Sクラス昇進の記念式典が始まったのだが・・・実はまだ始まってなかったりするっす。
情報屋の存在で俺のほしい情報だけでなく雑多な情報が数多く集まり始めて、いわゆる”街の噂”の検証までヘルプさんによって開始されてる。
その噂のほとんどがただのガセ情報でも、探っていくうちに意外な事実が発覚したりして・・・これはこれで何らかの関係性があるから出てきた噂だったりする。
いわゆる『火のないところに煙は立たず』ってやつだ。
だけど、伝言ゲームのように途中で噂は変化して尾ひれと胸鰭がついたりして、様々な変化を見せているので、情報屋の集めた情報からは想像もつかない結果が出てきてる。
聖騎士団のゴーレム馬車内は緊迫しすぎていて、雑談してる雰囲気ですらないので俺はすでにシーパラ大聖堂の中にいて待機中の嫁達と念輪の雑談をしながら、並列する思考で考えにふけってる。
嫁達はすでに冒険者としての正装として自分の防具を装備して、シーパラ大聖堂の記念式典会場である大礼拝堂にて待機している。
カレンの儀礼用の早乙女儀剣を渡してなかったのでアイテムボックスでささっと作って一緒にいるマリアのアイテムボックスへ送って渡してもらった。
俺はいまだに普段着でロンTとカーゴパンツという・・・日本ですらラフすぎる格好なんだけど・・・ステータスから一瞬で着替えられるので油断してて着替え忘れてたな。
まぁ、大聖堂内で着替えぐらいさせてくれるだろう。
冒険者ギルド側からの出席者は『アクセル・ビッタート”新”冒険者ギルドマスター』『青木勘十郎”元”冒険者ギルドマスター』『ニール・オスキャル』などなど。
大礼拝堂のステージ上にはシーパラ商業都市連合国の大司教管区を取りまとめる総責任者『”聖母”露草桜大司教』を筆頭に『シル・バリトネット司教』『アーシェル・ペスカトーレ枢機卿』などの面々が顔をそろえてる。
観覧席側にはもちろん俺の嫁『早乙女アイリ』『早乙女ミネルバ』『早乙女クラリーナ』『早乙女・劉・カレン』だけでなく、商業ギルドシーパラ本部の『マリス・シュガート』、首都シーパラでおにぎり販売をがんばっている『ナディア・グラナド』さんや休暇を楽しんでいた『”おやっさん”ガルパシア・ウルス』と『”おかみさん”ガルパシア・ピニリー』も招待されているので大礼拝堂の観覧席に座っている。
その他にも俺の付き合いのあるシーズの面々だけでなく初めて見るようなシーズの家族達、もはやお馴染みとなりつつある最高評議会の面々も観覧席に並んでいる。
角館家やケミライネン家の首脳陣の面々が欠席しているなかで、『角館裕仁』と『ライモンド・ケミライネン』のクーデター側のトップ2名が観覧席に座っていることに驚きがある。
この状況下で俺とは初対面になるこの2名を招待するあたり・・・やるなあ、イワノス。
すでに当主交代は既定路線ということを最高評議会やシーズの各家のトップに認識させるためにも、イワノスが先導して式典の開始前に挨拶回りをさせていたようで・・・鬼の戦略だな。
これだけのメンツがそろったことで場内を監視する忍は10体以上もいる。
・・・もともとシーパラ連合国の主要メンバーの専任として、四六時中ピッタリとマークさせて情報収集&身辺警護を行っていた忍や徒影が、シーパラ連合国の首脳陣が一堂に会したこの場に、全部の忍や徒影が集結してしまうのはやむを得ないけど。
シーパラ大聖堂を周辺警戒する忍や徒影を合わせると50体以上のゴーレムによる厳戒態勢だ。
俺のゴーレムの監視の目とアマテラスの監視の目を掻い潜って、会場内で騒動を起こしそうな人物はいないだろう。
俺だけなら何も警戒しなくても大丈夫だが、守るべき嫁・友人たちが多いのでどうしても厳戒態勢となってしまうのは仕方がないことだ。
緊迫したゴーレム馬車は大聖堂に無事(?)たどり着き、俺は大礼拝堂横の特別控室に通される。
・・・今のうちに、ここで着替えろってことなんだろうな。
とりあえず、冒険者にとっての正装と言える防具にステータスから一瞬で着替える。
儀礼式典用にサイラスの甲殻鎧の左腰には早乙女儀剣を装備して、呼ばれるまで待機する。
・・・結構待たされるもんだな。
暇を持て余した俺はアイテムボックスから取り出したタンブラーにアイスコーヒーを入れて立ったまま味わう。
暇だったのでマイアートンの状況を確認するが、さすがにまだダンジョンの入口は発見できる事はないので・・・進展はない。
ゴブリン組も随時、ビルドゴーレムがメンバーの入れ替えを行ってるのでマイアートン川を超えて侵入してくる昆虫魔獣の数は大幅に減ってる。
空を飛ぶ昆虫魔獣がゴブリンアーチャーに狙撃されてるだけだ。
マイアートン川の向こうの大森林の中の森林タイガーにもさすがに疲れが見え始めたので、帯同して昆虫魔獣の遺体回収を担当している徒影が転送魔法を使って順次入れ替えを行い始めた。
ついでに師匠ゴーレムと魔獣ゴーレムも支援に向かわせて、ダンジョン入り口の発見時に結界を施せるように師匠ゴーレムの杖型をアップデートして、ダンジョン入り口に必要な結界師と封印師のスキルを充実させておく。
これでもし万が一、俺が昇進式典で騒動に巻き込まれてもゴーレムだけで新ダンジョンの入口の封印が可能となった。
Sランク昇進記念式典のラストの記者会見次第でどうなるか先が読めないので、今のうちに俺が対応できない状況でも対処できるように準備しておく必要がありそうだったので、今のうちに対応策を立てておいた。
魔獣ゴーレムや師匠ゴーレムは昆虫魔獣に大量に襲われても単体で切り抜けられるレベルなので、森林タイガーの入れ替えを行っている今現在は・・・大集団で襲い来るアリ魔獣に対して迎撃の主力戦力となってる。
ゴーレムなので疲れることもないし、倒した昆虫魔獣から魔力を奪い取ってる状況では戦力が増すことがあっても減ることにはなりえない。
迎撃どころか戦線を自由に移動させてるレベルで、退治された昆虫魔獣がダンジョンに返還されドロップアイテムが落ちる場所を探ってる。
だけど、ダンジョンの入口を探し出すのは難しく・・・しばらくは時間がかかりそうという結論に違いはない。
それとマイアートンの町の中ではなく、町の対策本部内にも変化が出始めたようだ。
なにしろ町を大量に襲ってきた昆虫魔獣が姿を消して、マイアートン市民はすでに落ち着きを取り戻している。
なので、対策本部内に・・・
「新ダンジョンの入口探しを始めるための準備を始めた方がいいのではないか?」
って気分が蔓延し始めた事だった。
うーん、俺がゴブリン組を使ってマイアートン内に空から侵入する昆虫魔獣を駆除し続けてるおかげで町が平穏になってる”だけ”なのに・・・あまりにも早くに平穏が訪れた事が逆に対策本部内の若手を自信つけすぎちゃったかな?
忍から俺の声で・・・
『マイアートンが平和になったのはまだ”錯覚”でしかない』
『マイアートン川の対岸は大量の昆虫魔獣があふれてる』
などと説得しても聞く耳を持ってない感じだな。
なので、ここで新たな動きをすることにする。
対策本部内の若手を全員連れてマイアートン川まで偵察させることにした。
『百聞は一見に如かず』っていうことわざもあるしな。
俺が言っても聞かないなら、その目でマイアートン川の向こうの状況を確認してもらいましょう。
警備隊の教官育成講師「サウロ・ガリツカヤ」が先導してくれるし、マイアートン川周辺にはゴブリン組もいるので・・・ケガすることはあっても死ぬことはないだろう。
立ったまま味わっていたアイスコーヒーが飲み終わるころになってようやく特別控室の扉がノックされ声が外からかかる。
「早乙女様、私はシーパラ連合国聖騎士団総長の『ミハリス・ウィンターボトム』と言います。ミハリスとお呼びください。以後お見知りおきを・・・」
俺は差し出されたミハリスの右手に握手する。
これはこれは・・・アマテラスが気に入りそうな謹厳実直を絵にかいたような男だ。
しかも実際に強い・・・かなりの使い手のようだ。
強そうな相手を見つけたので俺の鑑識魔眼が自動的に展開しいろんな情報が俺の目の前に表示されるのだが・・・
若そうに見えたのだが年齢は200歳を超える獅子獣人。
聖騎士団に入団して200年以上・・・初めの100年はあちこちの戦場でこき使われ、ミハリスの持つカリスマ性を危惧した上司たちに100年以上もの間、『対魔族』『対悪魔』『対異教徒』の最前線という激務の閑職に追いやられていた。
閑職とは言っても聖騎士団の最前線での戦闘&騎士団幹部の教育長・・・ミハリスの持つ戦闘力とカリスマ性を利用はするけど、権力は持たせないというお飾りでしかない。
俺の殺した4人の神のクソっぷりがこんなところまで響いていた・・・ミハリスも4人の神の犠牲者だったと言える。
そんなミハリスを10年前に聖騎士団総長に指名したのはアマテラスだった。
アマテラスの太陽神の名のもとによる断行でミハリスが聖騎士団総長というトップになって、神託でシーパラ連合国教会内部に巣食うクソどもを、排除し続けてきた猛者中の猛者でもある。
しかも俺と同じ『剣客のマスタークラス』なので、この公式行事でも腰にカタナ(拵えが金糸と銀糸がふんだんに使ってある)を差しているので・・・ミスリルハーフプレートアーマーにカタナという少しミスマッチな装備になってる。
装備してるカタナもかなりの業物ではあるが、拵えを見ても分かるように公式行事用のカタナだな。
二刀流の『剣豪』も上級までマスターしてるし、もう少ししたら上級スキル『剣聖』も発眼するだろう。
実力は最高評議会議員イワノス・ゲッペンスキーの次男でシーパラ連合国警備隊総長『アイザック・ゲッペンスキー』と同じぐらい・・・アイザックとは年も近くて長年の親友との情報もある。
俺と握手した瞬間のほんの一瞬だけ挑戦者の目になったのは・・・武人だからだろう。
俺も同じように目と手に力が入るのは仕方がない事だ。
「自己紹介は必要ないとは思いますが・・・改めまして、早乙女真一です。早乙女とお呼びください」
「フフッ、流石アマテラス様の使徒と呼ばれるお方ですね。思わず血がたぎってしまいました。まぁ・・・私の事はさておき、準備が整いました。それでは、会場にまいりましょう」
部屋の外に出ると少し離れた場所の大礼拝堂にある巨大なパイプオルガンから幻想的なメロディーが流れ始め、先導するシーパラ連合国聖騎士団総長の後ろについて歩んでいく。
俺の周囲にはシーパラ連合国聖騎士団本部の幹部クラスが取り囲んでいる。
が・・・こういう式典にありがちの一歩一歩踵を打ち鳴らすようにして歩んでいく姿は、亀のようにして遅々と進まない状態。
俺も真面目な顔で同じように歩んでいるんだが・・・内心では『ウヘァ』って感じ。
以前、シルに案内されて大礼拝堂で拝見させてもらった巨大なパイプオルガンからの曲調が変わり、明らかに別の曲へ変化しているようなのだが・・・俺を含む行列は遅々として進んでない。
あまりの荘厳な形式美に・・・嫌な予感がするぞ?
冒険者ギルドSクラス昇進の記念式典ってより・・・SSクラス昇進の記念式典になってないか?
そういえば青木勘十郎ってSSクラスの昇進記念式典で無理クソ冒険者ギルド本部ギルドマスターに就任させられたんだよな・・・
ヘルプさんに確認したが教会でSクラスの昇進式典事態が俺のもらった知識の中に無く、安全の為とはいえ今現在教会で執り行われているのは・・・SSクラス昇進式典に”酷似”してるようだ。
ゆっくりと歩みを続けながら並立する思考でアマテラスほっとラインでアマテラスに話しかける。
『アマテラス、もしかして・・・冒険者ギルドSSクラスに無理やり昇進って考えてないよな?』
『このまえ真一お兄ちゃんに怒られたからホントに”SSクラスに昇進させなさい”なんて神託はしてないよ。それに真一お兄ちゃんにホントに嫌われたくないからシーパラ連合国最高評議会の動きと冒険者ギルドの首脳陣の動きを監視してたけど・・・無理やりSSクラスに昇進させようという動きは”全く無い”とは言えないまでも、無理を押してSSクラスに昇進させようという動きではなくて、私にゆだねるっていう動きだったよ』
『う~~ん』
『教会での昇進式典だからSSクラス昇進と同じように行って”アマテラス様しだいであわよくば・・・”って形にしようということになってたから』
『なるほどな・・・だからこんな式典になってるんだな・・・わかった。ごめんな。突然変なこと聞いて』
『いえいえ、どういたしまして』
『それはそうと、せっかく教会に来たんだから・・・何か俺に動いてほしい要件とかあったら聞いとくけど』
『それなら、今夜の事なんだけど・・・お願いしてもいいかな?』
『おう、どんな要件だ?』
『聖騎士団シーパラ本部の北東の方角・・・真一お兄ちゃんのMAPで点滅させてる場所で違法取引が予定されているの。私からの神託でシーパラ連合国本部所属の聖騎士団の特別遊撃隊が突入予定ではあるんだけど、私の見積もりが甘かったみたいで・・・聖騎士団に被害が及びそうなの。真一お兄ちゃんに手助けをお願いしたいの』
『敵の場所と時間は理解したけど・・・この件に関して、その他の情報でアマテラスが知りえたことをもっと詳しく教えてくれ』
アマテラスの情報を整理すると・・・
今回聖騎士団が襲撃をかける犯罪者グループは『ボクスベルク商会』という名前の会社で表向きも『首都シーパラの闘技場』を経営してる団体。
今は任侠ギルドのシグチス支部のTOP『マティアス・ゲンズブール』率いる闘士達のように、100を超える多数の闘士が所属していて日夜トーナメントなどを開催しているんだけど・・・
ここもいわゆる、マティアスいわく・・・『見世物小屋』ってレベルの闘技場らしい。
しかし、闘技場の中で行われているのは見世物小屋と一言で言っても問題があるレベルで、行われてる中身はあまりにも酷い。
闘技場運営が儲かるようにコントロールされている”見世物小屋”ではなくて、運営が裏切者などの『敵』となった相手の『家族』などを虐殺するための『虐殺ショー』というのが実態で、見に来る客もそのショーが目当てとなってる。
いままでアマテラスの監視や俺の放った忍や徒影の監視の目や耳を逃れられたのは・・・首都シーパラにはダミーの見世物小屋が置かれているのみで本拠地がなく、シーパラ大河を挟んだ農業副都市の”ウェルヅリステル”の農地の中にある地下施設に隠されていたためだった。
本拠地は闇魔法で巧妙に封印されていて表に出ることはなく、ダミーの首都シーパラには見世物小屋と言えるような”台本のある”興行は行われていて、本拠地の地表には商業ギルドに登録されているような『農産物の生産』のやりつつ、その地下で虐殺ショーが不定期で行われている。
戦う両方共が『薬の実験台』でのショーとなってる。
今回のアマテラスの監視の目にこの組織の存在が引っ掛かったのは・・・俺がシグチスで魔薬撲滅のために使った『日輪の浄化』が発端となったようだ。
組織はアマテラスの監視の目から隠れるために闇魔法による封印を施してあったのだが、俺の日輪の浄化によってすべての闇魔法の封印がほんの一瞬だが解除される事となった。
さらに俺の日輪の浄化で闇魔法の洗脳も、強制的に解除された事で内部にいた闘士による内乱が勃発。
さらに闘士の内乱中に数時間も結界に綻びが出た事でアマテラスの監視の目にボクスベルク商会の存在が浮き彫りとなった事でアマテラスの監視の目に引っ掛かる。
巧みに封印された地下闘技場で行われていたのは・・・観客には『虐殺ショー』。
運営側にとっては魔法薬の実験台というもはや人の所業とは思えないレベルの凄惨さ。
大量の魔法薬投与によって、実験台はあくまで実験台で闇へと葬られる運命しか残っていない。
例え実験は成功しても、その後にはさらに多量の麻薬を投与されて・・・壊れるまで実験は永遠に続いていくのだ。
実験台は敵対する人物やその家族ばかりで奴隷はいない。
買われてきた裏奴隷は一切入っていないところも発見が遅れた理由となってる。
実験台によって成功した魔薬は、別の国から流れてきた犯罪者を使って魔薬は他の商会に卸されていて・・・この組織の存在は秘匿され続けてきた。
以前に俺がアマテラスに頼まれて全滅させたドルガーブの裏組織で麻薬と毒薬を取り扱ってる組織に『ゾンビパウダー』を卸していたのは、このシーパラにあるボクスベルク商会だという証拠がやっととれたようだ。
・・・あれはエグイ薬だった。
薬を飲んだ対象者の生命の安全を完全に度外視してる薬の存在に俺自身も怒りがわく。
あんな薬の実験を日々繰り返してるボクスベルク商会に対して俺のもらった知識と経験から殺気があふれてくる・・・さすがに式典中なので外部には出ないように上手く封印しているが・・・俺の目の前にいるミハリスには気づかれたかな? ってレベル。
ミハリスがほんの一瞬だけ探るような気配がしたが・・・違和感を感じただけだろう。
獣人の持つ特殊能力『野生のカン』に引っ掛かったんだろうけど、それ以上には何も感じられなかったようで、気配察知はすぐさま解除された。
これは早急に動く必要がある案件だ。
しかも違法取引の現場はシーパラの中にあり、隠された本拠はウェルヅリステルの地下か・・・
両方とも完全に消滅させないとな。
それにしても・・・進まねぇなぁ~、この行進。
大礼拝堂へと続く長い廊下の半分をやっとすぎたところで、すでにパイプオルガンが奏でる曲は4曲目まで
終わって今は5曲目だったりする。
もしかして・・・このオーケストラが奏でるようなメロディーがこの行進のスピードを作ってるのか?
パンクなロックがかかったりユーロビートみたいな曲だったら、ダッシュで会場まで行けるかも・・・
なんて、たとえ叶ったとしても意味もない事を並列する思考の中で考えながら、真面目な顔で行進して、ゴブリン組と魔獣ゴーレムに指示を出してマイアートンの危機を救いつつ新ダンジョン発見のために入口を探し続けてる。
アマテラスと雑談しながら今夜に襲撃をかける予定のボクスベルク商会の本当の本拠に、アイテムボックスから新たな忍と徒影を俺の転送魔法で送り込み情報収集を開始。
情報収集を開始してしばらくしたら・・・ヘルプさんに上がってきた情報からアマテラスがまだつかみきれていなかったボクスベルク商会に関する新情報がまとめられてきた。
・・・思ってた以上に早いまとめだな。
さすがヘルプさん。
想像以上のまとめ情報の速さをヘルプさんに確認したら、ボクスベルク商会ウェルヅリステル本部の内部は、入口が厳重に警備されてるのと外部からの監視に結界を使って守られているだけで、内部はザル警備に等しい状況で・・・すでに内部に入り込んだ複数の忍は情報が集め放題の状況。
本部一帯を覆う闇魔法結界が外部からの監視を・・・太陽神アマテラスからの監視を完全に阻害してる。
忍の場合は内部に入り込んでしまえば忍術スキル&ゴーレムの存在感の薄さも相まって、逆に自由自在に情報収集ができてしまうだけだった。
あがってきた情報のまとめを見ると・・・
やはり内部では誘拐されてきた敵対者の家族などを利用して魔薬の実験場になってることに間違いはない。
それと実験結果によって精製された魔薬の製造もここで行っている。
俺の中にある、もらった知識や記憶の中からも突き上げるような怒りがわいてるが、それだけでなく・・・俺自身も腹の底が煮えくり返るような怒りがある。
命を金で売り買いする『奴隷制度』ですら抵抗があるのに、自分たちが敵対する人物の本人だけでなく、
家族なんかも実験体に含まれているんだから・・・それも実験体として使って金を稼ぐためだけにだ。
アマテラスからもらった情報以上の精度で次々とデータが集まってきた。
300を超える人々が自身の知識欲や金銭欲、はたまた嗜虐心などを満足させるために100年近い時を使って実験を続けている。
ボクスベルク商会ウェルヅリステル本部にいる職員は皆殺しで決定だな。
ボクスベルク商会の首脳陣は金銭欲が強い人族が多くいて、研究員は魔族やエルフや梟獣人のような知識欲の強い人種が多く、『監視人』と呼ばれる奴隷監視人は持って生まれた戦闘力が高くて嗜虐心の強い鬼獣人やカラス獣人が多いという・・・それと特殊闘技場に訪れて観戦をするお客は金持ちの変態がほとんどで、ごく少数の魔薬製造依頼人もいるという・・・ヘルプさんからの情報。
しかも今夜は大勢のクライアントと観客を集めてのBIGイベントで、闇魔薬新薬のお披露目パーティー&闘技トーナメントが行われるようだ。
厳重な警戒体制の中での興行イベントごとブッ潰しての全滅作戦を脳内で思案し始める。
BIGイベント興行で変態観客やイーデスハリスの世界中の裏組織の関係者がこぞって集まってくるイベントは、俺にとっては大変ありがたい・・・アマテラスに確認したが全くの偶然のタイミングらしい。
まぁ、これが俺が主神ゴッデスにもらった『天運』のなせる業なんだろうな。
ありがたく全滅させてもらう。
海外からの訪れてる観客の親衛隊には魔法専門家も多くいるようだし・・・今までにない戦いが楽しめるかもな。
それにこの施設を覆い隠す闇魔法結界・・・アマテラスの監視の目から逃れ続けてきた結界を作り出しているシステムが、かなり気になるので忍に指令を出して解明を急がせる。
ヘルプさんの予想ではシーパラ連合国の結界技術では不可能なレベルらしく、別の国からやってきた闇結界師の存在が浮かび上がってくる可能性が高いようだ。
これはこれで別の意味で面白そうだ。
なにしろアマテラスの監視の目を10年以上も逃れ続けてきた技術があるわけで・・・もしかしたら高位の悪魔などが絡んでいる可能性もあるので・・・俺にとって美味しい状態なのかもしれない。
ここまで来てやっと大聖堂礼拝堂のドアが見えてきた・・・とはいえ、ここにきてさらにその場での行進をしたりしてさらに前に進むペースは落ちてたりする。
だが・・・この昇進式典での空白の時間を使って俺は抱えてる問題の考察やゴーレムへの指示を進め、問題の早期解決への道を探る。
ついでに、並列する思考の中でもふもふ天国・モフモフマッサージ天国などの各店舗からの報告も受け、それについての指示も出す。
さらにここでヘルプさんからの追加情報が追加された。
『首都ヨークルの港にシグチスから帰還した高速船団の帰還』
港に続々とシグチスから犯罪者を山盛り乗せて帰還して来る国軍所属の高速輸送船団は、俺が魔力パワーボートを操縦中に追い抜いてきた。
ただ・・・俺は海中から一気に追い抜いたので高速輸送船団側からは、俺の存在すら発見できなかったと思う。
大量の犯罪者が港から送られてきて国軍の港の中はかなり騒々しい状況になってきて・・・
俺の動きを見張っていたはずの『賞金稼ぎギルドのトップクラスチーム』の動きが右往左往してる。
どうやら、俺が高速船団に先駆けて首都シーパラに帰還してるという一報をつかんだようだ。
・・・遅すぎるな。
すでに1時間以上前に俺が契約してる高級マリーナに俺の魔力パワーボートは係留されているにも関わらす・・今頃になって俺がすでに帰還してるという情報を得て驚いてパニくってる・・・ホントにこいつ等はレベルが低いんだな・・・
お手並み拝見・・・できるかな?
賞金稼ぎギルドのエース格の1チームが動いてくるという情報だったが、ここにきて追跡調査中の忍から多数の情報が上がってきて来て・・・複数のチームが共同で動いて俺のクビに掛かってる賞金だけでなく、俺の持つ莫大な資産を奪おうとしてるみたい。
まぁ、こいつら『烏合の衆』はどんだけ集まっても・・・別に大した違いもないんだけどね。
雑魚の考察よりも賞金稼ぎギルド全体の対応はどうなってるんだろうか・・・俺の賞金によって世界中から賞金稼ぎがワラワラ集まってくるような展開は遠慮したい。
世界中の賞金稼ぎギルドの中には、俺の知らない転生者も入っていそうで・・・もしかしたら何らかの特殊能力者などもいるかもしれない。
やべぇな・・・俺の中にちょっとワクワクしてくる気分がある。
ここにきて行進をしていた俺を含めた記念式典の行列は、この時間になってやっと大礼拝堂の中に進入していった・・・やっときたよ。
大礼拝堂の中は今まで何度か訪れた時とは違い、記念式典用に大幅に様変わりしていて・・・観客席も作られているし、記者席まである。
俺も行進に合わせて動いているので、キョロキョロと不審な行動は一切できない。
あっちこっちと動いている分、俺が何度も方向変換することとなるし上を向いたり下を向いたりして、大礼拝堂の様々な箇所を強制的にだが周囲を見渡すことができた。
・・・礼拝堂の壁沿いの2階部分が記者席となってるな。
座席に座ることができるのは俺の関係者とシーズの関係者と冒険者ギルドの関係者のみで、俺が今現在行進している大礼拝堂中央部分にある通路の後ろ側の左右は立ち見席となっていて、ここに聖騎士団や教会関係者が見学をしてる。
俺は行進を続けながら嫁達やおやっさんとおかみさんも混ざって念輪を使ってみんなで雑談しているが・・・あまりの時間の長さに嫁達やおやっさんたちもかなり疲労しているようだった。
つーか、おやっさんは俺が念輪で話しかけるまで、おかみさんと一緒にうとうとしてたしな。
嫁達は礼拝堂の硬い木の狭い席に座ってハイプオルガンの爆音の中、長時間身動きできないで待機させられてるんだからなぁ・・・エコノミー症候群になりそうだな。
俺も目の前にあるゴールに向かってダッシュしたい気持ちを抑えて行進を続ける。
そこにキラキラと金色に光り輝く光の小さな粒子をアマテラスが大聖堂内に舞わせ始めた。
パイプオルガンの幻想的な音楽の中を光の微粒子が舞い始めたのをきっかけに、遅々として進まなかった行進は10秒ほど動きを止め、そして今度は真っすぐにステージに上がっていく。
ようやく俺の冒険者ギルドのSランク昇進の記念式典が開始されそうだな。
って・・・なげぇーよ。
なんで1時間近くも行進しなきゃならんのだ?
遅くなりましてごめんなさい。
次はもっと早く投稿できる・・・といいな。