ムナクソ悪くなる本部襲撃開始っす。
早乙女工房から転移魔法でヨークルにある自宅に帰宅する。
先に帰宅していたマリアと自宅専属メイドゴーレムのクロが晩御飯を用意してくれてたので、みんなで晩御飯を食べる。
今夜はアイリのリクエストで『手巻き寿司』となってる。
様々な食材を自分で巻きながら話も弾む。
るびのとフォクサも参加しての晩御飯は時折脱線しながらも話は盛り上がる。
「へぇー、今のシーパラ連合国は結構レベルが下がっているんすね。」
「今、言った格闘技だけに限らずフォクサが監視していた500年前の帝国の頃に比べたら・・・技術も魔法も何もかもが低い水準となってるだろうね。ただ、魔法や技術の水準がかなり落ち込んでもシーパラ連合国は豊富な食料と資源で飢えないで、自然の恵みだけでも楽に生活できてしまう・・・だからこそ500年の進化がほとんど進まなかったともいえるけど。」
「確かに。創意工夫が技術を発展させるんだとしたら、しん君が言うようにこの国は食料自給率が異常なほど高いだけでなく、さほど苦労もしないで外国に売るほど大量に収穫出来てしまいますから。」
「500年前の帝国の頃は世界最高水準の技術によってもっともっと大量の食料を世界中に輸出して、儲けたお金の全てを更に技術の発展に注ぎ込んで世界最高水準の技術を大量に作り出していたんすけどねぇ。抱え込んだ技術者の人数も世界最高水準でしたっす」
「技術の発展の先に白虎との戦争があり、帝国は滅亡しているという記憶も・・・国民の中に技術が発展する事のどこかに拒絶反応があるとも言えるだろうな。」
「実際にシーパラ連合国は帝国の生き残り貴族を潰した内戦を除いて、他国の戦争に巻き込まれ何度かの侵略戦争・・・といっても、敵国も本気で侵略しようとはしていない本腰を入れてない、船で小競り合い程度の戦争しかしてない平和な国となってますからね。むしろカレンさんが行った盗賊潰し・・・海外からやってくる盗賊との闘争の歴史と言った方がいいのかも・・・」
「アイリが言うようにシーパラ連合国は国土の南半分が大森林。ほぼ手付かずの未開発地帯なので盗賊がどこからでも入り込み易い環境だし、他国から逃れてきた犯罪者達が逃げ込んできても大森林の中でも自給自足で生活出来てしまう・・・逃亡先としてはほぼ理想的な環境ですもんね。」
「私が盗賊ハンターとして冒険者のSクラスにまでなれたのは、ミーが言ったように次から次へと世界中から盗賊がやって来て終わりが見えない、この国だからこそって部分はありますけどね・・・まぁ、その分苦労も多かったわけなんですけど。」
「格闘家も500年前の当時、帝国軍の軍属から離れていた商人達と、地方閥の貴族に所属していたため白虎戦争に参加してなかった人達しか生き残れなかったようですし。その地方閥所属の格闘家達もシーパラ連合国のシーズ連合との内戦で殺されて消えてしまったか、他国に亡命しないと生き残れない状況ですもんね。格闘技好きの私は時々行われる技術的には他国からみれば低水準の格闘イベントでも楽しかったんですけど・・・今後は同じイベントを見ても楽しめなくなりそうですが・・・」
「? クラリーナは格闘イベントが今後、楽しめなくなりそうなの?」
「どうしても今日のレベルの高い素晴らしいスパーリングが脳裏に焼き付いてますから。これからは自分の中の基準が大幅に変わりそうで。ただ、残念なのは私の動体視力では、しん様達の動きが速すぎて半分以上は何がどうなってるのかよくわからなかったんですけど・・・」
などと話題は尽きない。
が、楽しい時間はそろそろ終わりで俺はボクスベルグ商会ウェルヅリステル地下本部への襲撃の時間となった。
俺が完全結界で地下本部の全てを覆い、地下施設の隠し出口も含めて全部の出入口をふさいだ事はまだ誰にも気づかれていない。
地下闘技場はBIGイベントがもうそろそろ始まる時間となり、闘技場の観客席はもうすでに異様な雰囲気に包まれており、イベントの影に隠れてVIPルームでの魔薬の商談も同時進行されている。
また、地下本部の中には多くのボディーガード達がいる。
普段だと仕事中のはずだがクライアント達はアマテラスの監視もないもっとも安全な場所にいるという事で、ボディーガード達も闘技場とは離れた別室でギャンブルや女遊びに精を出している。
先行して監視している忍は今回用に別途製作した特別バージョン・・・コピーの魔法を内蔵しておりボクスベルグ商会幹部だけでなく、参加者・招待客・技術者などのあらゆる知識を既にヘルプさんに送り終わってる。
情報収集はとっくに終わった事だし後は全滅させるだけだな。
嫁達はるびのとフォクサと共に銀大熊の縄張り内にある露天風呂に行って来るそうだ。
・・・マジか。
俺も行きたいので場所を後で教えてもらって、アマテラスからの依頼終了後に追いかけるとする。
セバスチャンとマリアも同行して、いつものように周辺探索してもらう。
今回はアマテラスが用意した教会シーパラ本部聖騎士団選抜による突撃チームも、首都シーパラにある偽装用ボクスベルグ商会シーパラ本部に突撃後、電光石火な抜き打ち捜査と同時刻に行う必要があるので今まで待ってたが、突撃捜査の準備が完了したとアマテラスから待ちに待った報告がきた。
突撃チームに忍と徒影を何体かずつ同行させるので、突撃チームと徒影はすでに面通しは終わってる。
徒影はバックアップだけでなく協力して突撃するが、一緒に侵入する忍はあくまでも突撃チームにケガをさせないようにフォローするだけ。
徒影が強引に侵入経路を作り突撃チームが付随する予定でいる。
徒影が巨大なハンマーでボクスベルグ商会シーパラ本部の正門を破壊して突撃チームが内部に入り込んだ瞬間を狙って、ここにも完全結界を施し突撃チームのメンバーと忍と徒影以外は結界の外側に移動できない封印をする。
俺も時刻を合わせていつもの襲撃用に作製したサイラスの闇甲殻鎧ではなく・・・普段から着ているパーカーとカーゴパンツとスニーカーのまま。
ウェルヅリステル地下本部内の一番盛り上がってる大闘技場のど真ん中、レフリーの真ん前に転移魔法で移動した。
今から試合という名前の虐殺ショーが始まるという寸前に闘技場の中央に突然現れた見慣れない普段着姿の15才の少年に大声援が消えて水を打ったように静まり返る。
呆然と立ち尽くすレフリーから魔導マイクを奪い取り、この地下施設の全てのヤツらに聞こえるように、膨大な魔力で更に増幅した魔導マイクを使って俺は大きく息を吸い込んでから高らかに名前を告げる。
「はじめまして。早乙女真一です」
突如現れた有名人にざわざわとあちこちからざわめきがおこる。
会話する気もないので無視して話を続けた。
「この通り顔も隠さず普段着でやって来て本名を名乗ったのは訳があるんだ。たいした理由ってのはないんだけど・・・お前ら全員皆殺しってのをアマテラスに頼まれちゃてね。誰一人逃がすつもりはないので誰にも顔を隠す必要すらないってこと。まっ、諦めてとっとと死んで今まで迷惑を掛けてきた人々に詫びてくれよな。」
俺の言葉で大闘技場の中は大騒ぎになる。
何しろシーパラ連合国の闇に隠れた非合法組織を一月程で大量に壊滅させた張本人がいきなり現れて太陽神アマテラスの名のもとに皆殺しを宣言したのだから。
自分達の日頃の行いが最悪なのは自分達が一番知ってる。
太陽神アマテラスの代行者早乙女の悪党に対する容赦の無さは、ここのところの悪党壊滅で証明されてる"事実"だ。
観客席に座って今まで盛り上がってはしゃいでいたのが嘘のように静まり返ってる。
なにかヤバいと感じたシーパラ連合国に住んでいる観客が我先にと逃げ始めた。
他国からやって来てるヤツらは
『なんだこのちっさいガキンチョは・・・』
と思案しながらも予想もしてなかった新たなショーの始まりにニヤニヤしている。
それと同時に魔薬を飲まされてる闘士らが俺へ攻撃しようと突撃してきた。
俺は冷静に光魔法の『聖浄化』を当てて体内の魔薬を完全消滅させる。
彼らも犠牲者だってことは承知してるので、彼らに攻撃するつもりは全くない。
地面に崩れ落ちる寸前に転送魔法で教会のシーパラ本部大聖堂へ送る。
彼らは既に待機中の露草桜を筆頭とした治療チームによって治療が施される。
転送ついでに俺のアイテムボックスから着させたサイズぴったりの衣服に包んでいるのはサービス。
対戦相手という名前の虐殺予定者も衣服を着替えさせてから教会に送る。
闘技場にいた戦闘奴隷がいなくなった頃、今まで呆然としていたボクスベルグ商会の護衛の社員達が、ここにきて防具装備をやっとこさ装着できたようだ。
隊列を整えて陣形を作り俺に向かってきた。
「弓隊攻撃開始!」
大量の矢が降ってきた。
「撃ち方やめ! 槍隊は陣形を維持したまま進め!」
「「「早乙女死ねぇー」」」
弓の一斉射撃を終えた後に槍隊が隊列を組み槍衾を作り上げた状態で早歩き程のスピードで隊列を乱すことなく突撃してきた。
このイーデスハリスに来て初めて一子乱れぬ軍隊の集団攻撃を受けたような気がするな。
しかし、軍隊攻撃をしてきたのが犯罪者集団の地下組織の社員達ってなんの冗談だ?
そういえば、軍隊とまともに戦った記憶もないな。
軍隊と言えばシグチスの亡命政権側と戦ったけど、あれは広い場所での戦闘はほとんど無かったな。
部屋の中みたいな狭い場所での戦闘が多かったし。
・・・とはいえ、こいつら程度がどんな攻撃をしても全く効かないのは一緒なんだけど。
今日は普段着だし魔法で遊ぼうかな。
降り注いできた矢は触れることなく、俺が空中に広げたエアーカーテンに刺さって止まり、止まった矢は転送魔法で俺のアイテムボックス直送で1つ残らず全回収。
槍衾にはファイヤーウォールで隊列を足止めする。
突如目の前現れた炎の壁に前進することも出来なくなる。
敵が戸惑っているうちに魔法で上から殲滅させるのが良さそうだ。
槍に対抗するのは、やっぱ槍だよなってことで・・・
『アイスジャベリン』
敵の隊員の頭上1m位の超至近距離から超高速で飛び出す氷の槍に槍部隊では何も出来ずに瞬殺。
これが片手剣とラウンドシールドの剣闘士スタイルなら一人や二人位は剣で弾いたり盾でカバーしたり、何かしらの動きで避ける事も出来たかもしれないけど、密集した槍部隊では長物武器の為に取り回しもきかない。
密集陣形の中で何も出来ずに全滅する。
指揮していた部隊長も一緒に死んでるから、弓部隊は何も出来ずに立ち尽くしてるだけ。
『氷槍』
呆然とする弓部隊の足元から脳天に貫く2m程の氷の槍によって弓部隊も全滅した。
ん?
気づいたら観客席の観客達が大声で怒鳴ってる。
「バカヤロー!」
「なにやってんだ!」
「早く殺しあえ!」
「ほらほら、次出てこい!」
もしかして、コイツら自分達が闘技場の外側にいるから、安全圏で高みの見物とでも思ってるのか?
まだ手に持ってるマイクを使って聞いてみた。
「もしかして、お前らってショーの続きだと勘違いしてないか?」
「うるせーこのヤロー。闘技場の中とは違って観客席は結界によって安全が守られてるんだよ。バカにはわからないか?」
観客席から下品な笑い声が響く。
「結界? そんなのどこにあるんだ?」
『火弾×10』
俺が無造作に放った火弾10発が観客席にぶち当たり、周囲を巻き込み火柱が上がる。
今度は観客が呆然としている。
「こんなに程度の低い結界なんて俺が浸入する直前に消したわ。あ、ついでに出入口もふさいだから逃げ道なんてないよ」
それから大パニックに襲われた観客達が出入口に向かうが、俺の完全結界によってドアノブに触れることさえできない。
既に逃げようとしていたシーパラ連合国に住んでいる悪人たちが必死に体当たりしたり、何とかして逃げようと試行錯誤を繰り返している最中。
大騒ぎで逃げ惑う観客に向かって火弾をマシンガンのように連射。
着弾と同時に上がる火柱。
つーか、火弾で火柱なんて上がらないはずなのに俺の魔法の威力が凄まじ過ぎて、着弾と同時に3m以上もの高さの火柱が上がる。
『賢者』マジ半端ねぇ。
【いえ、早乙女様違います。賢者となって威力が上がっても精々着弾と同時に破裂する程度です。ここまで威力が上がっている原因は、早乙女様の中に存在する神力によって威力が通常の限界を遥かに越える程、底上げされているからなのです。早乙女様の中に存在する神力と早乙女様の融和が一段と進んでいる証拠ですね。】
ヘルプさんにツッコミを入れられてしまった。
わざわざ炎という分かりやすい魔法を連発しているのは、恐怖を最大限に煽るためだ。
目に見える恐怖を使用しているので観客にとっては阿鼻叫喚な状況が続く。
闘技場というすり鉢状の傾斜のきつい斜めに作られた観客席の中で、逃げ惑う観客があちこちで雪崩落ちて魔法に関係なく圧死するヤツらも増えている。
死体の折り重なる場所にも火弾を撃ち込むので人体の破片が周囲に飛び散り、破片までもが火柱を上げる地獄絵図が観客席に広がる。
人体の燃える臭気が俺を包み込み始めた頃、ようやく闘技場にいた悪党共が全滅。
聖魔法で臭気もアンデッドも浄化。
さっ、次はこの地下施設の最下層にある研究所だな。
転移魔法で飛ぶ。
研究室の最奥にある場所には5体の悪魔貴族達が1体ずつ俺の完全結界によって、身動きもできないように地面に大の字になって縛りつけられている。
その周囲には研究者達が何とかして封印を解除出来ないかと右往左往している。
「おっす。俺の結界はお前ら程度じゃ解除出来ないから、もういい加減諦めろよ。悪魔達はもうとっくに諦めてるだろ。」
「お前は、早乙女か? なぜこんなことをする。」
「なぜもクソもねぇーよ。さっきマイクで言っただろうが、アマテラスからお願いされてお前らを皆殺しに来たって。」
「クソっ、貴様はもう許さん。」
研究者の1人が魔薬を飲みこむと白衣と衣服がバリバリに破れて全身がムキムキマッチョに変化した。
どうみてもモンスターのような風貌に変化するとは変な魔薬だな。
薬を飲んで全裸になるなら伸びる服を着ろよ。
いちいち全裸になるなよ。
右腕を上から振り回すように振りかぶって右手で殴りつけてきた。
バレーボールのアタックのような攻撃。
スピードとパワーは通常の人間の比ではない。
とはいえ・・・先程までスパーリングしていた3人と比べるのは可哀想なレベルでしかない。
まぁ、格闘経験も全くないヤツが力任せに攻撃してきただけだから・・・こうなるわな。
この程度の攻撃では俺は避けもしない。
俺の額に右手の拳が当たった瞬間、右腕がはぜるように弾け飛ぶ。
俺に血がべちゃっと掛かるが即座にいつもの三点セット魔法で浄化。
バカは痛みも知性も消えているのか、肩から存在しなくなった右腕を無視して、左手で自分のアイテムボックスから片手斧を取り出して、叩き付けるように殴ってきたが左腕も斧も弾け飛んで消滅した。
いい加減ウザいんでバカに火弾を脳天から直撃させて火柱で消滅させた後に、三点セット魔法を使用して自分の体を綺麗にした。
最初からこうしとけば三点セット魔法は一回で済んだな。
魔薬という超ドーピングを使用しても、ドーピングをした状態のまま武器攻撃をしても一切効果のない事に気づいた研究者達は、今まさに飲もうとしていた魔薬を飲むのを止めたようだ。
「お前ら程度がワケわからん薬を飲んで武器攻撃してところで、俺に効く訳がないってやっと気づいたようだな。」
「・・・」
「まぁ、お前らなんかはどうでもいいんだけど・・・では、"被害者"の悪魔貴族達は自由にして良いよ。」
そう言って俺は悪魔貴族を縛り付けてた契約と完全結界を解除した。
自由を取り戻した悪魔貴族達が話し掛けてきた。
「早乙女様はご存知でしたか?」
「全部知ってるって事ではないけど、ある程度は・・・それなりに情報収集してきてるからね。」
「しかし、我々を縛り付けてたのは・・・」
「そっちは気にしないで良いよ。ほらこの通り・・・」
俺が部屋の奥の方にトコトコ歩いていって奥の壁を右手で軽くノックすると轟音が鳴り響き、巨大な壁が崩れ落ちもうもうと粉塵が舞い上がる。
粉塵や瓦礫が邪魔で視界が最悪だったので全てアイテムボックスに収納した。
壁の奥には隠し部屋があり、その中には白い大きな翼を持つ天使が逆立ちのように逆さまになって空中に俺の完全結界によって縛り付けられている。
右手にロングソードを持ち左手に笏を持つ主天使の長と言われる『ザドキエル』のようだ。
この主天使長がボクスベルグ商会を影で操っていた主犯。
俺が抹殺した4人の神によってかなり昔に地上へと送られ、人間を操り悪魔を使役させてイーデスハリスの世界中に魔薬を広めていた元凶だ。
研究者達は自分達の力と知識の源であった主天使長が俺によってなすすべもなく縛り付けられて固定されてる事にようやく気づいて驚愕して震えてる。
悪魔貴族程度では主天使長には逆らえなかったから仕方がない。
だからこそ悪魔貴族達は被害者だ。
新たな支配者の俺が悪魔貴族達に命令する。
「君達も長年の怨みがあるだろうからこの地下施設内のバカ共を皆殺しにしてから悪魔界に帰還することを許す。」
「はっ、ありがたき幸せ」
「ただし、君らも鑑識魔法が使えるだろうから言っておくが、この地下施設の奴隷は全て被害者なんで手出ししないようにな。」
「了解いたしました。では、悪人は自由にしても?」
「そっちは任せる。」
5人の悪魔貴族達が嬉しそうな顔でニンマリ笑うと、貴族らしく優雅に一礼してから転移魔法でそれぞれ飛んだ。
主天使長が喧しく叫んでいる。
クソ騒がしいヤツだな。
「くそっ、何故だ! なぜ人間程度の結界が解除出来ないんだ!」
「うるさいバカ。高々主天使長クラスが俺の完全結界を何とか出来るわけないだろ」
そういうと俺は自分の中に封印してある神気をほんの一部解放する。
後光が俺を後ろから照らし莫大な神力の一部が解放されふわりと俺の体が空中に浮き上がる。
暴力的なまでの威圧感が周囲に押し広げられると研究者達はその場で崩れ落ちて失神。
ざわざわ五月蝿かったから丁度良い。
主天使長は自分の力を遥かに越える力を見せつけられて驚愕して目を見開いたままフリーズした。
こいつも五月蝿かったから丁度良かったわ。
「力の差がわかったか?」
「・・・」
俺が質問してるのに押し黙る天使に少しだけイラっとしたが、威圧感によってフリーズしたままなので返事すら出来ないって気付くのに10秒位かかった。
神気を自分の体内に戻してから封印し直した。
ここまでの力の差を見せつけられて、しかも自分達天使の上司である神の領域にいる存在だと気付いた主天使長は俺に逆らわないので完全結界も解除してやった。
両膝を地につけ項垂れる主天使長が質問してきた。
「早乙女様は神なのですか?」
「俺の事はどうでもいいとして、君は元々は神の命令だとはいえ暴走して好き勝手にし過ぎたから、これからアマテラスによる教育的指導だな。」
主天使長をアマテラスとゴッデスが待つ神域へと転送した。
ゴッデスまで来てるから説教は長くなりそう・・・年単位だろうな。
まぁ、どうでもいいんだが。
俺が4人の神をブチ殺してから、ゴッデスとアマテラスに10年の歳月を掛けてイーデスハリスの世界は4人の神から解放されたはずなのに、10年も知らないふりして好き勝手に遊んでいたんだから長い長い説教となるのは仕方がない。
しかもバレないように人間を使って悪魔貴族を複数召還させ、闇結界で地下施設を覆い隠してアマテラスの監視から全てを隠す。
監視が行き届いていない事を良い事に、好き勝手に暴走してたんだから悪質極まりないわな。
好き勝手したのが10年だし説教が10年を越すのも仕方がない。
アマテラスも『フッフッフッ』と不気味な笑い声を上げてたからな。
別に消滅させても良いんだけど・・・コイツの場合は寿命なんてないヤツだから永遠に働いてもらった方が良いだろうなっていう、そこまで深く考えないでアマテラスとゴッデスに丸投げしてやった。
とことんこき使われる存在となるだろう。
まぁ、神の命令を聞き実行することが天使にとって至上の喜びだったはずだし・・・ご褒美か?
もう関係無いだろうしどうでもいいや。
俺は研究室のもう1つ隣の部屋に歩いていって厳重に施錠されてるドアを無造作に開ける。
ここは研究者達の実験室。
人類のみならず魔獣や精霊達の様々な生物達が闇魔法や薬によって掛け合わされてキメラとなり実験を繰り返されている・・・見ているだけで胸糞が悪くなってくる。
彼らは既に手遅れだ。
俺にはどうすることも出来ないので、雷弾を使って殺害していく。
涙が溢れ出てくるが狙いは外さない。
せめて一瞬で終わらせてあげよう。
研究者達の知識欲が産み出した犠牲者達に涙が止まらない。
俺が何とか出来そうな生物も精霊もいなかった。
100をゆうに越える実験体達の全てを葬った。
実験室の中の資料や実験道具などと、隣の研究室で失神したままの研究者全員、研究室にある全ての資料などの全てを結界に包み込んで燃焼させる。
『獄焰』
地獄の焰を召喚させて数千万度という超高熱によって灰すら残らず燃焼。
残った塵ごと異空間に封印する。
研究者達は魂すら消滅。
任侠ギルドトーナメント1回戦で戦った『卯月要市朗』と同じで魂ごと消滅させた。
研究者達のほとんどはスカウトされて自らの意思でボクスベルグ商会に入ってる。
しかし一部は否応なしに強引に誘拐されてこのボクスベルグ商会に連れられて来ていたのだが、その後の行動はスカウトされた研究者達と全く同じ。
実験を繰り返し命を命と思わない行動しかしてない。なので情状酌量の余地は一切なく全員一緒に消滅させた。
反対した研究者達は実験台となり抹殺されてるのだろう。
今現在のボクスベルグ商会ウェルヅリステル地下本部内の状況は、5人の悪魔貴族が暴れまわってるような状況があちこちで繰り広げられてる。
悪魔貴族達は俺の命令を忠実に守ってるようだな。
捕らえられている奴隷を解放するように奴隷の主人を優先的に殺害している。
盾にしている奴隷に触れることなくターゲットの悪人達を殺して回っている。
悪魔貴族達には高位の光魔法しか攻撃の効果がないのに、この地下施設内には光魔法の使用者はいない。
悪魔貴族によってもたらさせた闇魔法の使い手がほとんどだろう。
悪魔貴族にとっては闇魔法は栄養素でしかないから元気付けるだけ。
まぁ、悪魔貴族を解放して仕返しさせてあげてるのは全て計算済みの予定通りだし。
俺は研究所を出て地上に向かって歩きながら遠くの場所で解放されて何も出来ずに右往左往してる奴隷達を次々と教会のシーパラ本部大聖堂に転送魔法で送る。
悪魔貴族達にはそれぞれ忍が監視してるから、送られてきた情報を受けたヘルプさんの指示に従ってるだけだったりするが。
俺が彼らの目に触れることはない方が良さそうだと思ったのでこういう措置をしてる。
彼らの傷つけられた肉体はもちろん、精神的なケアも俺が転送魔法で送っている大聖堂に露草桜が待機してる今は・・・俺がすることなんて送ってあげる事だけだろう。
暴れまわってる悪魔貴族達も無理矢理人間に契約させられて、数十年以上も溜まっていたストレスを発散できる良い機会だ。
ボクスベルグ商会ウェルヅリステル地下本部をうろうろ歩き回りながら頭ではそんな事を考え、ヘルプさんの指示に従って囚われていた奴隷を大聖堂に送りこみながら・・・施設内の使えそうな資材は解体してアイテムボックスに保管する。
大きめの魔石、魔結晶、魔水晶などの使い勝手の良い資材は山のようにあって少し顔がほころんでしまう。
貴金属、原石、金属類、種類も量も多く保管されているので・・・こんだけあればアマテラスからの報酬は今回の分はいらないわ。
あらかた資材は回収し終えたので次の目的地のVIPルームに転移魔法で飛ぶ。
VIPルームが並んでいる場所は俺が個別に封印してあるので、悪魔貴族達は察したようでこのへんには来ていない。
つーか、俺が封印したから来たところでどうやっても入ることが出来ないんだけど。
中の様子を伺うが全てのVIPルームはパニックになっているようだ。
部屋を出るどころか扉に触れることさえ出来ない。
ここはダンジョンじゃないから転移石なんて壊したところで意味ないし。
目の前の部屋の中には商談していた二組の夫婦と秘書が二人ずつが大人数用のソファーセットに着席していて、さらに扉や壁を破壊しようと両手持ちハンマーを振り回すボディーガードの面々は5名ずついる、かなり大きな部屋となっている。
そして二組の夫婦はそれぞれ違法奴隷を1人ずつ連れてきていて・・・彼らには地獄だった。
逃げるどころか移動もままならないストレスを奴隷にぶつけている。
他のVIPルームも同じような状況で同じように奴隷に八つ当たりしている。
声をあげることさえ隷属の首輪などで禁止されているので、くぐもった声すら手で口を塞ぐようにして漏れないようにしている。
一瞬、絶句してしまったが即座に全てのVIPルームの全員を別々な結界に包み込んでそれぞれ個別に封印。
音すら結界で封印したので騒がしい室内が静まり返る。
突然の状況の変化に戸惑う奴隷達を綺麗な衣服に着替えさせながら露草桜の元に転送魔法で送る。
露草桜は今、アマテラスの代理人と言える執行官モードになってるので、太陽神の魔力に制限なんかないし癒しの力にも限界なんか無い。
教会内部は俺が送った大量の怪我人や病人達の治療や精神的なケアである意味『戦場』となってるが、アマテラスも張り切ってるようだし、ゴッデスのサポートもある今ならあらゆる治療が可能だろうから、俺も心配もしないで次から次へと送っている。
転送魔法ついでに結界に封印した全員の装備品を没収して全員全裸にさせる。
俺の特別製の結界によって自分のアイテムボックスにアクセスすら出来ないので、女は金切り声をあげてうずくまり男は股間を手で隠しながら大騒ぎになってるがもちろん結界が遮断してる今は一切の音も声も聞こえない。
さて、コイツらはどうしてやろうか。