マイアートンの問題は収束する方向へ・・・でも、新たなる相手が出てきたみたいっす。
マイアートンの町の中の秩序回復は俺はゴーレムを使って陰からサポートしてただけで、町の持ってる力で回復させたのが警備隊訓練生や冒険者見習いの人達の自信に繋がれば良いなと思う。
ここの対策本部につめて指示を出す側の行政本部の人達も、めったにない経験が今後生きていくように・・・訓練では経験できない実体験を経験して秩序回復させたという自信を糧に育ってもらえれば、今後似たような魔獣襲撃にも対応できる・・・独力で対応だけでなく時間稼ぎとしても、自分達で処理できるという自信ができれば、今回の昆虫魔獣の大襲撃にも少なからずのメリットがあったと言えそうだ。
独善的な権力者の排除も出来たので、俺にとってもマイアートンの将来にとっても良い事となるだろう。
クレバ・コンドリフ町長の親衛隊はクレバが独自で作った私兵であるので、先程からかなり落ち着かない様子を見せている。
しかし、親衛隊の全員・・・とは言っても忍が失神させた3人はクレバと一緒に町長室に放置してあり、残りの5人はトリーの後について部屋から出ている。
彼らに話を聞いてみたのだが、親衛隊隊長・副隊長・それとクレバのお気に入りの親衛隊最強の3人が圧倒的なほどの武力差で忍によって失神・制圧されて、たとえ契約違反の罰則金を払おうとも俺と敵対するのは得策ではないと判断して、部屋から出てきたようだった。
今後は町の状況が落ち着くまでエミールさんに監視されるという名目で、この対策本部の防衛に当たらせると対策本部で決定した事で5人全員が胸を撫で下ろしている。
彼らの事は後回しでいいだろうという判断だ。
クレバは町長室から念話で親衛隊や自宅にいる私兵と連絡を取ろうとしているが、俺の施した封印結界を飛び越えられる念話能力を保持する者はこのイーデスハリスの世界どころか、神界にも主神ゴッデスを除いて存在しない。
誰とも連絡すら出来ない様になってクレバは酷いパニック状態になって、大きな声で独り言を言い始めて、自分の独善的な将来の妄想をぶつぶつとつぶやいている。
忍によってすべて監視されて全ての言葉はヘルプさんによって記録されている。
その中でとうてい妄想だと看過できない事柄があった。
『ヨークル・マイアートン・シグチスの裏社会との協調関係』だ。
2つの都市とマイアートンは川によって繋がれている。
なので俺が徹底的に壊しまくって空いた裏社会の隙間に自らの私兵を入れていくつかの小さな組織を吸収して、裏と表の権力を握ろうと模索していた最中だったようだ。
対策本部の忍の前にいるクレバの秘書に気軽に質問してみて俺の真偽魔眼から調査してみたが、彼らとは関係がないようだった。
表社会の私設秘書には関係させない徹底ぶり。
しかし俺から秘書に質問した時に少し反応を示した親衛隊隊員がいたので、彼の記憶と知識を複製魔法でヘルプさんに送る。
ヘルプさんが精査した情報の中に確かにクレバは裏社会に自分の組織を広げようと模索しているようだが、なにしろ裏社会についてはド素人なのでどこから手を付けていいのか全く分からずに、妄想のみで終了していたようだった。
が、しかしシグチスの組織と実際に会って話し合いは何度か行われていた・・・だけど俺がシグチスで全滅させた組織の1つで、今はその組織は存在しない。
その会議にクレバ側の代表として出席していたのがこの反応を示した隊員だった。
これはクレバの失脚と排除を狙う俺と桂浜副町長にとって好材料となりうる情報なので、この親衛隊隊員には監視を付けた方が良いのかもしれない・・・情報を持ったまま逃げられても、暗殺される可能性もあって厄介極まりない。
この隊員が先ほどからソワソワと落ち着かないようすをみせている。
ここから逃げ出そうという素振りではなく、自分の持ってる情報を言っていいのか、それともやめておこうか・・・言わなくて後でバレた時のデメリットと自ら告白する勇気とか・・・色々な事に葛藤して落ち着かないのであろう事が俺には見えた。
と思ったら俺と同じような事を思った人物がいたようで、エミール・アウレッタ警備隊教育センター長がソワソワする親衛隊隊員を促して別室に連れて行こう(二人っきりの方が話しやすいと踏んだのか?)としていたら隊員が意を決して自ら話し始めた。
親衛隊隊員が俺の持ってる情報と寸分違わぬ真実を正直に話し始めた事で、対策本部内は色めき立ってくる。
何しろマイアートンの最高責任者が自らの欲望の為に裏社会の組織を町の中に作って裏の権力も握ろうとして行動していた事が、その先兵となって働いていた者からの告白で事実が突き付けられたのだから。
騒然とする対策本部に桂浜副町長が戻ってきた事で、親衛隊隊員の口から同じ事が繰り返し説明される事となったが、事の重大さに桂浜蔵人も絶句してしまった。
全員がフリーズしてても埒が明かないので告白をした親衛隊隊員と桂浜と警備隊の人間が詳しく取り調べをするために別室に連れて行くようにエミールが促して対策本部を出ていった事で、ようやく対策本部内にホッとした空気が流れた。
これはここで処理できる問題じゃない。
そういった問題を対策本部内にも抱えていても、町中に入り込んでいた昆虫魔獣退治は冒険者のアーチャー見習いや警備隊のなかでアーチャーとして素質を持った者たちの活躍もあって、ほぼ全滅できたようだ。
今回の大騒動でアーチャーとしての素質を開花させた冒険者や警備隊隊員も何人かいたようで、彼らの活躍がなかったらここまで短時間で昆虫魔獣の退治はできなかっただろう。
俺は昼の12時になったので魔力パワーボートの操縦席に座りながら食べられるように、アイテムボックスに入っている大鹿魔獣のステーキをサンドイッチにしてパクつきながら思考しながら指示を出す。
早乙女ゴブリン組は交代チームを送って一時的にだが戦力が倍増したことで、今まで徐々に広げていた安全圏を一気に拡大してマイアートンの周囲にある用水路まで押し広げることに成功した。
用水路の外側の大森林のジャングルの中では森林タイガーが昆虫魔獣の巨大な群れの中で縦横無尽に暴れまわってたおかげで、昆虫魔獣の組織立った動きも出来なくなりはじめたのも大きい効果を生んでる。
その時、森林タイガーのチームに帯同させてある徒影から報告が入り、昆虫魔獣を退治した時にドロップアイテムが出始めているという一報があった。
まだダンジョン入口が発見できたわけではないが、やはりダンジョンの発生による昆虫魔獣の大軍団の暴走というのが今回の真相といえそうだ。
なので今はドロップアイテムを落とし始めた地点を調べるために森林タイガーは徒影の指示に従ってチームを分割して探ってる。
高層の塔などは見えないようなので今回発生したダンジョンは塔型ではなく洞窟型なのか、もしくは城壁に囲まれた要塞型なのか・・・まだ判断は難しい。
ダンジョンの形成にはパターンがいくつもあり、いくつかの決まった形のようなものはあるのだが、いろんなパターンの複合型などもあって、結局のところ・・・
『クリアーしてみないと答えは出ない』というのが回答になる。
俺はサンドイッチを頬張りながら新たなダンジョンの妄想に思わずニヤニヤと相好を崩して少し笑ってしまう。
やはりダンジョンアタックには男の夢とロマンが詰まっているような気がしてならないな。
それにプラスして・・・・
『誰も入ったことのないダンジョン』
・・・夢が膨らむ言葉の魔法だ。
とはいえ焦りは禁物だ。
今回の場合まず最優先なのはトリーの身の安全であって、次にマイアートンの平和、その後に新ダンジョンという順番を間違えないようにしないとな。
ニヤつく顔を引き締めてゴブリン組や徒影や忍に指示を出してマイアートンの安全圏の拡大を推し進める。
そんな時に首都シーパラに放ってある忍から・・・俺にとっては『朗報』が飛び込んできた。
『角館家とケミライネン家で内乱発生』
というモノだった。
以前にマスカー・フレデリックに教えてもらった通りに、角館家の跡継ぎ候補筆頭の『角館裕仁』湾港労働ギルド本部ギルドマスターと、ケミライネン家の跡継ぎ候補筆頭『ライモンド・ケミライネン』湾港労働ギルド本部サブマスターの二人が身動きのできなくなった両家の首脳陣の退陣要求を正式にたたきつけて、自らが本家を乗っ取る宣言をしたのだった。
予想通りに二人の後ろで暗躍してるのは『マツオ・ユマキ』と『イワノス・ゲッペンスキー』の二人。
現在の角館家とケミライネン家の首脳陣の中で危機感を抱いている人達の”要請”という形にして跡継ぎ候補を立てて、今現在は全く身動きのできない首脳陣をしり目に退陣要求をたたきつけた後に、親戚縁者関係を中心に、両家の子会社の首脳陣達を取り込む動きを活発化させている。
現在の両家の首脳陣はこれに対して抗う手だてが存在しない。
首脳陣の全員が金を動かすことも自分自身が動くことも最高評議会の監視付きなのだ。
後手に回るってレベルですらない。
ただ指をくわえて見てることしかできない。
だからこそあえて角館裕仁もライモンド・ケミライネンも陰に隠れて活動するのではなく、誰の目にもとまるように派手に活動し始めたのだろう。
これはマツオの立案した作戦ではなく・・・イワノスっぽいな。
しかもマツオは作戦立案に絡んでなさそうで・・・もしかしたらユマキ家現当主『サトシ・シーズ・ユマキ』が絡んでいそうな作戦。
正々堂々と表立って派手に活動した革命を起こして、自分の印象を清廉に見せる。
今までの両家の持っているダークの部分を全否定することで自分の起こした革命の正当性を主張。
敵側が動けないうちに地盤は安定するだろう。
・・・さすがイワノスだな。
今の状況を考えると・・・マツオの考えそうな、商人の腹を探る駆け引きではなく・・・『戦争』での戦略っぽいからな。
しかも陰の部分が見えない分、すべての陰の部分を敵側に押し付けているので、より自分側が光るという・・・かなりエグイ部分もある。
まぁ今のケミライネン家と角館家の両家のトップには、正当性なんて端からなかったけどな。
俺に対して無意味な争い事を吹っ掛けまくって、自分の貴族的な特権階級意識を満足させるためだけに、ありとあらゆる方向にケンカを売りまくって、一心不乱に自滅へと邁進していってる。
そのトップを諫めることもなくサポートし続けた現在の首脳陣は、無能以外の何物でもないだろう。
これを機に組織の中で大幅な入れ替えを行い、すべてを一新して出直すしかないだろうな。
つーか、もういい加減こいつらに言いたいのは・・・『こっち見んな』だな.
俺の事なんて気にしないで自分たちだけで楽しんでればいいのに、なんで俺の事なんて気にするんだろうか・・・さっぱりワカラン。
俺からすればこれで厄介事から解放されそうでうれしい出来事だ。
全力で応援させてもらいたい・・・できるかぎり遠くから。
・・・俺を一方的に敵視していた両家の首脳陣の相手は、今後は俺ではなくクーデター相手になるだろうし・・・俺を相手してる暇なんてなくなるだろう。
クーデター側は俺の名声を利用しつつ、敵に最大限のマイナスイメージを植え付けて、味方を増やす作業をしてるだけで勝てるという・・・楽な戦いだ。
しかも敵側は自らが起こした行動によって、自分たちの全ての行動・金の動きまで制限がかかってるという状況。
楽ってよりも・・・美味しい状況の戦いだな。
けど、敵を誘導してこの状況を作り出したわけでもなく・・・敵側の自業自得ってのが、より美味しい状況といえる・・・いや、ちょっと違うな。
俺への敵対行動で自分からこの状況に陥ってるからな。
・・・この有利で美味しい状況を最大限利用しているのが今回のクーデターなんだから・・・
自分から落とし穴に突っ込んでいって穴の中でもがき苦しんでる敵に止めを刺しに行ったのがクーデター側だな。
イワノスの指示で自分たちの有利な状況を利用して有利な状況のまま押し切るつもりなんだろう。
『横綱相撲』って感じで、敵に隙すら与えずに止めを刺しに行くあたりが・・・戦略ってよりも戦術っぽいのがイワノスっぽい。
これがマツオあたりだったら、もっとエグイ状況になってただろう。
マツオの場合・・・敵となる相手への行動はにこやかな顔をしたまま、表向きは会話での解決を望みつつ、一番のキーマンとなる相手に暗殺部隊を平気で送り込んでくるだろう。
情報収集のために首都シーパラに放ってある忍や徒影からの情報も、クーデター側の有利な情報しか入ってこない。
敵側はそれを指を銜えて見てるだけしかできないってのが・・・今までに入ってきた情報。
忍の中に封入されてる忍者スキルマスターの能力を使って、首脳陣側の情報収集を積極的にしているが、クーデター側には不利になりそうな要素すらなさそうだ。
しかし・・・バカはこういう自分が不利にしかならない状況の中であっても、何をしでかすのか全く読めないので安心はできない。
今までも全く先読みできない行動をし続けていたし、今後も読める行動を選択するとも思えない。
最高評議会の監視中であっても自分のプライドのためだけに何かしらの行動を起こしそうだ。
監視しているのは最高評議会だけではなく、忍もトップ2名には張り付いた状態で監視中・・・何かしらの動きがあった場合はでヘルプさんから報告される。
最高評議会から派遣されてきたチームから四六時中,監視を受け続けているので相当イラついてると聞いてる。
そろそろ『何らかの動きをしてくるんじゃないか?』っていうのがヘルプさんの予想。
ただ・・・ヘルプさんの予想でもその動きは俺に向かってくるのか、それとも自分たちに逆らう様に敵対行動を起こしてきた『角館裕仁』や『ライモンド・ケミライネン』に向かうのかは不明・・・自分達が動くことで、今よりも自分たちをさらに不利な状況に追い込むであろうことがわかりきってるはずなのに・・・それでも動いてくるだろうと予測されてる。
・・・イワノスも多分、同じことを予想してるんだろう。
全てを予想したうえでの横綱相撲のような追い込み方に、クーデター側にも関わらず王者のような恐ろしさすら感じる。
俺にとっては大変ありがたい状況だ。
このままクーデターが成功することを応援させてもらおう。
ヘルプさんに指示を出してしばらくは情報収集につとめて新たな動きがあり次第、報告してもらうことにした。
今はこちらが積極的に動く場面ではないしな。
こんな事を考えてる間にも魔力パワーボートは首都シーパラに向かって猛スピードで進行中。
俺自身は海底の難破船や船の残骸をあさっていたりしていたが、魔力パワーボートは時速100km以上を維持したまま進行していたので、予定よりも1時間ほど早い午後2時にはシーパラに到着しそうだ。
昼食後の緑茶をまったりと楽しみながら近づいてきたシーパラでの事を考え始める。
今のところ、シーパラ到着後の動きとしては・・・
まずは俺の冒険者ギルドランクのSランクへの昇進式典。
これは首都シーパラの大聖堂で行われる予定で・・・大聖堂内の準備は終わっていて、俺の到着を今か今かと待ちわびてるという、情報収集のために監視してる忍からの報告がある。
このまま俺が到着してシーパラ大聖堂に向かうとそのまま記念式典が始まる手筈が整っているようだ。
角館家とケミライネン家の内紛による騒動をよそに俺はSランクへと昇進できそうだな。
つーか・・・俺の冒険者ランクUPと両家の間にはなんの関係性もないんだけどね。
Sランクへの冒険者ギルドランク昇進での本来の記念式典のしきたりでは、観客の前の公開インタビューがあるはずなんだが、今回のように妨害行為が予想されるときは免除されるようだ。
・・・俺の場合は味方も増やしてきたが、それ以上に敵も多いので仕方がないという『冒険者ギルド』『最高評議会』『評議会』『教会』などの協議の結果、結論が”一般公開中止やむなし”と判断が一致したようだ。
とは言え・・・雑誌や新聞社などのインタビューそのものは中止にはできないようだ。
記念式典の後で記者会見が開かれるらしい・・・
シーパラ連合国における最高権力者の『シーズの家』の2家が俺の敵に回っている以上は、一般公開では悪戯に騒動を巻き起こすビジョンしか見えないので仕方がない・・・俺の場合は『一般公開でのインタビュー付き記念式典』と『非公開でのインタビュー』の、どっちにしても面倒なんで出来る事なら冒険者ランクの昇進すら断りたいんだけど・・・冒険者ギルドの冒険者のSランク昇進が久しぶりなんで”全部お断り”というのは出来ないようだ。
・・・メンドクサイ。
俺の場合は秘密が多すぎて記者会見なんてしたくないんだけど、そこまでの我儘は許してもらえないようだ。
これから『マスコミ対策』に追われそうな状況に頭が痛くなってくる。
カメラや写真、画像なんかはこのイーデスハリスの世界には存在しないので、俺の似顔絵が記事を賑わせる事となりそう・・・今とそんなに変わらない状況なんだけど・・・
公式に記者会見があるということで、より紙面を賑わしそうで・・・面倒極まりないな。
といってもマスコミとの全面戦争は遠慮したいので、ある程度の譲歩はこちら側にも必要だってのは理解できる。
しかし・・・日本での『相手の感情をすべて無視した報道合戦の様子』を新聞・テレビ・雑誌などの様々な報道を見てきた俺にとっては、頭を悩ませる新たな問題の直面に少し戸惑ってるのが現状だな。
面倒なことにならなきゃいいんだけど・・・はぁ。
教会内での昇進式典なんだからアマテラスの監視の目を潜り抜けて行動を起こしてくるバカは排除されてるという安心はあるのだが、マスコミ対策という別の問題が浮上してくるとは想像すらしてなかったので、なんの対策もねっていない。
というより・・・今から対策を練らなきゃいけないという・・・はぁ、憂鬱だ。
どうやってはぐらかしたり、ごまかそうかということばかり考えてしまうけど、”お人好し”の俺のコミュニケーション能力ではマスコミ相手に上手くできるとは思えない。
言葉も発せなくなるほど『殺気』と『存在感』をダダ漏れ状態で記者会見をして、相手に威圧感超特盛りでやり過ごそうかなんて事まで考えてしまう。
それだと・・・なんて書かれてしまうのかという恐怖もあるけど・・・質問に答えなくていいので書かれることは今とほぼ変わらない『妄想記事のオンパレード』となるだろうな。
そういえば・・・アマテラスに貸しが2つほどあったな・・・教会に入ってくる記者に『面倒な質問はするな!!!』って神託でもさせるか?
今更・・・時間的に間に合わないな。
無視するってわけにもいかないようだし・・・うぜぇ。
何をどう想定していても、相手がある事だし未だに経験もないことなのでなんで『出たとこ勝負』という結論にしかならない。
俺のもらった経験や知識にもマスコミは『厄介極まりない相手』という認識で統一されてるし・・・俺のもらった知識や経験は迫害を”受ける側”のモノなのでマスコミに良い印象そのものが皆無と言える。
無論、厄介なのは記者の後ろに『一般市民』というモノがあるから、マスコミが司法・立法・行政に続く『第四の権力』と言われる所以でもあるんだけどね。
今までと全く違う敵(?)の出現にビビってしまうな。
目に見えない敵と戦うというのはイーデスハリスの世界において初体験。
お人好しの俺には無理そうだけど・・・上手くはぐらかして論点をずらすことに集中するしかなさそうだ。
などと並列する思考の海で状況変化の対応に追われて、もがき苦しみながらも・・・マイアートンのゴブリン組の入れ替えを疲れの見え始めた部隊を優先的にして順番に行い、近づいてきた首都シーパラの速度制限区域内に進入する前に周囲の船と同じように10ノットまで速度を徐々に落とし始めている。
もちろん魔力パワーボートは首都シーパラに近づく前に認識疎外の結界はすでに解除して周囲の高速ボートと同じような速度に戻してある。
認識疎外の結界解除と同時に幻影の魔法を展開してるので極ありきたりな高速ボートに見えるようにしてるので、目立たないことに変わりはない・・・事故防止だな。
首都シーパラに到着して契約してある高級マリーナの自分の契約した場所に停泊・・・魔力パワーボートの場合、錨を下ろす必要もないのに停泊でもいいのだろうか・・・まいっか。
すでにアマテラス経由で連絡がしてあるので聖騎士団が高級マリーナのゴーレム馬車駐車場で待機してるので、聖騎士団のゴーレム馬車に乗って冒険者ギルドシーパラ本部まで移動する。
聖騎士団のゴーレム馬車に乗り込んで思ったのは・・・
『なんで聖騎士団の面々がこんなに緊迫した表情で周囲を警戒してるんだろうか?』
~いまさら? おい! なんでやねん!~
ヘルプさんにツッコミを入れられて思い出したが、そういえば・・・俺はシーパラ連合国以外の複数の国の複数の商会から多額の賞金がかけられた『賞金首となってる』ってことをすっかり忘れていた。
ケミライネン家と角館家が合同で賭けた20億Gという賞金をはるかに超える100億Gという賞金が賭けられているようで、賞金稼ぎギルドの複数の高レベルチームが本腰を入れて俺と俺の作ったゴーレムを狙っているという話だった。
賞金稼ぎギルドは合法・非合法の賞金の一切を問わずに狙ってくるチームが多く、国側の規制を一切無視して金さえ稼げば後は他国に逃亡したりと・・・賞金稼ぎギルド自身は合法組織であるのだがギルド内で活動するチームは法を無視してでも金を稼ぐことしか考えていない者達が非常に多く、評議会や最高評議会でも何かと議題に上がって規制を強化されたり税率を上げたりと対抗措置は取られているのだが、地下に潜って裏取引をして金を稼ぐチームも多く、行政側・警備隊や聖騎士団も何かと手を焼いている厄介な相手らしい。
まぁ、俺からしたら・・・『たかが賞金稼ぎごときはどうでもいい相手』だったので存在すら忘れてたな。
偵察に入れた忍からの情報も・・・ユーロンドでも簡単に撃退できる相手だという報告しかない。
賞金稼ぎギルドの中で最高レベルといわれている賞金稼ぎチームですらその程度なので忘れてても仕方がないじゃんとヘルプさんには言い訳しておいたのだが・・・
~それならば、仕方がないですね~
ヘルプさんも納得の回答だったみたい・・・いいのか? まぁ相手も相手だしな。
事実、俺が契約している高級マリーナに魔力パワーボートを係留したとの情報で、賞金稼ぎギルドの何チームかが偵察にやってきた・・・っていうのですら、既に忍によって徹底的に監視されている。
監視者は忍のスリープで夢の中に強制突入して、すでに高級マリーナ横のゴミ置き場の陰に放置されている状態だった。
真面目に語ると・・・
本当の実力を持った人達は非合法な活動なんかしなくても正規の冒険者で高レベルに達していたり、聖騎士団の団長や警備隊幹部などをしてるので・・・所詮、賞金稼ぎギルドで高レベルチームだと威張っているようなヤカラはこの程度の実力しか持ってない。
他国から流れてきた賞金稼ぎも同じような状況で・・・流れてきた=他国において非合法な賞金稼ぎをして逃亡してきた奴等だったりする。
だからこそ『たかが賞金稼ぎ』という表現を使っている。
・・・もしかしたら俺の知らない特殊な才能を持った敵がいるかも?
って”期待して待ってる”状態だったりする・・・今のところそんな情報すら皆無だが。
俺がシグチスを出発する前から入っていた情報で、賞金稼ぎギルドのトップクラスのチームが式典が行われる厳戒態勢の教会をあえて避けて、早乙女工房ビルにいるユーロンドを略奪する計画がある。
そのチームを忍によって監視させているのだがまだ俺が首都シーパラに到着したという一報が入ってない様でチームに動きはまだない。
早乙女工房ビルを離れたところからチームの斥候が監視をしているのだが、彼らにもなんの動きもない。
早乙女工房ばかりを注視しているようで、マリーナや港には誰も入れていないので情報が遅れているようだな・・・ここだけを見てもレベルの低さがうかがえてしまう。
悲しいことに・・・この程度なんだよな。
これが賞金稼ぎギルドのトップクラスチームという・・・悲劇? 喜劇?
これが”自称”トップクラスチームと言うなら納得のレベルなんだけど・・・
ヘルプさんも納得の存在感の薄さだな。
国側がなぜここまで好き勝手にやられて手を焼いているのか理解ができないほどのレベルの低さが賞金稼ぎギルドにある。
このことからも分かるように・・・とりあえず監視してるのだが、本腰が入っているわけでなく・・・彼らの会話や情報の中から面白い情報はないかと『情報源として』探ってる状態。
情報源としてはなかなか面白い情報が上がってる。
彼らには独特のパイプがあり、俺が今まで発見できてなかった『情報屋』と呼ばれる街に潜む情報を売り買いしてる者どもが浮かび上がってき始めた。
犯罪者としては思いっきり”小粒”なんだが、俺が忍や徒影を使ってローションマッサージ嬢などから上がってくる情報と大差ない情報から、果ては国家機密まで取り扱ってるという・・・信憑性は皆無なんだが情報源としては面白い存在になる。
俺も今までいろいろな手段で雑多な情報を集めてゴーレムを使って探らせていたが、同じように街の情報を探っている・・・いわば『同業者』の存在を初めて認識できた。
無論、情報屋には忍が付きっきりで張り付いて情報の出どころや信憑性を別のゴーレムが探っている。