マイアートンに派遣されたっす。
ヒッポグリフのリーダーの名前は『キュオスティ』。
自分の話を俺とグリルランがしていると感じて、今まではグリルランの後ろに控えていたが前に出て挨拶してきた。
「ボス初めまして、ヒッポグリフのリーダーをしているキュオスティです」
「あぁ、今グリルランから聞いたよ。よろしくな。」
「それで挨拶ついでに私にも念輪を頂きたいのですが・・・」
「あぁ、みんなから聞いてたんだな。オッケー、わかった」
他の眷属の魔獣から念輪の存在を聞いていたんだろう。
説明する必要もなくキュオスティの首に念輪を装備させてあげると即座に念話で挨拶をしてきた。
嬉しそうに頭を俺に擦り付けて来たので、ついでに頭を撫でてあげた。
撫でながらいつもの3点セット魔法でキュオスティの全身をフワフワにする。
グリルランが少し羨ましそうな顔をしたのでついでにグリルランも3点セット魔法で全身を綺麗にフワフワにしてから撫でる。
カントはグリルランの子供達と遊んでる真っ最中。
カントが俺の前に戻ってきたのはグリルランの子供達が疲れて眠ってからだった。
それまでキュオスティとグリルランと3人で雑談していた。
キュオスティはグリルランの紹介でるびのに引き合わせてもらい、るびのの眷属になったようでステータスが相当に高くて、その他のヒッポグリフとは倍以上の開きがある。
帰ってきたカントにグリルランが話しかける。
「カント君、うちの子供達と遊んでくれてありがとう。」
「いえいえ、僕も楽しく遊ばせていただきました。」
「ではボス・・・カント君も戻って来ましたし、今からボスとカント君を龍王森林地帯に案内しますよ。」
俺が立ち上がるとキュオスティがしゃがんで俺に念話で乗ってほしいと言ってきた。
俺はキュオスティの背の上にまたがるとキュオスティが立ち上がって地面を蹴り悠然と空中に飛び上がる。
カントもるびのの眷属となって、スピードアップした今は悠々とついてくる。
龍王山脈の中腹にあるグリフォンの巣から滑空して龍王森林地帯に向かう。
今夜は三日月。
そこまで明るいわけではないが、月のない星明かりだけの夜ではないのでほんのり明るい。
眼下に広がる様々な茶色の龍王山脈の岩肌をうっすらと月明かりが照らすその先に、一面に緑色に広がる龍王森林地帯に向けて滑空していく。
キュオスティに話を聞くと、龍王森林地帯は猿魔獣とゴリラ魔獣とヒヒ魔獣などと、猿系統の種類の魔獣が多い場所のようだ。
頭も良く理性的な性格で気持ちも穏やかな魔獣が多く、問題解決は話し合いによって意見の擦り合わせを行い解消している。
問題解決に長い時間をかけるの苦にしない種族が多いので、怨恨など争いの元になるような付き合いもないとの事。
さらに天敵となるような肉食魔獣がほとんどいない環境。
餌も果物類とか栗などのドングリ系統、またキノコなどの菌類や野菜系統も一年を通して豊富にあり、餌の取り合いもなく住み分けができていている。
そんな平和な場所にヒッポグリフが群れで入ってきたが、ヒッポグリフとも争っていない。
むしろ大鹿魔獣や猪魔手酔、シプラコーンなどの雑食系の大型草食魔獣が、平和な龍王森林地帯にちょいちょい入り込んできて元々住んでいた猿系統魔獣の巣を襲い、子供を拐っていく被害が多くて困っていたが、ヒッポグリフは入り込んでくる魔獣達が主食でここも住み分けができている。
ヒッポグリフは森に寝床となる巣と、拠点となるような水場がほしいだけで、餌は周辺に住む大鹿魔獣など大型の雑食魔獣を狩りに行く。
飛ぶ事が大好きなので長距離を飛び回るついでに餌を確保してるから、龍王森林地帯は猿魔獣達の依頼がない事には彷徨くこともない。
龍王山脈に住んでいるドラゴン達も飛び回って遊んでいるだけで、餌も猿系統魔獣には全く手を出さない。
元々ドラゴン系統は餌をほとんど食べない特別な生物で、時々サメなどの大型魚類を捕まえに行ったり、こちらも大型の雑食魔獣を狩りして魔獣が増えすぎて森林を枯らさないようにコントロールしてる。
例外なのがドラゴン系統の最底辺に位置するワイバーンだが、龍王山脈周辺は白虎に命令されたグリフォン達によってとっくの昔に絶滅している。
たまに迷い混んできても即座に狩られてしまう。
などなど、龍王森林地帯の今現在の状況を教えてもらった。
カントは猿系統の魔獣はけっこう好きで食べるようだが、別にこれじゃないとダメって訳でもないし違うエサを捕ればいいだけ。
そもそも俺達家族と一緒に食事する予定だし、寝るだけの場所だから争いを起こしたり、生態系や植生を乱すつもりもない。
キュオスティに乗って龍王森林地帯に到着すると、猿系統魔獣の様々な種族が俺とカントを一目見に来ていた。
合計すると千を軽く越える魔獣達がいる。
顔見せと挨拶を終えると各々の種族のリーダーを残して巣に戻っていく。
各々の種族のリーダーとは個別に挨拶をして少しだけ雑談した後は解散となった。
ここまで案内してくれたキュオスティも俺との挨拶を終えると巣に帰っていった。
俺はみんなに別れを告げてからカントの要望を聞きながらの巣作り。
カントは木のウロ・・・樹洞の中に入って寝るのが1番落ち着くらしいのだか、俺の身長程のカントが入り込めるような樹洞はそんな簡単には見つからない。
なので木製の箱を作り出入口を設けて巨大な木の枝の上に魔法で固定した。
カントが入って寝ていても樹木の負担にならないように箱に重力魔法を使用する。
箱の奥に簡易ゲートで自宅の隣の倉庫に繋げる。
箱の中に何も入ってこれないように結界で出入口をふさぐ。
結界は早乙女邸と同じように風雨もコントロールしてる優れもの。
寝床はおがくずに入り込んで寝るのが好きだと言ってるので、箱の中に大量におがくずを入れる。
これで完了だな。
眠そうにしているカントにおやすみの挨拶をしてから俺は誰もいない自宅に転移魔法で帰宅。
長い長い1日がやっと終わったよ。
パジャマがわりのTシャツと短パンに着替えてすぐに1人きりのベッドに入ってすぐに寝る。
おやすみなさい。
転生してから46日目の5月16日の朝は、挨拶がわりに俺の胸の上に乗って顔面を舐めまくるバッキンガムによって目覚めさせられた。
カントは俺の左横に丸まっていて脇に顔を突っ込んでうとうとしていて、反対側にワシントンも丸まって同じように脇に頭を突っ込んで寝ている。
彼らは体長30cm程に小さくなっているのでモフモフ天国の愛玩ゴーレム程の大きさしかない。
一通り全員を撫でてから朝のシャワーを浴びに行く。
早朝に目覚めた彼らは俺の布団に入り込んできて、少し暑くて寝汗をかいてしまったのでサッパリするためにシャワーを浴びる。
3点セット魔法でもサッパリできるが家にいて余裕がある時は、シャワーでサッパリする方が精神的に落ち着くし気持ち良いので、魔法を使うのはシャワーの後になる。
シャワーを浴びた後に3点セット魔法で体を拭く手間を省いて楽してる。
今日はロンTとジーンズのカジュアルな服を着てダイニングに行くと、俺の椅子の回りでワシントン達が朝食を食べてる。
体は体長1m程になってさっきよりも大きくなってるようだ。
たぶんこれぐらいのサイズの方が食べやすいんだろう。
バッキンガムとカントは森林モンキーの骨付き肉を食べてる。
カントは足で骨を固定して嘴で肉をちぎって食べていた。
バッキンガムは骨ごとバリバリと食べてる。
ワシントンは大型の焼き魚を骨からむしって食べてる。
俺は今日はロールパンとストレートティーの朝食をクロに用意してもらう。
ロールパンにバターをたっぷりと塗り付けて食べる。
焼きたてのロールパンとバターは最高の相性。
今日の紅茶は味はちょい薄めだが、かなり香りが強くてクロに産地を聞いたら、イーデスハリスの南の大陸産で最近シグチスで出回るようになったと聞いた。
これはアタリだな。
俺の好みのタイプの紅茶で美味しい。
シグチスのモフモフ天国にいるシグチスメイドゴーレムに連絡して、この茶葉を取り扱っている業者と定期購入契約を結ぶようにお願いしておく。
モフモフ天国やモフモフマッサージ天国で今後、取り扱うコーヒーや紅茶も産地別で販売できるように様々な産地の豆や茶葉を買い付けできるように業者を選別する必要がある。
もしくは今、付き合いのある業者に依頼して様々な産地の豆や茶葉を納品できないか問わないとな。
各都市のメイドゴーレムに新たな産地の豆や茶葉を探すようにも指示をだした。
モフモフ天国で産地別に販売できるようにして、その先に個別のブレンドができれば組み合わせは無数になる。
料理スキルを持つゴーレムならお客様が試飲するだけの少量を瞬時に作れるので、他の店とはアドバンテージは大きいと思うし・・・何よりも俺のその日の気分によって変化する好みに合わせたコーヒーや紅茶ができるようになるしな。
今日の俺の予定は教会シーパラ本部に行って昨日転送した被害者達の状況確認と、そのままアマテラスにマイアートンに送ってもらってからマイアートンに新たに誕生したダンジョンにマイアートン選抜チームを案内する仕事がある。
ワシントン達3頭はフォクサのところにまずは一緒に行って眷属達や俺の嫁達への顔見せ&挨拶をさせる事にした。
彼らも眷属にさせてもらったのだから、まずは挨拶をしておかないと。
朝食が終わったので早速3頭と転移。
朝食中だった嫁4人とるびの達に挨拶して3頭を紹介する。
自己紹介が終わった3頭をみんなに任せて俺は早乙女工房に転移魔法で移動する。
早乙女工房から出ようとしていたら、早乙女工房の敷地のすぐ外にあちこちの道場関係者が山盛りになって待っていた。
集団で襲撃するつもりなのかな。
朝っぱらからご苦労なこった。
まぁ、コイツら程度にビビる事もなくスタスタ歩いて出かける。
敷地の外側から散々デカい口をたたいて俺を挑発するバカども。
俺の前後左右をユーロンドが囲んで移動し始めると、早乙女工房の敷地に入ってきて即座に襲いかかってくるバカども・・・バカどもをちぎっては投げちぎっては投げで、ユーロンド達は俺に誰一人として近寄らせる事もさせずにあっという間に全滅した・・・人の事を散々文句言っておいてこの程度の実力しかないんだよな。
それが初めからわかってるから、相手をするのも面倒だから無視してるだけなのに、鬱陶しいぐらいに何度も絡んでくるんだよな。
まぁ、そんな事もわからない程度のバカなんだろう。
俺が早乙女工房の建物を出て敷地をゆっくり歩いて出る前に全滅したヤツラなんてどうでもいいので、後の処理はユーロンドにまかせて教会シーパラ本部に向かって歩く。
彼らが『俺達は道場破りにきた』『早乙女が道場を開かないのが悪い』といくら言ったところで、俺は道場を開いていないので彼らの扱いは『不法侵入した暴漢』となる。
不法侵入して俺に襲ってきた賊を叩きのめしただけのユーロンドはもちろん正当防衛。
早乙女工房はいまだに襲撃者が多く、国軍、警備隊、聖騎士団などのパトロールコースの最終地点になってる・・・3つの本部は早乙女工房のある中央行政区にある・・・ので、パトロールを終えた部隊が最後に寄って順次お持ち帰りされる。
酷い時は数時間おきに襲撃されてる時もあったから仕方がない。
早速、警備隊の朝のパトロール隊が襲撃者をゴーレム馬車に乗せられるだけ押し込んで帰っていったと、ヘルプさんにユーロンドからの報告があったようだ。
俺は教会にたどり着くと2000万Gほど寄付をして大聖堂に向かって歩く。
大聖堂の中の大礼拝堂の最前列の椅子に座り祈りを捧げるように、手を合わせて指を組み前にかがんで目を閉じると早速アマテラスのいる白い世界に意識が飛ぶ。
『ヤッホー、真一お兄ちゃん。』
「おう、やっほー。昨日の騒動で大量に被害者を送ったし、シーパラ本部の方の突入でも大量に被害者を保護したみたいだけど大丈夫か?」
『とりあえずはなんとかなりました。』
「ウェルヅリステル地下本部の方は予想通り大量に被害者がいるとは連絡してあったけど、シーパラ本部の方は予想以上に被害者がいたみたいと聞いてたから心配してたよ。」
『予想以上過ぎて他の都市に転送しないと処理できないほどだったよ。ヨークルの教会では真一お兄ちゃんのゴーレムが手伝ってくれたからなんとかできました。ありがとうございました。』
「マッサージメイドゴーレムを他の都市から応援するためにヨークルに転送して大量に投入したからな。とりあえずは物量作戦で一気に処理した方が後の処理が楽だとヘルプさんの助言があったし。怪我をおった大量の被害者達を待たせる訳にはいかないし、多くの被害者達がどこかしらに怪我を抱えてるのがシーパラ本部の被害者の状況だと聞いたら・・・流石に躊躇してる余裕もない状況では一気に処理するしか方法がない。こればかりは俺の情報収集の甘さ・・・油断が招いた事だ。敵の少なさからシーパラ本部の方は思いっきり油断してたわ。」
『それは私にもゴッデス様にも言える事だから、真一お兄ちゃんだけの責任だけじゃない。被害者が予想外に多いと情報が入って慌てて真一お兄ちゃんに助けを求めちゃったから。』
「シーパラはシグチスに回復要員の人員を送った後で、ヨークルはマイアートンに回復要員の人員を送った後だというのをヘルプさんに指摘されるまで忘れてたことは、アマテラスと俺のお互いにとって今後の反省材料だな。」
『だね。』
今回は後手後手に回ってしまい自らキツイ状況を作り出したとも言える。
情報収集の大切さを痛感させられたな。
他の都市にいるマッサージメイドゴーレムに余裕があったのが幸いだった。
ここ最近の騒動での以前の被害者達が、少しずつとはいえ徐々に復帰してきていたのも大きい。
彼らが戦場のような治療現場で下働きのように世話してくれていたから、人員不足ではあったがなんとか処理できたんだろう。
怪我の軽い被害者達も手を貸してくれていたのも大きい。
アマテラスもその状況は把握していて、今回フォローしてくれていた彼らに感謝の意を込めて回復魔法スキルが覚えやすくなるような『種となる』ステータスをプレゼントして、あわよくば今後は教会関係者になってくれたらラッキーかなと言ってた。
とりあえず被害者達の状況はつかめたし、深刻な状況は終了しているので・・・アマテラスにお願いして神託でマイアートンの新ダンジョンを調査するために俺に依頼を出した事にしてもらう。
アマテラスの転送魔法でマイアートンの教会に送ってもらい今日アマテラスから派遣されたと周囲に認知させる。
俺の転移魔法は秘匿情報なんで、面倒だがこんな形じゃないと今日中にマイアートンに行けないからな。
早く動いてマイアートンの新ダンジョンを公に発表したい。
俺の予定では俺に協力的なマイアートン臨時町長の『桂浜蔵人』の手柄がわりのプレゼントにしてあげる予定でいる。
新ダンジョンは既に発見済みだし結界によって安全確保も完了してる。
桂浜をダンジョンまで連れていけば完了する簡単なミッション。
俺が昨晩派遣した師匠ゴーレムをはじめとするゴーレム達が、新ダンジョンからあふれでてきた昆虫魔獣を一晩中狩りまくったおかげで、マイアートン周辺は既に落ち着きを取り戻している。
ヘルプさんの予想通り、一晩で処理したので周辺昆虫魔獣への影響は限定した範囲でおさまっている。
少量の昆虫魔獣の襲撃はあるが、マイアートン周辺は元々絶え間ない昆虫魔獣の襲撃があるのが普通の状態だから、いつもの風景とも言える。
周囲に多大な影響を及ぼす新ダンジョン誕生が、たまたまトリーが近くにいて俺が対応できたおかげで、微小な被害で済んだのが天運によるものなのか・・・
事実として実被害は少なくて済んだ。
農業への影響は今後調べてからの事なので今はまだわからない。
昨夜のボクスベルグ商会シーパラ本部の件も突入してみてから、大量の奴隷の怪我人を収容しており被害者が多過ぎて大変な状況だったのだが、見捨てられていた怪我人奴隷を大量に救えたと考えると大きな意味があったと言えるからな。
教会ヨークル支部は俺がおこした悪人粛清から時間が経過していてベッドの余裕はあった。
ただ・・・教会の回復要員はマイアートンに応援として送った後だったので、人員不足となってるとヘルプさんから聞いたので回復専門ゴーレムのマッサージメイドゴーレムを大量投入してフォローしたのだった。
結局ベッドも足りない事になり、ヨークルの寝具店の応援で大量の布団を寄付をしてくれたのもありがたかった。
俺がヨークルのモフモフ天国2号店の土地建物を購入するときに除霊と悪魔払いをした倉庫を高値で購入した商会が超有名な寝具店で、今回の騒動で寝具が足りないと判断したヘルプさんがマッサージメイドゴーレムを店舗の方に走らせて大量購入を申し出たところ、商会のオーナーが深夜にも関わらずマッサージメイドゴーレムと共に自らやって来て大量の寝具を寄付をしてくれたのだった。
なにやら数年前に伝染病が流行した時に教会で嫁と娘の命を救ってもらった恩を、いつの日か必ず返したいと頑張って商売していたと言う事だった。
いい話だな。
こういう付き合いは大切にしたいものだ。
マイアートンの教会にアマテラスに送ってもらい、小さな教会の礼拝堂に光の洪水の中フワリと降り立つ。
アマテラスの光魔法の閃光と共にやって来た俺を教会マイアートン支部の人達が歓迎してくれる。
教会ヨークル支部で神父をしていた人が俺の顔を知っていたようで、今回の騒動でヨークルの聖騎士団と共に応援に来ていたみたい。
それと昨日俺が忍から渡したポーションとMPポーションが怪我人回復で大活躍していて、多くの量を渡していたので無くなる不安もなく使いまくったとの事。
大量に使ったのに余っているポーションを返そうとしてくるが、俺の作ったポーションは教会の倉庫に置いて直接日光が当たるようなザルで劣悪な品質管理でも品質が全く落ちないし期限のないモノだからそのまま渡しておく。
今後は新ダンジョンからの怪我人が増えると予想できるので、予備のポーション系は大量に保有しておいた方が良いとして更に追加で渡しておいた。
更に追加でポーション類の材料も渡しておく。
教会ならポーション類は自前で作成できるし、材料があれば練習で作れるようになる人も増えるだろうし。
ポーション系や材料を渡し終えると神父の1人が昨日の騒動の中で設立された対策本部まで案内してくれると言うので彼の後について歩いていく。
教会を出てマイアートン行政本部・・・いわゆる町役場だな・・・にすぐに到着。
まだ町になって間もない小さな町だからすぐそばにあるわな。
入り口に立っている警備隊員に神父から説明が入り、俺が昨日の貰ったばかりの金色に輝く冒険者ギルドSランクカードをアイテムボックスから取り出すと、警備隊員自らが対策本部室に道案内してくれた。
対策本部室に入ると警備隊員は入り口に戻り神父さんは教会に帰っていった。
対策本部室には友人の『トリスティックス・アグスライト』通称トリーはきていないが、マイアートンの行政での主要メンバーであるマイアートン警備隊教育センターの校長『エミール・アウレッタ』、農業ギルドのマイアートン支部で支部長をしていて、今はマイアートンの臨時町長をしている『桂浜蔵人』、警備隊教育センターで教官育成の講師『サウロ・ガリツカヤ』の3人と彼らの秘書や部下を含めて8人程が着席していた。
「直接お会いするのは初めてですね。冒険者の早乙女真一です。早乙女とお呼びください。」
俺が挨拶をして頭を下げると全員が椅子から立ち上がって挨拶を返してきた。
秘書や部下は流石に名乗らないで挨拶とお辞儀だけだったが。
粗方話はわかってるから状況説明などは省かせてもらった。
俺がマイアートンにやって来た理由なんかを説明する事にした。
「今日になって俺がマイアートンにやって来たのは町の内部の状況確認と新ダンジョンへの案内ですね。先程教会からここまで歩いてきた時に確認してきたのですが、建物などへの影響はほとんどありませんので安心しました・・・」
などと話し始めた。
新ダンジョンの話には誰も知らない話だったので全員が驚愕して返事もなく黙ってしまった。
「・・・という訳で発見した新ダンジョンは要塞型タイプです。ここから行くにはヨークル川を船で1kmほど遡りまして、更に2km程大森林のジャングルを突っ切った先になります。」
「・・・」
みんな唖然として無言になってるので話を進めるとエミールさんが大きな声で質問してきた。
「ゴーレムに指示していた大森林を突っ切る道も先程完成しましたんでいつでもご案内できますよ。」
「昨日の今日でもう新たなダンジョンへ行けるのですか?」
「桂浜さんを早く案内するためにかなり急ぎましたんで、道は簡易的なモノになってますがとりあえずゴーレム馬車が交互通行できるだけの道幅は確保しました。」
「そんな先まで読んで対応されてたんですか?」
「道を作ったのは今日案内をしやすくするための先手ですが・・・後はついでのサービスですね。」
「ついでのサービスでジャングルを突っ切った2kmの道って・・・」
また全員唖然として無言になってしまった。
昨夜のオーガ達の丸太の大部屋を作っていたときに、俺のアイテムボックスに木材が大量にある理由がこの道をゴーレム達が作っていたからだ。
話を続ける。
「船の用意はそちらに任せます。」
「早乙女さんすみません。あまりに急な話なので少し時間をください。」
桂浜が対策本部室内の人達を集めて相談し始めた。
俺は用意された席に座りアイテムボックスからグラスを出してアイスコーヒーを注ぎ一服する。
話し合いは少し戸惑っている感じだが全員嬉しそうなのは新ダンジョンが生み出す旨味が、自分達が想像していたよりも近く目の前に迫って来ていたからだろう。
道路を作ったのはこの問題を手っ取り早く終わらせたいと思って、マジでサービスのつもりだったのだが、ありがたい事に偶然にもゴーレム馬車が交互通行できる程の幅をもった平坦な通路を作る事が出来たので俺としては大満足な結果になった。
船を着ける港や桟橋などの整備は時間をかけて作った方が良いだろう。
新ダンジョンからの儲けが出てきてからマイアートンが公共事業として行えばなお良いと思う。
それで更に人を呼び込める事になるし、そのお金はマイアートンの経済発展になるからな。
マイアートンは更に大きくなるのは新ダンジョンと新たな町の施策『マイアートンはアーチャーと弓師を育てる町』で発展する事は確定してる。
そんな事も桂浜達に説明すると秘書達が必死になってメモをとっている。
マイアートンは今後、大量にいる昆虫魔獣と新ダンジョンの影響で、アーチャーと弓師を育てる町になる予定になっているんで・・・川を使った取引は今の比ではなくなり数倍に増えると予想される。
弓に欠かせない素材の竹は川で繋がっているシグチスが産地。
その他の素材も取引が増えるので倉庫などの整備も必要。
新ダンジョンの効果もあるので人の出入りも数倍に増えるだろう。
無論、宿泊施設も今のままでは収容しきれない。
そういった増える人や船の動きを今の簡易的な船着き場では管理できない。
ある程度は予想して整備をするだろうが、予想を上回った時のためにも余裕を持って計画しておかないとパニックを長引かせてしまう。
などと整備しなきゃいけない施設は多いから・・・ここにいるメンバーに頑張ってもらうしかないんだけどな。
対策本部室のメンバーとの会話を通してマイアートンの町の拡張計画にまで話は進んでいく。
そんなところにマイアートンに派遣された聖騎士団の応援部隊の部隊長がやってきた。
聖騎士団応援部隊を連れて朝のマイアートン郊外の見廻りが終わったようだ。
「早乙女さん、初めまして。聖騎士団応援部隊の部隊長『フリッツ・ギャロフスカヤ』と申します。気軽にフリッツとお呼び下さい。」
「ありがとうございますフリッツさん。俺の名前はご存知のように早乙女真一です。早乙女と呼んで下さいね。」
「それとついでで申し訳ないんですがせっかくお会いさせていただいたんで御礼も言わせて下さい。露草桜の治療と呪いの解除をしていただいて誠にありがとうございます。」
「どういう事なんですか? よく分からない・・・桜さんとはどういうご関係なんですか?」
「実は私もハーフエルフなんです。しかも戦争孤児として教会に救って頂きました。そして露草桜は育てて頂いた養母になります。」
「そうだったんですか・・・」
詳しく教えてもらったが、50年以上前に起きたエルフとドワーフの戦争において・・・エルフ軍が撤退する時にドワーフ軍の足並みを乱すために戦場のど真ん中に捨てられた数人のハーフエルフの乳幼児の1人だったようだ。
子供好き、子供の世話好きが多いドワーフに対するトラップとも言える。
彼らの注意をそらせるためだけにわざわざ戦場に連れてきて、エルフの王国では例外なく迫害を受けているハーフエルフを捨てていくのは計画してるヤツラもクソだな。
まぁ、だからこそエルフの王国は例外なく滅んでるんだけど。
ドワーフも子供好きではあるが・・・ハーフエルフとなるとドワーフ地下王国では生きにくい。
たとえ半分とはいえ天敵のエルフの血を受け継いでいるから・・・なので中央大陸の中央教会本部に引き渡される。
露草桜は自身がハーフエルフなので引き取った子供の世話役としては最適。
子供を作れない呪いをかけられていた桜はたくさんの子供に囲まれた環境は望んでいた場所なのかも。
桜が大司教にまで出世出来たのは多くのハーフエルフの教え子達が、教会の内外で活躍してるからだとも言っても過言じゃない。
フリッツも数多くいる優秀な教え子達の1人。
「とはいえ、まだ完治した母上には会ってないんですけど。」
「そうだったんですか。では今はずっとヨークルに住んでいるんですか?」
「ヨークルというよりは師のジャクソン・ミライジスと共に各地で聖騎士団の現役団員の指導と新人教育をしていました。ジャクソンは聖騎士団の不祥事で全ての責任をとり辞任してシーパラ本部に帰った後、今はシグチスに行ってしまったので残りの新人教育の仕上げを私がやってました。今回、私が連れてきた部隊が新人部隊で、今回は直ぐに動かせる部隊として実戦教育を積ませるために連れてきたんです。昨日から昆虫魔獣と実戦を経験させています。私の後ろに並んでいるのは6人の班長達です。」
フリッツの後ろに並んでいる新人の班長達を見るがみんな精悍な面構えで頼もしいな。
まだちょっと硬い表情をしてるのは緊張してるのか?