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久しぶりのアゼットダンジョンアタックは深夜に、こそっとやっちゃいましたっす。

どっちにしても郷澤一家が回復できてからの話だな。

郷澤商会や郷リゾートは・・・郷澤自身はアイデアと資金援助をしてるのみで、そこまで経営にタッチしてないのは郷澤仁司の知識をコピーした俺には全部わかってる。

それに非常勤社員という事で郷澤商会の儲けを何割かを奪ってたカス21人を、色んな意味でクビにしたから、経営は今まで以上に楽になるだろう。


郷澤一家の為に作った家はローグ一家に貸してある家と似たような造りになってる事に今気付いた。

だからと言って何も関係はないんだけどな。

夫婦と子ども3人という家族構成は似てるけど、郷澤一家の息子たちは全員成人の15才を超えてるので、今後は一緒に暮らすかどうかも分からないから、準備はしたけどどうなるのかは不明だ。

俺が決めることでもないし。




こんな事を考えながら転生して44日目の5月14日深夜1時になった。

工事を終えて外に出たら雨が降ってきた。

ウェルヅ大陸の北側は晴れてるし、雲もない天気なので以前行った狐魔獣ダンジョンの近くの温泉に一人で入りに行くことにする。

大自然の中の露天風呂は俺にとって癒し効果高いからな。

周囲に全く人影がない天然露天風呂で素っ裸になって大きな三日月を眺めながら『あ”~~』と声を出しながら少し温かめの湯に入る。

今夜は日本酒が飲みたい気分だったので、冷やした清酒とつまみは魚介系の刺身の盛り合わせ。

俺の作った絶対に倒れない桶を風呂に浮かべて月見酒を楽しむ。

周囲には自然の音にあふれていて、どこかから変な魔獣の声が聞こえてきたり、風が岩場の草木を揺らす音、露天風呂から溢れ出てる湯の音などで結構ウルサイ。

でもこんな自然の音を全身で感じながらの月見酒は浮世の騒動を離れて、ここ最近のシグチスの大騒動からも離れて気分が落ち着いてくる。


ダンジョンアタックとか俺って全然行けてないしな。

アゼットダンジョンも俺だけ進んでないし・・・かといって一人で行っても・・・いや、面白い事は面白いけど、うーん・・・今夜あたりはシグチスでの襲撃も止みそうだし、大至急潰すべき敵もいなくなった。

ストレス発散する為にもそろそろ一人でダンジョンアタックをしちゃおうかなぁ・・・

なんて考えながら露天風呂で月見酒を心ゆくまで楽しんだ。

外に出て全身を3点セット魔法で浄化した後、早乙女商会シグチス支部に帰る。

服はまだ体が火照り過ぎだったのでガウンだけにした。

体が火照り過ぎで熱いので湯冷ましついでに、モフモフマッサージ天国シーパラ店からマッサージメイドゴーレムを呼んで、全身マッサージをしてもらう。


隣の建物にシグチス店があるけど、警備隊と聖騎士団とシグチス駐留軍の隊員たちが交代で休憩&マッサージにきていて今は順番待ちができてる。

シグチス駐留軍も警備隊も聖騎士団もこの時間になって交代で休憩する人が増えて、寮に帰る前にここにきてマッサージをお試しで受けに来たみたいだな。

30分待ちになってるので休憩代わりに、もふもふ天国シグチス店のメイドゴーレムにドリンクをサービスしてあげてる。

警備隊と聖騎士団とシグチス駐留軍に明日の正午までは15分のクイックマッサージのみを無料開放してるから、こぞって無料体験を経験しに来てるようだ。

明日の正午にはもふもふ天国もモフモフマッサージ天国も通常営業を開始する予定でいる。


マッサージメイドゴーレムの両手からヒールを時々出しながらのマッサージは、疲れを癒すのみでなく金属の経年疲労の様な頑固な疲労からの回復・腰痛などの持病にもかなりの効果があるので、シーパラでもドルガーブでも客の評判が物凄くいいので、他店では真似ができない自慢のサービスとなってる。

ローションマッサージ天国で働くお姉様方にも物凄く評判はいい。

俺も早乙女商会シグチス支部の執務室の空いてるスペースに、アイテムボックスから自分専用のマッサージ台を出して、マッサージメイドゴーレムに90分ほど時間をかけて本格的な全身マッサージをしてもらう。


仮眠コミのマッサージで心身ともにリフレッシュできた。


マッサージメイドゴーレムをシーパラ店に転送魔法で送り届け、俺はステータスからサイラスの甲殻鎧セットを装備して今からアゼットダンジョンの続きをソロで進める事にした。

武器装備は何にしようか悩む・・・何でも出来るってのは逆に選択肢が多すぎて悩んじゃうもんだな。

とりあえずは早乙女ガントレットを装備して素手(厳密には手甲装備か?)で遊ぶことにする。


いつものようにアゼットダンジョンの近くの大森林内の空き地に転移魔法で移動して、周囲にライトの魔法を4つ浮かべてアゼットダンジョンに歩いていく。

久しぶりのダンジョンアタックで少し心が踊る様な気分になってくる。

ダンジョン入口から大階段を下りて行って階段横にある転送室に入り、前回の続きでB16Fに行く。

転送室を出てB16Fのフロアーに出た時に、何故か少し肌がピリついたような感覚があって・・・ん? と周囲を見渡すが何もない。

探査魔法でB16Fを探るが異常なところもなかったし、深夜のダンジョンアタックをしてる冒険者チームも休憩室で休憩の仮眠をしてるチームなどいくつかあるが、彼らにも異常な様子はみえない・・・気のせいかな?


気を取り直して歩き出すとすぐにB16Fの魔獣『ミノタウロスロード』が襲ってきた。

走って迫りながら上から振り下ろされてきた大剣の攻撃を躱す。

右にステップして大剣を避けながら左のローキック(体格が違い過ぎるので俺からするとミドルキックの角度だけど)でミノタウロスロードの左ヒザを粉砕する。

ミノタウロスロードが崩れ落ちて両手を地面につこうとした側頭部に俺の右ストレートが炸裂して退治完了。

頭部を爆散させて退治したミノタウロスロードが消滅する前に踏み台にして跳び上がり、横から振り回されてきたハンマー攻撃を躱す。

剣客の天駆を使用して空中で前蹴りして左に回転して姿勢を入れ替え、後ろにいたミノタウロスロードに向き直り、ミノタウロスロードの顔面に全身をねじりながらの左フックを上から叩きつけてコッチの退治も完了。


地面に落ちたレアドロップアイテムのミノタウロスロードの革で包まれたチーズの塊1kgを2つと魔結晶2個と魔石1個を回収する。

やっぱ身長2m以上もあるミノタウロスロードの退治をするには、剣客の天駆スキルの様な空中で姿勢を変えられるような、スキルがあると至極便利だ。

こういうスキルがないと素手で戦い続けるには無理があるだろう・・・俺以外だと。

そんなことを考えながらも次々とやってくるミノタウロスロードの攻撃を捌いて退治してを繰り返す。

10分ほどの猛攻の後でやっと敵が来なくなった・・・ポップアップしてくるまでに少し時間の余裕ができたようだ。

タンブラーに冷たい水を入れて一気に飲み干した。

隣の部屋で大きな反応がいくつか出てきたので上位種か亜種がポップアップして出てきたんだろう。

俺が退治して地面に転がっているドロップアイテムと魔結晶などを転送魔法で一気に拾い集めてから、隣の部屋まで歩いて扉を開けて進んでいった。


ミノタウロスの上位種でロードではなく亜種の方の『ミノタウロスアーミー』が集団で出ていた。

ロードは大剣・ハンマー・棍棒などのパワー系の武器を持つ者がほとんどだけど、ミノタウロスアーミーの場合は武器が多種多様になる。

タワーシールドを構える盾職タンク・ハルバードや4mほどの金属棒を振り回す奴もいるし、弓やトマホークなどの遠距離攻撃専門(?)のミノタウロスもいるので『ミノタウロスアーミー』という名前が付けられている。

もちろんこれらを率いるリーダーで上位種『ミノタウロスジェネラル』がいる。

アーミーらしくミノタウロスジェネラルがまとめて指揮しているので、かなり本格的な攻撃を仕掛けてくる。

60頭もいるので面倒臭くなった俺は・・・アイテムボックスから早乙女強弓を取り出して次々と射殺していく。

ドロップアイテムで練乳10kgの巨大なビンが散乱してるのを見て・・・以前、嫁達が退治したのはミノタウロスアーミーなんだなと思い出した。

通常ドロップアイテムの練乳ビン10kgやレアドロップアイテムの『ミノタウロスの斧』などが大量に転がっているので、転送魔法で射った矢の回収もアイテムなどの回収も同時にする。

魔石・魔結晶・魔水晶も質の良さそうなモノが多いな。


ミノタウロスジェネラルのドロップアイテムは『ミノタウロスジェネラルの角』だった。

大きさは500ccのペットボトルのサイズの角が左右の対で2本。

俺が貰った転生者からの知識にもないアイテムだったので鑑識の魔法で鑑定してみて・・・膝から崩れ落ちて土下座をしてるかのような体勢になってしまった。

ポーション1ℓにミノタウロスジェネラルの角の乾燥粉末を一つまみ入れるとメガポーションになる。

MPポーション1ℓに一つまみ入れるとMPメガポーションになる。

ここまではいいんだけど・・・ミルク1ℓに一つまみ入れると『精力剤』にもなる万能粉末ってなんだそりゃ。


物凄いレアな高級素材になっていて、鑑識魔法においても金額が時価としか表示できない特別な素材。

毎回オークションで億を超す金額が出るのに、どこのギルドも買取したがらない希少アイテム。

なぜ高額商品なのに買い取らないかというと、手続きが非常に面倒臭いからだ。

入手経路がオークション前に徹底的に調べられてしまうアイテム・・・過去に偽物の角が転生者が係わるテロリスト集団によって大量に出回り、買い取って流した国の威信を傷つけ国が崩壊した事があるので『国崩級こくほうきゅう』という異名があるアイテムだ。


買い取る側は必ず真偽官の鑑定書を必要としてくるので、オークションを開く事を国の機関の届け出て、国が主催してオークションを開催して何もかも全てが公表される事が必要となる・・・いらねぇ、超いらねぇ。

ポーションとMPポーションも俺のアイテムボックスには大量にストックされてるので、角は1本も残さずにアイテムボックスの中にメガポーションとMPメガポーションを500本ずつ作成した。

余ったので精力剤も500本作っておいた。


フッフッフッフ・・・イヤな予感がするな。


そこから下に降りる階段まで最短距離で行ったのだけど・・・イヤな予感は的中していた。

3回もミノタウロスジェネラルが出てきて倒したものミノタウロスジェネラルは8頭。

8本のミノタウロスジェネラルの角がやっぱり出てきた。

それと通常ドロップアイテムの『ミノタウロスホーン』・・・これはミノタウロスジェネラルがミノタウロスアーミーを指揮するときに使うアイテムなんだけど、音程とかの吹き方がわからないからって適当に吹くとブチ切れて逆に襲われるという非常に残念なアイテム・・・が、4本出てきた。

遊び半分で吹いてみたら、周辺フロアーにいたミノタウロスロードが全部、発狂しながら襲い掛かってきて

『激おこ』状態で怖かった。


だってさぁ、昔ながらのテレビアニメで良く聞く音の『進軍ラッパ』みたいな音が鳴るからさぁ・・・吹いてみたくなるじゃん?


下のB17Fに降りてから、もしくは絶対の敵の出ない転送室とかで吹けばよかったと気付いたのは、次々と襲い掛かるミノタウロスロードを全滅させてからだった。

でも次々と敵が襲い掛かってくるおかげで、アイテム集めには最適かもしれないな。

練乳とかチーズ・バターなど乳製品のドロップアイテムと、アイテムがドロップした時にアイテムを包んでるミノタウロスロードの革は、高級牛革でソファーなどの家具用として最高級品と言われてる革なので使い勝手が良く、高く売ることも可能なアイテムだから・・・素材として美味しいアイテムがテンコ盛りになった。

本来はここまで連続で敵に襲われ続けると、退治した後でアイテムや魔石などを拾い集めるのが大変なんだけど・・・俺の場合は転送魔法で自分のアイテムボックスに直接放り込むので、歩き回る必要はないし戦いながらでも出来るから重労働ってわけではない。

射った矢と一緒に回収するだけだしな。


筋肉ムッキムキの発狂ミノタウロスロード主催の激おこ祭りを潜り抜けた先はB17Fのリザードドッグファイター。

全身を銀色の鱗革に覆われた大型犬サイズのリザードドッグファイター48頭が、次々と集団で波状攻撃をしてくるのは、このフロアーでは良くある事なんだが・・・小型の虎サイズのリザードドッグジェネラル25頭に守られた、小型のポニーのサイズのリザードドッグキングとクイーンがいるのは深夜だからか・・・はたまた俺の天運がなせるわざなんだろうか・・・

と考えながらも体は自然と動いて、左手に持つ早乙女強弓を構えてアイテムボックスから取り出す矢を次々と射る。

1分も掛からずに終了した後に射って壁に突き刺さってる矢と、転がるアイテムと魔結晶・魔石・魔水晶を残さず回収する。

ドロップアイテムは以前と同じで通常ドロップアイテムは『リザードドッグファイターの牙』と『リザードドッグジェネラルの鱗革』で、レアドロップアイテムは『リザードドッグファイターの鱗革』と『リザードドッグジェネラルの牙』があたり一面に散乱してた。

俺の天運だと通常は一部しか出ない鱗革も全身でドロップするので、これらのアイテムを集めてる人達にとっては宝の山だろう。


リザードドッグキングとクイーンが落したアイテムは『キングファング』『クイーンファング』と呼ばれる左右片方ずつの足の防具・・・ブーツに装着する防具で脛の上の膝の部分までカバーする防具というよりも・・・これは武器だろう。

リザードドッグキングとクイーンの真っ黒な鱗革がブーツに装着する形になっており、つま先や踵・足の甲・足の脛・膝などの部分などにキングは金色の牙、クイーンは銀色の牙が飛び出していて、これで攻撃しろって事なんだろうか。

どんなブーツでも上から装備し易い様に金具で固定する形ではなく、内側に頑丈で摩擦係数の高いリザードマンの尻尾が詰められており、それを森林モンキーの尻尾で縛りつけて隙間が出来ない様に塞いで、ブーツの上に固定させる作りになってる。

靴の裏の部分もリザードマンの尻尾製で出来ているので、ツルツル滑る水にぬれた石畳の上でもグリップできるようになってる。

試しに右のブーツにキングファングを、左のブーツにクイーンファングを装着して・・・サイラスの甲殻付きのブーツの上から装備するためには少し加工が必要だった。

少し加工してオリハルコンでコーティングしてと、俺が壊れないようにと手を加えたら『早乙女ファング』と名前が変わって特級品の武器が伝説級に替わってしまった。

早乙女強弓をアイテムボックスに片付けて早乙女ガントレットとセットで装備して素手でリザードドッグファイターを狩ってみるが・・・いまいち効果が分からんな。

元々俺は規格外ステータスを持ち『武神』スキルも持ってる。

俺の蹴りを耐えられる生物は、このイーデスハリスの世界には存在しないからな。

この早乙女ファングの効果がどうなってるのかは俺が装備してる限り検証できないだろう。


そういえば・・・違う種族は効くのかどうか、効果を試してみたかったのでここのフロアーでもミノタウロスホーンを吹いてみたら・・・酷い事になった。

600頭以上の色々なリザードドッグが次々と襲撃してきたからだ。

リザードドッグは耳が良いのか知らないけど、この階層にいる全てのリザードドッグが一気に襲ってきたからだ。

流石に20分以上続く波状攻撃を撃退しながらアイテム回収と忙しい時間が終わりを告げたのは、深夜の3時半近い時間だった。


・・・嫁がいないときで良かったな。

キングとクイーンは2頭ずつセットになって5回も襲ってきたので、このダンジョンではつがいで生息してるようだ。

キングファングとクイーンファングはあと3セット出てきた。

その他の初めて見るドロップアイテムはキングとクイーンの全身の鱗革が2セットずつだった。

金の牙と銀の牙まであるので同じキングファングとクイーンファングが何セットかは作れるな。


それに・・・このフロアーで深夜の狩りをしてるチームが今日はいなくてよかった。

こんなことして獲物の横取りをしていたら、怒られて没収されそうなアイテム。

使いどころが難しい・・・けど、アイテム集めには最適と言えそうだ。


それとミノタウロスホーンを吹いてるときに分かったのは、これは俺と魔獣以外には聞こえない周波数の音が鳴ってるみたい。

実際にどうやって操るのかと音を調べようと吹き鳴らしながら鑑識を書けた結果・・・分かった事実だった。

俺と魔獣のみって・・・俺って魔獣のカテゴリーの方が近いのかもと、ますます人間離れしてる事実を鑑識魔法を使って調べた情報にまで、突きつけられて愕然としてしまった。

呆然と立ったまま、滲んだ天井を仰ぎながら思う・・・泣かないもん。

ほんのちょっとだけ・・・目からしょっぱい汁が流れ落ちただけだもん。


溢れ出たしょっぱい汁をすぐに3点セット魔法で浄化して気を取り直して、何もいなくなったB17Fの階層を歩いてB18Fに降りる階段に向けて、深夜食のホットドックを食べながら歩く。

ホットドックを食べ終えると、カットフルーツをツマミながらミックスジュースで喉を潤した。

結局、俺が一気にフロアー全部のリザードドッグを狩ってしまったので、B18Fに到着するまで何も出てこなかった。

ミノタウロスホーンは使いどころが難しいアイテムだという事を実感しただけだった。


B18Fの魔獣は昆虫魔獣でキラービーナイト。

コイツラもワラワラ出てくるんだよな・・・少し趣向を変えて違う事をしてみる。


『早乙女真一の名をもって幻獣を召喚する。来い! 鎌鼬カマイタチカルテット!』


俺の周囲に鎌鼬が4頭現れて俺の前後左右に展開する。

鎌鼬は体長は1mほどのイタチの体とハヤブサの翼をもって風を自在に操るとされる召喚獣で、召喚術師の魔力を食べ続けている間は、この世界に存在することができる中級幻獣の1種。

中級幻獣の1種とはいえ一度に4頭も召喚できるのは俺のような規格外ステータスがないと、全魔力を一瞬で食われて死に至る事になる。

空中をフワフワ浮かぶ鎌鼬にキラービーナイトから打ち出された空弾が四方八方から襲うが、風魔法は鎌鼬にとって美味しい魔力でしかないので栄養素にしかならない。

俺に向けて飛んでくる空弾もエアージャベリンも全部鎌鼬によって美味しく頂かれてる。

キラービーナイトの槍からの物理攻撃しか効果ないし、槍の攻撃をする前に鎌鼬の背中のハヤブサの翼が巻き起こす『空迅くうじん烈波れっぱ』からキラービーナイトが逃れる術はない。


・・・こりゃ楽できていいな。


休憩の続きとばかりにアイテムボックスから空になったタンブラーを取り出してアイスコーヒーを注ぎ、歩きながら冷たくて美味しいアイスコーヒーを味わう。

このフロアーで俺がやってた事はアイテムなどのドロップ品を転送魔法でアイテムボックスに回収してしただけだ。

ロードクイーンは6頭出てきた。

ロードクイーンのエストックは2本・・・残りはロードクイーンの甲殻が4つだった。

4つと言っても3mもある全身甲殻が4つもあるので、サイズは今までのキラービーの比ではない。

ロードクイーンの羽の部分はフィルムの様になってて、魔糸溶解液に少量の羽を溶かして魔道石英ガラスに塗ると、魔道石英ガラスの弱かった耐衝撃力が数十倍に跳ね上がる・・・魔道石英ガラスを強化する素材。

これはマリアに渡してキャンピングバスや魔力パワーボートなど、全ての魔道石英ガラスの強化を今すぐにしてもらう。


時刻は4時を過ぎてセバスチャンは、るびのとフォクサと一緒にワイバーン狩りに出かけるとの報告が念輪で入ってきた

俺はそのまま回収を続けて、歩き続けB19Fへと続く階段を下りて、ダンジョンアタックを先へと進める。

鎌鼬は召喚を解除して幻獣世界に帰還してもらうが、帰る前にもふもふを少し触らせてもらった・・・鎌鼬の体も羽も上級のもふもふだった・・・


B19Fに出る魔獣は『バジリスクロード』でB9Fに出現するバジリスクとの違いは大きさとスピード。

バジリスクロードの方が一回り大きくなってるのにスピードは2倍近い速度で走り回る。

口から噴出させて攻撃する毒霧は毒素の威力が減ったが、酸性の威力が上がり『酸性毒』の毒霧攻撃へと進化してるようだった。

腰のベルトを扇子用のベルトに変更して装備し直し、風神と雷神の白扇子から風精霊シルフィを200体ほど呼び出して酸性毒霧攻撃からの防御を任せる。

バジリスクロードの酸性毒攻撃の飛沫は俺に向かって飛んできても、風精霊が巻き起こす風で全て地面に落としてくれるので、地面に吸収されてしまい俺に被害はでない。

俺は早乙女ファングの威力を確かめるかのように蹴りを主体にしてバジリスクロードを狩り続ける。


まとめて10匹ほどのバジリスクロードを狩り終えて通常ドロップアイテムの『バジリスクナイフ』を5本と、レアドロップアイテムの『バジリスクロードの肉』10kg×5個をアイテムボックスに入れる。


バジリスクナイフはバジリスクの骨で出来ている刃渡り8cm程の小さな折り畳みナイフ。

刃もグリップも白い骨で作られていてグリップは滑り止めで表面にバジリスクの革を張りつけてあるだけの、見た目はペーパーナイフのようなナイフだが・・・刃には絶えずバジリスクの毒を纏っているためにただ傷つけるだけでなく皮膚をただれさせる効果がある。

しかも体内に僕が入ってしまうと数時間は意識を失うほど苦しむことになるが、致死性はない毒なので暗殺に使うにはこれで傷つけてから別の武器でとどめを刺す必要があり、一撃必殺の暗殺にはあまり向いていない・・・拷問にはよく使われる武器。


バジリスクロードの肉は匂いがキツク、味も物凄くクセの強い肉だけど、煮込めば煮込むほど臭みは取れて柔らかくなるし味もまろやかになる。

どこまで煮込んでもほんの少しだけの歯ごたえだけを残すのでマニアがいるほどの肉だ。

煮込み料理の出汁にも使用されてビーフシチューなどに入れてる店は多いと鑑識魔法の情報に書かれてる。


この階層の上位種に遭遇したのは・・・この階層に下りてきてから部屋を3つほど潜り抜けて敵の襲撃が一段落して、地面の上に散乱するアイテムなどを回収した後にアイテムボックスからお茶を取り出して飲んでる時だった。

バジリスクロードよりも素早い動きで俺に迫ってきたのは、闇の中でもグリーンに輝く瞳を持つ『バジリスクエメロード』だ。

バジリスクエメロードの恐ろしい所は瞳の見ろ緑色の光を直視して目線が合ってしまうと、一瞬だけだが体や思考が硬直させられてしまう事にある。

戦いの最中や魔法を使用する前などほんの一瞬でも体や思考が硬直させられるという事は、ベテラン冒険者ですら命取りになる可能性が非常に高くなる。

が、しかし防ぐ方法は結構簡単だったるする。

『ライトの魔法追加』

俺は周囲に浮かべてるライトの魔法を追加で20個ほど追加して周囲を昼間以上の明るさに照らす。

暗闇の中を緑色に光って”目立つ”眼がある事が、気になってつい見てしまう原因となってるのだ。

つい見てしまう事によって命取りになりかねない事があるんだから、それ以上の明るさでダンジョンの部屋全体を明るくすれば瞳の光は”目立たなくなり”気にもならなくなる。


それにバジリスクエメロードは普段は真っ暗なダンジョンにいて明るい光を見慣れてないので、ライトをたくさん浮かべると強烈なフラッシュを浴びて目の前が真っ白になる・・・ライトの強烈な光は暗闇の中とは逆にバジリスクロードの視力を奪い、慣れるまでに時間が掛かるので隙が出てくるし、こちらからの攻撃を避ける事も出来なくなる・・・一石二鳥の攻撃。

今も俺の前に飛び出してきたバジリスクエメロードは視力を完全に奪われて右往左往している。

俺は隙だらけのバジリスクエメロード5頭を次々に退治していく。


バジリスクエメロードの通常ドロップアイテムは『バジリスクエメロードの血液』が200ccほどのクリスタルのビンに入って2本ドロップした。

バジリスクエメロードの血は魔糸溶解液に混ぜると耐水効果が飛躍的に上がる素材として使われてる。

レアドロップアイテムはくすんだ灰色の『バジリスクエメロードの鱗革』が全身2セットと背中の棘の部分のみの甲殻が出てきた。

バジリスクエメロードの鱗革にバジリスクエメロードの血を希釈した水を塗ると、乾燥するまでの間に鱗革が好きな形に変形することが容易となるので、セットで海外の工房の職人や業者からの依頼が多いアイテムだ。

火耐性は低いが水や氷耐性が異常なまでに高いのでイーデスハリスの北部に多く住んでる漁民たちの船に張り付ける素材として需要がある。

北部の豪雪地帯などでは家の壁や屋根に張りつけると雪が魔力に換算されて積もることが無くなるので、素材として年中需要があり、シーパラ連合国の需要は少ないが北方大陸などでは高額で取引されるので、職人も業者も北方大陸の方に集中している。


このバジリスクエメロードの鱗革に火耐性を上昇させる『サラマンディストの血』を上手く混ぜ込む様にスキル魔法で加工出来ると『サラマンディストバジリスクエメロードの鱗革』として超高級素材に早変わりする。

俺はさらに魔界貴族の角の粉末も混入させて、火・水・氷・闇耐性が非常に高い『4耐性鱗革』をアイテムボックスで作り出した。

それにサイラスの希少種の甲殻を取りつけて耐衝撃力も上げた全身甲殻鎧を作り上げ、サイラス希少種の甲殻を取り付けたブーツも作成して・・・防御力も魔法耐性値も極上の甲殻鎧セットを作った。

名前を・・・考えているうちに『早乙女甲殻鎧』と名付けられてしまった。


ステータスから早乙女甲殻鎧に着替えると自分の全身を遠見魔法を使って眺めるが・・・マーブル模様のサイラス希少種の甲殻にもサラマンディストの血と魔界貴族の角の粉末を混ぜ込んで生成し直したので、マーブル模様が消えて全身がグレー一色になってしまった。

甲殻の部分が黒に近い色の中になってるがグレーの濃淡があるだけで全身グレーという地味な配色に違いはないし・・・一見すると普通のバジリスクの鱗革鎧にしか見えないのが”へそ曲がり”な俺の好みにピッタリとマッチしてる鎧が出来上がった。

しかし地味な見た目とは裏腹に防御力は今までのサイラスの甲殻鎧とは比べ物にならないし、魔法属性の耐性にいたっては火・水・氷・闇は吸収するし、その他の属性も3倍近い耐性値になった。


動きやすさのチェックをしてみるが、パーツとパーツを上手く森林モンキーの尻尾を裏側に張り巡らせて繋いでいて、体を大きく動かしても左右に大きく捻っても肩を大きく回しても、鱗革の表面に固定化魔法で張り付けたサイラス希少種の甲殻が当たらない様に、上手く音も鳴らないようにして繋ぎ合わせて組んであるので、動きの邪魔になってない。

パーツが重なる部分は両側に魔力を盛り込んだ森林モンキーの尻尾を張り付けてあるので、摩擦係数が極端に低い素材同士なので引っかかる事もない。


自重せずに作った早乙女甲殻鎧を装備して鎧の具合を確かめながら、バジリスクロードやバジリスクエメロードを狩り続ける。

武器も剣客にしたり二刀流にしたり、さらに上位の剣聖にしたり、もしくはサイラスの片鎌槍を振り回してみたりエストックなどや早乙女強弓を取り出したりと・・・動きながら敵と戦いながら改造して手を加えて、最後の仕上げで魔糸溶解液でコーティングして完了。

伝説級の早乙女甲殻鎧が誕生した。

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