新居購入と改築の話っす。
8・7修正しました。
教会での報告も終わったことだし、次は新居探しと行きますか!
教会を後にして商業ギルドに行く。
おやっさんには窓口のカウンターに行って人を呼んでもらいに行った。
俺・アイリ・ミー・おかみさんの4人は窓口カウンタ-と逆方向の商談スペースに行ってテーブルをキープしておく。
商談スペースの半分以上は埋まっててガヤガヤ騒々しかった。こんな雰囲気の方が話しやすい。
メイドの格好をした店員がやってきて注文を受ける。俺とおかみさんはホットコーヒー。アイリとミーはミルクティーを頼む。ここでは何か注文しないとテーブルキープはできないみたいだな。
それと『ミルク』
ヨークルでは・・・イーデスハリスの世界では結構な貴重品だ。
シーパラは草原が多くて酪農に適した土地は多いが魔獣の被害も多く採算が取れない。
首都のシーパラの南部にあるシーパラ半島が魔獣が少なく酪農も盛んだが、国中で商売できるほどの産出量はまだない。
それを補ってるのが『ダンジョンの恵み』だ。
ダンジョンではフィールドには出ない『ドロップアイテム』がある。
ダンジョンの魔獣は解体できない。
死ぬと魔力をダンジョンに吸われて消え、魔石・魔結晶・魔水晶は別としてドロップアイテムだけを残すのだ。
ダンジョンにだけ生息する魔獣で数は物凄く多く存在する『ミノタウロス』
通称『ミルクさん』
彼らはオスもメスも通常ドロップアイテムが『ミルク』
レアドロップアイテムが『練乳』だ。
ドロップするミルクの量は5リットルぐらいの樽。練乳は30ccの小瓶。
・・・おれは男だからミノタウロス(オス)の練乳とかミルクは遠慮したいな。メスなら大歓迎だが。
これで需要と供給はまかなえないので貴重品で高級品になってるが、少しは市場に出てくる。
ヨークルの近くにあるダンジョン『アゼット』では地下5階よりも下にしか生息していないが、C・Dランクの冒険者チームの小遣い稼ぎになる、ミーやアイリもこれで金を稼いでたときもあったようだ。値崩れするほど供給できないからだ。
そんなことを4人で話して待っていたら、おやっさんがネコ獣人を連れてきた。
「リーチェ、こいつが家を探している早乙女だ」
俺が紹介されたようだったので席を立ち頭を下げた。向こうもぺこりと下げる。
「それで早乙女、こいつがこのヨークルでの商業ギルド、不動産部門の部長をしている『リーチェル』だ。ここの不動産部門のトップだな。見た目は『ちみっこ』バン! ・・・頭を叩くなよ。だけど凄腕でこのギルドではトップクラスに有能だ」
リーチェルが胸をそらして踏ん反り返る。
が、まったく様になってない。ちみっこって言われて怒ってたけど身長が150cmしかないおやっさんより明らかに小さい。
頭に付いてるネコミミを足しても少し負けてる。
「不動産のことならこいつに聞いて分からないことはないよ。こんなちみっこ『バン!』だけど、ここで150年以上も働いてるババァ『ガン!』痛ぇーな! 顔をグーで殴るな『オッサンも余計なこと言うな』・・・それもそうだな。ま、こいつに任せれば怖いものはない不動産のプロだな」
おやっさんはなんで余計な一言を付け加えて紹介するのか?
親しみやすさができるからそれを狙っているんだろう、が・・・たぶん無意識だな。
「ボクの名前は『リーチェル・ハナザワ』です。リーチェって呼んでね」
「俺の名前は『早乙女・真一』ドワーフと一緒で早乙女が家名です。呼ぶのはお好きなように呼んでください」
「アイリ・早乙女です。アイリって呼んでください」
「ミネルバ・早乙女です。ミーってよんでね」
ボクっこキターーー! って内心思いながら自己紹介をする。アイリたちも自己紹介をして握手していた。
「それでは商談にうつりましょうか。早乙女さんの望んでいる物件のご希望はありますか?」
俺は要望を伝える。
予算は税込みで1億まで。
場所はヨークルの外周部で外れの方が良い。
できるだけ広い方が良い。
建物は古くても頑丈が良い。
内装は作り変えるのでどうでも良いし家具もあってもなくてもかまわない。
それに幽霊が住んでようが悪魔が取り付いていようが呪いがかかってようが、こちらで対処できるのでまったくかまわない。
そんなことをリーチェに次々と伝えていく。
俺達の話を熱心聴き時々メモを取りながら思案げな表情をするリーチェ。
一通りの希望を伝えると、しばらく黙って考えていたリーチェが口を開く。
「ご希望を全てかなえられるような物件はこのヨークルにはありませんが、ご希望にかなり近いという物件は1つございます。近いというのは・・・値段が1億を超えます。1億3000万ほどとなります。予算オーバーとなってしまいますので近いと表現しました。それ以外となると・・・市街地部分にしか今はお売りできる物件はございません」
と、言われてしまった。
ヨークルの都市はシーパラ大河とヨークル川の中洲にある。
中州は古代に魔法によって石垣の城壁で作られて、いくつかの用水路を持つ城塞型の都市だ。
お城はすでにないけどね。
城壁に守られた部分が市街地となってる。
市街地の城壁の外側から川までの部分が『都市ヨークルの外周部』となっている。この外周部はほとんどが田んぼで、のどかで静かだ。そして川の堤防部分が倉庫街だ。物流で船を使っているから川の近くに倉庫があった方が都合が良い。ここの倉庫に物資が集められ、他の都市や町などに船や荷馬車で送られたり、市街地に向けて運ばれたりしている。
倉庫街から市街地までは用水路の船と駅馬車によって、人や物資の移動手段が結ばれている。
倉庫街までは普通の馬車で入れるが、市街地までは馬車は進入禁止だ。
馬糞公害で進入が禁止されている。
市街地までの駅馬車や船の動力は『ゴーレム』だ。
ゴーレムといっても人型ではなく箱型。
1mの立方体ぐらいの大きさの箱だ。これがタイヤやプロペラを回す動力だ。しかしこのゴーレムエンジンは燃料となる魔力の効率とトルクが相反しているし、ブレーキの問題もあって重いものを車では運べない。
市街地の中だけの運用となってしまうのだそうだ。
話がそれてしまった。
その外周部の倉庫街に1つ物件があるが金額オーバーしている。1億3000万Gなら払えるけど・・・建て替えや家具の新調をするには・・・作るだけならスキルの魔法で簡単だが、作るためには『原材料』がいる。
原材料はどこかに買いにいくか、どこかに取りに行くしかない。
今日の今から取りに行くってのは・・・今日のこれから改築して今日から住む予定の場所だ。
時間的に間に合うのかな?
悩んでいることを正直にリーチェに話す。おやっさんがリーチェなら口が堅く信用できるから相談してみろって。話しているうちにまとまって解決することもあるからなと。
改築スキル魔法で内装や家具はすぐ作れる。
だけど内装で使用する量は現物を見ないと計算できない。
俺も開拓村で解体した教会と村長宅が、原材料の固まりにして持ってる。それが足りるのか足らないのか分からない。
原材料も精製スキル魔法を使えばオガクズからも木材が作れるし、鉄くずからでも鉄鉱石ができるけど・・・材料が必ずいる。って正直に話した。
「とりあえず現物を見てみませんか? そこで見てからじゃないとここでは何もいえません。別に見るだけならお金は要りませんし」
って言われてしまった。
確かにな。
ここでいくら話しても机上の空論だな。家を見に行くことにした。
現場に着いた・・・確かに静かな場所だな。周りは倉庫と田んぼしかない。
しかも場所も駅馬車の駅ターミナルや用水路の場所からも若干遠い。
堤防側には桟橋も付いてるが・・・そこは狭い。大きな船が停泊できる広さはない。
邸内も微妙な広さだろう。
部屋が1階に2つ、2階に3つの2階建てだが、俺達には少し広すぎかもしれないほどの広い部屋しかない。狭い部屋で20㎡(12畳ぐらい)以上もある。
金持ちの家族が住むには不便な場所で立地条件は悪すぎるだろう。
元々は隠居した金持ちの商人が愛人を囲うためだけに作られ邸宅らしい。
だから建物自体は高価な石材がふんだんに使って作ってあるし、魔法もふんだんに使って劣化しないようにしてある。
金持ちが7年ほど前に亡くなって売りに出されたが売れ残ってる物件みたいだ。商業ギルドでは持て余していたんだろう。内装がかなりボロくなってる。掃除もほとんどしてないだろう。
このボロ屋敷が1億3000万Gもするものなのか?
とおやっさんとおかみさんがかなり怒ってる。
「ここから先は商業ギルド内では話せない事だったのでここで話させていただきますね」
リーチェがここで話し始めた。
この邸宅が1億3000万Gという金額。
これは内装の改築に高級木材などをふんだんに使った金額、大工などの職人に払う費用もセットでの金額になってるんだと。・・・改装費込みのボッタクリ価格だな。
でもそれでは売れずに残る。
まぁ当たり前だな。7年前に手に入れた時は綺麗だった内装も中に人が住まなくなり、手入れもほぼしていない。
維持費でも金がかかる物件に持て余した商業ギルドは早く売りたくなってきてる。商業ギルドが手に入れた値段と税金分だけでも回収できればいいらしい。
だからリーチェの出せる金額は8000万G。これ以上は税金の関係で安くできないってさ。
金額は・・・8000万なら大丈夫だな。
あと原材料は・・・スキルで計算したらいけそうだな。
今のボロくなってる材料と俺の持ってる材料でいける。
カーテンなどの布や壁紙なんかも原材料から精製しなおして、俺の持ってる原材料を追加すれば何とかなる。後は改築に必要なコーティングに使う魔糸溶解液が余裕を見て2トンは必要だ。
リーチェに魔糸溶解液が2トン欲しいと言ったら、購入して即金で支払ってくれるならサービスで今日中にここまで運んでくれるって。
これが決め手になり購入決定。一度、契約書の作成などの手続きで商業ギルドにみんなで戻る。
契約書を作成して正式に契約。
これで早乙女邸の契約は完了だ。今はまだボロボロだけど後は改築すればいい。
おやっさんたちには挨拶をしてここで別れる。
「早乙女、新居の改築祝いは何がほしい?」
「早乙女邸の防御のためのゴーレムが作りたいから全身鎧が3つ欲しい」
おやっさんからの質問にマジメに答えたら、明日までに用意しとくから、明日以降に取りに来いって言われた。
明日の夕方以降にでも取りに行くと時間は決めずにしておく。
明日は冒険者ギルドに行ってアイリとミーのギルドカードの名前変更手続きと、3人のチーム『早乙女遊撃隊』の登録に行くからな。
ついでになにか依頼を3人で受けるかもしれないので、時間は遅くなって明後日になるかもしれないと伝える。
それから早乙女邸に帰り、まずは内装を全て解体。
精製し直して原材料に戻して庭に並べる。
リーチェが商業ギルドで手配して庭に運んでもらった魔糸溶解液も並べておいてもらう。全部は使わないけど半分以上は必要だしな。
俺のアイテムボックスから必要な原材料を追加して、これも庭に並べる。
アイリとミーと三人で相談して壁紙の色やカーテン色まで、庭に置いたテーブルのうえにある設計図に決定したことを書き加えていく。
腹が減ってきてたので昼食を3人で食べながら、早乙女邸の構想を話し合って決めていく。
昼食後は転移魔法で一度ガウリスクの本拠の丘に俺1人で行く。
セバスチャンとマリアを連れ帰るためと、早乙女邸の引越しだ。
本拠の丘にある家具や魔石なんかを回収して元の洞窟に戻しておくことも忘れないようにしないとな。
ガウリスクに会いに行ったら
「今度はボスの奥さんにも会いたいから連れてきてよ!」
って言われた。
「また今度な!」
と別れる。
連れてくるのは良いがお前らと俺の奥さん2人は会話ができないから、俺の通訳がいるじゃん。
後は早乙女邸に帰ってアイリとミーに俺の執事セバスチャンとメイドのマリアを引き合わせる。
滑らかに動くクマのゴーレムにかなり驚いたようだが、愛くるしい外見に少し嬉しそうだ。
クマ型に作って正解だったな。
後はスキル魔法『改築』で終わり。魔法を唱えると原材料が次々と屋敷に吸い込まれていく。
10分ほどで『早乙女邸』が完成した。10分も時間がかかったのはコーティング材を木材に塗って乾燥ってのを10回以上繰り返したからだ。
早乙女邸の中に入り不具合がないか使い勝手を確かめながら邸内をまわる。
使い勝手が悪そうな部分はスキル魔法『改装』を使用する。
風呂のお湯はもちろん地下から汲み上げる温泉だ。
本拠の丘で使用していた魔石も使っているからか、かなりの湯量がある。
意外と豊富な湯量だったので温泉は『かけ流し』になった。
しかも汲み上げた温泉は60℃も温度があったので、途中で水を混ぜるようにしてある。
風呂を大きく広げる為に隣の1部屋つぶした。
1階にあったもう一つの部屋は客間として使用することにした。
2階の部屋は3人で分けようって言ったら、どうせ寝るのは一緒だし部屋は要らないって。
荷物もアイテムボックスが中に広がった為に部屋に置かなくても全ての荷物が持ち歩けてしまう。
だから1番大きな部屋を3人のベットルームにする。
シングルベッドを横に4つ並べた巨大な大きさのベッドを作ってやった。
まぁ俺がスキル魔法でくっつけるだけなんだけどさ。
少しヤケになって、少々悪乗りも入ってる。