みんなでドルガーブに行く新展開発動! っす
歩いて倉庫に入っていくと、るびのとフォクサだけではなくて、るびのの眷属が来ていた。
グリーンウルフのガウリスクと森林タイガーのニャービスの2頭が中型犬のサイズで、るびののクッションの上で4頭で寛いでいた。
「お! ガウリスクとニャービスか・・・いらっしゃい。ニャービスは昨日ありがとうな。」
「いえ、ボスのお役に立ててなによりです。」
「御礼の昆虫魔獣は定期的にニャービスの巣に送るからいつでも言ってくれな。」
「ありがとうございます。配下が喜びます。」
「いやいや、御礼は俺が言わなきゃいけない言葉だよ。ホントに助かったよ。ありがとうな。ガウリスクもいらっしゃい。やっと家に来れたな。」
「はい。ニャービスは昨日の事があって決定していたんで、後の1つの枠をみんなでくじ引きで決めました。勝てて良かったです。」
「良かったな。そういえばるびの・・・今から父ちゃん達は昼飯の時間だけど、るびの達はどうする?」
「リビングでみんなで食べてもいいかな?」
「良いよ。じゃあ今からいきますか。」
俺、るびの、フォクサ、ガウリスク、ニャービス、カント、バッキンガム、ワシントンとぞろぞろと倉庫を出て自宅に入って行く。
リビングに行くとソファーやテーブルをアイテムボックスに片付けてスペースを作り巨大な絨毯を敷く。
丸くならんだ眷属達の目の前に鉄製のデカい皿を置いていってそれぞれの好きなモノを並べた。
彼らも別に待機する必要もないのでガツガツと食べ初める。
俺も横のダイニングに行って嫁達と食事。
今日の昼食はカレン自慢の特製のソースを使ったソースカツ丼。
ハチミツ、砂糖、味醂を使った結構甘めのソースで、下に敷いてあるキャベツは塩水に浸けて味付けしてあり、甘めのソースと甘いブタ肉と塩味のキャベツが意外と合うようだな。
コレは美味しい。
俺もガツガツと食べる。
箸が止まらないわ。
時折マスタードをつけて味の変化も楽しむ。
「北の草原の温泉はどうだった?」
「凄く良かったですよ。しん様も来られたら良かったんですけど。」
「流石にやり残した事がいくつもあると、温泉は楽しめないかな。マイアートンの被害状況も自分の目で直接見たかったし。」
「そりゃそうよね・・・しんちゃんの1番好きな温泉ってどういうのなの?」
「俺は色んな温泉が好きなんで、1番好きとなると難しいな。今回の北の草原温泉巡りでるびのから聞いて興味がわいたのは『湯の花がある温泉』だな。硫黄の匂いのする湯の花のある温泉って暫く入ってなかったから入ってみたい。トロトロの肌触りがする温泉も好きだし、塩分濃度の高い温泉なんかも良いんだよな・・・やっぱり決められないや。」
「うん、わかる。しん君が悩むのもわかる。私は別に『温泉じゃなくても少し大きめのお風呂で暖まる事ができれば良いよ』なんて結婚する前は思ってたけど、結婚して自宅に温泉があって・・・ほぼ毎日温泉に入る生活に変化してみると、しん君やるびのみたいに『温泉大好き』ってなっちゃっいましたね」
「私はイーデスハリスに来てからたまにしか入れなかったんで、しん殿に嫁いで毎日入れるようになると、前世の日本での生活を思い出して・・・なんだか懐かしい気分になりますね。」
「カレンは日本で毎日温泉に入ってたの?」
「はい。温泉に海の幸に森の恵み・・・財政も豊かな国でしたので側室なのにかなり豊かな生活をさせていただきました。時代も良かったのでしょうが、日本に来てからの生活が楽しすぎて、生まれ故郷での生活はうっすらとしか思い出せません。キツくて辛かった事は記憶してるのですが、どう辛かったのかが思い出せなくなってしまいました。」
「へぇー、でもカレンさんが小さい時の辛かった思い出が消えて楽しい思い出が残ったのなら良い事じゃん。」
「ミネルバが言うように良い事です。ですがまぁ、私のなかでは100年ほど前の話ですから記憶が曖昧なのは仕方がない事なんです。しかしそれでもなお、うっすらと残ってる辛さは・・・幼少期なればこそですね。さぁ、しんみりとした話はそれまでにして・・・私が好きな温泉はトロトロのお湯で日本でよく言われてる『美人の湯』ですね。温泉から出た後にお肌がスベスベになって、体の中からポカポカが続く感覚が大好きなんです。」
「カレンさんと私も一緒です。体の内側がポカポカするのがいつまでも続いていく感覚はトロトロの温泉ならではな感じがします。全身がスベスベになるのはいつまでも肌触りを確かめるように撫でたくなっちゃいますし。」
「クラリーナも? 俺も一緒だ。男だから肌触りなんて普段気にもしてないのに、トロトロの温泉に入った後だけは肌触りが気持ち良いんだよな。あと、フォクサの故郷にあった塩分濃度の高い温泉の肌がピリピリする感覚も捨てがたいんだよな。」
「良いよねぇー、お肌が引き締まるようなピリピリ感で、温泉から出た後も気持ち良いんだよねぇ。後、ピリピリ感で思い出したんだけど・・・前にしんちゃんが言ってたシュワシュワする『たんさんせん』ってのも北の草原にあったよ。」
「『炭酸泉』ってマジか! 俺は銭湯で人工的に作られた炭酸泉しか経験ないから、ガチの炭酸泉は1番入ってみたいよ。」
「ご主人様、炭酸泉の位置は座標登録してありますので、仰って頂ければいつでも行くことが可能です。」
「ナイス、マリア。よろしく頼む。」
「でも、しん君。あの温泉って全身が小さな泡で包まれて少しぬるいのに肌の敏感な部分がピリピリして熱く感じますよね?」
「そうなんだよ。股間とか脇とか膝の裏側とか肌の薄い場所がピリピリするんだよな。しかも、その敏感な部分が熱くなって体か暖まるような不思議な感覚が炭酸泉の特徴かも。確か・・・お湯の温度が高いと炭酸が水に残らないから、日本ではかなり珍しい種類の温泉だったはず。」
「へぇー、色々あんだねぇ~。」
などと温泉談義が尽きない中、食事を終えてそのままティータイム。
るびの達も食事を終えて雑談に加わってくるので、話題はピョンピョン飛びまくるが楽しい幸せな時間。
リビングの絨毯をモフモフ仕様に変更して、みんなで寝そべって雑談を楽しむ。
楽しい時間は1時間以上も続いていた。
しかし終わりを告げたのは、おやっさんにつけていた忍からの緊急連絡があったとヘルプさんから聞いたからだ。
「早乙女様・・・おやっさんこと『ガルパシア・ウルス』様が嵌められそうになってるとのことです」
「何があったんだ?」
「今日は朝の便で『ガルパシア・ウルス』『ガルパシア・ピニリー』夫妻と『檀ノ浦三千景』『檀ノ浦ラシェル』の二組の夫婦がラシェル様の快気祝いを兼ねてドルガーブのグラナドホテルへ旅行に行かれたのですが、ウルス様が三千景様と一緒に夜に行かれるカジノがヤバいみたいです。」
「ヤバい? どういう事なんだ?」
「先ほどお二人に接触してきたコーディネーターが、新しく出来たカジノにお二人の予約を受けていたのです。」
「ふむふむ。」
「そのコーディネーターってのは他国の王族関係者でありまして他の忍が探ったところ・・・どうも二人を連れ込んでイカサマで嵌めようとしてるみたいですね。」
「おやっさんを嵌めてどうすんだ? あの人は職人としての腕とシールダーのスキルマスターとしての腕は確かだけど、政治的にも金銭的にも一般人の部類だぞ?」
「三千景様とウルス様をセットで嵌めようと考えているようですね。」
「三千景はわかるんだよ。元シーズで最高評議会の現役議員なんだから。ある程度の金も権力も持ってるだろうし・・・おやっさんがワケわからん。」
「ストーキングさせた忍からの情報では、三千景はあわよくばって話らしいのですが『完全修復されたDOLLを奪い取る』みたいです。ウルス様は早乙女様に対する保険的な意味合いらしくて、早乙女様に強制的に自分達の持つ複数のDOLLの修復をさせたいと考えているようです。」
「俺ガラミかよ・・・よし、全部叩き潰す。俺の身内に手を出そうとしたヤツラは全滅するって伝説の一部にしてやんよ。」
嫁達の会話が切れたタイミングを見計らって、おやっさんと檀ノ浦三千景を嵌めようとしてるヤツラを叩き潰しにドルガーブに行くと俺が言ったら、嫁達も全員一致で一緒にドルガーブに行きたいとの事だった。
るびの、フォクサ、ガウリスク、ニャービスの4頭は家でゴロゴロしていたいとの事で後はクロに任せる。
カント、バッキンガム、ワシントンの3頭はついてくるとの事なので、とりあえずシーパラ駅でチケットを買うまで家で待機させる。
個室が取れないと従魔獣を連れて列車には乗られないから、待っててもらわないとな。
だからセバスチャンとマリアも待機組。
俺は嫁4人を連れて早乙女工房に転移した。
早乙女工房からはキャンピングバスに乗りシーパラ駅へ。
早乙女工房の外では、またまたバカが騒いでキャンピングバスに襲いかかってくるが、ユーロンドに簡単にボコボコにされて強制排除。
今日は警備隊員がおにぎりを買い出しに来ていたので、おにぎりをもらった後に連れて帰るからそのまま放置しておいていい・・・治療も警備隊本部に戻る途中で教会に寄るからそのままでいいって話。
邪魔なのでユーロンド達がゴーレム馬車駐車場の縁に激痛に蠢くイモムシを並べて放置した。
キャンピングバスでシーパラ駅に到着する。
全員がキャンピングバスから降りてチケット売り場に行く。
キャンピングバスは自動運転で早乙女工房に直帰した。
チケット売り場で話を聞いてみると午後の便で最高級個室にキャンセルがあって空いていたので全員分のチケットを購入。
ラッキーだ。
午後便の出発は夕方4時なので俺達夫婦はそのまま、シーパラ駅と隣接していて以前も来ている北の食料品市場に買い出しに行く。
食料品市場にくると多くの商人達が俺達夫婦を取り囲み、後をついてくるので凄い団体移動になってしまうが、逆に不審者は近寄ることさえできなくなるので安全面から考えると楽になる。
買い物途中でキャンピングバスが連れてきてくれたセバスチャン、マリア、カント、バッキンガム、ワシントンと合流。
時間まで全員で買い物を楽しんだ。
海鮮物と酒を種類も量もたくさん買いまくる。
肉類は有り余るほどアイテムボックスに入ってるので、買う必要どころか肉業者並みのストックがあるから、できることなら売りたいぐらいだ。
特にワイバーンの肉がヤバい。
るびのが何回か眷属を率いた狩りで大量に肉が余っているし、料理スキルでドラゴン繊維とドラゴンエキスを抽出した後は、鍋でグツグツと長時間煮込んだ後の鳥のささ身のようになってしまい・・・旨味がまるっきりないので消費できなくてメチャメチャ大量に余ってる。
ドラゴンエキスを残してドラゴン繊維のみを抽出できないかやってみたが、どうしてもドラゴンエキスも分離してしまうので諦めた。
売り出すにしても何の肉か表記できないし。
旨味がないからダイエットフードにしかならんわ。
何回かソースで誤魔化そうとか、ハンバーグの肉に混ぜたりと、色々挑戦したがどうにもならなかった。
ハンバーグに混ぜると味が吸いとられたかのようにボケてしまうので無理だった。
今や・・・絶賛放置中の肉になってる。
今日発見出来たのは小豆やきな粉などの和のスイーツがシーパラにも定着しつつある事だった。
ヨークルにアンコを伝えて、きな粉はシーパラ連合国警備隊総長の『アイザック・ゲッペンスキー』に伝えたんだけど、シーパラでもチョコレートと共にアンコは広まってきているようだな。
色んな店で色々と商品が出てきてる。
市場の隅から隅まで回った訳ではないが、あちこちでたい焼きや饅頭などのアンコ商品がある。
栗を入れたりアンコもつぶ餡やこし餡など俺が伝えた商品だけでなく、ドライフルーツを入れたりして特色を出そうと各店が色んな挑戦をしてる。
チョコレートもナッツ系をチョコレートでくるんだ商品が出始めていて、クルミやアーモンドなど・・・人気があるのは日本と一緒だろう。
俺が見てない店で変なのがあるかもしれない。
どこの店も盛況なので新たな店が次々出店してるようだな。
列車の出発時間まであちこち見学して回った。
時間がきて歩いてホームに行くと巨大な列車が鎮座してる。
一階に物資を積んで客室は2階という2階建ての列車の巨大さは何度見ても慣れない。
ホームにある改札口の駅員に全員分の最高級個室乗車券プレートを渡し、全員分のルームキーをもらって全員で列車に乗り込む。
俺、アイリ、ミネルバ、クラリーナ、カレン、セバスチャン、マリア、カント、バッキンガム、ワシントン・・・総勢だと5人と2体と2頭と1羽になる。
バッキンガムは中型犬サイズ、ワシントンはメインクーンのサイズ、カントがトンビのサイズと小さくなってくれてるので、普通に入り口から入って行ける。
シーパラからドルガーブまでの午後便では前回と逆方向になるので夕日は列車の先頭側となるので、最高級個室の最後尾のテラスからは反対側なので見えにくい。
列車に乗り込んでからおやっさんに念話で連絡する。
「あ、おやっさん? 早乙女だけど。」
「おう、早乙女どうした?」
「おやっさんって今、ドルガーブにいるんだよね?」
「おう、朝便で出発したから昼過ぎの2時半に到着したぞ? どうかしたか?」
「ゴーレムから連絡があって、おやっさんと三千景さんを新しいカジノに連れていくという契約をしたコーディネーターが詐欺師らしい。イカサマ使っておやっさんと三千景さんを嵌めようとしてるみたいなんだよ。」
「マジか!」
「大マジだよ。それで詐欺師のバックにいるのがさっき調査が終わって判明したんだけど・・・イーデスハリスの北の大陸『ランドルバンド』にある『プレッツェ・クルカ王国』って知ってる?」
「いや、初めて聞いたな。」
「そこの皇太子が黒幕みたいだ。どうもDOLLマニアらしくて・・・ラシェルさんのDOLLを奪い取る為に三千景さんを嵌めて、おやっさんを嵌めるのは俺が皇太子の持つ複数のDOLLを修復させるための保険らしい。」
「なんでまた俺なんかをって思ったけどそういう事か。じゃコーディネーターに断りの連絡を入れれば良いのか?」
「そいつは不味い。断ったりしたら手っ取り早くラシェルさんとおかみさんを誘拐しにくるだろう。だから俺が同行するよ。で、逆に嵌めてやる。」
「早乙女がドルガーブに来るのか?」
「つーか、もうすでに午後便の列車に乗って出発した後だよ。」
「うお! マジか・・・もしかしたら俺達ってかなりヤバイ状況なのか?」
「まっ、大騒ぎするまでの事はない・・・そこそこってレベルだな。護衛のゴーレムをおやっさん達には陰ながらサポートさせてるんで、ケガの心配はないよ。ただ、例えイカサマといえども契約しちゃった場合は後が面倒くさくなるから俺が来ただけ。ついでに俺も嫁達を連れてきたから家族サービスの一環だし。セバスチャンとマリアも連れてきたから嫁は嫁同士で遊ばせて・・・旦那は旦那達で気兼ねなく遊ぶこともできるよ。」
「それは面白そうだな。」
「だから逆に聞きたいのはコーディネーターに会うのは何時の予定?」
「晩御飯をみんなで食べて一服した後に予約したから夜の10時に待ち合わせしてる。」
「じゃあ奥さん達はその間なにする予定なの?」
「エステの予約をしてた。全身フルコースでって声を聞いたよ。」
「おやっさん達はいつまでドルガーブに滞在予定?」
「2泊3日でホテルを取ってある。」
「安全面を考えてエステの予約はキャンセルして欲しい。その代わりと言ってはなんだけど・・・ドルガーブにあるモフモフマッサージ天国で全身フルコースを今夜と明日の夜の2日間連続で、嫁達全員一緒に受けられるようにしておくから。ローションアロマオイルを使ったスペシャルなフルコースにするって言ってくれて良いよ。」
「わかった。2人に伝えておく。」
「後、ホテルのロビーにはコーディネーターがずっと待機していておやっさん達が逃げないように、どこか行くならストーキングするために監視してるはずだから慌てないで。で、今から下のコーディネーターに会って『友人も来たいと言ってるので1名追加してくれ』って言っといてもらえるかな?」
「友人って誰だ? ってならないのか?」
「おやっさん達を逃さない為に断るという選択は絶対できないから・・・そこは心配する必要もないよ。変に断ったり躊躇してたりしたらコーディネーターを変えるって言われるかもと考えるはずだから。ドルガーブの高級ホテルのロビーには何人かのコーディネーターはいつでもいるし。」
「確かに・・・そりゃそうだな。」
「それで晩御飯はどこに予約した?」
「ホテル内のレストランの個室をとった。」
「それなら大丈夫だな。ホテルの外に出ないならヤツラは追ってこない。俺達がカジノに行った後に嫁達がモフモフマッサージ天国に移動すれば追っ手は人数少ないだろうし、そこはマリアとセバスチャンでなんとでもなるし。」
「だな。」
「じゃあおやっさん、ホテルの売店で10時チョイ前に会おう。三千景さんや嫁達には早めに説明してエステのキャンセルをしておいてくれ。」
「おう、今から説明してくる。」
念話を切った。
俺は声に出しておやっさんと話していたし、嫁達はグループ念話で話を聞いてたから説明する必要もない。
バッキンガム達は夜には巣に帰るしドルガーブにすらいないのでアクビをしながら話は半分ぐらいしか聞いてなかったようだ。
退屈そうなんで早めの晩御飯をあげる。
俺達は少し軽めの酒とツマミを頼んで食前酒がわりだな。
ドルガーブのモフモフマッサージ天国に連絡して嫁達全員6名分の予約。
ドルガーブは個室を使う全身コースはあまり人気がなくてだいたい空いてるが、その代わり肉体労働者や事務仕事の人達が、クイックマッサージをするために休憩時間を作ってやってくるので、大部屋の方はほとんど埋まってる状況が深夜遅くまで長時間続く。
回転率が異常な、かなり効率性の高い店舗となってると聞いている。
客からの要望のほとんどが大部屋を拡張して欲しいとのことなんで、俺がドルガーブに到着してから改造しないといけなくなってる。
3階が事務所のみなので広げて個室を作る。
2階は全部大部屋にしてクイックマッサージ用のソファーをいっぱいにして隙間なく埋める。
マッサージゴーレム達や客が移動するための通路はあるけど。
すぐにできる改装なんで瞬時に終わる。
おやっさんとおかみさんから念話連絡があり三千景、ラシェルに全て話して了承を得たようだ。
おかみさんからは先ほどエステのキャンセルを済ませてると教えてもらった。
とりあえずは晩御飯だな。
前回の反省をいかして普通に会話を楽しみながら、そんなにマナーにこだわらないで食事も楽しんだ。
というよりも今回はメインが魚料理指定。
今回は和食のコース料理だったから、刺身の盛り合わせと蒸した蟹だった・・・ナイフやフォークのマナーは要らないわな。
蟹は他人の目を気にしないで良いので素手で食べてたし。
食後はまた売店でチーズと酒を購入。
個室に戻ると酒を飲みながらツマミを食べて、モフモフなワシントン達と遊んでたら、あっという間にドルガーブに到着した。
列車を降りてシーパラ駅を出た後はモフモフマッサージ天国を改装して、嫁達には事務所で寛いでいてもらう。
待ち合わせしてる時間まで嫁達と雑談しながら、バッキンガム達をそれぞれの巣に転送魔法で送る。
時間が近づいてきたので俺はグラナドホテルの売店に直行。
今日は売店にミルクルはいないようだ。
待ち合わせしてるおやっさんと三千景に会う。
「やぁ、おやっさんお待たせ。」
「おう早乙女、わざわざ来てもらってすまんな。」
「大丈夫。俺も楽しむためにやって来たんだから。」
「早乙女君、何が何だかよく分からない事になってしまってるみたいですな。」
「まぁ、三千景さん達もわざわざドルガーブまで休暇に来たんですから・・・これも1つのイベントって事で楽しみましょう。」
2人を促してロビーで待つコーディネーターの元に行く。
俺の顔を見て一瞬だけ『うお!』って興奮した顔になるが、目標の対象者がわざわざ自分達の獲物になりにやってきたと想像したんだろう・・・ニヤリとしてから挨拶してきた。
「檀ノ浦様とガルパシア様、お待ちしておりました。それでこちらの方がご友人様でよろしかったでしょうか?」
俺の顔を見て一瞬で素性もわかったくせに白々しく聞いてきやがった。
おやっさんは『うわっ、マジかこいつ!』って顔をしかめてしまったが、俺は100%営業スマイルで答えてやる。
「初めまして、早乙女真一です。今日はガルパシアさんからギャンブルで遊ぼうという誘いに乗らせていただきました。よろしくお願いします。」
「こちらこそお願いします。何かご希望のギャンブルはありますか?」
「カード類でもポーカーぐらいしかルールがよくわからないので、見てみないとなんとも言えませんけど、訳がわからないルールのカードゲームで勝っても負けても面白くないと思うから、ルールの分かるポーカーしか選択肢はないと考えてます。しかもカジノの特殊なポーカーは知らないんで、5枚ずつの普通のポーカーでお願いします。」
「わかりました。では早乙女様はポーカーテーブルにご案内いたします。」
ポーカーに罠を張ってるんだな。
嬉しそうな邪悪な顔を一瞬だけ見せた。
分かりやすいなコイツ。
まぁ、三千景が全く見えてないほどの一瞬なので、一般人相手には無双できるだろうけど。
俺とおやっさんには無理だわ。
おやっさんは冒険者ギルドの登録は結婚以前のカレンと同じように休眠中だが・・・Sクラスだ。
おやっさんの故郷はイーデスハリス中央大陸にあるドワーフ地下王国で、幾多の対エルフ戦争に出て活躍してきた今も生き残る何人かの英雄の一人だ。
戦争でいくつも勲章をもらい最後は貴族の末席『騎士爵』をもぎ取ってる。
冒険者としての活動は戦争でできていないし、騎士になった後は戦場の最前線に出ることはなくなり、その後は鍛冶職人として修行に入ったために冒険者活動を休眠してしまった。
なので冒険者ランクSはクラスに留まってしまっているが、こと戦闘能力に関しては平均的なSクラスを遥かに凌駕してる・・・戦場で鍛えぬかれた戦闘のスペシャリスト。
200年を超える長年の鍛冶の仕事で遠距離の視力が落ちてしまった為に、昨夜の俺のスパークリングが半分ぐらい見られなかったとぼやいているが、10m以内の近距離では表情の変化を見逃すはずもない。
だからコーディネーターの顔を見ながら『マジかよコイツ』って表情がもろわかりになってる。
おやっさんの表情を見てコーディネーターが少しキョドってしまってるし。
おやっさんは逆にポーカーフェイスを勉強したほうが良いわと、コーディネーターに見られないように苦笑してしまう。
「早乙女はポーカーにするのか? じゃあ俺も今日はポーカーをしよう。みっちゃんもポーカーにしようよ。」
「プッ・・・ゴホン。じゃあ3人でポーカーで勝負しますかな。」
「ププっ、ゴホン。俺と一緒にポーカーすればカジノが潰れるほどの大損害を与えることができるよ。」
「じゃあ、決まりだな。」
打ち合わせ通りの台詞とはいえ、おやっさんのあまりの棒読みに三千景と2人で笑うのを我慢させられてるわ。
コーディネーターも了承したので、これで俺の見てないところで2人が大損することもない。
おやっさんの演技力は最低だが、とりあえずは計画通りなんで大丈夫だな。
コーディネーターがホテルの外に待機させていた、ゴーレム馬車に3人を乗せてから自分も乗り込んでカジノへと出発。
意外と離れていたようで20分以上かかって移動。
新興住宅地の区域内にあるようで、カジノは新築で建てられてまもないピカピカの建物だった。
ライトの魔法でさらにピカピカさせてるのでキラキラしてる。
一緒に中に入ろうとしてる人達の目はギラギラしてるし、カジノから出てきた人達は歯ぎしりしそうなほど悔しそうな顔ですれ違った。
カジノから出てきてこんな顔をしてるのは途中まで儲かっていたのに最後に負けたんだろう。
というよりは、ギャンブルで絶対勝てない人だな。
負けてなくなるまで、自分は勝ち続けられるとなぜか盲信してて、負けて持ち金が全てなくなるまで途中でやめられない。
そんな決まったパターンを何度も懲りずに繰り返し続ける人。
コーディネーターの後をついて建物に入ると地下の特別室に通される。
それにしても無茶苦茶胡散臭いコーディネーターだな。
人には名乗らせておいて自分の名前は一切名乗らず、聞かれる前に話題を強引にでも変える。
俺には見えてるから意味ないんだけどな。
地下の特別室のドアを開けて中へと促すコーディネーターに話しかける。
「案内してくれてありがとう。」
「さぁ、中へどうぞ。」
「とりあえず君の役目はここまでだな、『稲庭政人』さん。さぁ、行きましょう。」
呆然と立ち尽くすコーディネーターの肩を叩いて特別室に入ると、ドアの横で動けなくなってるコイツを前に押し出して自分でドアを閉める。
鑑識魔法と知識複製魔法とでコイツが思い出せないことまでヘルプさんに送ってあり、すでに情報整理が終わってるのでコイツの役目は終了してる。
先導はもう要らないだろう。
立ち止まってる三千景とおやっさんとコーディネーターを連れて俺が先頭で歩いていく。
特別室のカードゲームテーブルを幾つか越えて、更に奥にあるVIPルームのドアをノックもせずに勝手に開けて入室。
トランプカードに筆でなにかのインクで記入しようとしていたので奪い取りカードをまとめて引きちぎる。
箱から出してあってテーブルに並べられていた全てのカードをバチンバチンと次々に引きちぎりながら質問する。
俺のパワーを目の当たりにして顔をひきつらせながら返事をするVIPルームのディーラー達。
「イカサマしてたヤツラの排除って許されてるんだよね?」
「は、はい。イカサマは当店では認められておりません。発見次第摘まみ出されます。」
「じゃあ、全員上着を脱いで上半身は裸になり、この真っ白のTシャツ一枚になってもらえませんか?」
「え?」
「イヤだっていうやつは退室して下さいね。退室しないなら実力行使でフルボッコで追い出しますんで。」
2名のディーラーは俺の話を聞いて上着を全部脱いで俺が差し出したTシャツを着る。
残りのディーラーは俺が話をしながら周囲に振り撒く殺気にビビって素直に退室していった。
袖に仕込んだイカサマカードが俺にバレたら殺されるとでも思ったのか、ギクシャクしたロボットダンスのような動きで出て行く。
顔を真っ青にさせて退室するディーラーに、何事かとVIPルームに飛び込もうとしていた強面のボディーガード達は俺の振り撒く殺気の恐ろしさを目の当たりにして、VIPルームの入り口から部屋の中に入ることができずに立ち尽くしている。
俺の後ろにはコーディネーターの稲庭が真っ青になってブルブル震えている。
準備は万端に・・・だな。




