違う場所に移動しようという魔獣の群れがいる事で、大森林の中のあちこちで魔獣の群れ同士のぶつかり合いが起きていて、その影響が大森林鉄道再開計画にまで出始めた。
魔獣はオークやゴブリンなどの低レベルの冒険者チームでも対応可能なんだけど、とにかく数が多過ぎて困っている現状。
本来なら俺達『早乙女遊撃隊』が動くほどの敵ではないけど、まだ初期段階のスキルを練習するには最適な相手。
アイリは合気道。
ミーは様々な武器の練習相手。
クラリーナは弓はまだまだ練習中なので魔法の練習相手かな。
カレンは・・・新たな武器の練習相手?
などの練習相手には危険度の少ない敵は最良だと思う。
数だけは多いしね。
バッキンガム達はるびの達と大草原の方に遊びにいくんだと。
グリーンウルフ主宰の野生の馬狩りがまだ終わってないので、手伝いにきてほしいとるびのに言われて喜んでいた。
って事で俺達家族は各自もろもろの練習をするので、大草原の馬狩りや大森林の鉄道開発計画の周辺での魔獣狩りを行う。
夫婦は皆で首都シーパラの冒険者ギルドに顔出して情報収集することに。
早乙女工房に皆で転移してキャンピングバスでシーパラ北側にある冒険者ギルドへ。
キャンピングバスの運転は俺がすることに。
街をのんびりとキャンピングバスを走らせると、時々早乙女式の新型ゴーレム馬車を見掛ける。
他のゴーレム馬車とは違い馬車の箱を引く箱型ゴーレムが付いていないので外から見ても一目瞭然。
ユマキ商会がフル回転で生産しているとのことだったけど・・・
まずは首都シーパラで優先して販売していると、ユマキ商会の大番頭ジュンロー・ユマキが熱弁していたけど、こうやって街中で新型ゴーレム馬車を見掛けると、頑張ってるんだなと思う。
まずは公共交通機関の街のり馬車をと言ってたが、もう売り終わったのか明らかに金持ちらしき人が後ろにふんぞり反っている。
予約の権利が高額で売買されているとヘルプさんに教えてもらっていたけど、街を運転して走っているとそういう裏側まで見えてくるな。
ゴーレム馬車の駐車場に到着。
朝のラッシュがまだ残っていたので思っていたよりも少し時間がかかった。
キャンピングバスの警護はセバスチャンとマリアに任せて、皆で冒険者ギルドの中に入っていく。
すでに冒険者達は狩りに出掛けているので、冒険者ギルドの中はギルド職員のみで空いていた。
依頼票が並んでいる場所にぞろぞろと歩いていくと、大森林鉄道復活計画の周辺のゴブリンやオーク、トロールなどの低レベル魔獣の緊急討伐依頼の赤文字で書かれた依頼票が並んでいる。
まずは皆で手分けして情報収集。
カレンが昔からの知り合いのギルド職員を質問攻めして聞き出した情報では・・・やはり魔獣の群れの動きが変則的で、読めなくて苦労を強いられているようだ。
なので最高評議会から緊急依頼が出されていて、ゴブリン、オーク、トロールは通常よりも高額で取り引きされている。
森林モンキーや大型昆虫魔獣はここまで戻ってきていないので、今回の緊急依頼には含まれていないとのこと。
ゴブリンよりもオークやトロールの数が多くて、低レベル冒険者では少し苦労しているみたい。
冒険者ギルドとしては緊急討伐依頼なので、低レベル冒険者を試験的に組ませてチームで討伐をしている。
ギルド職員が同行しているから、安心安全でチームでの立ち回りを学べると、低レベル冒険者が各都市から集まってきてるらしい。
なのでカレンの知り合いのギルド職員からは、他国からきてる冒険者チームが無茶してないか見回って欲しいと頼まれてしまった。
クラリーナの事があるので、うちのチームは断るつもりもないしね。
今夜は夜通し狩りをして少し減らすかな・・・って顔に出てたみたいでアイリから
『しん君、今夜は大森林でキャンプして少し多めに狩りますか?』
と聞かれて無言で頷く。
そうとなれば早速出発。
キャンピングバスに乗り込んで港を目指す。
北の端から南の端までかなりの距離があるので運転をセバスチャンに任せて移動。
キャンピングバスの中で皆で話すのは、それなりの量を狩ってスキルを磨いて伸ばそうという事。
オークやトロールなら当てるのは簡単だけど、急所は小さくピンポイント攻撃となるので、クラリーナの弓の練習相手にはちょうど良いだろうと言うと、クラリーナは嬉しそうに喜んでいる。
以前、クラリーナに渡したニードル魔弓の実戦練習を今日から始めるのだから、嬉しくてたまらないんだろう。
ニッコニコの笑顔でウンウンと頷いている。
早めの昼食を手早くキャンピングバスの中で済ませる。
俺は食べやすいおにぎりにした。
カレンもおにぎり。
アイリとミーはバケットサンドにかぶりついている。
港に到着してマリーナに係留してあるハウスボートで、対岸のウェルヅリステルへ向かう。
ウェルヅリステルから大森林鉄道復活計画の始発駅までキャンピングバスを使う。
こちらのウェルヅリステルはスピード制限のない田園の広がる場所なので、40キロ以上のスピードを出して始発駅へ。
帝国時代から整備された街道はそのままの状態で残っているので、街道の道幅は広くとってあり快適なドライブ。
始発駅の近くにある広場が駐車場になっていて、ウェルヅリステルのマリーナと定期便の馬車が定時に1日何往復もしているようだ。
元々は農民の移動の為に朝と夕方の数便しかなかったが、大森林鉄道復活計画が本格的に工事を始めた事で、ウェルヅリステルとシーパラを繋ぐ連絡船も一緒に増便しているようだ。
ウェルヅリステルのマリーナも拡張工事をしてたので、今回の大森林鉄道復活計画の為に人の移動をしやすくするための工事なんだろう。
工事の人員の仮設住宅はすでに建設を終えている。
結界を上手く使って仮設住宅を守っているな。
大森林鉄道復活計画の総合責任者『ナディーネ・シーズ・ウォーカー』からの手紙にあった「結界の実験も兼ねる」というのはこういう事だったんだな。
実際に目で見た方が早い。
なるほどなと感心しながら俺達はキャンピング馬車ごとウェルヅリステルの先の大森林を目指す。
大森林に入ってから魔法で探ると、確かに魔獣達の民族大移動が起こってるな。
工事場所の先は複数の冒険者チームが連携しているようだ。
彼等にはベテランの冒険者ギルドの幹部職員がサポートしているとの事なので心配ないだろう。
俺達が頼まれたのは別の場所で行動している冒険者チームの動向。
他国から出稼ぎにきている冒険者チームが無理をしたり無茶をして大怪我したり、亡くなったりするとシーパラとしてはあまりよろしくないとのこと。
魔法で探るが変な場所に突出している冒険者チームは1つもないので安心する。
こちらは任せて俺達は別の場所へと向かう。
トロールの大群がいる方向へ街道を曲がり、キャンピングバスを降りる。
後は徒歩でトロールの大群へと向かいながら装備のチェック。
トロール戦という事でアイリは大剣。
ミーとカレンは薙刀。
クラリーナは魔弓。
「200頭ほどのトロールがこの先に展開している。なので集団戦ではなく不正規遭遇戦となる。ありとあらゆる方向からの攻撃を覚悟してくれ。」
「「「「はい。」」」」
「連続した戦いを想定して怪我しない事、スタミナを切らさない事、魔力を切らさない事を常に念頭に置いて戦ってくれ。フォローは俺とセバスチャンとマリアに任せてくれ。」
「「「「はい。」」」」
「「はっ。」」
「よし。いくぞ!」
そこからは1時間近く続く連戦。
時々訪れる間に水を飲んだり、10頭以上の集団が横から突入してきた時は、俺とセバスチャンとマリアが突入部隊のさらに横から突撃したりと、なかなか楽しい戦闘となった事で、嫁達のレベルは上がっている。
連戦のボーナスが加算されているのかもな。
俺とセバスチャンとマリアは完全にサポートに回って、トロールの死体をアイテムボックスに回収したりして、絶えず続く連戦を嫁達に経験させていた。
今は全てを終えて休憩中。
皆がそれぞれの飲みたいドリンクをタンブラーに入れて飲んでいる。
「プハー、良い経験になったわね。しん君サポートありがとう。」
「さすがに目の前の敵と戦っている最中に横から突入されたときは焦ったわね。『ヤベっ』っと思った時はしんちゃん達が横から薙ぎ払ってくれて助かったわね。」
「私はしん様のサポートも良かったのですけど、カレンさんがいつも的確に指示してくれたので助かりました。ありがとうございます。」
「まぁ、こういうのはベテラン冒険者の仕事だからね。クラリーナが弓に集中できるようにするのが私の仕事なのよ、」