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シグチスから首都シーパラへの帰途っす。

時間はまだ少しは余裕があったし、ヘルプさんにも確認したがシグチスも制圧軍がやってきた事で、悪党どもは鳴りを潜めてあちこちに分散して隠れているようだ。

俺を執拗に狙っていた多くの賞金稼ぎ達はすでに逮捕されてるか退治されてるし、生き残ってる連中も俺の首に懸けられていた賞金の全てが国へ没収されたと聞いて、俺を偵察する事を停止させて自宅に帰ってしまった。

裏の世界で俺の首に新たに賞金が懸けられたら、彼らがまた動き始めるだろうから、引き続きこちらの偵察はさせてあるが・・・今のところそんな兆しも見えないようだ。


つまり・・・シグチスに入ってやっと平和な夜がやってきたところかな。

いつまで持つのかは不明だけど、少々の問題なら今の警備隊なら自分達だけで解決できるだろうから今のうちに遊んどこう・・・って事で、引き続きダンジョンアタックをする。


とはいえ、もう時間は朝の5時を過ぎてるので、B20Fのボスを倒してB21Fに行ったところまでで、今日は終了して続きは次回だな。

左腰に天乃村正を装備してからB20Fの巨大なボス部屋に入っていき『サラマンディスト』を退治をしようとしたら・・・凄い事になってた。

サラマンダーの希少魔獣『サラマンディストロード』が7匹も出てる。

サラマンディストも30匹ほどいるし・・・ウジャウジャしすぎだ。

それに前回のB10Fで退治した時にも思ったけど、コイツラはとある病気の末期症状でウルサイ。

『くぎゅうううううううううううう』

『くぎゃああああああああああああ』

あちこちで”くぎゅ”ってるな・・・この病気って異世界でも進行してるんだ・・・

まぁ、そんな事は置いておき、まずは退治しないと。


サラマンダーの火の攻撃は元々俺には一切通用しないんだけど、早乙女甲殻鎧を装備してる今は、火魔法の全部を吸収してしまうようになった。

燃え盛るコークスの様なサラマンダーの唾ですら鎧が美味しく頂いてる。


つまり向こうの攻撃は無効・・・何かのレベルが上がったような気がするが気にしないことにする。


俺は飛び掛かってくるサラマンディストやサラマンディストロードを、踏み込んでからの天乃村正の攻撃で、すべて一撃で切り捨てて退治する。

普通はかなり固いサラマンダー系の鱗を一刀両断する天乃村正の切れ味は凄まじい。

退治するのもアイテムを回収するのも数分で終わる。


今回のボス退治で初めて見るアイテムがあった。

サラマンディストロードの通常ドロップアイテム『サラマンディストロードの瞳』と呼ばれる、中に煉獄の炎の魔力を封入してある宝石。

サラマンディストロードの瞳の中にある魔力を取り出すことは俺でも不可能だ。

外部に放出させるためには内部へ魔力を送り込んで暴走させて爆発させるしかない。

威力は強く2000℃以上の炎が半径5mほどを数分間焼き尽くす『煉獄の炎』を噴出させる。

これは戦争時やテロリストが使う爆弾の原料となってるので、表の世界ではほとんど出回る事のないアイテムになってる。

使いきりのアイテムなので、煉獄の炎を爆弾以外に使い道はほとんどないし、暴走させるのに必要な魔力量が宝石によってそれぞれ違うので、何分後に爆発させるなどと安定させることが出来ない。

つまり自爆テロですら扱いが難しい代物だ。

魔力を込めた瞬間に爆発するのもあるし10分近く魔力を込め続けないと爆発しないモノもあって、戦争中の敵の砦の壁すら崩壊させるような非常に高い威力を持ってるのだが、使いどころを間違えると自軍にも被害がおよぶ。

研究もできないのでやはり爆弾には”使いにくい”代物としか言いようがない。


爆弾以外の使い道は世間には情報が出回ってないが1つだけある。


サラマンディストロードの瞳を聖水に漬けて1年以上教会の敷地内の神聖な場所で放置すると、煉獄の炎の魔力が溶け込んだ聖水が出来上がり、これを光魔法の素質がある者が内服すると光魔法の初級をマスターしたところまで一気に進む事が出来る。

魔法を発現させるだけでなく中級まで一気に行けるアイテムなので、教会はこの情報を一切公開することもなく、サラマンディストロードの瞳を危険物として処理するという名目で”有料”で引き取り、自分達だけで有効活用しているアイテムだったりする。


だからこの『サラマンディスロードの瞳』というアイテムは教会に持っていって”お金を払って”処理してもらう危険物の取り扱いになってるので裏ルートでないと出回らないアイテム。

裏ルートでしか流せないし、教会側も国も危険物として全世界で厳しく取り締まってる。

そんな厄介な宝石が5個も出てきた。

と言っても俺の場合はスキルで聖水を作り出してアイテムボックス内で”料理スキル”の熟成を使用して、光魔法の聖水を作り出すことが簡単にできる。

それに質のいい魔結晶を2つ以上を使用して膨大な魔力を瞬時にサラマンディストロードの瞳に送り込めるようにする事が出来れば、簡単に時限爆弾が作り出すことができる・・・という、今は失われた転生者テロリストの情報も知ってる情報だ。

俺が持ってる限りは安全なんだから気にする必要もない。

5個とも魔力が一切伝わらない様に封印結界を掛けてアイテムボックスに保管する。


これで今日のアゼット迷宮のダンジョンアタックは終了。

B21Fに下りていってすぐの転送室から入り口横の転送室まで帰還する。

アゼット迷宮の出入り口には俺と同じように夜通しダンジョンアタックをしていたチームが次々と戻ってきていて、アイリ達を通して知り合ったチームの人達とダンジョンの出口から出た所で会ったので、握手しながら挨拶して話をしていたら、刺さる様な複数の視線が俺に突き刺さる・・・ガン飛ばされてるな俺。

俺が他の人と話してるとガン飛ばしチームが俺に近寄ってきて話しかけてきた。


目の前で見ると冒険者チームというよりどこかのバカ王子と御付きの親衛隊20人ってところだな。


「これはこれは・・・貴方は最近売り出し中のシーパラ連合国の冒険者Aランク最短期間の記録更新した早乙女真一さんですね?」

「そんなに長い名前じゃないです、”ただの冒険者”早乙女真一です。何か用ですか?」

「貴方が『劉・ステファニア・カレン』様と結婚したというのは本当なのでしょうか?」

「ハイ、昨日教会に報告に行きましてカレンは昨日からすでに『早乙女・劉・カレン』となりましたよ」

「カレン様を呼び捨てにするな!!」

「カレンから『呼び捨てで呼んでください』って言われてるので、貴方に言われたからと変更する必要は無いですね。というよりも、誰なんですか貴方は」

「吾輩を知らない冒険者がこの国にいるとわな・・・無知は困るな」

「貴方程度を知らなくても生活できますしね・・・今までも、これからも」

「カッカッカッカ、無礼な奴だな、ヤレ!」

「ハッ」


バカなボンボンらしき人が命令すると左右に立っていた御付きの親衛隊っぽいヤツラが腰のサーベルを抜き打ってきた。

俺に当たる寸前に両手の指でつまんで止めると、ボンボンはその俺に追撃して腰のエストックを抜き3段突きで突いてきた。

全部顔面に来てるので顔を振って躱す。

けっこう鋭い攻撃だけど・・・不意を衝いてこの程度なら、そこそこ程度の腕かな。


「これで正当防衛成立ですね・・・っと」


俺は摘まんでいたサーベルを放すと同時に超スピードのステップで2回踏み込んでからの2発の左のジャブで、親衛隊の顎先を正確に打ち抜いた。

親衛隊2名は糸が切れた操り人形のように、ぐしゃりと崩れ落ちる。

俺のステップもジャブも周囲にいる全ての人には一切見え無いほどのスピードで攻撃してやった。

足音もさせないステップなので知らない間に親衛隊が崩れ落ちたようにしか見えないだろう。


「そ、そんなっ・・・」

「はいはい、お坊ちゃま、お名前は何とおっしゃるのでしょうか? 無知な私にも教えていただきたいです(棒読み)」

「クソッ、お前達やってしまえ!」

「待ちなさい!」


俺の後ろから声を掛けられても俺は振り向く事もしないで、襲い掛かってくる奴をジャブで次々と失神させる。

親衛隊の奴が俺の後ろに回り込んで待ちなさいと声をかけてきてるのも最初から知ってる事だったし、この程度の子供だましレベルで何とかできるってのは素人のガキ以下の考えだな。

相手をガキだと読んだ俺はここで挑発して、アイテムボックスからタンブラーとポットを取り出してアイスティーを注ぎ、ポットを仕舞いながら聞いてやる。


「それで、次の手は?」

『トクトクトク・・・』

「まさ、か・・・分かっていたのか?」

「ゴキュゴキュゴキュ・・・プハぁ~、それで次の手は? もうネタ切れなのか?」

「ぐぬぬ・・・」

「おいおいおい、もう終わりかよ。この程度のネタしか持ってないのに、この程度の腕とこの程度の策で、よくもまぁ威張れるな」

「ギギギ・・・」

「何だこりゃ・・・つーか、お前誰だよ。俺にいったい何の用があるんだ?」

「吾輩は東方ガーパーク大陸南部の城塞王国『クシュベントナー王国』の第6王子『カルツ・ミュラー・クシュベントナー』様だ!」

「知らねーって、そんな国・・・」

「無知もそこまで行くと恥ずかしいな。それで吾輩がカレン様の婚約者だ!」

「はぁ?」

「吾輩は・・・」

「ウソつけ手前ぇーコラ、カレンちゃんは何度も断ってただろう―が! お前のせいで・・・このストーカー野郎が!」


何故か俺でなく周囲の人がキレ出してしまって、白熱した論戦が繰り広げられてる。

なぜヨークルのアゼット迷宮専門で稼いで生活してるベテラン冒険者さん達がキレてるのかというと・・・カレンが突如Sクラスまで到達した冒険者を10年前に引退して、チームまで解体して田舎のイニエスタ町にまで引っ込んでしまったのか? という疑問の答えの中に『求婚するカルツ王子のしつこさ』だという噂があるからだった。

目の前で繰り広げられる言い争いでそんないらない情報がわかった。

カルツ王子が『吾輩の女王様になってください』という気持ちの悪い求婚を毎回して、毎回断られているにも関わらず、全くめげずに求婚し続けてカレンがとうとう冒険者を引退してしまったというウソの伝説が10年前から根強くあり、カルツ王子の唯我独尊っぷりに反発してる人達の噂も加わってるからだ。


無論最初にウソの噂を流したのはドミニアン・クリストハーグ(当時はドミニアン・パルマ)で・・・カレンとカレンの親友の『ディアナ・ハイデルベルン』の二人でお願いしたと、カレンに念輪で教えてもらった。

・・・バカ王子は大っ嫌いなんだと。

スタイル良くて見た目はクール系の超絶美女、さらには冒険者としても超一流という事もあって、カレンにはファンクラブまであるという事を利用した噂のばらまきなので事実以上に噂を信じてる人の方が多いだろう・・・というのが今の周囲の反応からわかるな。


本当の引退した理由は転生者として貰った能力『忍者スキルマスター』が消えて、ゴッデスに新たな能力『ラッキーメイカー』の”アイテムに幸運を付与する力”を貰ったことで彫金に目覚めて、イニエスタ町にいる昔からの知り合いに弟子入りしたからだった。

それでこのカルツ王子がなぜイニエスタ町に行かずにこのヨークルのアゼットダンジョンに入り浸ってるのかというと・・・カレンがイニエスタにまで追いかけてこない様に『アゼット迷宮を完全攻略できたら結婚してア・ゲ・ル』という言葉を信じて10年も頑張ってたらしい・・・

こういう一途なバカは嫌いじゃないんだけど・・・ドミニアンみたいな成功例もいるし。

でも脳内は非常に残念な男だ・・・外見はこいつの方が俺とは比べ物にならないほどイケメンなのに・・・


イケメンざまぁって思うのは俺が小さい男だから仕方がない事だろう。


「それで早乙女! 貴様はアゼットダンジョンの何階まで到達したんだ?」

「俺? 今夜地下16階から21階に行ったところで帰ってきたよ」

「たかが地下21階で何でカレン様と結婚させてもらえるんだ! おかしいだろ?」

「俺に聞くなよ。忙しすぎてまだアゼットダンジョンに来れたのが6回目なんだから・・・」

「「「まだ6回しか来てない?」」」


俺の言葉に周囲が騒然としてきた。


「カッカッカ・・・6回も来てまだ地下21階層あたりをウロチョロしてるなんてな。とんだ能無しだ」

「だから忙しいんだって言ってんだろ。フロアーの全部を回ってるわけじゃないけど自分の足で全部歩いて回ってるんだから。今夜だってやっと時間が作れたから一人で遊びに来れたんだってーの。文句はアマテラス様に言ってくれよ」

「「「深夜のアゼットダンジョンをソロで?」」」

「ウルサイな・・・それに俺はカレンの方から”結婚してください”って頼まれたんだ・・・カレンがアゼットダンジョンをうんぬんなんて条件なんて今初めて知ったわ」

「カレン様から結婚してくださいと言っただと! うそをつくな! このクソブサイクが!!」


周囲が騒がしいが、このバカタレはウルサイ。

周囲の野次馬たちは俺が深夜のアゼット迷宮をソロで攻略してた事に驚いて、目の前のバカタレはカレンから俺に求婚した事でブチ切れてる・・・ブサイクで悪かったな、ホットケ。


「俺がブサイクだろうが、カレンから求婚してきた事実は変わらないし、俺が既にカレンと結婚してるという事実も変わらないだろ・・・何が言いたいのかわからん」

「ぐぬぬ・・・」

「それで用件は終わりか? なら帰らせてもらうけど・・・」

「決闘だ! 俺とカレン様を賭けて決闘しろ!」

「ヤダね」

「逃げるのか? とんだ卑怯者だな」

「弱いものイジメして俺に何のメリットがあるんだよ? 俺の強さはさっき見せただろ? 手も足も出ないお前がどうやって俺に勝つつもりなんだ? それにお前はカレンに見合う何を賭けるんだ?」

「吾輩の全てを賭ける」

「そんなくだらないモノを俺が貰っても意味ないし、そもそもいらねぇーよ。カレンに見合うモノって・・・カレンにいらないと拒否されたお前の全て? 全く釣り合ってないだろーが。決闘を何だと思ってるんだ? 合法的な殺人だぞ」

「貴様、吾輩の全てを侮辱してるのか?」

「侮辱してるから決闘したくないんだろ。クソみたいな奴を殺して俺のどこにメリットがあるんだよ。それに隣の親衛隊に聞いてみろ、この俺からどうやって王子をお守りするんですかって」

「くっ・・・下賤な輩が吾輩の全てを侮辱しやがって・・・クソがぁ、殺してやる!」

『バキン!』

「「「おおおおお」」」


俺の言葉で周囲の自分の親衛隊を見まわすが、親衛隊の生き残りのヤツラ(俺は失神KOしただけで殺してはない)は王子と目線が合った瞬間に首を振って下を向いた。

そんな親衛隊の様子で王子の堪忍袋がきれたんだろう・・・会話中も右手にそのまま持っていたエストックを、俺に突き込んできた。

俺は素晴らしい速度のエストックの突きを右手の人差し指と親指で簡単につまんで停止させ、左の手刀で根元からへし折ってやった。


「そ、そんな・・・これは我が王家に代々伝わる伝説級の『閃断せんだんのエストック』なのに・・・」

「自慢の伝説級をあっさり壊せる俺とお前の実力様もいまだに理解できないのか?」

「い・・・いや、というよりも。弁償しろ!」

「はぁ? なんで? 正当防衛だろ・・・脳みそもカス野郎」

「お前が閃断のエストックを壊したんだろ! 訴えてやるからな、覚えてろ!」


俺を指さしながらそんな戯言を叫んでカルツ・ミュラー・クシュベントナー王子は去っていった。

残った親衛隊を置き去りにして。


「あー、俺やっちゃったな。どうしようガクブル(全部棒読み)」

「何くだらない事言ってんだ早乙女。どうせ王子のホラだろ。それに・・・もし訴えてもここにいる全員で早乙女の方が被害者だって証人になってやるよ。」

「おぉ、あんがと。おっちゃんサンキュ」

「おっちゃんじゃねぇ、まだ29だ! ・・・それよりも早乙女、カレンちゃんから求婚してきたってマジかよ」


と周囲にいた知り合いの冒険者さん達から質問攻めになった。

それに念輪で話していたカレンが怒ってて、今すぐあのクソ王子をブン殴りに行くといってるのでたしなめる・・・殴ったところでドMにはむしろ『ご褒美』になるって事と、大好きの裏返しは大嫌いでなく『無関心』だという事を教えてあげた。

大嫌いだという事はそいつに関心があるって事だから・・・どうでもいいヤツとして無関心になる・・・完全に無視する方がドMのマニアには効果があると教える。

『大嫌いだって何度も殴って断っていたのは逆効果だったのですね・・・』

と、今度は落ち込んでしまったカレンを励ましながら、並立する思考で周囲の冒険者さん達の質問にも答える。

伝説級の閃断のエストックはカルツ王子の自慢の品だったようで、いつも聞いてもいないのに見せびらかしていたぐらいなので、誰も本物だと信用してなかったらしく、みんな本気で偽物だと思ってる。

いくら俺が強くても伝説級の武器を簡単に壊せるわけないと思ってるので、誰一人として信じてないようだ・・・『狼少年』っていつの時代も、どこの世界でも大変だ・・・人はそれを自業自得というけどな。


俺がへし折った刃の方も親衛隊が気絶を続ける同僚と共に抱えて持っていってしまった。

証拠は今ここにはないから、今更本物かどうか俺にも調べようがないけどな。

閃断のエストックという武器が本物かどうかは俺には分からないが、あれは間違いなく伝説級だった手ごたえはあった。

まぁ今すぐに同じ物がコピーして作ることができるので気にもしてない。

弁償しろって裁判命令が出てもおんなじ物を作って渡せばいいだろ。

城塞国家クシュベントナー王国との外交問題に発展した時・・・シーパラ連合国が対外的の問題が発生した時において、俺をどのように扱うのかというのも少し興味があるので、カルツ王子にはしばらく自由に泳がせておく・・・むろんカレンも係わる問題なので24時間の監視用に、忍を新たにアイテムボックスから出して追跡させてる。


冒険者さん達との話も終わって俺は帰宅の途にく。

大森林の中にある広場に入っていって転移魔法で早乙女邸に帰った。

カレンが早朝から怒ったり落ち込んだりしてるので、嫁達は全員起きていた。

朝食前に早乙女邸を改築してカレンも住んで暮らせるように専用のソファーやイスをダイニングにも寝室にもリビングにも設置する。

俺と一緒に朝食をとりながら、さきほど起こった話の顛末をみんなに説明してあげた。


「・・・という事で、またしても俺は変な奴に絡まれてしまったというわけだよ」

「しん殿、私事で申し訳ございませぬ・・・やはり、あのストーカー野郎は殴り殺しておけば・・・」

「カレンさん、しん様も仰ってますようにカレンさんが謝る事ではないと思います」

「そうだって、結婚したんだからカレンは俺に問題を押し付ければいいよ。旦那の俺が当然処理しておくから。俺はカレンの為なら迷惑だとは思ってないよ」

「しん殿、ありがとうございます。そう言って頂くのはありがたいのですが・・・まさか、先程しん殿に注意されるまで、大好きの反対は大嫌いではなくて無関心という事は知りませんでした。大嫌いって言われて喜ぶヤツラもいるなんて・・・」

「それはバカのマニアだけ・・・イヤ、ドMは全部喜ぶか・・・むしろ、ドMもマニアに入るのか・・・判断がいろいろと難しいな」

「しんちゃんは、なーに変な事をブツブツ呟きながら考え込んでんのよ」

「しん君ってこういう変なとこに、妙にこだわったりするわね」

「カレンさんは大丈夫なんですか?」

「私はカルツ王子みたいなタイプは大っ嫌いなんです。しん殿は良く手を出さずに済みましたね。カルツ王子はしつこ過ぎて告白されても毎回お断りしてましたし、断る時はしつこいんで毎回殴ってましたよ」

「カレンさんがカルツ王子を殴るところは私もミーも何回も見てましたわ。しん君に言われたことを今から考えますと・・・そういえば、あの男は少しうれしそうだったような・・・」


俺が考え込んでいるうちに嫁達の話は雑談に移っていってた。

食事を終えてみんながリビングに移動していく中で、俺は別れを告げて早乙女商会シグチス支部に転移魔法で移動した。

ここにシグチス行政本部からの使者を15分ほど待たせてるからだった。

早乙女商会シグチス支部の小さい方の応接室に入っていくと制圧軍の作戦士官補佐の『ビルム・アカネザーワ』が飲んでいた紅茶をテーブルに置いて急いで立ち上がって挨拶を交わす。


「ビルムさんおはようございます。今日はこんな時間にどうかなさったんですか?」

「早乙女さんおはようございます。今からですと30分ほど前なのですが、朝6時の定時連絡においてシーパラ連合国最高評議会より伝言がございまして、早乙女さんには首都シーパラに戻っていただいて冒険者ギルドランクのSランク昇進記念式典をさせて頂きたいとの事です」

「安全確保できたって事なのかな?」

「そう伺っておりますけど・・・まだ不安が残ってますのでしょうか?」

「俺に不安があっても決めるのは俺じゃないしね。責任は最高評議会側がとってくれるという事なんでしょう。それですぐにでも出かけないといけないのでしょうか?」

「今日中に出発して欲しいという話なんですが・・・出来れは出発予定時間とシーパラへの到着予定時間を教えていただきたいとの事です。到着してすぐの方が敵に回る人が準備も対応もできないので、より安全なのではないかという最高評議会側の判断ですけど」

「俺の船の速度を計算したいんじゃない?」

「そこは聞いておりませんが・・・早乙女さんの仰る通りだと推測はできますね」

「そこはまぁいいか。巡航速度と最高速度には違いがあるモノだし。出発時刻はこれから30分後の朝の7時。到着予定時刻は明日の夕方3時って伝えておいてください。今日の昼からなんだけど・・・もふもふ天国とモフモフマッサージ天国を通常営業を開始する予定なんだ。だから開店準備の仕上げをしないとな。って事でよろしく」


俺はソファーから立ちあがって握手を求め話を切り上げさせた。

ビルムも席から立ち上がって握手をしてシグチス行政本部にゴーレム馬車で戻っていった。

紅茶とクッキーが凄く美味しかったと言ってくれたので、お土産にクッキーのテイクアウト用の紙箱3つと、紅茶の入ったポットをシグチスメイドゴーレムからプレゼントさせた。

今日の昼からモフモフ天国は開店させるので今後はご購入をお願いしますねと宣伝もしておく。

準備と言っても作った巨大ぬいぐるみ看板2つの設置と結界を施す事だけなのですぐに終わる。

メイドゴーレム達に指示を出して出発することにする。

深夜は大混雑していたモフモフマッサージ天国も今は落ち着きを取り戻している。

俺はゴーレム馬車駐車場でホップボードを取り出してマリーナに向かって移動。

魔力パワーボートに乗り込んで各部のチェックと目的地の登録を済ませて、予定通りの7時にマリーナを出発させた。


今日明日はあまり天気が良くなく、雨も風も結構強い。

シグチス湾内はそこまで波はないが海洋はそれなりに波が出てる。

こういう悪天候も俺の船の事を計算してるんだろう・・・けど、魔力パワーボートは雨も風も何もかもの影響を受けずに航行できる。

シグチス湾内では10ノットの速度規制で決められている速度で航行するが、周囲にはマリーナから出ていく船はほぼない。

時化しけてるのに船を出すのは無謀でしかないからな。

船体への被害が大きすぎる・・・魔力パワーボート以外の船舶には。


シグチス湾内を抜けて魔力パワーボートを高速走行地帯に入れると、ますます高くなった波のうねりを突っ切り空間そのものをくりぬきながら魔力パワーボートの巡航速度を55ノットまで上げた。

シーパラ半島が左側に出てくるまでの外洋航路では波は高そうだ。

俺は自動操縦に任せて魔力パワーボートの1Fに下りていって寝室に入り、ガウンに着替えてから本格的に寝る事にした。



目覚めたのは14時だった・・・完全に熟睡してしまった。

3点セット魔法で全身をすっきりとさせて、展望操縦室に上がっていく。

船が一切揺れないし、加速やコース変更でかかる慣性の力さえも重力魔法でコントロールされているので加速感も一切感じないが・・・シーパラ湾内に入っても波は高いままだ。

うねりが少し減ったかなと思うけど、船そのものが一切揺れないので・・・モニター画面に映されてる景色が流れていくところを見てる様な錯覚を覚える。

嫁達に確認したが今日は予定通りアイリの親のクリストハーグ夫妻と共に買い物に出かけていて、昼食後はモフモフ天国ヨークル2号店内でローグ真偽官の奥さんも混じってお茶会になってる。

今日はヨークルも天気が悪く、この時間の2号店は周囲は住宅街という事もあって比較的に店が空いていたようだった・・・雨と言っても混雑しないもふもふ天国の店舗もあるんだな。


ドミニアンは同じく休日だったローグ真偽官と2階のローグ真偽官の家ですでに酒を飲んでる。

俺は嫁達と会話しながらTシャツとジーンズの上にチェックのシャツに着替えて、操縦席横のサイドテーブルを広げ昼食をとる。

今日の昼食は以前ゾリオン村で購入した変わり種のおにぎりを食べる。

味噌汁は豚汁にして付け合せに酢の物も取り出した。

変わり種のおにぎりとは言っても試食は済ませてるので美味しく頂く。


昼食後はヘルプさんの報告を聞きながらマッタリと過ごす。


タンブラーからアイスコーヒーを飲んでヘルプさんの今後の予測や展望も聞いて、話し合いながら方針をまとめ、決定された方針に従い各ゴーレムに指示を出して動かせる。

俺の首に懸けられていた賞金が消えた事で全ての忍と徒影を動かしたわけではないが、一部の忍を残して以前のように裏社会粛清の動きに戻すことになった。

昨夜も任侠ギルドによってシグチスにある2つの組織が壊滅されている。

借金奴隷にして全資産を乗っ取り、任侠ギルドの資産はさらに増えて、土地建物も大幅に増加中。

奴隷も大幅に増加してるので奴隷用の寮にしたり、マティアスの選んだ幹部用に大きめのアパートも建設させた。

来月から格闘大会を再開させるためにトレーニング場所も増やしたり広げてあるし、大会を再開するための準備も多くて色々と追われているようだ。

徒影相手にトレーニングをする職員も増えている。

マティアス自身も今回は参加してチャンプになり、その後で他の都市の闘技場との交流戦の構想もあるので、徒影相手のトレーニングは毎日続けていると徒影からの報告があった。


ローションマッサージ天国は各店舗のマッサージメイドゴーレムからマッサージのコツをさらに勉強して、指名客の常連を増やしてる嬢も増えていて・・・宣伝を一切行っていない口コミのみの店の売り上げとしては驚異的に新規が増加してるだけでなく、新規客からのリピーター増加で各店舗に増員の女性も続々増やしてる。

それに各都市からの新規で任侠ギルドに所属する嬢も増えていて・・・嬢を管理する各都市の裏組織との軋轢も出始めている。

今まで搾り取ってきた嬢から突き上げも大きいだろう。

任侠ギルド直営のローションマッサージ天国は人件費は嬢にしかかかってないから嬢の受け取る金額は他の店とは比べ物にならないレベルで物凄く多い・・・店側と嬢の配分に違いがありすぎる。


他店から逃げてきた嬢を取り返しに来た用心棒は護衛用に入れている徒影にフルボッコにされて借金奴隷でマヅゲーラに送られる。

嫌がらせをしに来たヤツラも全員即フルボッコなので、嬢から徒影への信頼は高く、頼られているのが報告されていて、ここも上手く回転しているようだな。

何度も攻撃されるヘマもしないし、任侠ギルドの養分は美味しいうちに全部頂く。

戦闘要員を送り込んだ組織にはその日のうちに報復の攻撃が任侠ギルドから送られ壊滅的な被害を受け、無理やり働かされていた嬢たちはさらに任侠ギルド所属に替わってる。

シーパラの裏世界では任侠ギルドの名はすでに知れ渡っていて、敵に回った時に被害の大きさから表だって対立する組織はもはや存在しない。


ドルガーブではローションマッサージ天国に対抗意識を燃やして新たなサービスを始める店は増えてるようだが、他の都市と違って任侠ギルドの店に嫌がらせを行う様な組織は、とうの昔に賭博ギルドの実行部隊によって存在することも許されていない。

こういう平和的なサービス合戦には賭博ギルドは見守るだけで一切タッチしてこない。

都市が盛り上がればそれだけ客も増えて、都市に落としていく金額も増えるからな。

ただ・・・うちの店とは違ってサービスを増やすと料金が上がり、料金を押さえつけると嬢の取り分が減って嬢の怒りが増える・・・という、悪循環にハマるだろうと予測できてるので、こちらは高みの見物。

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