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スパイギルドと和解して共闘決定したっす。

「スパイギルドがこちら側についてくれたおかげで情報操作しやすくなる。これは御礼の品を渡さないとな。」

「これは・・・護身刀ですか?」

「護身刀、まぁ、そんな感じだね。もうしばらくしたらマイアートンから販売される昆虫魔獣の護身用のナイフだな。鞘に再生の魔法が仕込んであるから刃が砕けても一瞬で元通りとなる。」


実際に刃を半分にへし折ってから鞘に戻して、すぐに抜くと元通りとなってる刃に驚愕してる。


「ナイフそのものの軽さは昆虫魔獣の甲殻を使用して作られているから鋼とは比べ物にならないほど軽い。重さがないから肌身離さず持ち歩いても苦にならないだろうが、逆に投げナイフには全く向かないナイフとなってる。潜入捜査など、スパイには必要不可欠な武器だろうからいくつか渡すよ。」


5本渡した。


半年もすればマイアートンから販売されるだろうから、それまではなにかと御礼の品として使えそうだ。

昆虫甲殻は高熱には弱いが護身用のナイフとしては理想的なサイズと重さだろう。


周囲にはバレないようにササっと手早く動いている。


俺に接触してきたスパイは手早く受けとると即座に離れていく。


俺に敵対して叩き潰されたスパイギルドヨークル支部だが、俺と敵対する愚を避けて当時ギルドマスターだった(しのび)権蔵(ごんぞう)を拘束したグループが中核となり、ヨークル支部は生まれ変わっていると、ギルド内部を監視していたヘルプさんから報告を受けている。


こっち側になって偽情報を流してこっちの思いどおりになるならありがたいな。

無論、スパイギルドの監視を外すことはないが、俺から出した偽情報に踊らされるクシュベントナー王国との裁判での交渉は有利になるだろう。


歩きながら念輪を使用した連絡でローグ真偽官に今までの経緯を話す。

「まぁ、そういう事で俺の裁判を担当してもらいますね。」

「早乙女、連絡が遅いって。新聞で見てたからいつ連絡がきても大丈夫なように、ドミニアン司祭には既に話は通してあるぞ。だから早乙女の初裁判を俺は最前列で楽しませてもらうわ。」


ローグ真偽官のニヤニヤしてる顔が浮かぶ。

次回はまだ未定だし、もし何かあったら連絡すると伝えて話は終了。


俺は散歩を続ける。

門を抜けて郊外に出るとワシントンやカントやバッキンガム達がやってきた。

一緒に散歩する気満々でセバスチャンにワガママ言って連れてきてもらったな。

ヨークル郊外を散歩するのは気持ちが良い。

田んぼや畑を駆け抜けていく風の心地良さは格別だろう。


カントは優雅に俺の周囲を飛んで回っている。

バッキンガムはハッハッハッと俺に歩調を合わせてのんびり歩いている。

ワシントンは自由気まま。

急に俺に(まと)わりついてきたり、バッキンガムの背中に飛び乗ったりして遊んでる。


隣を歩くセバスチャンとは念輪で会話。

ヘルプさんも交えて今後の対応や集めてきた情報からの予測、後はオマケに畑の作物の成育状況まで話は多岐に渡る。


なかなか話は尽きない。




~~ カレン視点 ~~




朝食を食べ終えると出掛ける準備をする。


これ以上しん殿に迷惑を掛けるわけにはいかない。

怒りで頭が沸騰しそう。

準備を終えた時に気付くと目の前にマリアがいた。

しん殿の作ったメイドゴーレムのクマ。

外皮として銀大熊の毛皮が(おお)っているので銀色に輝くクマのゴーレム。

忍者マスターとして復活しただけでなく、前世から持っていた数々のスキルも復活して、最盛期の力を手に入れた自分を遥かにしのぐ戦闘力を持つゴーレム。


「カレン様、どちらに行かれますのでしょうか?」

「マリア、しん殿にこれ以上の迷惑を掛けるわけには・・・」

「ご主人様自身がカレン様に迷惑を掛けられていると考えてすらいませんのに?」

「それは・・・」


流石に絶句してしまった。

私自身、しん殿にこれ以上迷惑を掛けるわけにはいかないと決意しての行動であるのに、マリアからの言葉で根本から否定されてしまった。


マリアから追い討ちの言葉が続く。


「前もってご主人様からカレン様が暴走しないように、動き出す前に必ず止めるようにと指令を受けております。」

「・・・」

「今現在、カルツ王子を自由にさせているのは計算済みとの事。今後はクシュベントナー王国との裏での交渉次第で、カルツ王子の失脚を狙うのか、クシュベントナー王国の政権交代もしくはクーデターを狙うのか、今後の動きは不明なれどまだまだ波乱が続くからカレン様が動くまでもないとの伝言を受けております。」


うーん、何か私の性格なんかお見通しなようで・・・ちょっと悔しい。

けど、こんなところも前世の旦那様である『義丘(よしおか)日向守(ひゅうがのかみ)宗景(むねかげ)』・・・殿様とそっくりだから、惚れ直してしまうのも無理はないよね。


マリアとしん殿の私自身の性格すら計算された予測に、上手くガス抜きされたようで怒りが消えてしまってた。


「マリア、あなたのおかげよ。怒りは消えたわ。」

「お褒めのお言葉、ありがとうございます。後は身体を動かして発散されてはいかがですか? 奥様方と師匠ゴーレムが地下練習場でお待ちですよ。」

「それは良いわね。では、行ってくるわ。」


マリアが一礼して送り出してくれる。

身体を動かして発散させてもらう。

汗をかいた後に皆で温泉でまったりすれば最高だしね。


私の性格をお見通しだった旦那様に少し嬉しく感じて、ちょっとスキップするかのように足取りも軽く地下練習場へ。




~~~ カレン視点 終了 ~~~




マリアからの念輪連絡でカレンが暴走しかかっていたようだ。

マリアの説得で考え直してくれたようで良かった。

今現在、カレンがかなりムカつくのも無理はない環境となってるしな。

そもそも、カルツ王子がカレンに執着してるのが原因なんだから。

まぁ、俺からすればカルツ王子ごとき大したことないレベルだし、色々と遊ばせてもらっているので何の問題もない。


今は裁判の為に俺とカルツ王子のいざこざを目撃していた冒険者との接触にユーロンド1号が向かっている。

既に前もって話はしてある。

だから冒険者数名が裁判に証人として出席してもらうための下準備。

所在や年齢氏名をはっきりさせてローグ真偽官に管理してもらう。


しかしながら・・・たかが『閃断のエストック』ごときで裁判なんて馬鹿馬鹿しい。

なんならこの程度いくらでも作れますよと、裁判中に目の前で作りたくなってくる。

まぁ、伝説級(レジェンドクラス)の武器をホイホイ作ったらゴッデスに叱られそうだからやめておくけど。


コピー品の閃断のエストックは3本ほど作成済み。

暇潰しの片手間で作れるレベルでしかない。

コピー品とはいえ俺のスキルを使った製作。

元の閃断のエストックよりも攻撃力は上だしな。


・・・裁判中に見せびらかしたろか。


まぁ、ローグ真偽官がバックアップをしてくれると確約をとってる状況で、自分勝手に動けなくなっているんだが。


なるようにしかならんな。


カルツ王子の失脚は確定路線。

本国はどう動くのかは不明なれども、カルツ王子と共に滅びたいなら希望に沿わせるだけ。

今のところ、クシュベントナー王国の動きはない。


散歩を終えて自宅に戻る。

嫁達は地下練習場でトレーニング。

俺は転移魔法で首都シーパラの早乙女工房へ。

新たにDOLLの正式な持ち主が現れたとの情報。


大きな会社の創業者直系の子孫でDOLLを代々引き継いでいたが、修理に出した工房がイーデスハリスの北の大陸『ランドルバンド』にある『プレッツェ・クルカ王国』の元皇太子に工房ごと乗っ取られて奪われたようだ。

工房で働いていた全員は行方不明となっている。


裁判を起こしたが元皇太子の権力をフルに使われて『工房にはDOLLなんて存在しない』と無罪となっている。


無罪が確定した翌日から格安でDOLLを手に入れたが壊れてるので損したと周囲に自慢気に語り、悔しい思いでなんとか取り返せないかと時間だけが過ぎていく毎日だったようだ。


正式な持ち主と認定できるので修理を終えたDOLLを返却。

安全の為に自宅までゴーレム馬車に同乗させたユーロンドに警護させて送り届ける。


無料の修理と半永久的に動けるようにした改造を施したDOLLを返却してもらい泣いて喜ぶ本物の持ち主。


データは全て消してリセットするとマスコミには言ってたけど、本当は持ち主が間違いないかDOLL自身を使って最終確認をするためにリセットしてない。

後は持ち主にリセットするか最後に確認するけど、そのままが良いと持ち帰るのでリセットは『希望者のみ』という形にする。


早乙女工房の内部駐車場から見送って俺の仕事は終わり。


ユーロンドは馬車に同乗するのでメイドゴーレムと一緒に、泣き笑いの表情でDOLLを抱き締める持ち主を見送る。


早乙女工房の執務室の椅子に座ったまま、椅子の背もたれにもたれ掛かるとフワリと後ろに倒れて簡易ベッドのようになる。

足を机の上に乗せる寸前にアイテムボックスから着替えて、半ズボンとTシャツで素足となり、仮眠スタイルになって休憩する。


頭を起こしてアイテムボックスから取り出したタンブラーからアイスコーヒーを一口飲む。


タンブラーは椅子の手すりにあるドリンクホルダーへ。


今日の首都シーパラは天気が良くて暑い。

早乙女工房の敷地内は空調管理されているので、暑いとまでいかないけどポカポカとする陽気の中ではより眠くなる。


スパイギルドからクシュベントナー王国側に渡す情報がこちらの自由にできるので、ヘルプさんと相談して会話の中から渡す情報を考える。


ヘルプさんと相談した結果、まるっきり嘘の情報を流すよりも真実と嘘を適当に混ぜて、受け取ったクシュベントナー王国のカルツ王子が混乱するように仕向ける。

次々と出てくる情報があちこち違っていたら、集めた側の混乱は必至となるのでこちらの思惑通りとなるだろう。


時間になったので、お昼御飯を自宅に帰って皆と食べる。

嫁さん達は昼からは買い物に出掛けるようだ。


俺は昼からはシグチスにある早乙女商会の執務室へ転移。

今日から任侠ギルドが主導するローションマッサージ店を2店舗一気にオープンさせる。

ようやく講習とプレオープンが終わって、反響は上々との事で2店舗を一気にオープンさせてシグチスを席巻するつもりらしい。

サポートしてる講師を引き連れてシグチスに来ていたガスは、『マヅゲーラの街』と『首都シーパラ』と『ドルガーブ』に、立て続けにローションマッサージ店をオープンさせて、大好評を得ているので自信があるみたいだ。


ヨークルへの進出が少し時間が掛かっているのは、犯罪組織から物件を奪い取っていないヨークルでは、他の街と違って物件探しからやっているからだし、そもそもヨークルに夜の街は範囲が狭く進出しにくいとの事。


任侠ギルドの本拠地があり、夜の街で発展しているマヅゲーラがヨークルの近くにあるので、夜の街への需要は全てマヅゲーラで済ませてるので、ヨークルでは夜の店は発展しにくい環境でもある。


俺からすれば『好きなようにして』って感じなんだけど。


任侠ギルド幹部のガスは俺がボスとなってから順調に拡大していく任侠ギルドの成長が嬉しいと思っていると嬉しそうに語っていた。


俺としては任侠ギルドの拡大うんぬんよりも、働いている女性と男性の笑顔が増えているという徒影からの報告の方が嬉しいけどね。

食事は大好評どころか既にプロの料理人が訪れて、なんとか料理の味を盗み出そうとしてくれてるらしいし。

調味料が俺のアイテムボックスにしか存在しない料理が多いので、似たような味は作り出せても味のコクまでたどり着けないと頭を抱える料理人。


昆布出汁とか鰹出汁とか俺以外で説明出来ないしな。


たとえ聞かれても教えないけど。


ローションマッサージ店で働きたいという人は列をなして待機している状態が続いている。

数回ある講習を済ませて実技テストを合格した後でないと客にはつけないと徹底している。


マヅゲーラではローションマッサージ店の類似店舗も出始めているとの情報。

ローションもなくローション技と料理のレベルが低くて、逆にこっちに客や働く女性が流れてきている状態らしいが。

スパイとして送り込まれて来ている女性も、ローションマッサージ店の実入りの多さに驚き、元の店に帰らなくなりトラブルへと発展。

元の組織から突撃してきた用心棒も任侠ギルドの徒影に実力で倒された後、任侠ギルド幹部からの勧誘であっさり元の組織を裏切り、結果……スパイも用心棒も任侠ギルドのメンバーへと加入する事件が多発しているようだ。


この流れは以前からまったく変わらないんだとヘルプさんからの報告あり。


まぁ、元の組織から見て雲泥の差を感じるレベルで待遇に違いがありすぎるからな。

徒影とのトレーニング付きというのも、かなりアピールポイントが高いと聞いてる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりの更新ありがとうございます
[良い点] 更新おつです。 今からザマァ展開が楽しみです!
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