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新たな武器を作ったっす。

任侠ギルドは順調に勢力を拡大できたといえるだろう。

元から任侠ギルドは存在していた組織だし俺が新しい風を吹き込むことで強力な組織に変貌を遂げた。

俺が組織に投入したゴーレム・・・忍・徒影などのゴーレムが、組織の弱かった調査部門を大幅に強化した事で、強靭な組織に変貌していったのだろう。

ローションマッサージ天国で働く女性達もガンガン増加してるし、マティアスをはじめとする地下闘士たちの力を得た事で戦力も倍増してる。

増えたのは戦力だけでない。

大量の借金奴隷を増やし内勤を任せられる奴隷も下働きの奴隷も増やした。

忍と徒影の諜報部隊を充実させて大幅に強化してあるので、今ではイーデスハリスの世界でも有数の情報収集力を誇る組織になってる。

ここまで来たら忍と徒影の追加以外では俺の手助けはそこまで必要がないほどに、強力な布陣になってきてるだろう。

組織も今後はさらに人数を増やして強くなっていくし、ビルドゴーレムやマッサージメイドゴーレムを追加した事で俺の手を借りる様な事も格段に減ってくる・・・かな?

それにローションマッサージ天国の流行もバカにできないほどに、任侠ギルドという組織に新しい風をもたらしている。

彼女たちに店に支払ってもらってる料金の15%という数字はマナガルムが設立した『ローションマッサージ商会』を通じて国に支払ってる税金と”同じ金額”にあえてしてある。

彼女たちも税を間接的にだけど納めてる形なので、脱税してない彼女たちは違法な売春行為をしてるわけではないので、取り締まりからも免れて逮捕されるような隙までないようにしてある。

商会の儲けはほぼない・・・儲けはお客が注文した食事やドリンクなどの飲食物からの金のみ。

ドリンク1杯1000G、食事1食1万Gとボッタクリ料金設定なんだが、出される料理は料理スキルを持つゴーレムの料理なので、今のところ問題となった事どころか文句を言う客もいないし・・・あまりの美味しさに金持ちの常連相手のひそかなブームが起きてるようだ。

飯だけ食べたいという客はちょろちょろ出てきたようだが、『食事はあくまでオプションでしかない』とすべて断ってる。


俺はすでに別の組織に興味が向いてる状態だな。

『早乙女ゴブリン村』

の存在だ。

一郎たちが加わった事でゴブリンとも交流が図れるようになった。

ゴブリンとの交流が俺の貰った知識にも記憶にも無いので面白くて、ついつい大きく肩入れをしてる。

尋常のゴブリンとは大きくかけ離れた異様な存在に進化? 成長? し始めてる。

ゴブリン達の装備は全部俺の手作りなので防御力も攻撃力も大幅に上がってるし、組織的な動きも軍と呼ぶにふさわしいレベルで旧紫村流侍道場クラスなら同数程度なら、正面から戦ってもまず遅れは取らないだろう。

あの大森林地底湖周辺の地理的な有利さを利用すれば、数倍の数の人間の軍隊でも相手をできる。

道というモノが周囲に存在しない大森林のジャングルの真ん中に巨大な砦を構えてるんだから、空を飛ぶ飛行機が存在しないこのイーデスハリスの世界では、大都市以上のレベルの防御力があるだろう。

人が攻め込むには道、もしくは川が必要・・・魔獣が日夜闊歩するジャングルを道の存在しないのに軍を移動させる”行軍”って言うのは無謀でしかない・・・そんな立地に砦を作ったんだからすでに”ジャングルの中の独立国家”という事もできる。


大森林では飲み水に事欠く場所を探す方が難しいほど湧水は多いし、みかみのもたらした”恵み”が自給自足を可能にしてる。

こんな状況がまるで街作りゲームや建国ゲームの様で少しワクワクしてる俺がいる。

なので今後はどうなっていくかはまだ不明だけど、ゴブリン達には砦内部の畑なんかを作らせて自給自足して生活する、さらにその上・・・農村を目指させたいけど。

金銭の流通は流石に無理があると思うけど、物々交換での社会形成ができたら凄いだろうな。

ヘルプさんの予測でもさすがにしばらくの期間は無理だろうとの事。

でも人間の街を作ることにはほとんど興味は湧かないのに、ゴブリンの作る村の方には面白みを感じてしまうのは俺が変人だからだろうな。

人間の街を形成する場合には用意しなければいけないインフラが多すぎるけど、ゴブリンの場合は元々ジャングルで暮らしていた種族なので、インフラの整備は限られてくる。


それに俺の懸念する『俺の持つ機密情報の流出』は人族・亜人・獣人・魔族などの言語を持つ人類と交流のないゴブリン達には存在しない。


そんな事を妄想中にもふもふ天国ヨークル2号店の周辺警戒をしている忍から念輪連絡が入り、嫁達にストーキングしてる連中の依頼主が判明。

カルツ・ミュラー・クシュベントナー第6王子の関係者だ。

スパイギルドヨークル支部を首になった連中・・・以前、俺と揉めた時にスパイギルドヨークル支部ギルドマスターしのび権蔵ごんぞうと一緒に追放されたヤツラが、クシュベントナー家にかくまわれていていて、そいつ等がクシュベントナー家の依頼によって動いてるという事実が判明したとの連絡だった。

カレンをストーキングしてるのは2人で連絡員が3名いる。

実力行使で排除決定だな。

全員をスリープ魔法で眠らせて路上放置・・・路上と言っても雨の中の路地裏に放置したので、半日後に自分達が目覚め手動き出すまで、クシュベントナー家側のヤツラには発見することは出来ないだろう。

少し動きがつかみにくかったんだが、クシュベントナー家のカルツの側近に念話スキルを持つ人間が多数いて、ストーカーを監視してる忍からは裏に潜んで命令するヤツラの動きを全く掴むことができなかった。

地球の電話と違って声に出して会話しない念話は動きがつかみづらい。

しかし全員が念話スキルを所持してるわけではないので、声に出すか文書で指示を出す必要があり、カルツ達を監視してる忍からの報告があってから発覚した。


俺が指示して2名の監視者と3名の連絡員を連絡不能にしたので、彼らはこれから手の内をさらけ出す様に動き始めるのに期待している。

何かしらの動きが出てから、こちらの対応を考えればいいだろうし・・・突然連絡が取れなくなった事にビビって鳴りを潜める可能性もあるが、たとえそうなってもこちらには損することが何もない。

すでに尻尾はガッチリと握ってるんだから、相手が動けば動くほどこちらに情報が入ってくるし、動かなくなったらそれはそれで監視を続けるだけでも時間は掛かる事にはなるが、その分こちらも情報を与えることなく自由に動けるんだからメリットの方が大きいだろう。


念輪でカレンに確認してみるとカレンはすでにストーカーの存在に気付いていた。

・・・当たり前か。

俺と結婚して忍者スキルマスターに復活したんだからな。

周囲を警戒してる俺が作ったゴーレム”忍”の存在にも気付いていたので、どう処理したモノかと考えていたようだった。

それとアイリ・ミー・クラリーナもストーカーの存在をなんとなくだけど感じていた。

以前に俺が言っていたように気配探査と魔力探査の練習台としてボンヤリと敵の存在を探っていたらしい。

3人とも急にストーカーの存在が消えて見失ったのかと周辺を探っていたようだったので、俺が眠らせて処理したと説明したので納得してくれた。


時速100kmぐらいの約54ノットほどで巡航してると海底に鎮座する沈没船の反応が俺の探査魔法にヒットした。

シグチスに来た時は沈没船が沈んでる場所のマーキングだけしかしてなかったので、これから探索することにする。

水の中でも呼吸ができる水魔法の『水共存』を自分自身に掛けてから転移魔法で海底にまで跳んだ。

水深が100m近い場所の岩場に引っかかるようにして鎮座している沈没船が見にくいので自分の周囲にライトの魔法を前後左右に4つ浮かべる。

海底を歩き沈没船の船尾に戦争時に開けられた大きな穴を含めて周囲から観察する。


これは軍船ではなく商船のようで、シーパラ連合国所属の船だな。

船尾に開けられた大きな穴は魔法の攻撃によるものだろう。

船体の下から氷魔法『氷塊』をぶつけられ船尾に大穴が開き、一気に沈没したんだろうという事が推察される。

こうやって外国との戦争時に敵に沈められた船をじっくり観察することで敵の攻撃方法まで調べられるのは、俺にとってものすごく大きな収穫だ。

大きな穴から沈没船の内部に侵入していく。

入っていってこの船の状況がわかってくる。

これは戦争によって犠牲になった船だが・・・状況がひどいな。

明らかに商船で沈められているのに内部には物資も死体も何もない。

戦争中の海賊行為で中身を総ざらいに奪われている。

内部調査で発見したのは船長室に残された船長と思わしき人物の白骨死体のみだった。

航海日誌すら残っていない徹底ぶりだな。

内部調査を終えて沈没船の外に出るとこういう時に襲ってくるテンプレが来た。


全長15mを超える様なタコ魔獣の襲撃。


ライトの魔法がかき消されるほど大量な墨を吐いて周囲を暗黒の世界に染めあげる。

タコ魔獣の墨にはライトの魔法を消滅させる闇魔法の効果も入ってるので俺が浮かべていたライトは瞬時に消滅。

それに地球のタコと同じで墨の成分には麻痺効果が含まれてる。

魔獣となった効果で麻痺成分はかなり強烈になっているが・・・もちろん俺には全く効果はない。

俺に巻きつけようと迫ってきたタコ魔獣の足に雷魔法『メガスタン』を掛けてショック死をさせた。

俺の鼓膜にまで『バン!』という衝撃音が響くほどの威力で一撃死。

やはり水生生物への雷魔法の効果は尋常じゃないな。

海底を漂うタコ魔獣をアイテムボックスに収納する。

周辺を脳内MAPで確認しながら探査魔法で探ると2kmほど離れた場所にも沈没船を発見したので、転移魔法で近くに跳ぶ。


こちらの沈没船はすでに船の原型は留めてない、ただの瓦礫の山となっていた。

周辺にライトの魔法を浮かべて調べてみたが・・・こちらは他国の軍船のようで海底に散らばる瓦礫の中を漂う軍旗が翻っている。

軍旗から判明したのは・・・北の大陸に過去に存在していた魔族の軍船の様だ。

数百年この海底に放置されていてすでに魚たちの住処でしかない。

こうやって海底に眠る沈没船を次々に探索していって変化が現れたのはそれから1時間後の16時ぐらいで、探索し始めて6艘目の沈没船の中に入ろうとして真っ二つに裂かれた船のドアを開けた時だった。


ドアを開けた瞬間に奥から銛が俺の顔面に向かって飛んできて掴み取った。

ダマスカス鋼製の銛で水中攻撃と考えても結構鋭い攻撃。

俺は銛を掴んだまま内部にライトの魔法を次々に投入して敵を探査魔法で探る。

なるほどね・・・アンデッドのスケルトンが銛を投げてきたみたいだった。

どおりで俺の気配察知には何も反応がないはずだ。

魔力探査で探ると沈没船の中のこの部屋だけで、100に近いスケルトンや100以上のゴーストがいるようだ。

ゴーストからの精神錯乱魔法などの闇魔法の攻撃を受けながらステータス画面を展開して、今着てる普段着から早乙女甲殻鎧全身セットに一瞬で装備を変更する。

手につかんでいたダマスカス鋼の銛をアイテムボックスに片付けると戦闘開始。


海底の沈没船の中で何十年と過ごしていたスケルトンは闇属性だけでなく、氷属性の魔法も使える様なので『アイススケルトン』に進化してるようだ。

氷弾が次々に飛んできて早乙女甲殻鎧に吸収されていく。

氷魔法は早乙女甲殻鎧にとって吸収するエサでしかないのでダメージすら受けないのだが、合間に俺に向かって飛んでくるダマスカス鋼製の銛は、素手で直接つかんでアイテムボックスに入れた。

それにロングソードのような氷の刃を構えたスケルトン剣士がじわじわと近づいてきて、氷の刃を頭上に振りかぶりながら走り寄って攻撃してきた。

俺はアイテムボックスから取り出した早乙女木刀で迎え撃って、弾き返すと同時に右足の前蹴りでスケルトンの胸部のコアを蹴り飛ばす。

氷の刃とスケルトンのコアも木端微塵に砕け散った事で氷と骨の残骸が周辺に飛び散る。

俺はそのまま右にサイドステップで左から飛んできたアイスジャベリンを躱しつつ、右側のスケルトンの懐に飛び込んで右手一本で振り払うようにしてスケルトンの胸部にあるコアを早乙女木刀で叩き割った。

正面から飛んできた氷塊は左のジャブで弾き飛ばして違うスケルトンにぶつける。


アンデッドとの本格的な乱戦は初めてかな? 少しだけ楽しくなってきた。

飛んでくる氷弾などの氷魔法は時に弾き飛ばしたり早乙女甲殻鎧に吸収させたりしながら、敵のスケルトンを壊して数を減らしていく。

部屋の最奥にいるゴースト達には聖浄化を当てて1体ずつ浄化して魂を昇華させていく。

精神錯乱や魅了・混乱などの闇魔法の精神攻撃は100を超すゴースト達から連発で掛けられてるが、早乙女甲殻鎧の前では闇属性の攻撃は鎧に吸収される魔素でしかない。

スケルトンには早乙女木刀から胸部コアを直接叩く攻撃で撃破していき、ゴーストには物理攻撃では効果はないので光魔法を使って攻撃する。

この部屋のスケルトンとゴーストを退治してから、散らばる魔石と魔結晶を回収しながら原因究明を開始した。


この沈没船は船の形状から100年ほど前に製造された船で、沈没したのは80年ぐらい前だろうか・・・ドルガーブで船舶博物館に行って俺が知らなかった知識を吸収できたおかげでここまでは推察できた。

船が沈められた原因はけっこうわかりやすい。

水魔法のウォーターカッターで何度も船底から斬り付けられて、浸水しつつある船体にトドメの『水塊すいかい』で突き上げられたダメージで、船体がもたずに真っ二つに折れて一気に沈んだのだろう。

船に残っていた傷痕から以上の事は簡単に分かった。

船内に残っていたスケルトンとゴーストの発生原因は船の方に残されていた。

船内を隈なく探索して調べたところ・・・船長室に奴隷をアンデッドにした闇魔法の元が残されていた事がわかる。

氷の精霊本と闇属性の魔結晶が3つ、さらには魔水晶が10個も施された魔法陣が船長室にあり、この船に乗船していた船長以外の船員は全部初めからアンデッドしか乗船してない。

船ごと港に突撃させてダメージを負わせる突撃死魔船とつげきしませんと呼ばれるギャグみたいな名前の恐ろしい兵器だ。

アンデッドに殺された生物はアンデッドに転生してしまう事を利用した突撃型の兵器。

物理攻撃がほとんど効かないゴーストと弱い光魔法の浄化だけでは全滅させられないスケルトンの組み合わせに、本来は死食鬼グールやゾンビもいたんだろう・・・水中では死食鬼やゾンビは長くとどまれないから、すでに海水のバクテリアなどによって分解されてしまったのだろう・・・痕跡だけは微かに残ってる事から推測できる。


船長は死霊呪術魔術師ネクロマンシーと呼ばれる呪術師・・・闇魔法と呪術のハイブリット型の術師。

大型の蒸気船に船の頑丈さのみを追求した、防御力特化型の船体で敵陣のど真ん中の湾内に突撃させて港に座礁。

港をアンデッドに襲撃させる突撃死魔船は港に辿り着くと攻撃力を生かすことができるが、航行中は他船を攻撃する術を持ってないので意外と脆い。

敵が乗り込んでくるならアンデッドで迎え撃つことができるけど、遠距離からの魔法攻撃にはただひたすら耐えるのみ。

そういう突撃船なので首都シーパラの様な細長い湾で両岸から監視されてる様な場所にある都市を攻撃するのには向いていない。


突撃死魔船が有効に効果的に使えたのは”敵が攻略法を知らない事”が前提にあると思う。


魔力マネー統一後の転生者が魔王に転生して『魔族による世界統一』の時にイーデスハリスの世界中を混乱と恐怖におとしいれたのが『突撃死魔船』であって、アンデッドの恐怖と共に全世界の人類を半分以下に減らした恐怖の呪術でもある。

船がアンデッドを伴って世界中の港を襲撃したのでイーデスハリスの世界の港の機能が完全にストップして、世界中の船と港の”流通”に大ダメージを与えて全世界を孤立化。

軍事的に世界統一して魔力マネーまでも統一されたはずの世界統一国家は、転生者の魔王率いる魔族軍によって分断化されて各個撃破され崩壊した。

魔王軍は世界統一後に内部分裂によって崩壊したが、突撃死魔船の恐怖は有効手段がない戦闘力となっていた。

”上陸させる事なく海上にて沈める”という対策を転生者が戦争時に実際に確立したことで、今では真っ先に狙われる船・・・そりゃそうだよな。

遠距離攻撃して反撃されない・・・けど上陸されたら厄介な船なんて、とっとと沈めた方が良いに決まってる。


その証拠に突撃死魔船がこのシーパラ湾の中で沈没させられていて、その後の海底沈没船探査の半分以上は突撃死魔船の残骸となってる。

スケルトンとゴーレムは自身のエネルギー源となる魔法陣の外では長時間の活動は出来ないし、命令するべき『死霊呪術魔術師』は船が沈んで死亡・・・”生きてる人間を攻撃しろ”という単純明快な命令以外はされてないのだろう。

船内に残っていたスケルトンもゴーストも俺が近づいた事で、俺の生命反応で初めて動き出したような印象がある。

俺は神聖浄化で強引に全部のアンデッドを消滅させてから内部に潜入して中に残されている魔石・魔結晶・魔水晶を回収していく。

氷の精霊本は3冊、水の精霊本は2冊収集できたが、それ以外の精霊本は全部使い物にならないアイテムでしかなかった。


2時間ほどあちこちの沈没船の中を探ってると船長室で2本の『魔力剣セディーサー』を発見した、

以前の初心者用の魔力剣とは違ってこちらは上級者用というか、魔法使い専用の増幅型の魔力剣になってる。

魔力剣の刃の部分にミスリル鋼がつけられていて、ここに魔力の刃が浮き出てくる仕掛けだ。

刀身には魔石が取り付けられていて、柄に内臓された魔結晶の魔力を刀身の魔石が増幅させて刃の威力を維持してるんだけど・・・非常に残念だとしか言いようのない武器だ。

転生者のように魔力も剣技も人並み以上の者にしか取り扱いは非常に難しく、魔力ある者は魔法を使った方が手っ取り早いし、剣技ある者はマスタークラスになると『剣気』の取り扱えるようになり、自身の内部で練った剣気を使用すれば木の枝でも金属を切ることが可能となるので・・・BRブランディックス・ローズ魔弓以上に使い手を選ぶのが魔力剣となる。

切れ味が落ちないという利点もあることはあるのだが、鞘に再生の魔法を仕込めば良いだけなので魔力剣ほどの手間と金を掛けなくても切れ味は再生可能なので利点というほどのモノではない。

残念な武器な分・・・残念だからこそ魔力剣には発展できる余地が大きく残ってるのでは?

と、考えていたので、拾ったついでに改良をしてみる事にする。


俺が考えるに鞘に納刀して携帯可能な剣だからこそ、再生魔法で切れ味が維持できる。

腰に鞘があるなればこそ、戦いの最中にでも納刀できる。

しかし薙刀や槍の様な長物はどうだろうか? 戦闘中において長物でも切れ味は重要な要素であるが、戦闘中に鞘を取り出して再生させるわけにはいかない。

なので長物の使い手は予備の槍や薙刀などを持っていたり、短槍で時間稼ぎする者も多い。

俺の疑問は『長物の武器の方が魔力剣に向いているのではないか?』というものだ。

なので今拾った魔力剣の魔石と魔結晶を利用して薙刀を作ることにした。

柄の長さは2.2mでオリハルコン製で柄の内部には魔結晶を複数内臓させる。

魔結晶をオリハルコンの柄で増幅させて1mの長さの魔力剣の部分に魔力を注ぎ込む様にさせた。

刃の部分は端のミスリル鋼の部分は取り外して派の部分の全体に薄く引き伸ばした魔石を張り付けて、刃の部分全部を魔石のプレートで覆い、魔石そのものに空間を断裂させる上級魔法『空元斬くうげんざん』を纏わせ続ける事に成功した。


完成した魔力大薙刀を試しで船の中で振り回してみるが木材も金属も熱したナイフでバターを切る様な手軽さで何の抵抗もなく両断する。

最大10cmを超す幅広の刃を持つ薙刀で日本の漫画などで見た『青龍偃月刀』を真似て作られたこの新武器はすでに名前がついていて『巴空斬ともえくうざん』となってる。

10kgほどの重さのこの新武器は俺が発明者として名前が刻まれているんだけど、魔力パワーボートの様な新しいモノを生み出したという感動は無い。


それで海底に沈んでる沈没船の探索をしてる俺に突然攻撃してきた種族がいた。

半人魔獣で海の中に住んでるリザードマン・・・『海蜥蜴マーマン』と呼ばれている魔獣。

両手両足があって武器を使うところは人族に似ているが、見た目はトカゲで首筋にあるエラと背中にある背びれの様な棘が特徴的な種族。

尻尾はサメの尻尾のようになってて、手や足にある水かきと共に水中を高速で泳ぐごとに特化した魔獣に進化してる。

海蜥蜴が襲撃してきたのは俺が沈没船の探索を終えて外に出てきた時だった。

海底の砂場のなかから海蜥蜴が出てきて俺に投網を投げてきたので、俺は右手に持っていた巴空斬で魔力の刃を瞬時に展開して金属製の網を一薙ぎで両断する。


海底探査が始まってからずっと追いかけていた海蜥蜴たちに、船の中でノンビリと巴空斬を製作していた事で追いつかれたようだな。

巴空斬は俺の魔力を吸い続けて薄く白く輝いている。

海蜥蜴たちが口から吐き出したタコ墨のような真っ黒い液体が周囲を包み、俺が浮かべていたライトの魔法を消滅させ闇魔法の暗闇が周囲を覆い尽くすが、俺が巴空斬を構えて左下から斜め上に向かって斬ると飛び掛かってきた海蜥蜴を闇魔法の暗闇ごと両断する。

闇魔法の暗闇・麻痺・幻影など、海蜥蜴の吐く墨には様々な効果があるようだけど・・・早乙女甲殻鎧には全く通用しない。

魔力・気配探査魔法を惑わすような効果もあるようだけど、忍者マスターの俺には何の効果もなく脳内MAPには敵の海蜥蜴が3Dでシルエットまで表示されている。


砂の地面から次々と海蜥蜴が飛び出て攻撃してくるが、俺の『武神スキルマスター&新武器・巴空斬』の前に死角なんてものは存在しない。

躱しながら攻撃して避けながら地中の海蜥蜴を引きずり出して敵の攻撃の盾代わりに使ったりする。

俺の纏ってる魔法の水共存は水中で呼吸できるだけでなく、水の抵抗すら軽減できるので地上で戦ってるのと何の遜色もなく動くことが可能だ。

次々と襲い掛かる海蜥蜴を退治しながら敵のリーダー格に念話で話しかけるが返事はない。

ダメだな・・・コイツラとは会話が成立できないようだ。

今までは降りかかる火の粉を払う様な”撃退”をしていたが、俺はここで諦めて攻勢にうつる。

水中では凄まじいまでのスピードで動き回れる海蜥蜴を、目で追う事も出来ない超スピードのステップを敢行して敵のボスらしき海蜥蜴の背後に回り込み、巴空斬の横薙ぎで首を刎ねる。

231頭の海蜥蜴を狩るのにかかった時間は20分程度・・・命令系統を先に潰したので撤退すらさせずに全滅させた。

海蜥蜴の死体回収をサクサクおこないながらの狩りになったので、死体の解体はアイテムボックス内でやった。

しかしそれにしても海蜥蜴って・・・みかみの手下だと聞いていたんだけどな。

会話もできないというのはどういう事になってるんだ?

俺が悩んでても解決できないので、みかみに念輪で直接聞いてみる事にした。


「みかみ、聞こえるか?」

「うん~聞こえるよ! お父ちゃん、久しぶりだね」

「うお! ビックリした・・・みかみ、もっと声は小さくても聞こえるから、もっと小さい声をイメージしてくれ」

「いつもゴメンね・・・これぐらいでどう?」

「そうそう、そんなぐらいで頼む。それで聞きたい事があるんだけどいいか?」

「いいよ~~~」


脳内に鳴り響くほどの大きな声でビックリしたが、元気で楽しく過ごしているようだな。

今までに何回か念輪で話したんだけど毎回大声でビックリする羽目になるな。

みかみを地底湖から救出して以来、時々念輪で会話した程度だが、次々と海生生物の眷属を増やしているとは聞いていた。

海蜥蜴もその中の一種だと聞いていたんだが、今日襲われて会話もできなかった事で間違って覚えていたのかと聞いてみた。


「う~~ん、ボクの眷属の海蜥蜴に聞いてみたんだけど、海蜥蜴って住んでる地域で見た目すら同じ種族とは思えないほど大きさも違うし、考え方も見た目同様に違い過ぎるから同じ海蜥蜴でも会話すらできない様な種族もいるんだってさ」

「って事は俺はが今殺した海蜥蜴たちは、みかみの手下でもなんでもないって事だな安心したよ」

「え? お父ちゃん、どういう事なの?」

「実はな、俺が今どこにいるかというと・・・」


みかみにも分かり易いように俺がシーパラ湾でやっていた沈没船の探索の話と、俺の体から発する微弱の生命力を追いかけまわしてきた海蜥蜴たちが襲撃してきて、必死に会話しようと説得していたが会話を拒否されたので、諦めて皆殺しにした事などを説明した。

みかみの話ではウェルヅ大陸周辺の海蜥蜴は北部と東部の海蜥蜴は支配下に治めている。

西部の海蜥蜴の部族は一枚岩ではなくシーパラ湾内に住んでる部族は、みかみの傘下に加わった西部の部族とは敵対していて、みかみが率いる水神勢力に反旗を翻して敵対行為をしていたようだった。

う~~ん、もしかして・・・みかみの中に確実に存在してる俺の魔力を襲撃してきた海蜥蜴たちは知っていて、俺を襲撃してきた可能性が出てきた・・・それならば敵対する組織のTOPの関係者として俺の念話にも応じずに徹底抗戦を仕掛けてきたのも頷けるし説明の辻褄もあう。

全滅した今となっては確かめようもない事ではあるんだけど。

みかみの眷属にいる海蜥蜴に確認をしてもらったが、俺が殺したの231頭の海蜥蜴はシーパラ湾内部に住んでいた部族の中でも最も好戦的な部族の様だ。

俺が全滅させたことでシーパラ湾内部に住み暮らしてる海蜥蜴はこれで反対派の中核が消滅したので、今後は水神勢力に吸収されるだろうな。

みかみもこれから会話がしやすくなると言って念輪を切った。


イーデスハリスの世界で聖獣と一口に言っても勢力争いや敵対する組織なんかもあって、いろいろな陰謀なんかも渦巻いてるのかな?

魔獣と聖獣と半人魔獣なんかの関係も色々とあるようだ。

今回の海蜥蜴の襲撃でその一部を垣間見たような気がする。

まぁ、俺にはそこまで関係ないし、みかみがこれから後は処理をしていく問題なので・・・俺は気を取り直してシーパラ湾内に沈んでる沈没船探索に戻る。

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