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新ダンジョンの発見と恐怖の記者会見が始まったっす。

式典の第二部が開始されたのだが、まさか第二部開始早々に魔動マイクを握っていた司会者が歌い始めるとは思ってもいなかった。

しかも・・・地球のトップクラスのオペラ歌手のような美しい声で、すっげぇ上手いし。

歌手が本業で司会者がオマケなのかもってほどのレベル。


ただ・・・こういう厳然たる雰囲気の時にオペラ調で上手すぎる歌ってのは考え物で・・・っていうか、簡単に言うとメチャクチャ眠たくなってきた。

休憩が終わったばかりだし。

ステージ上から見える観客たちも同じようで、こっくりこっくりと舟をこぐ人が増えてきてる。

4人の嫁達やおかみさんもゆらゆらしてるし、おやっさんなんかは完全に寝る体勢・・・天を仰いだ状態でイビキまでかいてる。

おやっさんにつられて周囲にいる人達も居眠りをする人が絶賛増殖中。


ただ・・・今の時間的に沈みつつある夕日が大聖堂の大礼拝堂の壁の上部にある巨大なステンドグラスにオレンジ色の光が斜めから差し込み、大礼拝堂の中の白亜の壁にオレンジの光が色づけるステンドグラスの模様が乱反射して、今まで見たこともない大礼拝堂の内側の全体に広がる不思議な色合いをした全体の模様に見とれることがなければ俺も眠っていたかもしれない・・・事実、結構眠いし。


今寝てない人たちは俺と同じように大礼拝堂の中に広がる不思議な色合いの空間に見とれているようだ。


逆に、我慢できなくて周囲にユラユラ揺れてる人達を見てクスクスしてる人も多くいるし、つんつんとイタズラしてる人も結構いる。

俺も舞台上ではなく観客席側にいたら笑ってただろう。

アマテラス情報によると・・・この歌は10分以上は続く長い歌がいくつかのシーンに分かれているのに曲調の変化が乏しく、アマテラス本人も眠くなっちゃう歌で、神にまで影響を及ぼすほどの催眠効果の高い歌だとこぼしてた。


そんなさなか首都シーパラに放ってある忍からやっと『賞金稼ぎギルド』シーパラ本部の場所が特定できたとの情報が舞い込んできた。


アイテムボックスから新たな忍を送って、より多くの情報収集を指示した。


賞金稼ぎギルドって名前からしてこちら側の勝手なイメージで表通りにはなく、裏通りのさらに奥を中心とした場所の探索させていたんだが、裏通りにあるのは賞金稼ぎ達のたまり場や連絡用の支部ばかりで、本部の場所がが全く特定する事すらできてなかった。

まぁ、よくよく考えれば・・・こんなんでもシーパラ連合国公認だけでなく、イーデスハリスの世界ではメジャーな組織で世界各国で公式に認定されているギルド。

裏通りなんかに隠して本部を作る必要もないわな。

俺もヘルプさんも捜索する方向性を完全に間違ってたよ。


そういえば・・・シグチスにあった賞金稼ぎギルドも中央行政地区の表通りの中にあったような・・・今の今まで思いっきり忘れてたけど。

今更過ぎるな。


賞金稼ぎギルド本部から情報収集すれば他国からやってくる賞金稼ぎの様々な情報も俺にあがってくるだろう。

他国から渡ってきた面白そうな敵チームの情報や、俺の家族などに害を及ぼしそうなチームの情報を中心に情報収集させることをヘルプさんにお願いする。

ここのギルドはレベルが低すぎるし、他国からやってきたチームのみの監視でもよさそうなんだけど、こういう敵に限って俺に直接勝負を仕掛けてくるよりも、俺の周辺に害をなすような手段を選ばないことに誇りを持ってる・・・ヤカラな考えを持つ奴らが多いので、積極的に監視しないといけないだろう。

現在情報収集中の賞金稼ぎギルド本部内にある全ての会議室での話題の中心は全部俺の事で、彼らもまた同じように俺の情報収集をしているようなんだけど・・・

いかんせん百を超える複数のゴーレムを操って情報収集を行い、真偽関係なく様々で莫大な量の情報もあっという間に情報仕分け可能なヘルプさんがいる俺とは、戦う前の前哨戦である情報収集すらレベルに差がありすぎる。


情報戦も完勝だな・・・ってか、負ける要素すらないけどな。


俺の知人周辺にはスパイ防衛用の忍も数多くいる。

ストーキングすることも不可能。


今までなら情報収集するためにストーカー行為・覗き・盗聴などを専門職とするスパイギルドに注文するなりして金で解決していたのだが、肝心のスパイギルドはすでに

『早乙女関連のスパイ行為はお断りさせていただきます』

という状態で何度も門前払いをされていると会議の議題に上がってる。


賞金稼ぎギルド職員や賞金稼ぎ達が今まで築いてきた裏の組織とのパイプを生かして、共闘して早乙女と対抗しようという動きもあるようだが、『早乙女に敵対した組織は木っ端みじんになり、跡形も残らないほど全滅する』という信じられないような理由で断られた挙句・・・どこそこの誰にこんな仕事を頼まれましたけど我が組織は貴方達に敵対するつもりはありません・・・と、早乙女商会や早乙女工房に密告の手紙が複数来ている始末だ。


まぁ俺が潰した裏世界の組織の情報は、マスコミの妄想や愛憎入り混じった雑多に出てる情報と違い、警備隊が正式に発表している犯罪組織の情報、プラス逃げてきたチンピラ以下のヤツラすらほぼ逮捕され行く現実が、正確に裏世界で広がっていっている。


その現実を無視して俺と敵対行為ができる裏組織はすでにシーパラ連合国の首都シーパラにはもう存在しないって事だろう。

それに俺の持つもう一つの組織である任侠ギルドに自ら身売りしてくる組織も出てき始めてる。

こちらの場合は、任侠ギルドのトップである俺の代行者『徒影』達の振り撒く圧倒的な暴力が関係してるけど。


ゴッデスとアマテラスに無理やり頼まれた仕事とはいえ、数多くの汚れ仕事をこなしてきた成果はこんなところにまで広がってるのは嬉しい方の誤算。

それに任侠ギルドが叩き潰して強制的に吸収した裏組織も数多くある。


やってて良かった・・・カスの絶滅。

・・・ってことなのかな?


賞金稼ぎギルド関連の情報が様々なところからヘルプさんに上がってきて、俺にまとめられて報告されるので・・・すでに賞金稼ぎギルド本部が管理できている自分たちの組織のすべての情報を超えつつある。


先程、早乙女工房に突撃してユーロンドを強奪しようと企み、3チーム合同でたった2体のユーロンドにあっさり撃退されてしまった賞金稼ぎ達が、聖騎士団による隷属の首輪を使用した尋問によって洗いざらいの犯罪行為を吐かされてる情報を、賞金稼ぎギルドは事実確認すらまだ出来ていない。

噂話として賞金稼ぎの数チームが対早乙女で行動中だと話題になってた程度。


今のところ俺が楽しめそうな賞金稼ぎがいるチームや個人の情報はないようだ。


これだったら殺し合いは無しでというルールの下に行われる『リュドミラ・ゲッペンスキー』や『イワノス・ゲッペンスキー』や『アクセル・ビッタート』の3人との公開スパーリングの方が楽しめそう。

レベルの低い賞金稼ぎどもに比べると、比べる事が失礼に値するほど格闘レベルが高い3人。

・・・3人とも素手格闘技のレベルはこのシーパラ連合国内だけでなく、イーデスハリスの世界の中でも上から数えた方が早いし、もはや伝説的な逸話を数多く持つイワノスとビッタート卿に至っては高レベルな弟子たちを数多く育ててるからな。


3人のステータスを鑑識魔法を使用して確認してみたが・・・リュドミラは立ち技系の格闘技のステータスが高くて空手とキックボクシングがマスタークラスになってる。


イワノスのステータスを覗いた限りではパワー系の獣人の中でも素質を持ち高レベルにならないと発現しない、有り余るほどの才能と血のにじむ訓練を必要とする上級格闘技の『覇獣拳』は上級までマスターしてる。


ビッタート卿は祖父『ノルシアム・ビッタート』直伝で、ダークエルフにしか伝承されてなかった『魔装神殺拳』もかなりのレベルまで使えそうだしな・・・素手の公開スパーリングでも相当楽しめそうで、すでに俺の中でのワクワクした気持ちが止まらなくなってる。


俺を含めた当事者の4人は式典の後に予定されている公開スパーリングの事を考えて、闘志がすでにあふれ始めていて、一目瞭然ってなほどにニヤニヤが止まらない状態なので周囲の人達を若干引かせてる。

まぁ・・・大半の人達は寝てるんだけどね。


しかし俺以外の3人は格闘技の世界ではシーパラ連合国内のみならず、イーデスハリスの世界でも百年以上前から伝説クラスの有名人なので、記者団の中にいる格闘技系の新聞や雑誌記者達は彼らの生の反応を見て、かなり興奮気味に用意していたメモ帳にペンを走らせている。


催眠効果の高いオペラのような歌がまだまだ続きそうで眠気も収まらないから、俺のアイテムボックス内の整理ついでに今夜襲撃するボクスベルグ商会ウェルヅリステル本部のMAPを使ってイメージトレーニング。

救助する奴隷がかなり多いので衣服・食事・薬などの準備も、今からしておいた方が良さそう。

老若男女様々いるようだし衣類のサイズはいくつかのサンプルを作っておいて現場で微調整をしながら、俺がステータスから着替えさせたほうがいいだろう。

いちいち脱がせずに済むしね。


こういう時に以前購入した大量の衣類の素材が役に立つ。

元々は早乙女の家族内で使用(コスプレ)するために購入したんだが、すでに早乙女家の5人は龍布を使用した全ての衣類を換装済み。

今では衣類の素材は俺のアイテムボックス内の肥やしとして余ってたので有効に活用してるだけ。


獣人・亜人など様々な人種がいるので食事も準備して、アマテラスに今のうちに渡しておいた。

アマテラスからのお詫びとして治療を終えた後に渡した方が食事のありがたみもアマテラスへの信心も倍増するだろう。

非常時用の炊き出し備蓄は本来はシーパラ連合国の教会組織の予備として大量に準備されていたのだが、つい先日に革命した本国に緊急炊き出し用に送ったので、シーパラ教会にはあまり残されてないという話だ。


マイアートンの方は町の中は完全に落ち着きを取り戻した。

自然を利用したマイアートンの町を防御するお堀代わりのマイアートン川を利用した、早乙女ゴブリン組が形成した防衛ラインがあるが、ゴブリンアーチャーの弓の射程を飛び越えてさらに上空から、マイアートン町に飛来する昆虫魔獣がまだ時々いる事はいる。

しかしマイアートンの周囲を取り囲む城壁のような壁の上にいるアーチャー達が作った第2次防衛ラインを超える昆虫魔獣は今では皆無となった。


この騒動の中で突如アーチャーの才能が花開いた人々がメインの、さらに即席で結成したアーチャー部隊とはいえ実戦経験の豊富な、警備隊訓練センターと冒険者育成学校のベテランの講師たちが指揮をする実戦の中で、新人達の経験値の上昇はすさまじく・・・その成長っぷりは目を見張るほど。


彼らの活躍も現マイアートン副町長で農業ギルドマイアートン支部のギルドマスター『桂浜蔵人』が今後推進する予定『マイアートンはアーチャーを育てる最高の環境』に利用させてもらう。


今回の昆虫魔獣の大襲撃を最大限利用するというマイアートン町の町おこしに貢献してくれる事になるだろう。

転んでもただでは起きないような施策にする予定。


町長執務室に監禁状態の現マイアートン町長『クレバ・コンドリフ』はヘルプさんが忍を使って監視を続けているが・・・もはや半狂乱状態となっており何を言ってるのか理解不能となってる。

俺も遠見魔法で直接覗いてみたが・・・頭をかきむしりながら念仏を唱えてるようにブツブツと何かを話してるのだが、何をいってるのかさっぱりわからない。

もしかして呪いの類いではないのかと調べたが、クレバは呪術のスキルは持ってない。

・・・メチャクチャ不気味な状態ってだけだった。


クレバは俺の周囲には必要のない人物で失脚を狙ってるので壊れたまま放置。

このまま騒動の最中に強制的に入院させてマイアートン町長の座から引退させる。

その後に桂浜が町長となる計画を押し進めた方が俺には都合が良い。


そんな今後のマイアートン復興計画をヘルプさんと練っていたら、俺が待ち望んでいた一報が入ってきた。

マイアートン川の対岸で暴れ回っていた森林タイガーを、サポート&新ダンジョン捜索していた魔獣ゴーレムからで・・・


『新ダンジョン発見』


俺が想像してたよりも早い一報だったその理由は・・・超巨大な要塞型のダンジョンだったからだ。

教えてもらった場所を上空から遠見魔法を使って見てみた。


俺がビルドゴーレムに作らせた早乙女ゴブリン砦を遥かに上回る規模の巨大な要塞で、周囲をぐるりと取り囲む塀にはビッシリと蔦で覆われている。

外壁や屋上部分にも蔦が絡み付いているので、上から見てるだけだと大森林に広がる緑と一体化してるように同化してて、全くわからんな。


周辺の状況がわかったところで、まずはダンジョンから漏れ出てくる昆虫魔獣をどうにかしないといけないだろう。


要塞の周囲全てに結界を施して、要塞の外周部にあるお堀ごと封印してから、複数の探査魔法を使用して詳しく調べてみる事にした。


蔦がビッシリと覆ってる塀の上部や内部も建物と連結していて、地上5層と地下5層からなる建物と外庭と内庭で構成されている内部構造。

内部に仕掛けが施されているトラップの数や種類はそれほど多くなくて、トラップは普通のレベルのダンジョンと言えるだろう。


外観や内部構造も、まさしく要塞の名にふさわしい巨大なダンジョン。


地下5階の最下層1番奥の場所にボス部屋があり、ボスを攻略するとアイテムと魔結晶が入手・・・ん?

さらに追加で・・・転送部屋が解放されて他国にあって入り口が存在しないダンジョンに繋がるようだ。


中にいる魔獣のレベルは徐々に上がっていく一般的なスタイルで、出入口近辺の序盤&内庭&外庭は昆虫魔獣の大群がひしめき合っている。

ここからあれほどまでに大量の昆虫魔獣がわき出てきてマイアートンまでやって来てたんだろう。

ダンジョンの全てを封印し終わり、出入口は塞いだので今後は減る一方となるけどな。


ダンジョンの探査は今はどうでもいいのでとりあえず後回しとして、マイアートン周辺の大森林の生態系が破壊されないうちに、出来るだけ早く大量発生した昆虫魔獣の処分をしないとな。


すでに暗くなってきた大森林から森林タイガー達はお土産付きで帰還させ、替わりに俺のアイテムボックスで作りおきしてあった徒影と忍を50体ずつ転移魔法で送り込む。

ヘルプさんの計算では・・・一晩中ゴーレム達が奮闘するだけで、マイアートン周辺の昆虫魔獣の生態系は壊されないで済むようだ。

空を飛べる昆虫魔獣達は陽が暮れたら活動しなくなるので、太陽が沈んでマイアートンが暗くなるまで早乙女ゴブリン組には活動してもらうだけで、明日には必要なくなる見通しとなってる。


それにマイアートンから緊急出動要請をしていた、都市ヨークルからの援軍がもう少しでマイアートンに到着するので、その後にゴブリン組から第一次防衛ラインを引き継ぐ形となるだろう。


ヘルプさん情報では・・・マイアートンに派遣されてきた援軍を指揮しているのは、都市ヨークルで長年聖騎士団の団長を勤めていて、今はシグチスに派遣されている『ジャクソン・ミライジス』の愛弟子で、今現在はヨークル聖騎士団の副団長をしている人らしい。

アマテラスに直接聞いた情報でも信頼も信仰も厚い人物で、都市防衛戦においての専門家。

ひとかどの人物でマイアートン防衛を充分任すことのできるという話だ。

得意なのは『封印』で新ダンジョンの事もあって、アマテラスからの神託で指名したようだ。


俺はアマテラスに新ダンジョンの封印結界用の魔法&魔力が封入してある魔結晶を渡して、内部や外部から結界が破壊されたり、出入口が破壊されたりしたときなどに、いざという時に即時使用できるようにダンジョン出入口に設置しておくように提案したら、マイアートン教会の司教のアイテムボックスに送って神託も授けておくようだ。


後は桂浜蔵人を責任者にした探索チームを結成してから、ゴーレム達の陰からのサポートを伴って新ダンジョンを発見させれば、俺のマイアートンでの仕事は終了だな。

船を使ってマイアートンを訪れて新ダンジョンに向かう人々が、今後は爆発的に増加されると予想できる。

なので、マイアートンの今後の発展のためには・・・マイアートンの町の堀の部分にある港の増設が必要になるだろう。

マイアートンは川でシグチスとも繋がってる。


まぁ、ここらへんの環境を整える仕事は桂浜蔵人が『マイアートン新町長』となってからの仕事だろう。

俺が陰からサポートすることはあっても、表立ってやる仕事ではない。


思案は尽きることなくドンドンと広がっていくが、俺の冒険者ギルドSランク昇進記念式典で長々と続いていたオペラ調の歌は、ステージ脇に立つ聖騎士団の面々がコーラスのように歌い始めた・・・コーラスが始まったので、そろそろ終わりそうだとアマテラスが教えてくれた。


最終パートは大礼拝堂にいるすべての聖騎士団がコーラスし始めて、今までこっくりこっくりと船を漕いでいた人達が目覚める。


聖騎士団と観客の注意が逸れたこの一瞬の隙を狙って、記者席にいる一団の記者達の中に不審な動きをし始めるヤカラが5人。

一斉に自身のアイテムボックスから取り出した吹き矢を使って4人が俺の嫁のアイリ、ミー、クラリーナ、カレンに向けてそれぞれ攻撃を仕掛け、残り1人がカレンに追加攻撃。

まぁカレンも伝説を数多く持つレジェンドクラスの冒険者なんで判断は間違ってない。


カレンが自分に向けられた殺気に瞬時に気付き記者席に振り返ったが、自分の目の前には盾となってるゴーレムの忍がいたのですぐに元の姿勢に戻っていた。


飛んできた吹き矢の矢は忍が受け止めたので被害はない。

忍の全身の表面を覆うワイバーンの皮は、吹き矢の矢程度が刺さるほどやさしくない。

吹き矢を飛ばした5人は俺のショック魔法で全員レジストできずに失神した。

大礼拝堂にいて唯一気付いたカレンから念話が飛んできた。


「しん殿、こやつらはいったい・・・」

「何者かによって操られてるようだな・・・5人とも隷属の腕輪が装備されて何者かによって操られた形跡が残ってる」

「ということは、まだ本物の敵が潜んでいるのでしょうか?」

「ちょっとまだわからないから、少し警戒レベルを上げたまま待っててくれ」

「了解」


カレンとの念話を切って、失神した5人から情報複製魔法で集めた情報をヘルプさんにまとめてもらい問いかける。


「敵は? 自分が仕掛けた攻撃が無効化されて、何らかの動きがあったか?」

「記者団の団長と、その隣に座る記者が明らかに関係者らしい動揺を見せました。」

「ほいよ」


2名にも追加でショック魔法で気絶させてから情報複製魔法をかけて、取り集めた情報仕分けもヘルプさんにお願いした。

ついでにカレンに真犯人を突き止め終わったので警戒レベルを通常に戻すように念輪で伝える。


「もしかして・・・賞金稼ぎ関係者なのか?」

「違いますね。ボクスベルグ商会の関係者です。」

「お! こっちの動きを先読みして先制攻撃でもしてきたのか?」

「こちらの今夜の動きをつかんでの先制攻撃の類いでは無さそうです。ボクスベルグ商会のチームが活動してるようで、できることなら早乙女様の家族を誘拐、もしくは最低でも式典に混乱を起こさせるのが目的と思われます。」

「式典を混乱させるのが目的だって? 混乱させて何を得ようとしてたんだ?」

「混乱から起きる隙を狙って、早乙女家の奥様方の誰かを誘拐するためですね。それで、いかがいたしますか?」

「うーん、このままだと大幅に予定が狂いそうだな。ボクスベルグ商会と記者との関係は?」

「記者団長は・・・家族を拉致されての脅迫ですね。隣にいる記者が主犯となります。アマテラス様の監視の目を潜り抜けたのは、記者団の団長の荷物運び用の助手としての急遽出席となっていましたので。」

「さすがに助手にまでは警戒してなかったのは仕方がないだろう。」

「それはそうですね。」


一介(いっかい)の記者が主犯格なのか?」

「はい。」

「と、いうことは・・・大礼拝堂の外にヤツラの仲間でもいるのか?」

「少し離れた場所にゴーレム馬車を待機させてますが、御者しか乗ってません。」


シーパラ教会大聖堂の外部にいる忍と徒影に命令して、犯人の御者とゴーレム馬車をあっさり確保した。


「ふ〜、わからんな。この状況で大混乱が起こってもなぁ・・・即時制圧されるだろ?」

「まとめた情報からボクスベルグ商会の企みはこの1名だけを送り込んでいるようですので・・・戦時における『威力偵察』の類いが懸念されますね。」

「なるほどね。それなら理解できるな。ちょっとした戦力を俺に直接ぶつけて、こちら側の動きや反応を探っているとしか思えないような行動だな。」

「左様でございます。」


「主犯格の記者というのはボクスベルグ商会の中でどのような地位にいるんだ?」

「少々お待ちを・・・地位肩書きは課長クラスとなっております。専門はターゲット誘拐ですね。過去の作戦においての成功例は・・・今のところ100%となっております。」

「100%? これで?」

「ターゲット周辺の人物の家族を拉致してターゲットに近付き、隷属させた周囲の人物を使って混乱を発生させてから、ターゲットが孤立した隙を狙って・・・というのが得意なパターンのようですね。しかも仲間は一切使わずにターゲットに親しい周辺の人に隷属の魔法を使って騒ぎを起こさせて、自分は混乱の近くにいて隙を探すというのが・・・いつものパターンってことですね。」

「なるほどね。得意の隷属の魔法を使って現場周辺の人物を使って混乱を起こさせる訳だ。単独犯だからこそ不審な人物の数が少ないから、確かにある意味場所を選ばず入り込みやすいわな。」

「左様でございます。」

「ボクスベルグ商会の件は今日の深夜に全てを終わらせる予定だから、今のところはまだ波風を立てたくないんだよなぁ、変に警戒されてもめんどくさそうだし・・・記者団団長の記者会見での役割は何だろうか?」

「この昇進記念式典の情報が全くありませんので、記者会見がいつ始まるのかという情報すらございません。」


確かにな。

ここでヘルプさんと相談してても何の情報も得られないので、司会者に情報複製魔法を使用して式典の情報をもらうことにした。


「早乙女様、式典の進行表と記者団団長の役割がわかりました。記者団団長というのは名目だけで、役割は何もありません。記者会見も挙手による質疑応答形式となってるようで、仕切りはこちらの司会者が行うようですね。」

「ってことは・・・この5人はこのまま眠らせ続けた状態でいても、何の問題もなく記者会見ができそうだな。」

「左様ですね。というよりも寝たままの方がこちらの都合がよろしいかもしれませんね・・・」

「だよな。こいつらってめんどくさそうな質問しそうだし」

「主犯の男から見ても、そのような印象があったので犯行を手伝わせる為に隷属の魔法を使用したようですね。」

「なるほどね。下世話な男達は操り易いし、油断も隙もあったということか。」

「全員の情報をまとめ終わりました。集めた情報を精査してまとめたものです。」


ヘルプさんから俺の脳内に直接まとめ情報が浮かび上がってくる。

個別の犯罪歴までまとめてあるな。


アマテラスに確認してみたら、胡散臭い週刊誌の記者は何人かいるが、ボクスベルグ商会の関係者が含まれてるとまでは予想すらしてなかったとの事だった。


アマテラスに情報を渡したら、歌い終えた聖騎士団の何人かがアマテラスからの神託を受けて急に立ち上がり、失神している7人全員を担ぎ上げて大礼拝堂から排除させた。


聖騎士団総長のミハリス・ウィンターボトムが長々と歌い終えた司会者に近づき耳打ちしてから魔導マイクを受け取って説明を始めた。


ミハリスの説明では・・・アマテラス様からの御神託によって記念式典の最中に犯罪を犯そうとしていた者達を強制排除したことを告げたことで、ざわついていた記念式典の会場の状態が収縮していく。

俺とヘルプさんはこのまま放置でも良いという判断だったが、アマテラスは不要なヤツラは強制排除をすることに決めたようだった。


残された記者団の反応も薄く、連れ出されたヤツラの親しい友人はいないようだった。

むしろ、残った記者達の反応は・・・自分にも質問をするチャンスが増えたんじゃないのかという、記者としての喜びが顔に出てきている。

この反応は助かるな。

この事まで俺が説明するのは骨が折れるし、記者団に忍の説明までしたくない。


ヘルプさんからの情報で・・・拉致された記者団団長の嫁と娘は、犯人の借りているアパートの中に監禁されてた。

俺はアパートの部屋の内部に仕掛けられている多数のトラップを全て解除した後で、アマテラスに情報を渡して聖騎士団に救助に向かわせた。

ついでに帰りに先程確保した御者も拾わせる。


そんな裏話を進めている間にも式典は進行していて、とうとう記者会見の時間がやってきた。

司会進行役の司会者から魔導マイクを渡される。


「早乙女様、準備はよろしいでしょうか?」

「あっ、はい。」

「それでは早乙女様の準備が整いましたので、只今から記者会見の時間とさせていただきます。私、司会進行役の『エスコ・ペッカ・バンゴ』 と申します。エスコとお呼びくださいませ。」


ここで会場から大きな拍手が巻き起こったので、エスコは右手で持っていた魔導マイクを左胸に当てて、まるで貴族のように優雅にうやうやしく一礼をした。


「では、記者団の皆様には事前に通達されてますのですが、この度の記者会見は『一問一答形式』で行いますが、記者会見は裁判や尋問ではございません。早乙女様には投げ掛けられた質問に対して強制的に答えないといけないという記者会見ではございませんので、記者の皆様のご希望にそぐわない回答であっても連続しての質問はできません。再度、挙手してから質問してください。さらに同じような質問は私の独断で排除させていただきます。以上を踏まえたうえで、お間違えのないようにお願いいたします。」


記者団の記者達が個々に頷いている。


「では、始めます。」


司会者のこの言葉で記者団の全員が一斉に挙手。


・・・記者の名前やら新聞や雑誌の名前は長ったらしかったし、敬語はウザかったので排除。


「早乙女さんは転生者だという噂があるけどホント?」


やはり初っぱなの質問はこれだった。


「ご想像にお任せします。」


これしか答えようがないわな。

俺がイーデスハリスの世界に来てからやってきた事を考えれば、公然の秘密といえるだろうけど。


「聖獣を飼っているという噂がありますが・・・」

「噂です。(息子として育ててますけど)飼ってません。」


「アマテラス様の使途という噂がありますが・・・」

「噂です。(アマテラスは”かなり”出来の悪い妹のようなモノで俺の上司ではありません)」


真実のみを話してるわけでなく・・・言い換えてるけど嘘ではない。

という微妙な返答を繰り返して記者会見は進んでいく。

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