ボクスベルグ商会撲滅作戦が終わらないっす。
マジでどうしてやろうか。
結界に封印したまま死ぬまで放置ってのもありだし、どこかのアメコミヒーロー(?)の映画版みたいに結界内の酸素を薄くして失神する寸前を繰り返す、見た目地味だけどメチャクチャきつい拷問をし続ける事も可能だ。
結界によって周囲とは遮断されてるから火攻め水攻め虫攻めなどなど・・・何でもOK。
コイツらのアイテムボックスの中身はアマテラスに一任した。
アイテムとかも高級品を使っているようなので、装備品なども含めた売却額も足すと相当な金額になるだろうけど、被害者が多過ぎるので損害賠償の一部にしかならない。
罪が多過ぎるから何らかの拷問をしてやりたいのだが、何でも出来てしまうってのは逆に困るんだよな。
毎回選択肢が多過ぎて迷ってしまう。
結論になかなか至らないのでとりあえずは放置したまま思案しながら先へと歩いていく。
それにコイツらは他国から招待されているVIP客。
それぞれが本国に帰れば魔薬販売組織の中心に位置する人とその家族だ。
それが一夜にして消える訳だ。
人によっては顔見せとして跡継ぎまで連れてきているので混乱は避けられないだろう。
カリスマ性を持つ跡継ぎがいれば問題ない。
もしくは有力な跡継ぎが1人だけの場合も少々混乱がある程度で収まるだろう。
が、もし跡継ぎがいなかったり有力な跡継ぎが複数存在していたりした場合・・・血で血を洗う内部抗争が始まる。
逆にコイツらを殺さず生かしておいて、本国には処刑されたと偽情報を流せば良い。
内部抗争の終わるちょい前ぐらいを見計らって本国に連れ戻すとどうなる?
内部抗争の末にやっと得た権力を素直に戻すだろうか?
しかも戻ったヤツらの方がカリスマ性を持っていたら?
激化した内部抗争で疲弊した組織なら潰しやすくなるだろうから、敵対組織からの抗争も勃発しかねない。
下部組織も他の組織からの勧誘で離反も相次ぎ・・・戦国時代に突入するだろう。
自分の手下達が殺し合いをして自分が築き上げた組織が内部抗争によって内側から壊れていく様を・・・もしくは自分が手塩を掛けて育ててきた子分達から裏切られて自分の組織から追われ殺されるってのは、絶望を味わいながら死んでいくという・・・犯してきた罪にふさわしい罰と言えるのかも。
ゴッデスに相談しようと聞いてみたら、俺が自由に決定して良いそうだ。
生死も何もかも俺に一任されてしまった。
ヘルプさんに相談したら・・・どうすれば組織に一番ダメージを与え、コイツらに絶望を味あわせてやれるのか、最適な答えを得るために少し時間が欲しいと言われたので、このボクスベルグ商会ウェルヅリステル地下本部の襲撃が終わるまで保留とした。
巨大な地下施設に何千もの悪党が世界中から集まって来てるので悪魔貴族達も嬉々として殺して回ってるがまだまだ獲物は多く、しかも彼らの場合復讐も伴ってるのでゆっくりいたぶってから殺害していたりもするから、逃げ惑ってるヤツを急いで追いかけたりもしない。
俺の封印結界から逃れる術が無いのは身に染みてるはずだし。
俺が歩いていくと向かってくる身の程知らずなバカも時々現れる。
トンファー程の大きさのある銃のようなもので魔法を撃ってきたのは他国の王族だった。
魔銃と言ってイーデスハリスの世界では1000年以上前に転生者によってもたらさせた兵器。
普通の銃が製造出来なかったのは・・・魔法が発達してる代わりに化学はそれほど進んでいないのが原因だろう。
イーデスハリスの世界では火薬の大量生産は不可能だったのだろうし。
機械製造もキツかったのか、この魔銃は構造も銃と言うより大きなロケットエンピツのようになってる。
口紅程の大きさのカートリッジに魔法が込められていて、撃った後に銃身の後ろから新しいカートリッジを挿入すると銃口から使用後のカートリッジが出てくると言う・・・かなり簡易的なもので俺の貰った知識にある魔銃そのままだ。
俺も簡単に製造できるけど普通に魔法使った方が速いし、威力は言わずもがなだし。
多分、クラリーナがカートリッジに込めた魔法でも威力が強すぎて、銃身内の他のカートリッジすら誘爆してしまって大爆発する可能性が高いだろう。
俺の場合はカートリッジすらもたないだろうな。
まぁ、イーデスハリスの世界でもあくまで『魔法を使えない人達が魔法を使えるようにする道具』というポジションであって、人によってはたかが知れた威力しか持たない残念な兵器と言われている。
魔力剣と同じ様な扱われ方だな。
カートリッジに込められる魔法も簡易的な初級魔法が多く、威力の強い魔法は銃身やカートリッジも強化する必要もあって、普及することも出来ずにいた残念な兵器。
だが、逆に強力で高性能な魔銃が発達しなかったのは・・・
『作れば、次は自分が狙われる』
という理由もあるだろう。
誰でも簡単に扱える完璧な兵器を製造し、大量生産して世間に流通させれば莫大な富を得られるだろう。
しかし、得た富が原因で次狙われるのは自分の番となる。
完璧に作った兵器に四六時中狙われ続け、自分が死ぬまで永遠に続く。
敵は増え続けるだろうからな。
自分の大切な人達も真っ先に狙われる。
だから完璧な魔銃を製造しても一切流通はさせないだろう。
自分だけが使う兵器だ。
流通させるのは対処しやすい安易で安価な武器だろうから。
部下に持たせるのは多少マシかなってレベル。
身内に渡せるのもダウングレードのみ。
じゃないと奪われた時点で即座にコピー品が出回る事になるだろう。
製品複製魔法は素材さえあれば簡単にコピーできる。
複製魔法を使える人はそこそこいるからな。
そんな打算的な理由もあるだろうし、ただ単に銃の構造的な知識と素材の知識がそれほど無くて、リボルバーと言えどベアリングや歯車が無ければ綺麗に回転できない・・・全てを手作りで1から作り出そうと考えるとかなり難しい。
そのくせ、魔法の杖に大きめの魔結晶を付けるとかなり威力の高い魔法が簡単に込められて、取り付けた魔結晶のサイズや色の特性によるが、魔法の種類や数もカートリッジに取り付けた魔石とは比べ物にならない。
カートリッジに魔結晶をつければ同じ様な魔法を込められるが・・・銃なんて無くても杖で済んじゃうんだよね。
より良い物が既に存在してるからこそ技術は発達しにくい。
イーデスハリスの世界では時計と同じ様な状況だな。
そんなような理由だろう。
魔銃で撃ち込まれた魔法も俺とレベル差がありすぎて俺に当たる事無く消滅。
魔銃や装備品を取り上げアイテムボックス内の全てをアマテラスに送りコイツは放置する。
ま、既に真後ろに悪魔貴族の1人が待機してたんで笑顔で『どうぞ』というゼスチャーをしてコクンと頷いたら、コイツの後頭部を鷲掴みしたまま持ち上げて優雅に一礼して嬉しそうな笑顔のままテイクアウトされた。
次に襲ってきたのは娯楽室という名前のギャンブルルームから飛び出してきたボディーガードの一団。
襲い慣れてるのか前衛の盾職の4人が横一列に並び、俺の身長の170cmよりも大きい2m程の盾で壁を作り後列の魔法使いが上から石弾の弾幕で攻撃。
石弾の弾幕が終わりそうな頃に盾職が隙間を開けて中列の4人の剣士達がロングソードを振りかぶって攻撃しようとしてフリーズした。
石弾の弾幕が俺に当たる寸前に消滅してるのを目の当たりにしてフリーズしてる。
俺に当たらない石弾は地面に当たって弾けとんでるのに、石弾の破片までもが俺に当たってないという悪夢のような光景を見ているからな。
自分達が一番戦い慣れた状況なのに魔法が一切効果無いとは想像も出来なかったんだろう。
俺が発した言葉で我にかえり新たな攻撃をしてくる。
「ん? 終わり? じゃあ、次の攻撃は俺の番で良いかな?」
4人の剣士が後ろに下がり盾職が俺を取り囲み盾を前後左右の4方向からシールドバッシュを同時にブチ当てて固定。
その盾を後ろに引いて隙間から後ろの剣士達が突きを入れてくる。
突き入れたロングソードを抜いたらシールドバッシュという・・・地味だけど敵に反撃も何もさせない攻撃をしてくる。
ここまでのリズムの良さは手慣れた攻撃なんだろう。
後列の魔法使い達は俺の足元から魔法攻撃をしようとしているが消滅して魔力だけを消費してる。
やり方を見てると、襲撃し慣れてるなぁ。
かなり効果の高い対個人戦の集団攻撃と言える。
ただし俺を除く・・・だな。
何一つ効果がない。
シールドバッシュが当たってもよろけもしないし、神器レベルのロングソードでも刺さらないし切れる事も一切ない。
自分達の攻撃の効果を確かめようと全員が後ろに下がり驚愕する。
俺はなにもしてないのに血の一滴すら流れてないし、痣の1つもない。
更に後ろを振り返ると自分達の後ろに悪魔貴族が笑顔で待ってる。
最後通告
『どうぞどうぞ、好きにしちゃって良いよ』
この言葉を聞いた悪魔貴族が闇魔法の影のロープで全員を縛り付け、コイツらの装備品を全てを取り外し俺の前に並べてからまたまたテイクアウト。
うん。
気が利くな。
俺にとって便利で良いわ。
俺はアイテムボックス内の全てをアマテラスに送るだけで済むから楽できて良いわ。
コイツら程度の俺への攻撃なんか全く効く訳がないと知ってて、後で驚愕で歪む顔が見たいが為だけに存在を薄くして微笑みを浮かべながら待機して見てる悪魔貴族の趣味も大概だけどな。
全員が影のロープに縛られて引き摺られながら叫び声をあげようと騒いでいるが、すでに全員の口には影のロープが食い込んでいてモガモガしか聞こえない。
俺の顔を見ながら『助けて』って目で訴えている。
今まで散々攻撃を加えていた相手に助けを求めているのって・・・バカも休み休み言えって。
フンって鼻を鳴らして悪魔貴族が向かった方向とは反対方向に歩きだした。
悪魔貴族を解放してからかなり楽ができてるわ。
予想より速くこの地下施設を制圧できそうだ。
こうしてる間にも悪魔貴族達は転移魔法で飛び回り殺戮を繰り返している。
今、脳内の一部でヘルプさんと相談してるのは・・・
『この巨大な地下施設をどうするか』
だった。
アマテラスから好きに使って良いと確約は得てるのだ が、早乙女工房すら持て余してる俺がこの巨大地下施設をどうしていいのかわからない。
「うーん、難しい。難問だわ」
「新たな街でも建設しますか?」
「地下大闘技場ってのがあるから街を作っても娯楽施設になりそう。」
「それとも早乙女ゴブリン組の為に新たな地下施設に作り替えますか?」
「早乙女ゴブリン組の秘匿性を考えると大森林の奥地という、人が容易に入り込めない場所にあるから意味があると思う。いくら地下とはいえウェルヅリステルは首都から近すぎるよ。早乙女ゴブリン組の本拠は今の場所から変えたくないんだよな。大森林の奥地にあるから植生調査とかの拠点にしやすいし、地中の奥には海とつながる地底湖が存在してるってのも今の場所の魅力の1つだし。」
「何かやってみたいという思案はありますか?」
「作ることができるならっていう条件がつくんだけど・・・作れるんならダンジョンを作ってみたいけどな。」
「さすがに作り方まではわからないと?」
「そうなんだよ。アマテラスかゴッデスに聞いたら教えてくれるかも知れないけどね。ブランディックスはシーフやシーカーの為のダンジョン。アゼットダンジョンは盾職の本場。で、マイアートンに新たに発見されたのがアーチャーを育てる・・・ウェルヅリステルなら『格闘家』用?」
「それならば大闘技場もそのまま利用出来ますね。」
「実際は大闘技場の中に入ってから思い付いたんだけどね。これは良くできたな立派な闘技場だから利用するとしたら・・・って具合に。」
「ただ、格闘家用と言われましても・・・」
「そう、漠然とし過ぎて難しいんだよな。近接戦闘に特化した魔物のような魔法が効きにくく遠距離攻撃ではあまり効果がない敵を配置するとなると・・・ダンジョンと言うより魔物を使った訓練施設、つーかアトラクション? みたいに思えてくるし・・・」
などとコレだ! というような答えがまだ出ていない。
これも時間が掛かりそうでヘルプさんとの会話の中でベストアンサーが出るのを待ってる状況。
良い案が出次第動き出すことになりそう。
こっちも保留。
どちらも難しい部分があるので答えが出るまで時間が掛かるだろう。
俺が次に向かっている目的地はこの巨大な地下施設の真ん中付近にある大食堂の奥にある巨大なキッチンだ。
正確にはキッチンのさらに奥にある巨大な冷蔵室と冷凍室。
中に蓄えられている食材がもったいないから回収しに来た。
到着して食堂の中に足を踏み入れると、内部の殺戮は全て終了した後。
なので凄まじい程のスプラッターな光景が広がっている。
血の雨が豪雨だったようだし邪魔なんでいつもの3点セット魔法で清掃し、飛び散った破片は聖魔法の聖炎で焼却処分にした。
浄化を終えると美しい食堂が復活した。
椅子やテーブルは修理できるヤツは修理して回収。
壊れて破片となってる物は分解して素材にしてアイテムボックスに保管。
大食堂というだけあり物量はハンパない。
キッチンに入るとフライパンや鍋なども大きな物が多く、高品質のレベルの高いキッチン製品が多いので回収していく。
食器などにも金かけてるキッチンだ。
食事に五月蝿そうな貴族なヤツらが多いので金をかけてるんだろう。
招待客も多い場所だしな。
ここで働かされていた料理人達は誘拐されてきた闇違法奴隷ばかりなので既に教会シーパラ本部に転送済み。
料理人達は怪我人はいなかったから衣服を整えた後はすでに教会で炊き出しに参加している。
被害者が多いのでコレは助かるな。
今まで料理をしていた教会関係者達は治療のサポートにまわったり、心理的に参っている人達に声をかけて回っている。
教会の人員には限りがあるので協力者が増えるのは助かる。
キッチンを越えて次は冷蔵室と冷凍室に入る。
今まででも最大級イベントの為に大量の食材が蓄えられていたようで冷蔵室も冷凍室も満タンに入ってる。
隣には熟成室もあるし酒類も豊富な種類が大量に置いてある。
手間賃としてもコレは美味しい。
アイテムボックスに次々放り込む。
食材などのリストアップは後にしてとりあえず全部お持ち帰りにした。
食堂を後にして次の場所に向かって歩きだす。
まぁ、この地下施設の目的は殲滅と魔薬知識の没収と奴隷解放などで、目的は皆殺し以外は既に達成してるから後は食材や資材の回収とかで・・・こっちも粗方終えている。
部屋にとじ込もってやり過ごそうとか逃げ回ってるヤツらも悪魔貴族達が復讐という趣味全開で虐殺してるし、悪魔貴族達はこの地下施設については俺なんかよりよっぽど詳しいので取りこぼしなんかない。
負担がメチャクチャ減ったわ。
それと、悪党が連れてきていた幾人かの『乳幼児』の取り扱いでアマテラスと相談したら、アマテラスから【教会預り】にしたいと提案があったのでアマテラスが指定した教会直属の孤児院へと振り分けて転送した。
とりあえずの目的は達してるので俺はブラブラ散歩して歩き回りなが思考を続ける。
首都シーパラにあるボクスベルグ商会シーパラ本部に強行突入した強制捜査も、先ほどようやく関係者幹部を捕縛して一区切りを終え、後は現場検証へとうつっていったと同行している徒影から連絡があった。
こちらも怪我人すらでなくて順調に目的を達成できたようだ。
表向き用の本部とはいえ犯罪の証拠には事欠かない場所なので最高評議会特別捜査隊のメンバーが、隷属の首輪を装備させたボクスベルグ商会幹部を訊問しながら提出させた犯罪の証拠品を仕分けし始めている。
まだ拙い部分もあるがこれは回数を重ねればそのうち慣れるだろう。
流石に聖騎士団のなかでも選りすぐりなメンバーで構成された突撃チームなので、怪我人もなく突入できたから今は後処理の捜査段階になってる。
順調に捜査は進んでいるが、ヘルプさんの報告で首都シーパラで俺が本日おこなったスパーリング『命のやり取りがないというルールがあるけど最高レベルの格闘』というのが、見学者達があちこちで吹聴して大きな話題となってるようだ。
彼らもクラリーナと同じで半分ぐらいは超高速過ぎて動いてる事しかわからなかったが、俺と伝説の格闘家の3人から繰り広げられる高度な技の応酬に心が踊らされたようだ。
なので彼らの共通した結論が
『また見たい』
だったのは仕方がない事だと思う。
格闘イベントに飢えていて高度な技の応酬に飢えていて、そして新たに誕生した格闘王に興奮してるからだろう。
シーパラのあちこちの飲み屋から騒がしい様子がうかがえるという忍からの報告が相次いでいるようだ。
冒険者ギルドにも問い合わせが幾つかきてるとヘルプさんに報告があったみたい。
まぁ、全部『次の武闘会イベントの予定は?』って問い合わせられてるみたい。
ついでに俺との手合わせ希望も数多く舞い込んでいるらしい。
冒険者ギルドは全部断ってくれているようだが、全てを無視する訳にもいかないだろう。
それと、道場関係者からのスパーリング希望がかなり多いという報告もあった。
俺が道場を開かない癖に道場破りの恩恵を受けているだけなのを批判しているヤツらが中心となり、多数の道場が共同で俺を批判しつつイベントを開催して一儲けしようと企んでいるようだ。
そのあまりな言い分に聞いている冒険者ギルドの受付担当者が半ギレして、こめかみに怒りマークを付けながら応対してるのも気付かない鈍感力が高い道場関係者。
スルーしてるだけなのか?
図太いヤツだな。
受付にお帰りくださいと何度も言われても食い下がってくる。
警備員が騒ぎを聞き付けて走ってきたので足早に去って行ったとヘルプさんから報告を受けた。
これはわざと相手の冒険者ギルド職員を怒らせて俺との対決に持って行きたいと思わせるというヘルプさんの見解。
相手の道場の素性を探ると・・・
俺を批判してわざと怒るように仕向けた決闘状を送りつけてきて、マスコミを待機させて俺との決闘を公開しようと目論んでいた道場だったのだが、実際にやって来たのは俺の返信を携えたユーロンド1体のみ。
俺の返事
『俺の作ったゴーレムにすら太刀打ちできないカスが生意気言うな。バーカバーカ!』
という子供のケンカの言い分みたいな完全にバカにした返事にブチ切れて道場生150人、幹部指導員8人、道場主とマスコミのライターを名乗る道場主代行の合計160人がユーロンド1体に完膚なきまで叩きのめされ、道場を隣の道場に道場破りで吸収されてしまった流派の本家の方の幹部が冒険者ギルドで揉めてたようだと、ヘルプさんから教えてもらったが・・・正直に言ってそんな感じで潰した道場が多過ぎてどれの事かも見当すらつかないわ。
けど、場所だけは知ってる。
なにしろ隣の道場からは翌日、お礼として骨組みまで真っ白な扇子と真っ黒な扇子を対で貰ってるからね。
絵や文字や柄など一切無いけど、かなり綺麗な扇子でセンスの良さがうかがえる・・・また、何かのレベルが上がったような気がするが気にしないと決めたので無視する事にする。
隣の道場には
『儲かったかもしれないけど、気を付けないと今度狙われるのは自分だよ』
という返事を出したのを覚えてるからだ。
隣の道場はその後、自重してるのかどうかは知らないけど。
そんな事を考えながら、ボクスベルグ商会ウェルヅリステル地下本部を歩き回ってる。
事務室に入り書類をアイテムボックスに全て入れてヘルプさんに記憶してもらった後、事務室の備品などと一緒にアイテムボックス内で素材にまで分解して保存。
医務室にも同じ様にした。
薬品はそれほど無かったが包帯や三角巾など、そのまま使える物はそのまま保存してる。
ポーション類もそのまま保存してるが純度が低くてレベルも低く、自分の素性をばらしたくない相手にあげる用のポーションとしてしか使い道はなさそう。
まぁ俺が身内を回復させる場合は、回復魔法を使った方が手っ取り早いし、MPも魔法を使って俺の無尽蔵な魔力を補充してあげた方が楽だし。
巨大な格闘場を保有していて格闘イベントという名前の魔薬開発の為の虐殺ショーをしてるのに、簡易的な医務室しか無いというのが、いかにこの組織が命を軽く考えているのかわかる。
医務室に魔薬も何種類か残されていたのでアイテムボックスに入れて成分などを分析したが、ゾンビパウダーを含む物が多いようだ。
少量のゾンビパウダーを使って飲んだ本人の意識や思考を奪い、その代わり強靭な肉体を得て暴力的な力を敵に向かうように仕向けているようだ。
色々な麻薬も僅かずつ配合されていて、戦う上で不必要な痛覚を削除しているようだ。
こんな人体実験を繰り返しているぐらい不安定な魔薬なんか使わないで、ゴーレム作った方が手っ取り早いような気がするわ。
キメラも同じで必要な能力を持ったゴーレムを開発した方が楽に開発できそうなんだが。
これだけの人員を揃えて長い年月をかけたわりには魔薬の成果は低すぎると思う。
キメラなんて何も成果が出てないと実験結果からわかってる。
バカの極みだな。
魔薬で作れる強靭な肉体なんて限度が低いし、そこから産み出される力はたかが知れたものだ。
魔法を新たに作り出す方が早いだろ。
今までの途中経過をレポートで見ても
『自分達は命を軽く扱い敵を使って人体実験をしてる』
という高揚感のみで突き進んだ結果、薄い成果で無理矢理満足しようとしているとしか思えない程の散々な結果しか出てない。
ヘルプさんも同意している。
膨大なレポートがあるのに産み出してる魔薬の程度の低さが物語ってる。
しかも肝心な魔薬生産体制が
『製品複製魔法を持つ奴隷を使って生産』
という職人の手作業レベルの生産力しかない。
アホの極みだな。
この程度の成果で満足しているボクスベルグ商会の代表はバカでアホの極地にいるわ。
まぁ、程度の低さからアマテラスの監視を掻い潜ってきたと言えるのかもしれんが。
人体実験された被害者達が可哀想過ぎるだろ。
俺が歩いてきた場所は全部聖魔法で淀んだ魔素を魔石に変換させている。
ここのボクスベルグ商会ウェルヅリステル地下本部は特に被害者達が多過ぎて、淀みまくっているので魔石だけでなく魔結晶も数多く出てくる。
加害者の歪んだ思想から生まれた魔素も多いんだろうな。
真っ黒な闇属性の魔結晶と魔石が幾つか出てくる。
被害者達の恨みが強い場所は彼らが普段過ごしていたような場所であり、監獄のような檻のある部屋だ。
そこは真っ黒な魔結晶がゴロゴロ出てくる。
俺のもらった知識からも当然のように怒りがわいてきて聖魔法で浄化しまくってる。
悲しい気分になり自然と涙がこぼれてくる。
ボクスベルグ商会ウェルヅリステル地下本部の中の生存者は半分を切ったみたいだな。
悪魔貴族を解放して研究室の研究者達を始末してから生存者はそれほど見てない。
ボディーガード達を悪魔貴族に渡してからは見なくなった。
俺が突入する前は数千人を超す人々がいたのに。
救済すべき奴隷はもういないので悪魔貴族達も楽しみながら抹殺しつづけているから時間が掛かりそう。
俺が急ぐように命令すれば時間をかけずに虐殺するだろうから、俺も時間が許す限り悪魔貴族達を放置している。
追加で悪魔を召喚しようかとも考えたが、そこまで急ぐ必要を感じなかったので放置続行。
見なくなったとか考え出すと出てくるのが敵だったりする。
ゴキブリみたいなヤツらだ。
俺がポツンと1人で脳内のヘルプさんと会話しながらボケッと歩いていたら、ゲストルームからゴーレムが飛び出してきた。
煉瓦ゴーレムの振り回した腕がおれの頭部に当たった瞬間爆散して消滅。
そのまま体当たりもしてきたので煉瓦ゴーレム自体が爆散して消えた。
この煉瓦ゴーレムは突撃用のゴーレムらしく、後に続いて出てきたのが本命の鋼鉄製のゴーレム。
その後ろからボディーガードにタワーシールドを持たせて周囲を囲ませたどこかの貴族が出てきた。
鑑識魔法からの情報では北の大陸にある王国の貴族みたい。
「ようやく出てきたな。早乙女死ね!」
俺の顔や名前を知ってるみたいなので疑問に思っていたら、海外からやって来て俺が潰した犯罪組織のスポンサーだとヘルプさんに教えてもらう。
貴族は威勢よく後ろから命令してるけど、ボディーガード達は煉瓦ゴーレムを突撃させて全くの無傷で消滅させた俺に驚愕して動けないでいる。
2mを超す巨大な鋼鉄ゴーレムも一切動かす事なく、ただ守りを固めているだけだ。
ゴーレム使いではない別の魔法使いが俺の足元から鉄槍をタケノコのように生やしているが俺に当たらない場所からしか鉄槍は出てこない。
この事実を見ても俺の力がわからないのは貴族のみみたいで・・・
「当たらないように何を手加減している! 早く殺せ!」
と見当違いな事を叫んでる。
当てないようにしてるんではなくて、当てられないんだから仕方がないってのが理解出来ないようだ。
成果が全く無い攻撃をやめて新たな戦法を使用してきた。
最前列にいる盾職が俺を中心とした扇状態に広がり廊下を塞いでから少し動いて隙間をつくり、そこから魔銃が出てきて魔法を撃ってきた。
日本の歴史にある長篠の合戦みたいな三段撃ちをしてきて盾の後ろで魔銃を構えた人が入れ替わり立ち替わりで魔銃を撃ってくる。
コレは面白い攻撃だな。
貴族の戦闘に関するレベルは低そうだが、重装歩兵を並べて槍に替わって魔銃を使って初級魔法とはいえ様々な属性の魔法を撃ちまくるってのは斬新なアイデアだろう。
相手側は対処に追われる羽目になる。