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カジノでギャンブル対決っす。

イカサマできる余地は全部潰して実力と運だけの勝負に持ち込んでやる。

俺の目を超えるイカサマは不可能。


殺気を消してフロアーマネージャーを呼んで金をチップに交換する。

俺は1000万G、三千景とおやっさんも1000万ずつの交換。

勝負を始めるが・・・ディーラーがビビりまくって勝負にならない。

まぁ、これも予想通り。


短時間で俺達3人はすでに3倍以上にチップを増やしてる。


そこにようやく皇太子が取り巻き連中をゾロゾロ引き連れてVIPルームに入ってきた。

真っ直ぐに俺達に向かって歩いてくる。

部屋の中がピリついた空気に変わる。


皇太子と言えども40を超えたオッサン。


長年続く王族に相応しくイケメンのナイスミドルなんだが、DOLLマニアなんだよなって思うと笑いそうになってしまいグッとこらえて顔を引き締める。


プレッツェ・クルカ王国は色々探ってみたが・・・現在の王様が長期安定政権を30年以上継続中でまだ50代なので、まだまだ先は長く続きそう。

戦争も内政もかなり上手く人使いも上手。

プレッツェ・クルカ王は国民に善政をしいてると評判の人物。

安定と善政を求めている人達が世界中から集まってくる。

優秀な人物も数多く集まってくる。

有能な人物はすぐに徴用され・・・更により良い国へと発展していってる。


そんな有能な王様が唯一失敗してると国民から言われてるのが子供の教育・・・つまりコイツの処遇だ。

コイツ自身は戦争経験はぼちぼち。

戦争関連の戦術などのスキルが必要な現場指揮官や、軍師などスキルが必要な大戦略などのスキルもステータスも持っていない。

戦いには全く向いていないらしいが、内政がそれなりに上手いとの評判がある。

王族直轄領の経営はコイツに全てを一任されている。それが結構安定していて、他国に隣接していて民族的に複雑で難しい領地も無難に治めていて、領地経営の方面は有能に間違いないとの評価らしいのだか・・・プラスの部分を完全に打ち消してしまうほどマイナスが大きな男と言われ、行きすぎたマニアの末路はどうなるのかと国民に噂されている。


まだ自分が若いうちに2人の王子を産ませたらすぐに正室と側室に育児を任せると遠ざけてしまった。

自分は皇太子の義務は終わったとばかりに世界中からDOLLを収集しまくってる。

金や権力を行使して無理やり集めてきたDOLLも多く、違法な裏取引によって集められてきたDOLLも幾つかあるようだな。

何度か訴えられて国内でも問題になっているし、今現在他国の裁判で争っている最中のDOLLも2体あるとの事。

国民からは・・・正室と側室を遠ざけて子育てを無理矢理押し付け・・・今は寝室にはDOLLしか引き込んでない『正真正銘の変人』と噂されている。


情報複製魔法で確認したが噂は全部本当の話だった。


マニアが権力を持ってるとこんなパターンになりやすいってのを、そのまま具現化したヤツみたいだな。

ウォーカー家の長男『フィルマン・ウォーカー』のようにゴーレム研究の対象としてゴーレムを徹底的に調べている訳でもなく、DOLLを色々と収集してる理由は・・・性的対象として収集している・・・DOLL愛の性癖があるらしい。

個人の趣味にケチをつけるつもりもない・・・が、俺にお願いしてくるなら多少は考慮してやるけど、俺の身内にイカサマバクチ仕掛けて脅迫して言う事を聞かせようなんざ・・・万死に値するわな。


他国の王族からすでに正規のルート・・・冒険者ギルドや商業ギルドに俺に打診があると聞いている。

職人ギルドは放置してるのでどうなってるのか知らない。


正規の段階を踏んで接触してくる相手には、暇な時にでも直してあげようかなって考えていた矢先の出来事だから、見せしめの為にもこのバカ皇太子には痛い目をみせないと。


真っ直ぐ俺に向かってきた馬鹿は、スーパー上から目線でド直球に聞いてきた。


「おい、そこのお前。DOLLが修理できるみたいだな。俺様の大切な大切なDOLLを直す名誉を与えてやる。本来なら俺様の大切なDOLLコレクションを見るだけで大金を支払わせて触れるなんてもっての(ほか)だが、今回は特別に金を取らないで修理させてやるから光栄に思うように。」


ほんの一瞬だけ後ろを振り返り馬鹿をチラッと見たが、イケメンのオッサンの言い分なんて何の興味もないんでガン無視する事にした。


「よっしゃ。これで12連勝だし・・・ディーラーさんそろそろ交代しないとヤバくない?」

「おし! 俺も12連勝だ。良いねぇ、今夜は良いねぇ。」

「・・・」


ガン無視してやったら皇太子はガン無視が初体験なのか戸惑ってるようだけど額に血管が浮き出てる。

おこやな。

皇太子の後ろの親衛隊やらが物凄い殺気を放ってぶちギレ寸前。

何人かはすでに剣の柄を握って抜刀寸前になってる。

ディーラーは俺の後ろを気にしすぎて真っ青な顔をして卒倒しそうだ。

三千景は無言で後ろをチラチラ気にしてるが勝負に影響はない。

さすがの元シーズの最高評議会の現役議員。

顔にはでないようなトレーニング、心の平成を保つ訓練は幼少期から仕込まれているんだろうな。


俺とおやっさんにはこの程度の殺気はそよ風レベルなんで気にもならない。

『フフっ、こっちを見てるな。』程度だな。

俺はチートの塊なんでビビる要素がない。

コイツら全員がどれだけの攻撃を1日中繰り返したところで俺に傷一つ付けられない。

おやっさんは・・・青春時代にエルフとの戦争で過酷な戦場の最前線で過ごしていたので、(くぐ)ってきた修羅場の数の桁が違うしな。


ディーラーが両手を小さくあげるとヘルプのサインだったのかフロアーマネージャーが走ってやってきた。


「お客様方、大変申し訳ないのですがこちらのテーブルは限界(リミット)がきてしまいました。テーブルを移動していただくか、ディーラーの変更をお願いいたします。」

「じゃあ、移動するのも面倒くさいんでディーラーの変更で。」

「ありがとうございます。」


ディーラーは青い顔をして顔をひきつらせたまま、そそくさと従業員出入口から出ていった。

それからしばらく待つが代わりのディーラーが中々出てこない。

仕方がないので雑談しながら待っていると、フロアーマネージャーがまた来て告げる。


「誠に申し訳ないのですが、こちらのテーブルでディーラーをできる者がいないので・・・本日はこれまでとなってしまいました。」

「なんじゃそりゃ。」


そりゃそうだわな。

俺の後ろでズーーーっと皇太子の後ろにいる取り巻き連中がグチャグチャ(わめ)いてるテーブルでディーラーなんかしたくないわな。

そもそもここのカジノは皇太子の店だし。

皇太子連中は俺とイカサマを使って直接勝負して勝って命令をきかせたいだけだしな。


まっ、これも手順だろうしな。


本当に仕方なさそうに皇太子の方を振り向いて話しかけた。


「で、先程から大騒ぎしてますが、何か御用で?」

「「「「「ギャー」」」」」

「後ろの雑魚が五月蝿いんで帰りますね。」

「「「「「ギャー」」」」」

「お前ら五月蝿い! 貴様もちょっと待て」

「・・・」


皇太子が怒鳴ったらやっと静かになった。

とりあえずは会話ができそうだな。


「で、何か御用で?」

「俺の店で散々儲けたんだ。俺との直接対決の勝負は断れないよな?」

「勝負? 何ですかそれ。俺にメリットがないなら断りますけど。」

「断って生きて帰れると思っているのか?」

「はい。ここの全員を皆殺しにする事ぐらい、今すぐここから一歩も動く事も一切なく簡単にできますけど・・・やって良いですか?」


『早乙女の名を持って召喚する。出でよ! 悪魔伯爵ファウスト兄妹(ツインズ)


「「早乙女様、御呼びだし頂きまして誠にありがとうございます。今回は如何いたしましょうか?」」


「「「「「なっ!」」」」」


俺が召喚した最上級悪魔におやっさん達も含めて全員が驚愕して絶句している。

流石に前回呼び出してからそこまで日は経過していないので、ムキムキは保ったままの悪魔兄妹。

発散するオーラの禍々(まがまが)しさは最上級悪魔の悪魔伯爵クラスともなると、隠そうとしていても周囲にバラまかれる気配はハンパない。

・・・声が揃っているのは相変わらずだな。


静かになったのを良いことに悪魔兄妹に話しかける。

すると皇太子の取り巻き達が大慌てしだした。


「よ! いきなり呼び出して悪いね。」

「「いえいえ、いつでもどこでもご自由にどうぞ。」」

「何かコイツらが用があるみたいなんだけど・・・」

「「今日もご馳走をいただけるので?」」


俺が悪魔兄妹の後ろにいる皇太子達を指差すと、ニンマリと悪魔の残忍な笑みを浮かべながら後ろを振り返る悪魔兄妹。


「「「「「いえいえ、用はありません。」」」」」


即座に手を横に振って否定した皇太子軍団。

皇太子も一緒に手を横にブンブンと振ってる。

みんなでピッタリと揃っているのは、何かの振り付けみたいだな。


「なんだよ・・・せっかく召喚したのに。遠慮すんなよ。」

「「「「「いえいえいえ、是非とも遠慮させて下さい。」」」」」


まだ揃ってるな。

練習してんのか?

悪魔兄妹のマネしてんのか?


悪魔兄妹は俺の顔色を見てまたもやニンマリして、後ろの皇太子軍団を睨み付けながら『チッ』っと舌打ちしてる。

俺がイタズラ心満載の笑顔を浮かべているので、察してくれたようだな。


「ほら悪魔兄妹も『遠慮すんな』って言ってんぞ?」

「「はい。是非とも遠慮なさらずに。ご安心して死んでください。今日は特別に長引かせませんので。」」


首をブンブン振りながら・・・

『ごめんなさい』

『許してください』

『勘弁してください』

などと謝ってくるのでまぁ、今のところは勘弁してやるか。


「チッ、残念ながらご馳走は次回に持ち越しだな。わざわざスマンな。ファウスト兄妹。またな。」

「チッ、早乙女様のお願いなら誠に残念ながら仕方がありません。チッ、お前ら命拾いしやがったな。では、早乙女様、またすぐにでもよろしくお願いいたします。」


後ろの連中に見えやすい角度でファウスト兄妹は非常に残念そうな顔をにじませてから、俺の顔を見てニヤリとすると悪魔界に帰還した。

俺の意図に気づいたおやっさんと三千景はプークスクスと肩を震わせて大笑いするのを我慢してる。

皇太子の取り巻き連中は明らかにホッとした顔で胸を撫で下ろしている。


「で、どうする? この店どころかこの街を消滅させるのにそんなに時間は要らんけど。」

「・・・それは・・・」

「俺が納得できるメリットを示してくれ。了承できる条件ならポーカー勝負は受けてやるよ。メリットがないのならすぐ帰るけど。」

「ちょっと、待ってくれ。」


皇太子と取り巻き連中が相談している。


「そういえば、始めに言っておかないといけないが、訳のわからん『剣』やら『アイテム』なんかは要らんからな。俺がDOLLを修理できるのを聞いてるんだろ? 俺はもっと高性能な剣やアイテムが作れるから、そんなのもらってもメリットにはならないからな?」

「わかりました。」


どうせイカサマして勝つ気マンマンなんだから、とんでもない高額の金銭の条件を出してほしいわ。

後で知らんぷりできないように真偽官を入れてプレッツェ・クルカ王国の本国に直接請求してやる。

そして皇太子の資格を取り消させるのが俺の目的だしな。

色々と調べた限りでは・・・

次男はそこまで優秀ではない。

だけど持って生まれた才能は

『人たらし』

人を引き付ける魅力に溢れていて、有能な人物ほど助けたくなるという面白い才能の持ち主みたい。

側近が優秀であれば国家運営に支障はきたさないだろうとヘルプさんの予想がある。

なのでコイツに皇太子の資格を取り上げるような失態を犯させて、次男を皇太子にさせればプレッツェ・クルカ王国民から喜ばれるだろう。


何度か俺と皇太子側の意見交換を経て取り決められたのが・・・

『ルールは普通のポーカー』

『イカサマは発見次第、相手の要求をさらに追加で一つ飲む』

『チップは1億。なくなり次第終了』


勝者の要求。

俺側は・・・

皇太子の旗と笏をへし折る。

しかもへし折った事を全世界に公表する事。


・・・これを飲ませるのに苦労したが、相手の要求を引き上げさせて飲ませた。


皇太子側は・・・

皇太子の所有するDOLL14体を全て新品同様に完全修復。

更に追加されたのが

『新作DOLLを1体製作』

これで皇太子がニンマリしだして俺の条件を飲んだ。


マニアの考えることはよくわからんわ。

これで良いのかよって少し引いた。


お互いのステータスカードから1億を支払いチップをカジノに用意させた。

ディーラー席にはカジノの人間が立ち、トランプカードの箱の蓋を開けようとしている手を俺が右手で掴む。


「おいおい、箱の蓋にある封印の切れてるトランプカードは使うなよ。俺をなめるなよ。常識だろ?」

「あっ、すみません。」


皇太子がチッと舌打ちしてる。

バレバレだし。

これはカジノ側の失態となるので勝利者要求は変わらない。

俺は上半身の服を脱いで真っ白のTシャツに着替える

ディーラーにも真っ白のTシャツを差し出すと無言で着替えはじめる。。

皇太子はきらびやかでゴテゴテした王族の服を着てるので俺と同じ真っ白のTシャツを差し出す。


「さぁ、勝負を始める前にイカサマできないように着替えていただきましょうか?」

「なんだと? 俺様を愚弄するのか? これは皇太子を象徴する服だから人前では脱がない!」

「では、肘より上までまくって下さい。イヤなら勝負は無し・・・いや、面倒なんで肘から先を切り落としても良いですよ? 痛みをあまり感じないように悪魔をまた召喚しますか?」


俺が悪魔をまたもや呼び出すと言うと慌てて袖をまくるが、カードをへし折る音がパキパキと微かに聞こえてくる。

しかもカードを2枚、左右の袖からそれぞれ地面に落とした。

これで取り決めたルールにより俺の要求が引き上げられる事になった。

追加要求は・・・

『全てのDOLLの所有権が勝者に渡る』

にさせた。

これならすんなり飲める要求だろうし。


長々と時間はかかったがようやく勝負が始まる。


最初にお互いの目の前に5枚のカードが、裏向きで交互に配られる。

俺は自分のカードは一切触らないし見てもいない。

皇太子とディーラーを注視している。

俺は一枚も交換しない。

皇太子は1枚交換。

皇太子の前にカードを配るディーラーの手首を掴んだ。

カードを取ろうとしてる皇太子の手首ももう1つの手で掴む。


「はい。アウト。2枚配るなよ。あんたもバレないように受け取れるなんてと思うなよ。」


この程度のイカサマはディーラーがカードを切ってる時にわかってたわ。

俺の手札がツーペア。

1枚交換させてフルハウスにさせる。

だけど1枚交換した皇太子はロイヤルストレートフラッシュになるように細工してた。

俺が交換しないのでブタになってしまう皇太子側。

焦って2枚渡そうとして、それすらも見破られるのが悲しい現実。


握ってるディーラーの手首を握りつぶして手首の関節ごと骨を砕く。

粗相が許されるのは1回まで。

2回目は反省の色なしってことで痛い目にあわせる。


「いい加減、イカサマはどんな手を使っても100%バレてるって考えてほしいもんだわ。じゃないとこの店のディーラーがいなくなるぞ?」


俺の一切の躊躇もない骨砕きに焦る皇太子側と店側。


泣き叫ぶディーラーが運び出されて、次にやって来たのは既に真っ白のTシャツに着替えてる女性ディーラーだった。

下着を付けていないようで・・・乳首が透けて見えるがTシャツが薄いので仕方がない。

かなりの爆乳だから・・・お色気作戦に作戦変更したんだろう。


おやっさんと三千景が『おぉぅ!』と変な声をあげてる。

奥さんにばらすぞ?

って表情でニヤリと笑うと少し慌てる2人。


俺は家に帰れば自由にできる4種類のおっぱいがあるからお色気作戦に興味もない。

特に今はトランプカードの手元に集中してるので、爆乳はむしろ邪魔な存在だな。

おっぱいで手元を隠しかけたので注意した。


「カードをさわっている手元は隠すなよ。次に隠したらイカサマしてると判断してディーラー交代させる前に胸を引きちぎるからな。」

「わ、わかりました。申し訳ございません。」


俺が胸に何の興味も示さないので、店側のフロアーマネージャーが不自然に中指で鼻を擦り、皇太子に何かのサインを出した。

ヘルプさんの考察では・・・

『イカサマは不可能だと店側が判断したサイン』

を事前に取り決められていて、このサインがそうみたい。


ここに来てやっと普通のポーカー勝負ができるかな。

長々と悪あがきしやがって。

一回もまともにポーカーしてねぇし。

それからは俺の一方的な勝利が続く。

俺のポーカーのやり方に皇太子側はイカサマだと断定しきれない。

イカサマは手口を見破れないと、ただの言いがかりになるからな。

何しろ俺は一切カードに触れずに裏側を向けられ並べられた5枚のカードを・・・

『これと、これを交換。』

って指差すだけだしな。

俺がカードに一切触らないので、最後にカードをめくるのはディーラー。


もちろんイカサマなんて一切してない。

俺は天運の持つ直感と運のみで勝負してる。

皇太子のカードと自分のカードを見比べて直感で交換するべきカードを指差すだけ。

それでも全勝できるのは天運の力と俺の運のステータスが非常識なレベルだからだ。

皇太子も生まれた家の力で運のステータスは一般人を遥かに凌駕してるだろうけど、俺とのレベル差は比べる事がかわいそうになる。

皇太子側、店側、おやっさんと三千景、ここにいる全員が見えないスピードで細工する事もできるが・・・やっぱ必要ないわ。

予想通り運と天運のみで勝てる。


皇太子の動きで何かのイカサマを仕掛けようと何度かしたが、俺が声をかけると何もできなくなり普通のポーカー勝負が最後まで続いた結果・・・全勝で終わりを迎えた。


皇太子が動く前にまたもや悪魔兄妹を目の前に召喚すると、頭を抱えてうずくまり膝をついた状態で頭をかきむしる。

後ろの取り巻き連中は焦って何をすれば良いのかよくわからず右往左往してる。


悪魔兄妹はその姿を見て恍惚の表情を浮かべている。


そういや、絶頂にいる人間が没落して転落していく様をみるのが、悪魔にとっての至福の喜びだと言ってたな。

人間のこの姿を悪魔達が求めているんだろう。


俺からすれば・・・

『嬉しそうで何より』

ってぐらいだな。


約束通り取り巻き連中のアイテムボックスから差し出される皇太子の旗と笏。

両方を地面に叩きつける。

ここにきての最後の悪あがきにムカついた。

差し出した皇太子親衛隊の1番デカい男が俺を見下ろしてる。

コイツの顔を掴むと横に立っている悪魔兄妹の前に放り投げた。

『殺さずに、いたぶるだけな?』

恍惚の表情のまま腰に差してるナイフを取り出すと、俺が差し出した獲物に襲いかかるファウスト兄妹。

部屋に響き渡る絶叫。


「いい加減にしろよ? 鑑定すれば本物かどうかなんて一目瞭然なんだぞ?」


慌てる取り巻き連中がうずくまる皇太子を無視して、本物の皇太子の旗と笏を俺に引き渡した。


「おいおい、予備の方も出せよ。それとDOLLも全部出せよな。」


震える手で予備の真新しい旗と笏を差し出した。

DOLLは目の前に14体並べられる。

皇太子が動こうとしたが親衛隊達が引き留める。

声も出せないように口を布で覆ってる。

悪魔兄妹は俺がストップさせると御礼を言ってまたもや悪魔界に帰還した。

痛め付けられていた親衛隊は俺が魔法で治療してやると失神。

やっと静かになった。


俺の後ろに座ってるおやっさんに合図を出すと、おやっさんは走って店の外で待機させていたマスコミ記者を複数人連れてきた。


マスコミ記者の前で引き裂かれる旗と、へし折られる笏。


14体のDOLLは正規の持ち主に無料修理してから返却するが、DOLLのデータは全て消去した状態になる。

その上でプレッツェ・クルカ王国所有のDOLLはデータを消去したのちシーパラ連合国の博物館にて展示して、見にきた人と会話もできるようにすると告げる。


記者の質問をいくつか答えていきなりの記者会見は終了。

DOLLの修理依頼は職人ギルドにて受け付けるが、期限を設けた依頼は全部断ると言っておいた。

俺の気分で修理は受け付けるが、修理代金は要相談。


マスコミ記者達は記事にするために急いで会社に帰っていった。


・・・くそっ。結局DOLL修理かよ・・・やりたくねぇ。

DOLL修理用のリペアーゴーレムを作るしかないかな。


ここのカジノは今日をもって倒産する事になった。

オーナーの皇太子が失脚確定したからな。

権力も金も取り上げられて経営する余裕はないだろう。


そして俺がこのドルガーブのカジノで何度も呼び出して使役させてた、最上級悪魔の悪魔伯爵ファウスト兄妹の噂もあって・・・俺の異名が1つの増えた。


悪魔の王すらを統べるものとして

『悪魔皇帝』


なんだそりゃ。

じゃあ天使を召喚しまくったらどうなるんだ?

と、後で噂を聞いたときにヘルプさんに愚痴った疑問。

今はまだ知らない。



ギャンブルでDOLLの全てを奪われ皇太子としての旗と笏を失い権力を喪失して・・・精神が崩壊して壊れた皇太子。

自業自得過ぎてかわいそうとも思わない。


カジノにもう用がないので帰る。


予定通り早乙女商会ドルガーブ支店のモフモフマッサージ天国におやっさんと三千景を連れていく。

嫁全員はアロマローションオイルを使った全身マッサージの最中。

俺達男三人衆もオイルを使わない全身マッサージを受ける。

マッサージが終わると嫁達は待っててくれてたみたい。

全員で早乙女商会ドルガーブ支店の執務室で酒を飲みながら雑談する。

俺はおやっさんからの質問

『ポーカーでどうやって勝ったのかよく分からない。説明してくれ』

の答え

『仕掛けは何もない。直感と運のみで全勝できる』


納得できないおやっさんにポーカーで10回勝負して全勝すると全員が驚愕して言葉を失ってしまった。

俺は自作のチャーシューをつまみながら、バーボンをなめるようにロックで飲んでいる。

チェーサーはキンキンに冷やした水。


復帰したのはおやっさんが1番早かった。

おやっさんの切り替えの速さは素晴らしい。


「とんでもない男だな。何か仕掛けがあると思って安心して見てたのに、仕掛けがないと聞いてビビったわ。しかも全然勝てなくて更にビックリが追加されたわ。」

「まぁ、こういう事なんで俺相手にはギャンブルを挑まない事だな。」

「しないしない。絶対にしない。どうやっても何度やっても全く勝てる気がしないからな。」


自分の中で考えと気持ちの整理がついたんだろう。

みんなも思い思いに復活してくる。


明日の予定もないので深夜まで皆でワイワイと楽しく騒ぎながら美味しい酒を飲む。

三千景やラシェルも楽しんでくれてるようだ。

大声で歌っても早乙女商会の結界で外には漏れないと聞いてから、おやっさんは大声で歌ったりしてる。

ちょっと音痴だ・・・爆笑してしまった。

嫁達も歌ったり踊ったり楽しんでくれてる。

俺は酔えないからな。

楽しいけどちょっと悔しい気持ちもある。

ライトの魔法で色々な光を浮かべ点滅させたりして、盛り上がり更に酒が進む。


おやっさん達が酔いつぶれる前にグラナドホテルの部屋まで送る。

二組の夫婦ともそれぞれの部屋に送るが、もう少し飲んでから寝るそうだ。


俺は嫁の元に帰ると全員で自宅の寝室に転移して・・・乱痴気騒ぎになってしまった。

俺は嫁達と合体を楽しむ。

酒が入ってるので嫁達の方があまり持たない。

合体に満足するとすぐに寝てしまう。

全員が寝てしまうとガウンを着させて布団をかける。

俺も下着をはいてガウンをはおり居間に降りていく。


居間でクロにいれてもらった珈琲をブラックで飲みながら、全てのゴーレムと回線をつなげて報告会とついでのゴーレムのアップデート。


皇太子連中を追跡中の忍からの報告では、精神が壊れた皇太子をカジノのオーナールームに連れてきたが、本国にどういう報告を説明すれば良いのか全員で悩んで、答えの出ない議論を繰り返しているらしい。

ヘルプさんの予想では『全員で逃亡する』だろうとの事。

バラバラになって逃げれば他の人の行方を知らないので、捕まっても情報を引き出せないから残りの人がより逃げられる。

そんな考えになるだろうとの事。

家族を守る為に出頭しても、皇太子が引き起こした問題の責任を取らされて、見せしめで家族もろとも殺されると思っているようだ。


ヘルプさんの考察でも・・・例えプレッツェ・クルカ王国に皇太子を連れて帰ってから、自ら出頭しても裁判になり、相当時間がかかるけど家族もろとも処刑されて殺されるという結論は変わらない。


もしかすると情状酌量されて家族は助けられるかもしれないが、自分が処刑される未来は変わらない。

助けられた家族も身ぐるみ剥がされるように全財産を没収され、他国に奴隷として売却される。


むしろ今なら本国に何も報告せずに帰国して、皇太子からの連絡が消えて本国が動き出す前までの期限があるが、それまでなら家族を連れて逃げる事も可能だろう。


いくら問題の多い皇太子と言えど責任問題は話が違ってくる。

責任は誰かが取らされてしまうからな。

親衛隊ならこんなギャンブルは諌めて止めろと言うだろう。

ワガママ勝手な王族を止められる訳がないと知りつつ責任は取らされてしまう末路だな。


今まで皇太子のおかげで散々デカい面してきたんだから逃げられる訳がない。

問題があって権力消失した時にグループ全員許されるはずがない。

一蓮托生で責任をとらされる。

どうやっても逃げられるはずがないな。


シーパラ連合国とプレッツェ・クルカ王国の関係から考えると・・・

プレッツェ・クルカ王国から指名手配されたらシーパラ連合国に逃げ込んでいても、逮捕されればプレッツェ・クルカ王国に引き渡される。


シーパラ連合国で徹底的に追われる訳ではないが、町に入るとき魔水晶の審査で必ず引っかかって逮捕されてしまう。

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