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殲滅作戦継続中。気分が荒(すさ)んでくるっす。

オーソドックスに重装歩兵(ファランクス)を横に並べて槍攻撃をしてくる敵部隊を相手にした場合、また重装歩兵だけでなく槍衾をつくる槍部隊よりも長い射程距離を持つ魔銃なら反撃されずに一方的に攻撃し続ける事ができる。

初級魔法とはいえ多くの種類の魔法をある程度の連射が可能な魔銃なら、対処するのに大金をかけた高価な装備品で身を守らないと甚大な被害を受けてしまう。


良く考えてあるな。

魔銃の特性を最大限活用した戦術だ。

最前列に並べられた盾もかなり高価な盾で敵からの魔法の威力をかなり殺し、敵からの魔法攻撃や武器攻撃を最小限に留めるようにしてある盾だ。

それに取り回しのきかない槍と違い軽量の魔銃士だから盾の隙間からだけでなく、盾の上からも横からも攻撃がしやすいだろう。


ヘルプさんによるとこの戦術は魔銃を制作した転生者が好んで使用していたみたいだ。

俺自身が攻撃を受けてるがなかなかの威力を持ってると言えるだろう。

この貴族が持ってる一番練度が高く強い部隊を連れてきてる事から考えると、シーパラ連合国の闇部分制覇を目論んだが、全てをご破算にした俺を葬る事を考えた部隊編成がしてあり、もしかしたら明日以降に襲撃をするような計画が密かにあったのかも知れない。


けど残念ながら俺には一切効果がない。


様々な種類の初級魔法が微妙にズレたタイミングで俺に当たってるように見えるが、実際は俺の手前で魔法は破裂して消滅している。

結界にぶつかっているわけではない。

魔法同士がぶつかって破裂しているのであって俺は結界をはっていない。

ある一定の距離に近づいた魔法が消滅してるだけ。

賢者のスキルマスターと超がつくほどのレベル差によって当たることもなく手前で魔素に変換されていて消滅しているのだ。


初級魔法だけだし少し単調な攻撃になってきたかなと思い始めた頃に変化を出してきた。


俺への効果が予想していたよりも感じなかったからか、変化球的に後方部隊から短槍を投げこんだり山なりの弓攻撃が加えられてきたようだ。

俺に当たった短愴や矢が地面に転がる・・・が、苦し紛れの変化のようで、この先の新たな攻撃が無さそうなんで反撃する事にした。


4人程の敵がほぼ同時に盾の隙間から魔銃士が魔銃を構えて、撃つまでの一秒にも満たないコンマ何秒の間に4つの魔銃の銃口に火弾を叩き込んだ。

銃口から入り込んだ火弾は爆発炎上。

銃身内の全ての魔法が誘爆。

隣に立っている魔銃士が持ってる魔銃の中に詰めてある全てのカートリッジ、口が開いたバッグに入れてあった魔銃に装填する前の大量のカートリッジまでもが一斉に誘爆。

盾の後方の大爆発により盾職(タンク)全員と魔銃士も全員が死亡。

爆発と共に周囲に初級魔法が飛び散ったので・・・俺と戦っていたボディーガードも貴族も全員が死亡した。

俺は並べられていた盾職のタワーシールドに守られる形となったが。


・・・ふむ。

ピンポイントで反撃できる敵を相手をする場合・・・この戦術と装備品では、内側が脆すぎるようだな。

一風変わった面白い戦術ではあるが無敵とはとても言えない。

下手すると一撃で部隊が全滅する・・・今みたいに。

敵側に優秀な結界士がいて目の前に結界をはられた場合も初級魔法だと弾かれて味方が危なくなる。

結構、使いどころが難しい戦術なのかもしれん。

改善する余地が多い。

ただ、敵の部隊編成によっては一方的に殲滅できる戦術なんだろう。


爆散してバラバラになった敵の装備品などをアイテムボックスに入れて素材に戻しながらも思考が止まらない。

残された遺体は聖魔法の聖炎で焼却して浄化する。

残ったステータスカードも回収。

他国の有力貴族なんでしばらくはアイテムボックスの肥やしになりそう。

アイテムボックスに入れたままとなってるステータスカードは多い。

隣のゲストルームには貴族の家族が震えながら隠れてたが悪魔貴族に念話で連絡したら転移魔法ですぐにやって来たので後の処分は任せた。


いやぁ、マジで楽できて良いわ。

攻撃してきた敵を殺すのは良いけど、いくら悪党とはいえ無抵抗のヤツらを虐殺するのは流石に俺も多少は良心が(とが)めるからな。

悪魔が有能すぎてヤバい。

俺も良心が痛まないし、悪魔も楽しめるしというWinーWinな関係となってるな。

殺した証拠のステータスカードや装備品、所持していたアイテムなどが、俺が戦闘してない時を見計らって転送魔法で俺の目の前に直接送られてくる。

念話で連絡してアイテムボックスに送ってくれるなら自由な時に送って良いよと伝えた。


むちゃくちゃ気を使ってくれるし、亜人を含めた人類よりも比べ物にならないぐらいに有能だよ。

俺の配下はゴーレムや魔獣、早乙女ゴブリン組のゴブリンなどと非人類しかいない。

俺の抱えてる秘密がヤバすぎて秘匿するためにはこの状態も仕方がない。

人類とあまり接点がない彼らしか配下に出来ないからな。

今後も人類は配下に出来ないだろう。

まぁ、今いる配下が有能すぎて人類を配下にしなきゃいけないという必要性は今のところ全く感じないけど。


悪魔貴族達は今後、イーデスハリスの誰かに召喚されて契約を結んだとしても、俺の許可なく俺の情報を絶対に他に漏らさない。

自分の遥か上に存在してるのを理解してるからだ。

圧倒的強者に絶対に逆らわないのが悪魔の本能。

天使達とは全く違う本能だ。

天使達は神の命令を遂行するのが至上の喜び。

目的を遂行するためなら何をしても良いと本気で思ってる・・・思考回路が短絡的すぎてゴーレムに近い。


短絡的な事については俺も人の事は言えないけど。


そう考えると天使達は『神が産み出したゴーレム』と言える存在なのかも。

天使と悪魔は表裏一体の関係だと思っていたが、かなりの違いがあるようだ。

天使に命令する神に正義がない場合は悪魔とは比べ物にならないぐらいに天使は暴走する。

神に正義がない以上天使にも正義が存在しなくなる。

それが神の意志なんだから仕方がない。

堕天使と言われる悪魔は神の命令に疑問を持ち自らの考えで行動し始めた元天使たちだ。


悪魔貴族は元天使の堕天使が多い。

だけど既に神の枷を外した堕天使達は強者に逆らうことはないが自らの意志を持って行動している。

堕天使とは『堕ちる』ではなく『自らの意志を持つ』と言えるのかもしれない。

強者に逆らわないというのも自らの意志。

大多数の天使が考えているように神は何もかも全てにおいて万能だというのならば、神の考え方に逆らっても存在してる自分達の状況で、神は万能とは言えないと証明しているようなもんだしな。


俺の場合は・・・神に迷惑をかけられ続けてる犠牲者だしな。


まっ、クソ迷惑な神の話は置いといて・・・


ゲストルームが並んでいる場所は悪魔貴族が俺のために気を効かせて手をつけないでいたようで、その後も部屋からボディーガードを始めとする様々な部隊が飛び出してくる。

低位悪魔を召喚して俺にけしかけてきたヤツらもいたが、俺を見て即座に寝返る悪魔に感心してしまった。

召喚した悪魔に忠誠心なんて存在しないしな。

召喚した悪魔に逆に飛び掛かられて全員殺されてしまった。

低位悪魔は悪魔界に返還させた。

悪魔貴族がいるのでレベルが低い悪魔は邪魔になるだけだし。

ここで俺はなにもしてないわ。

敵は勝手に死んでいった・・・この場合、果たして敵と呼んでも良いのか疑問が残るが。


次のゲストルームからはいわゆる剣闘士スタイルの円形のラウンドシールドを左手で構え右手は刃の部分があまり幅広くない古いタイプの刺突型グラディウスを握る・・・オーソドックスな剣闘士スタイルの8人が飛び出してきて俺を取り囲む。

更に向かい側のゲストルームから8人出てきて後ろに回り俺を二重に取り囲む形となった。

8人ずつの円陣を二重にして内側と外側で反対方向に回り始めた。

内側の8人の内4人が同時に一歩前に出てきて、左手の盾を構えた半身の体勢のままグラディウスを突きこむ。

内側の4人は後ろにさがり、後ろにいた外側の列の4人が逆に前に出て入れ替わる。

全てが横移動をしながら前後に移動してる・・・ので複雑な動きで内側から見ているだけだと目が回りそうだ。

最前列に出てきて突きを出して後ろに下がる・・・絶えず4人が入れ替わりながら、俺は連続突き攻撃を絶え間なく受け続けている。


しかし俺は一番始めの突き攻撃を食らう寸前に自分の周囲に防御結界を張った。


なので突き攻撃が防御結界に当たって弾かれる音が『ズガガガガガ』と鳴り響いている。

能力が低い結界士が作る低レベル防御結界程度では連続物理攻撃は結構有効な攻撃手段なんだが、スキルマスターの俺には当てはまらない。


3分程の連続攻撃は続いたが全く効果がないのがわかり、驚愕しながら攻撃を止めた敵に対して戦闘が始まってから初めて反撃する。

自分の周囲にある防御結界を広げて敵を吹き飛ばしてから結界を消滅させる。

そこまでだだっ広い廊下ではないので壁と結界に挟まれて6人が圧死・・・文字通り『プチっ』っとペッタンコになって壁に張り付いて、俺が結界を消滅させてからガチャンと地面に落ちた。


生き残った10人も俺が表情すら変えずに反撃にうつったのが読みきれてなかったようで、防御体勢を取れない状態で広がってきた結界によって吹き飛ばされ、壁にブチ当たった後も更に結界に吹き飛ばされて打ち所が悪かった3人が死亡。

更に1人は足が折れたようで、盾を背中に背負い剣を握ったまま這いつくばった状態で匍匐前進(ほふくぜんしん)でズリズリ逃げようとしている。

残りの6人は戦闘意欲が消えたようで自分の左手の盾を構えたまま後ろに後ずさってる。


全員の盾に向けて魔法の石弾を打ち込むと反動で吹き飛んで意識を失った。

匍匐前進をしていた1人は地面に押し潰された後、反動で1m程浮き上がり、更にまた地面に叩きつけられて死亡した。


ゲストルームに残された人達や生き残りは転移魔法でやってきた悪魔貴族に任せて、俺は取り上げた素材などを回収した後に隣のゲストルームの部屋に移動する。


他と比べても一回り以上大きなこのゲストルームには誰もいない。

ここは複数のゲストやその家族が遊ぶために作られている多目的ホールのような扱いなんだろう。

本来ならばいくつものテーブルと椅子が並んで、部屋の奥には簡易的なステージが設けてある。

だが今は部屋の縁にテーブルと椅子は重ねてあり、部屋の中心に5個の魔結晶が置かれているだけだ。

あからさまに怪しく地面に描かれた五芒星。

魔結晶が星の角に5個置かれている。

周囲を円で取り囲み何かしらの魔方陣が仕掛けられていて・・・魔方陣を使った設置型の罠が仕掛けられているとヘルプさんから言われた。


気にしないで魔方陣の中心へと足を運ぶ。


俺が中心近くまで進むと魔方陣が光を放って地面から幾何学模様が浮かび上がる。

浮かび上がった魔方陣が別の魔方陣を起動させ、俺の頭上の天井に魔方陣が浮かび上がり光を放つ。



足元の魔方陣と天井の魔方陣の両方浮かび上がった模様を賢者スキルで解読した。

・・・そこまで複雑に組んだ魔方陣ではないな。

天井の魔方陣から鎖が何本も垂れ落ちてきて俺に巻き付いて縛りつけてきた。

天井の魔方陣からはバリバリと紫電が走り俺に絡みつく鎖を伝い電気を流してくる。


『ふん!』


鼻を鳴らしながら鎖が絡みつく両腕を広げて魔法の鎖を引きちぎる。

・・・魔方陣からの魔法攻撃は俺に当たるんだな。

魔銃での攻撃や普通の魔法攻撃は一切当たることなく消滅していたので知らなかったわ。

罠に何かしらの設定があったのか?

以前、ザイモア商会との騒動の時の簡易拘束結界の罠は全く効かなかった。

トリスティック・アルグライト・・・通称トリーの仕掛けた『簡易的な罠』だってトリーも言っていたしな。

良くわからない・・・効くにしろ効かないにしろ、どっちにしても全く効果がないからどうでもいい話だ。


上から鎖が次々伸びてくるし地面は紫電が走ってるが、俺が左手の手のひらを上に向けて伸ばし、右手の手のひらを下に向けて伸ばすと、魔方陣に蓄えられていた魔力が全て俺に吸収されて魔方陣そのものが消滅した。

魔方陣の残骸は消滅して消え失せ、この罠の核として使われていたかなり大きな魔結晶が俺の両手の手のひらに2つ残しただけ。

魔結晶をアイテムボックスに仕舞い、魔方陣につけられていた魔結晶5個も回収。

パシパシと体を手で叩くようにして体に付いた埃を落としていると、今まで閉じていた部屋のドアがバタンと轟音を響かせて開いた。


「早乙女ぇー、死ねぇー! ・・・あれ?」


厳つい男集団が叫びながら部屋に雪崩れ込んできたが・・・予想していた事態と違っていたのか、それぞれが振り上げた武器を振り上げたまま固まっている。

50人以上が雪崩れ込んで来たところを見ると、残りのゲストルームの全てのボディーガードや親衛隊などが一斉にやって来たようだ。

部屋の中に全員か侵入してきたのを確認してから部屋に封印結界を掛けて誰1人逃さないようにした。

ゲストルームにそれぞれが残してきた家族連中は悪魔貴族達が処分するように連絡済みなので、ゲストルームの方では悪魔貴族達が暗躍し始めている。

処分の終わったヤツの分の衣類やアイテムなどが、俺のアイテムボックスに続々と送られてきてる。


この部屋の侵入者達は自分達の置かれた立場をようやく理解できたのか、盾職を前に並べてから自分達は後ろに後ずさって逃げようとしているが後ろの扉に俺が張り巡らせた結界によって、触れる事さえ出来ないと騒がしい。

ギャーギャー五月蝿いから威圧感をほんの少しだけ解放しながら声を出す。


「うるせぇーよ。」

「・・・」

「ご静聴ありがとうございます。」

「なぜだ! あそこまで完璧に作った罠に・・・なぜだ!」

「だからうるせぇーって。罠は完璧だったよ。完璧に作動した・・・効果は全く無かったけどな。」

「なぜだ!」

「知らねぇーよ。こんなレベルの低い攻撃が当たっても効くわけないだろ。」

「クソっ!」

「言いたい事はそれだけか。では改めて・・・本日はわざわざのご来場誠にありがとうございます。それでは当店ご自慢の石の舞踏会をお楽しみください。」


俺の目の前に地面から2体の人形(ひとがた)の石が浮かび上がってきた。

身長は俺より低い150cm程でゴツゴツした石製の簡易ゴーレムだ。

見た目は武骨な積み木をくっつけたかのようなシンプルなだけの人形。

顔も丸い石が乗ってるだけで表情なんかない。

しかし、簡易とは言えど俺の魔力と魔法の技術で産み出したゴーレム。

石製とはとても思えないスピードで敵の攻撃をゆうゆうと避けて蹴りつける。

石の蹴りを受けて最前列の盾職が吹き飛ぶと即席チームでは立て直す事もできずに逃げ惑うだけという哀れすぎる最後を迎えてしまう。

せめて俺に一太刀でもという気概を持つ敵もいなくて、苦し紛れの反撃もあっさり避けられたりしてる。


俺は部屋の中央でタンブラーに入ってるアイスコーヒーをぐびぐび飲んで、何も感情が無い無表情でこの様子を眺めてる。

ゴーレムには手加減して殺さないようにと命令してあるので、動かなくなった敵を身ぐるみ剥いでいくのが俺の唯一残されていた仕事だな。


数分後に全員が素っ裸で転がり身動きができなくなった。

ここも悪魔貴族達に最後は任せるために結界を解除すると部屋の外で解除されるのを待機していた悪魔貴族が入って来て俺のためにドアを開けてから優雅に一礼。

俺は後は任せたとばかりに悪魔貴族の肩をポンポンと叩いて部屋を後にする。

これでこのゲストルームが並ぶ一帯に生存者もめぼしい物もなくなったな。


ちょうどそんな時にヘルプさんからの一報でシーズの『角館家』『ケミライネン家』の2つの家でのクーデターが成功したようだ。

俺の冒険者ギルドSランク昇進記念式典でイワノスに連れられて俺に挨拶に来た反体制派のトップ『角館裕仁(かくのだてひろひと)』『ライモンド・ケミライネン』の2人が謝罪して、俺と和解したことで両家の混乱を治めた事を手柄にして両家の下部組織や分家などに通達してまとめあげる事に成功した。

退陣要求が現執行部に出されていたがそれを現・・・今や元執行部だな。

元執行部が退陣要求を呑むことでクーデターが成功した形になったようだ。


俺としてはようやく面倒が治まったかな? と言えそう。

しかし予想していたよりもかなり早い決着だ。


両家のトップで俺を一方的に敵視し敵対行動をし続けていた『角館将仁(かくのだてまさひと)』『リカルド・ケミライネン』の2人がよくクーデター側の要求を呑んだな・・・と思っていたらヘルプさんから内情を教えてもらった。


将仁とリカルドは自分達の派閥の信用してる人間から・・・


『少しでも影響力が残っている内に裏側に回り、裏側から家を支配して最高評議会やシーズの各家を騙せば監視の目がなくなり早乙女に仕返ししやすい』

『歴史あるシーズの家を全くの素人だったヤツらにまとめあげられるなんて出来ないんだから裏側に回り影で操った方が良い』


との言葉を真に受けて引退を表明したとの事だった。

まぁ、提案した派閥の人間はとっくの昔に両者を見限(みかぎ)りイワノスにすり寄って忠誠を誓った内通者であって、裏側に回るもクソもなく・・・全ての権力や資産も取り上げられ、この年齢で商売の勉強するために別の大陸の国に『修行』に出される予定なんだとか。


すげぇなイワノス・・・寝技も得意かよ。

既に先回りしてあって両者の性格も考慮された作戦を淡々と遂行していってるな。

俺も利用して和解すら利用・・・利用できるものは全部使って目的を達してるわ。


ヘルプさんからの情報だと、裕仁とライモンドも身内に甘い人間ではないようだ。


既に家の資産は将仁とリカルドが勝手に使用できないように最高評議会が凍結してある。


最高評議会からつけられた監視者に対して・・・

『まだ最高評議会から解除命令は出てない』

という監視命令解除が通達されるまでのタイムラグを利用して個人の資産も使用できないように凍結してあるとの情報。


上手いな。


裕仁とライモンドは最高評議会に掛け合ってなるべく通達が遅くなるように手配してあり、通達が出されるのは明後日の夕方以降になるように設定済みとのことだ。

それまでに両家の反対派を押さえ込んで権力から遠ざけてから完全掌握出来ると計算してあるようだな。

なかなかの策士ぶりだ。


これで完全にシーズの両家と俺との対立は終演だろうな。


権力から遠のき不満がくすぶる人達もいるだろうが、不満をぶつける相手は俺じゃなくて新執行部となる。

後は内部の問題なんで俺とは距離が出来ると思う。

面倒事が1つ減ったわ。


引退なんで最高評議会議員は3人減り現体制の16人から13人となった。

ケミライネン家はリカルドだけでなく息子でイエスマンだったエンリコ・ケミライネンまで引退となったからだ。

ケミライネン家の場合はシーズ当主であったリカルドの孫まで引退と決定している。

角館家は将仁とその息子でシーズ当主も引退となった。

両家のシーズ当主は引き継ぎの僅かな期間だけ延命となるが、実権は一切持たないオブザーバーでの引き続きとなる。

もともと、実権を将仁とリカルドが持ったままでのお飾り当主だったので引き継ぎの期間はかなり短く、各方面に顔見せするだけなので数日で終わるようだけど。

今日の俺の冒険者ギルドSランク昇進記念式典で、イワノスが引き連れて歩き回ったおかげで、シーズの各家族と最高評議会議員の家族にも顔見せは終了してる・・・イワノスの先手はどこまで見通しているんだ?

凄すぎるわ。

まぁ、これじゃないと最高評議会でなにかと対立していた超寝技師のマツオと対抗なんてできないからな。

マツオによって鍛えられたのかも。


まぁ、ゾリオン・シーズ・ガルディアの長男で公式の次期当主であるギル・シーズ・ガルディアの正妻が子供をお腹に授かったため、出産できればゾリオンがシーズ当主をギルに明け渡し最高評議会の議員となる。

更にアギスライト家の公式次期当主のクリス・シーズ・アギスライトの不妊治療も終わっているので、クリスの跡継ぎが誕生するとクリスの父親が最高評議会の議員となるので・・・3人減って2人増える計算になる。


シーパラ商業都市連合国・・・通称シーパラ連合国のトップとの繋がりが色々増えていくな。

降りかかった火の粉を払ったらこんなことになるなんて思ってなかった。

俺の場合はアマテラスやゴッデスの依頼を解決しまくってるのも原因の1つなんで仕方がないけど。


今回のアマテラスからの依頼も目的は達してるから、奴隷も救い終えた今は目的もなく歩き回っているだけ。

しかしアマテラスの予想通り露草桜をシーパラ教会本部に残しておいて正解だったな。

俺は万が一の事を考えて突撃チームに同行させた方が良いと思っていたが、同行は忍だけでなんとかなるし治療のスペシャリストである執行官モードの桜が教会本部にいた方がなにかと良いというアマテラスの意見によって変更した。

確かに奴隷となっていた被害者達のメンタルケアまで考えると桜に任せて正解なんだろう。

傷やケガなら回復魔法でなんとでもなるが、メンタルケアなんて俺には無理だし。

教会の治療現場も桜がいるいないで結果は変わっていただろう。


そんな事を考えながら歩いていると、通路の角から女がボロボロの服を身に纏わせて走りよってきた。


「助けてくださいまし」

そう叫ぶと俺の両手の上から抱きついてきた。

女の後ろから走ってきた大男がゲヘゲヘ言いながら俺に振りかぶった大剣を叩きつけるような攻撃をしてくる。

俺は少しだけ動いて俺に抱きつく女の頭に当たるように調節。

女の頭が弾け飛び女に抱き締められて拘束されていた両手が自由になるとステップして後ろに下がる。

角の向こうで一緒に俺がくるのを待って待機していた仲間の女なんで俺が救う事はない。

もうすでにこのボクスベルグ商会ウェルズリステル地下本部に被害者はいない。

悪党しか残っていない状況なので、女を殺す手間が省けたなぐらいにしか思えない。


俺は全身に降りかかった血糊や脳漿などの汚れをいつもの3点セット魔法で浄化。

男の後ろからゾロゾロ仲間達がやって来たようだ。

一番後ろにいた男が前に出てきて大声で怒鳴る。


「貴様、女の命をなんだと思ってる!」

「悪党の女の命の価値なんて被害者達に聞けよ。俺が知ったことか。」

「貴様、それでも男か!」

「見てわかるだろ。女に見えるのかお前は?」

「五月蝿い五月蝿い黙れ」

「・・・」

「男なら女を守って当然だろ! バカかお前は。」

「・・・」

「何で俺の女をお前が勝手に殺すんだ。バカ野郎が。」

「・・・」

「死ななきゃわからないバカ野郎か?」

「・・・」

「これでも食らえ!」


前に出て勝手にほざいてるオッサンが散々能書きたれた後、背中に背負っていた大剣を俺の脳天目掛けて叩きつけてきた。

ガンっと俺の脳天に当たるがびくともしない。

大剣の刃が少しだけかけた程度の威力だ。


「面倒臭いから黙っていれば好き勝手な事をほざいて、一方的に攻撃してきてこの程度の威力かよ。」

「黙れ! 黙れ!」

「だいたい、自分の女を使って失敗したからってごちゃごちゃ五月蝿いヤツだな。」

「五月蝿い、五月蝿い」


こんな話をしながら何度も俺に大剣を叩きつけてくるがガンガン音が煩くて少しずつ刃がかけて埃のように俺の頭にかかるだけ。

埃を俺に振りかけるという事だけ・・・それが目的であるならが成功したと言えるだろう。


話の受け答えも面倒臭くなってきたので無言で火弾を全員にブチ当てて物理的に黙らせた。

装備やアイテムまで燃えてしまったので、素材的にも低レベルなんだとよくわかるな。

商売でここに来てるから全員が大金を持っていたが、既にアマテラスに全員の全額を取り上げて送金してある。


走りよってくる女を見て・・・もしかしたら美人局かと少しは期待した俺がバカだったな。

女の顔は全く覚えていない。

何しろ全く見てないからな。

バインバインがたゆんたゆんしてたことしか記憶に残ってない。

いわゆる『スライム乳』ってヤツだろう。

女の頭部は吹っ飛んでるので今さら確かめようがないし正直興味ない。


次に走りよってきたヤツらは俺に近づくと5人とも土下座して謝ってきた。

新パターンだなこれは。

「何でもするんで許して下さい」

「お前らも同じ意見なのか?」

「はい。許してほしいです」

「わかった。許す許されないは俺が決める事ではないから、とりあえず死んどけ。」


俺は目の前で土下座している男の頭を踏み抜いて殺害。

残りの4人の頭も同様に、次々と地面に並ぶ頭を踏み抜いて殺害した。

何でもするというなら自殺しろと言おうと思ったが、そのまま死んだ方が早いと気づいて頭を踏んだ。

5人とも土下座してたので手っ取り早く頭を踏んで死んでもらった。

コイツらもろくなモノを持ってなかったが、全員の所持金はかなりの金額なんでアマテラスに送金済み。


毎回不思議に思うけど・・・俺に許しを乞うなよ。

被害者達はほとんどが自殺する事もさせてもらえずに殺されてるのに、なんで自分達は謝れば許してもらえると思っているのか・・・許されるわけないじゃん。


しかも謝る相手も間違ってるよ。

犯罪を犯して人を殺して・・・人である事を自ら放棄してるヤツらに人の法律で裁こうというのもおかしな話だ。

更正? 反省? 償い?

被害者は望んでないよ。


被害者が存命してるならその人に聞けば良いよ。

けど生きていないなら死んで詫びろとしか言いようがない。

よくある話で・・・

『被害者はそんな事望んでない』

なんてキレイ事を言う人がいるけど・・・誰が言ったんだ?

誰から聞いたんだ?

死んだ人から聞けないというなら、聞けなくしたのは誰だ?

法律は誰のためにある?

犯罪者のためか?


色々な思考が頭を駆け回る。

今日は人の死と犯罪を目の当たりにしすぎて暗黒の底無し沼に落ちて行きそうだわ。

研究の、実験の名を借りた極悪非道な行いを目の当たりにしすぎて怒りと悲しみが俺を包んでる。


これが人の行いなんだろうか。


溜まったストレスは悪党で晴らすしかない。


まだ襲いかかってくるヤツらに新たな魔法で裁きを受けさせる。

直立し両手の人差し指を伸ばし少しだけ上を向け、肘を外側に張り出して指揮者のように両手を構えると、俺の2mほど前方に魔法の光で作り出した長さ1m程の虹色に(またた)く光魔法の剣が浮かび上がる。


虹剣乱舞(こうけんらんぶ)


俺は舞い踊るかのように軽やかなステップを踏みながら指揮者のようにして両手を動かすと、俺の手の動きと連動して虹剣が縦横無尽に空中を走る。

光魔法の虹剣は凄まじい切れ味を示し敵の鎧や盾、敵の武器や魔法すら切り裂く。

最初は2本の虹剣だったのだが調子に乗って両手で3本ずつ、合計6本の虹剣がキラキラと瞬きながら舞い踊る。

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