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闇魔薬撲滅は転生者の悲願っす。

1・27修正しました。

俺はヘルプさんと会話しながら周囲の人達に状況を軽く説明し、ここに逮捕した闇魔薬中毒患者を全員連れてきてもらうように頼む。

集められてきた中毒患者にかたっぱしから光魔法の『聖浄化』で闇魔薬の効果を打ち消させて失神させた。

看守に1人1本ずつのポーションを渡して10分ほどしたら目覚めるだろうから、目覚めた後でこのポーションを飲ませるように指示をする。


俺は先ほどの会議室に戻り制圧軍の主要メンバーに状況を説明する。

俺が闇魔薬『狂乱』の名前を出した時にアイザックが立ち上がって叫んだ。


「あの狂気の魔王が生み出した、呪われし闇魔薬『狂乱』が復活したんですか?」

「違います。落ち着いてまずは聞いてください」

「あぁ申し訳ないです。つい取り乱してしまいました」

「魔法で検査をしたら闇魔法の痕跡が発見できましたので詳しく調べると、狂乱の初期症状のような狂気が出てました。ためしに・・・光魔法の聖浄化を使用してみたところ、体内の闇魔法の効果は浄化されて痕跡も消えて魔薬の禁断症状も消えました。聖浄化で効果が得られるだけでなく魔薬の禁断症状も打ち消せたという事は狂乱ではありえません。初期症状として狂気が出てくるところが似てるだけの魔薬の様ですね」

「はぁ~、そうですか。それにしても・・・驚きましたね」

「すみませんが、基本的な事を伺ってもよろしいですか?」

「マスカーさん、どうかされましたか?」

「狂乱とはなんでしょうか?」

「今から250年ほど前に中央大陸にいた小人族の転生者『五月雨暁子』が生み出した魔薬です」


マスカーからの質問にアイザックが詳しく説明し始める。

五月雨暁子は小人族と森の中で平和に暮らしていたが、平和を破壊し五月雨暁子を自軍の戦力にしたのはエルフだった。

エルフは小人族の村民を人質にとり暁子を脅迫し、自軍の戦争の道具に利用し始める。

暁子の持っていた能力は魔法薬製造とアイテム複製。

奴隷を敵陣地内で凶暴化させて戦線を崩壊させるという、人を使った時限爆弾の様な魔法薬を研究させられて、それを自分で複製して大量生産という事をやらされ・・・自分の愛する人々を守るために誰かを殺すという事をさせられる事に絶望して・・・発狂。

暁子の魔法薬製造は暴走して、作り出した魔法薬の完成形が闇魔薬『狂乱』だった。

正真正銘の闇魔薬『狂乱』の最も恐ろしい部分は『常習性すら必要ない』事だろう。

一度飲むだけで体の中に潜んで隠れる。

そして製造者の合図によって凶暴化し敵も味方もなく死ぬまで周囲の人とモノを壊し続ける。


暁子の狂った闇が内包されてるので目の前にエルフがいたら真っ先に狙う薬となってるので、別名『エルフの命の贖罪』と呼ばれてる闇魔薬だ。


暁子は製造者の意志でのみ狂乱がスタートするという事を隠し大量生産して、戦場に『狂乱の宴』と呼ばれる災いを作り続ける。

そして数年後に五月雨暁子は自らが闇属性に転生する薬を作成して飲み干して魔王に転生。

エルフの王国中に張り巡らせてあった狂乱の魔薬を飲んだエルフたちを一斉に凶暴化させて、エルフにとっての悪夢の夜『狂乱の宴』が始まる。

エルフの誇る魔法・技術・武器・防具・結界も全部が意味のないモノとなったのは、狂乱の宴の極悪の部分『同士討ち』にある・・・味方同士で殺し合う事となるので、軍として機能せずにエルフがエルフを襲い続けるのが狂乱の宴。


狂乱の宴はここで終わらない。


魔王となった五月雨暁子は死体にゾンビパウダーを施して周辺のエルフ国家全てに宣戦布告。

暴走狂乱エルフとエルフのゾンビで構成されてる魔王軍が周辺のエルフ国家に壊滅させられるまでに3年以上かかった。

しかし魔王五月雨暁子を逃してしまったエルフ国家は、追跡もままならない状況に頭を悩ませる。

暁子を追いかけていくのがエルフである限り・・・どこかで狂乱を内服して追跡者同士で殺し合いをして全滅・・・という黄金パターンが出来上がる。

エルフと言えど飲まず食わずで暁子を追い続ける事はできないし、物資を本国から全部輸送してもらっていても、そこに数gの狂乱を混ぜられても発見することもできない。

エルフに恨みを抱く種族は中央大陸には何十万人もいて、暁子はその人達にとっては魔王ではなくエルフ殺しの『英雄』なのだ。

五月雨暁子に100億Gもの賞金を賭けても首を取ることができず、世界中に災厄・・・闇魔薬『狂乱』を撒き散らす結果になった。

世界中にバラまかれた闇魔薬『狂乱』撲滅させることが出来るまでに・・・100年以上の年月を必要とした。

100年の年月の中で狂乱の宴は世界中で引き起こされて、その間にいくつもの国家を壊滅させて狂気の魔王五月雨暁子は『伝説の魔王』と呼ばれるまでになる。


アイザックが知っていたのはここまでだが俺の知識にはまだ先があるので補足して全員に話す。


五月雨暁子の狂気を止めたのはエルフでも小人族でもなく、ダークエルフの転生者『ノルシアム・ビッタート』だ。

ノルシアムは狂乱の効果が全くないダークエルフと小人族を率いて闇魔薬『狂乱』を撲滅させる活動を開始する。

ダークエルフは元々闇の魔力を内包して生まれてくる種族で、しかも魔力を外に放出する事が出来ない特別な種族でもある。

闇魔法に対する耐性は魔族と同等に高い。

それに五月雨暁子の闇の部分と似たような『エルフに迫害され続けた種族』という歴史的な事実が小人族とダークエルフの両方ともにあり、暁子の闇が種族特有の魔力に反応して狂乱が体内で消滅する。

闇魔薬『狂乱』は内部の魔力を闇魔法『狂気』に転換する薬なので魔力量の多い種族には劇的な変化をもたらし、魔力量と狂乱を摂取した量によっては魔族が悪魔に転生する事すらある。

狂乱撲滅に成功した事でダークエルフは迫害される立場から脱却、逆にエルフは世界中から災いを呼ぶ種族と嫌われるようになった。

狂乱から回復させる術は光魔法の聖浄化で全身を隈なく浄化の光で包み込んで、体内にある全ての魔力を闇属性の魔薬の痕跡ごと一度完全消滅させた後で、なるべく早くMPハイポーションにて回復させるしかない。

しかしそれも暴走する前の話だ・・・狂乱は一度暴走し始めたら殺す以外に止める術はない。

今回の闇魔薬は狂乱に似てるが根本的に違う劣化版とすらいえない闇魔薬という事だろう。


この部分は流石に言えない・・・

ノルシアムは暁子を愛し暁子の悪夢を止めるために暁子を殺害。

暁子を愛するがゆえに狂乱の撲滅を誓う。

ノルシアムが暁子に誓ったのは狂乱撲滅と運命を弄び続ける4人の神の抹殺。

暁子の遺体を前にノルシアムは2つの難題への挑戦を誓う。

俺の中には五月雨暁子もノルシアム・ビッタートの知識も経験も技術も全部入ってる。

4人の神が施す運命の狂気に暁子が踊らされて、魔王に転生してからも苦悩し続けてた事も全部。

ノルシアムが・・・仲間のダークエルフ達や小人族達が迫害されながらも狂乱撲滅に種族の存亡をかけて戦い続けた事も全部。

だからこそ俺の中で爆発的に殺気が膨れ上がってしまったのだろう。

俺の中には闇魔薬『狂乱』を憎んで戦い続けた知識と記憶が2人分以上入ってるからだ。


「早乙女君の調査結果からすると闇魔薬はかなりの不完全な魔薬で、強い常習性を持ってる事と薬が切れた時に狂気が発現して、その狂気は売人に向けられて行動し始めるという事でいいのかな?」

「ジャクソンさん、まだ13人しか診察してないから絶対とは言い切れない事です。しかし聖浄化の魔法が劇的に効くので今すぐシグチス版の狂乱の宴を止めることが可能です」

「それはどういう事ですか?」

「まぁ、俺はゴッデス様とアマテラス様のご神託をいくつか解決した事でご褒美にもらったものがある。それを2つ使用したらいいだけです」


アイテムボックスから天乃村正を取り出して鞘から抜く。

右手で片手上段に構えたまま左手で黒扇子を取り出してバチンと開き金色の日輪を上に向ける。


『光の精霊王”日輪”を召喚する! 来い!』


金色の和風甲冑を着た武士が現れて俺の前にたった。


「早乙女様、ご召喚くださいましてありがとうございます」

「時間がないから手早くやるぞ! 神聖浄化をイーデスハリスの世界中に行う。日輪、力を貸せ!」

「ハハッ」


金色の武士が両手を俺が構えた扇子に注ぎ込み始める。

次々に光の球が周囲を埋め尽くすようして現れて、扇子に吸い込まれ始める。

これではちょっと魔力が足らないし、時間が掛かりそうなので俺が魔力を補充しようとしたら、俺の後ろに光り輝く白い衣を纏った露草桜のホログラフィが現れて俺に話しかけてきた。


「早乙女さん、遅くなりましたわね。では、やっちゃいますか?」

「桜さん、ありがとう! 行くぞ!」


桜はアマテラスの膨大な神力を扇子に注ぎ込み扇子の日輪の図柄から、直径10cm程の金色の太陽が出てき手宙を舞い始めた。

流石、アマテラスの神力だな・・・速攻で満タンになった。

準備ができたので俺も魔力を天乃村正に注ぎ込み始めるとカタナが水色に光り始める。

掛け声を出して天乃村正で扇子から出てきた太陽を切りつけて、叫びながら魔法を発動させる。


「天空にあまねく太陽の力をここに示せ! 『せいや!』日輪の浄化!!」


金色の小さな太陽が天乃村正に斬り付けられた瞬間に『パキーン!』と巨大なガラスが木端微塵に砕け散ったような、耳をつんざく様な強烈な破裂音を残して目に見えないほどの微粒子の光がイーデスハリスの世界を包み込んだ。

これで一件落着だな。

後の仕事は目の前であんぐりと口を開けたままフリーズしてる制圧軍の首脳陣への説明だな。


俺がアマテラスと露草桜に手伝ってもらって日輪の浄化を発動させた。

世界中から闇属性魔法の魔薬の効果を打ち消すのに浄化魔法を使ったが0.1秒にも満たない一瞬に凝縮させたので、生物的には何の影響もない。

闇属性の生物が光属性の魔法をくらうと被害が出るがこの0.1秒以下に凝縮したおかげで痛みも感じないレベルになってる。

しかし体内に巣食ってる闇魔薬の効果はこれで完全に消すことができた。

世界中で倒れた人間は数千人いるようだが常習性の効果が消えた闇魔薬はこれからアマテラスの神託で世界中から情報が集められて世界中で撲滅させられるだろう。

俺だけの説明だと弱かったので説明まで桜が手伝ってくれてから消えていった。

ここにいるメンバーは俺よりも露草桜と面識があるので桜の説明は素早く済んだ。

光の精霊王の日輪は金ぴかで眩しいので用事が終わったらすぐに帰還してもらった。


俺はそこまで詳しくは話せないがゴッデスに貰った黒扇子と天乃村正をみんな見せて、神器だという事を証明して終わり。

天乃村正もゾリオンに貰った時は伝説級だったが、ゾリオンから俺に渡された後にゴッデスに神器へとバージョンアップしてもらったので、今は神器になったと説明したら納得してくれた。

天乃村正と黒扇子をアイテムボックスに入れて、この作業は完了する。


対策本部の後の仕事は・・・魔薬中毒患者だった人達がシグチスの中に1000人以上いるので、彼らを呼び出しして売人の情報を出させて捕まえる事だ。

日輪の浄化の魔法を使用した際に、シグチスの中で倒れた人の場所と名前は脳内MAPに印がつけられているので、名前のリストをアイテムボックス内でヘルプさんに作成してもらって警備隊に渡した。

警備隊は俺が地図に場所を記入して名前が書かれてる人全員を警備隊本部に連れてくるようにと、アイザックからの命令を受けてシグチスの街中に散らばる。

それと元々渡してあった忍が調べてきてくれた売人の情報を頼りに一斉摘発に踏み切った。

ジャクソンは聖騎士団の正常化を使いこなす事の出来るメンバーを10人ほど、警備隊本部に連れてくるように指示を出して待機をさせて、ジャクソン自身は別の会議室で真偽官と共に魔薬中毒患者を尋問するために会議室を移動していった。

マスカーはアイザックのフォローで情報整理の手伝いをしてる。


制圧軍が機能し始めたのを確認して俺は『後でまた来るよ』とみんなに挨拶をして警備隊本部を後に外に出た。


ヘルプさんがゴッデスからもらった情報で気になるものがあった。

今日の昼過ぎに早乙女商会シグチス支部にやってきた転生者『郷澤ごうさわ仁司ひとし』がどうも臭いようだ。

郷澤がゴッデスに貰ったスキルは『薬剤師』と『アイテム複製』という2つ。

彼が開いてる空手道場は元々日本にいるときにすでに3段で全日本選手権のベスト8クラスの実力者の様だ。

郷リゾートが手掛けてる温泉施設は木材加工で有名になる前は薬草の産地として有名で、様々な種類の野草が特産品になっていた。


忍が調べた情報でも不可解の点が多い。

郷澤は元々シグチスの住民でなく9年前に他の大陸からシグチスに流れてきてる。

シグチスに来て最初に趣味で近所の子供に教えてるだけの空手道場で、道場破りに来たヤツラをどんどん吸収し、今から5年前に突然道場に通っていた子供を追い出して道場生達と共同で郷澤商会を設立してる。

郷澤空手道場はいくつかの道場を道場破りで吸収して資産を売却して資金を貯めて、潰れかかっていた温泉施設を買い上げて郷リゾートを立ち上げた。

木工職人のグループをいくつか抱え込んでから、看板製作をメインに据え温泉設備を利用した商売を始めて常連を増やし、郷リゾートの商売を軌道に乗せた。

その後で揚げパンブームを起こして一躍時の人になったらしい。


5年前にいきなり豹変して道場拡大へと動き出したのも不自然だし・・・それまではネコをかぶってたのだろうか?

でも今日に早乙女商会シグチス支部にやってきたのは、1人でやってきてる。

見張りもいなかったし、後を追った忍からの報告では郷澤商会に帰っていったのも誰かに命令を受けてる様な気配は見えないらしい。

しかし、郷澤商会で執務室に座り執務室でそのまま過ごしている様子で・・・秘書も周りにいないし、道場も隣の敷地にあるのに誰もいないという報告を受けた。


あまりにも不審な点が多すぎるので鑑識魔法で徹底的に調べたが回答は得られなかったが、俺が情報複製で郷澤仁司の知識をコピーしてやっと先ほど結論が出た。


隷属のリボンが髪の毛をまとめていて、誰かに操られていることが分かった。

しかも郷澤を操っているのは道場生21名全員だ。

郷澤の妻も3人の息子も人質にされて郷リゾートの温泉施設の中で隔離され隠されている。

この世界の人間は・・・こんなのばっかりか?

沸々と湧き上がる怒りに任せて転送魔法で郷澤の妻子を俺の目の前に連れてきて隷属の首輪や手枷足枷を解除した。

エクストラヒールで4人の体の傷をすべて消してから、郷澤仁司の目の前に4人を連れて転移魔法で移動。

郷澤の髪の毛のリボンをほどき隷属の魔法を消滅させてから郷澤の手に返した。

傷だらけの郷澤の全身にもエクストラヒールですべて消すことは出来るが心の傷は消せない・・・


「郷澤さん、詳しい事は言えないが遅くなって申し訳ないというゴッデス様からの伝言だ。それとしばらくはシーパラの教会で療養しててくれ。それにこれは俺からのプレゼントだな」


全員分の腕輪を渡すとシーパラ教会大聖堂内にある大司教執務室・・・露草桜の部屋に転移魔法で郷澤夫妻と子供3人を転送魔法で送る。

仁司に渡して握らせたのは5個の腕輪で隷属の魔法が効かなくなる『聖者の福音』という魔法を魔結晶に封入してあり、腕輪にちりばめられた魔石がその魔法への魔力を半永久的に補助し続ける。

聖者の福音の効果は『洗脳の無効化』

これをしてる限る永久に隷属魔法や精神系の魔法を無効化する。

呪術師の呪いの洗脳は俺がこの腕輪を製作した事で俺の呪術師レベル以上の力がないと効果がない・・・俺以上の呪術の使い手は存在しないのでこれも無効化できる。


・・・ゴッデスさんよぉ、こういうアイテムを転生者に配れ。

毎回毎回転生者は隷属魔法や洗脳されて悪夢を引き起こしてるだろ。

これはお前達神が引き起こした事だと言ってもいいことじゃねぇーか。

それともなんだ、悪党が転生者の力を利用して不幸を撒き散らすのはOKで、転生者が能力を使って不幸を起こすのは言語道断なのか?

お前のやってる事と4人の神が遊びでしていた事の『良い・悪い』の境界線はどこにあるんだ?

転生者から見たらどっちも大した違いはない・・・不幸でしかない。


クソッたれ、返事もしねぇ~し。


と考えていたら、転送魔法でシーパラに送ったはずの郷澤仁司が俺の目の前に戻ってきたので驚いてしまった。


「どわぁ~! って、ビックリした。郷澤さんどうしたんですか? ・・・ってもしかしてアマテラス様に戻してくれって願いました?」

「早乙女さんに、お礼を言いたくて・・・まずは助けていただきまして誠にありがとうございます。隷属の効果を一時的に打ち消す薬を開発できたのは3年前だったんですが、すでにその時には3人の息子と妻は彼らの手で俺の知らない場所に隠されていたんです・・・」

「大丈夫ですよ、つらい事を話す事はありません。郷澤さんの知識と記憶を情報複写という魔法でコピーさせていただきましたんで、すべての事は俺には分かってます。だから話さなくてもいいんですよ」

「そうですか・・・すみませんでした」

「でも、せっかく郷澤さんが来てくれたんだから・・・せっかくなんで、遊びませんか?」

「遊ぶってどういう事なんですか?」


俺は郷澤がイーデスハリスで過ごした人生の5年間を弄んだヤツラ全員を弄ぶ提案をする。

郷澤を連れて警備隊本部に戻りながら、俺が出した提案は・・・


郷澤が所有する郷澤商会は会社のシステム上ではあるが、操っていた道場生21名達は全員が非常勤の平社員となってる。

外から見ると郷澤のワンマン会社。

何かあった時に郷澤に全てを押し付けて逃げられる様にしてあるんだろう・・・が、そこを利用する。

社員全員をひっくるめて俺の早乙女商会で10億Gで郷澤商会の全資産を買い取ることにする。

21名以外の社員や資産は早乙女商会からまた後日に売り返してもいいしな。

しばらく郷澤には休んでもらってる間だけ俺があずかるだけだ。


警備隊の上桐係官に簡単に説明したらすぐに乗っかってきた。

上桐係官立会いの下で正式な契約書を交わして郷澤商会の全てを早乙女商会の傘下に収めた。

それで今から郷澤空手道場の道場破りを正式な手順に則り警備隊の地下訓練場内で行う事にする。

立会いは上桐係官。

道場生21名をアマテラスの転送魔法で呼び寄せてもらった。

俺はこの21名の命が欲しいだけだ。

道場破りという手順であれば全ての決定権は郷澤が持ち、コイツラに拒否権はない。

しかも都合の良い事にコイツラは全員が郷澤空手道場の師範代となってる。

師範代は道場主の後に対決するなんてもってのほかとされてるし、師範代の資格を持つものは道場から破門にされる事はあっても”自ら辞めることはできない”と郷澤空手道場の掟に書いてある。

逃げ道を完全に潰したナイスな作戦の出来上がりだった・・・計算通りなんだけどな。

自分達が逃げやすいようにした筈の逃げ道はすでになく、目の前にあるのは過酷な道場の掟のみだ。

左腰に差してた早乙女儀剣をアイテムボックスに戻して準備運動を始める俺。


「さぁ、お前らカスで遊ばしてもらう。みんなで踊れ! そして死んで詫びろ!」

『こぁ~~~』


俺は空手の息吹で全身の隅々に気を行き渡らせると目の前で突っ立っているバカまで飛び込んで正拳突きを放つ。

バカの顔面が消失しても俺は気にする様子もなく次々とカスの命を奪っていく。

21名を惨殺するのに3分ほどかかった。

逃げ惑ってるカスどもをあえてすぐに殺さずにいたぶりながら惨殺したからだった。

全員の死体を並べているとアマテラスの神の癒しの光が死体に注がれて魂も飛び散った血や肉片もすべてが浄化される。


「では、郷澤さん、遊びましょうか?」

「おう!」


郷澤はシグチス警備隊本部、地下訓練場の土の上を正座していたが、俺の動きに触発された様で気合の入った返事をして俺と正対してお互いに礼。

俺と郷澤の演武の様な美しい空手の型の応酬が5分ほど続いた後で、郷澤の上段回し蹴りを躱してから俺の手刀が郷澤の首筋に入った時に、郷澤が言った『参りました』の声で遊びは終了した。

先程までの虐殺ではなかった事だが、俺と郷澤の演武の後は地下訓練場内で拍手が起こった。

休憩中の警備隊隊員が見学していたようで、いいものを見せてもらったと拍手をしてくれた。

警備隊の立会いの下の正式な道場破りなので、評議会への届け出は事後通達の形になる。

これで郷澤空手道場の呪われた歴史は終了。

受け取った道場の資産を俺は早乙女商会に1億Gで販売し子会社の元郷澤商会の管轄にまとめる。

今後、郷澤と家族の療養が済んだらまとめて10億Gで買い戻すという仮契約を結んだ・・・1億Gは俺からのプレゼントだな。

郷澤が怨む相手を俺が横取りして殺しちゃったし。

全部の用事は終わると、郷澤はアマテラスの転送魔法でシーパラ教会大聖堂の、露草桜の前で心配して待ってる家族のところに帰っていった。

俺は上桐係官にお礼を言った。


「上桐さんがいたおかげで道場破りシステムのスムーズな移行ができましたよ。ありがとうございます」

「彼が郷澤さんでしたか・・・今回の魔薬騒動の闇魔薬を生み出したのは彼なんですか?」

「はい、ですので彼はシーパラ教会大聖堂のアマテラス様の前で情報提供に協力しながら、しばらくの間は療養することになります」

「逮捕ではなく療養ですか? でも販売をしていたのは彼、郷澤仁司さんではないのでしょうか? それとも今早乙女さんが成敗した男たちが行っていたのでしょうか?」

「郷澤さんは依頼されて闇魔薬を作って製造を担当していたんです・・・隷属のリボンと家族を人質にとられて無理やりにやらされていたんです。販売する売人に卸を担当していたのは俺が殺した21名の仕事の様です。そして販売する売人の組織が判明しましたけど・・・早速踏み込みますか?」

「ちょ、ちょっと待ってください。一旦会議室に戻りませんか? それと、この死体はどうします?」

「これは俺が後日冒険者ギルドにでも売りに行きますので持って帰りますよ」


俺は上桐係官に言われて・・・死体の存在を思い出してアイテムボックスに全部回収する。

ついでに地下訓練場に残ってた汚れを3点セット魔法で浄化した。

それで上桐係官と共にまた会議室に戻っていった。

会議室では大忙しになってる。

俺が情報を大量に投下したので売人がザクザクと警備隊によって逮捕されてる。

シーパラ連合国において魔薬・麻薬のどちらも売人の現行犯逮捕となった人には人権も裁判も存在しない。

すぐに隷属の首輪を装備させられて調書を取られた後、牢屋送りにされて全財産没収。

死ぬまで奴隷の終身奴隷身分となる・・・これは普通の奴隷制度とは離れた麻薬奴隷という制度で、恩赦される事も刑期が伸びるとか短縮される事もない。

形式上は無期奴隷という扱いだが、稼いだ金も全部国に没収されてしまい、なるべく長生きさせて死ぬまでこき使う奴隷になる。

俺の先ほど渡した情報から続々とシグチス中から奴隷にされた売人が送られてきていて大忙しになってる。

調書を取った後で船に送られてシーパラに大型輸送船で運ぶためだ。

アイザックとの相談の結果、俺は独自に動いて21人が卸していた先の会社2つを叩き潰すことになった。

アイザックから出来ればという注釈がついた無茶な要求してきやがった。


『今夜の12時に輸送船団が首都シーパラに向けて出港するので、それまでに出来るだけ多くの魔薬&麻薬密売業者のメンバーを船に乗せたい』


という事だった。

現在の時刻は夜の10時過ぎ・・・ハッハッハ、すげぇ無茶ブリだな。

もしかして売人を大急ぎでしょっ引いてるのもこれが原因か?

しかし俄然ヤル気が出てきてしまうのが、俺の悪い性格だし上手くアイザックに利用されてしまってるが・・・それからすぐに逮捕できるようにしておくから、警備隊の10人乗りの護送車を今から40分後にこの場所に5台と隷属の首輪を48個、30分後にこの場所に6台と隷属の首輪を54個送ってくれとアイザックに地図を書いて渡し、俺は大急ぎでシグチス警備隊本部を飛び出した。


誰もついてきてない事を確認すると隠者スキルで身を隠し、転移魔法で襲撃場所の上空に跳ぶ。

飛翔魔法で上空に待機して内部を探査魔法で探りとり48人全員がいるのを確認してから、ショック魔法で全員を気絶させる。

敷地内に入って全員のアイテムボックスの中に隠してる闇魔薬の一部を手に握らせて現行犯逮捕準備完了。

敷地に誰も入ってこれない様に、徒影を2体立哨代わりに警備させて、警備隊が来るまで泥棒などが入ってこない様にさせた。

これで1件目は終了・・・15分余ったな。

次の襲撃場所に転移魔法で移動して全く同じ事を繰り返し、こちらは54名の確保して同じように魔薬を握らせておく。

このまま帰ってもいいが、暇つぶしに警備隊のお手並み拝見と、上空でホップボードに座ってタンブラーでコーヒーを飲みながら見学することにした。


動かぬ証拠を掴まれて隷属の首輪を装備させられた後、気付けをして意識回復後に警備隊の護送車に乗って高速輸送船に連れて行かれる。

シーパラに到着するまでの間に船の中で調書を作成すればいい。

俺は護送車が全部移動していくまで見届けた後に、ホップボードをアイテムボックスに片付けて地上に降り立ち、気配を消したままゆっくりと歩いて警備隊本部に戻ることにした。

警備隊員が2名残って応援が来るまで現場の敷地を警備してた。

現場の捜査はマスカーが自分の直属の部下を向かわせてる・・・最高評議会特別捜査隊・・・通称『最特隊』のメンバーがリーダーとなっているので、彼らが時間をかけてじっくりと捜査をするだろう。

現場捜査の練習にもなるしな。

犯罪は確定してるので調べるのは没収する資産になる。


気配を徐々に戻しながら歩き、途中からライトの魔法を周囲に浮かべて警備隊本部に戻る。


けど・・・俺をストーキングしてたヤツラの気配が完全に消えてるな。

シグチス制圧軍がシグチスに上陸してから、俺を追い回していたヤツラの姿は完全に消えた。

早乙女商会シグチス支部の正門から少し離れた場所の飲み屋で通用門の動きを注視してたヤツラも連絡員が来て撤収していった。

忍がもちろん追跡任務中だが、彼らは隠れ家に戻らずに自宅に帰っていった。

動きが謎だな。


俺の首に懸っていた賞金は取り消され、すでに20億Gは国に没収されてると、シグチス行政本部発の公式な情報としてシグチスの街を駆け巡ってる。

その情報をキッカケに早乙女商会シグチス支部の正門前の飲み屋にいた数人は連絡員が来て同じように撤収してる。

今朝まで早乙女商会シグチス支部の正門前のゴーレム馬車駐車場に停まってた4台の屋台は今日はシグチス警備隊本部前の大通りに他の屋台と同じように軒を連ねてる。

正門前の飲み屋も今日は普通に飲んで歌ってる様ないつもの飲み屋の風景なんだろう。

ただ、正門前にいるユーロンドに時々手を振って、ユーロンドが手を振り返すと大喜びして笑ってるのが、通常の風景と違う部分なんだろう。

ユーロンドは普通に受け答えしてくれるし、暴漢は排除するがただの酔っぱらいは介抱してくれるので、けっこう人気者になってシグチスの街の人達に愛され始めてて、製作者としてとてもありがたい。

俺にゴーレム製造技術を伝えた人が望んでいたけど、彼が生涯に得る事も見る事も出来なかった風景がここにあるんだからな。


俺はシグチス警備隊本部に戻りながら、少しだけ感傷的な気分に浸っていた。

・・・と言ってもすぐに到着して、すでに顔を覚えてくれた受付の隊員が会議室まで送ってくれる。

アイザックからは感謝の言葉を貰った。


「早乙女さん、無茶なお願いを聞いてくださいましてありがとうございます」

「いえいえ、襲撃&捜査のタイムアタックってのは初体験だったので、これはこれで面白かったですよ」

「それで早乙女さんが暮れた売人情報リストからの逮捕はほぼ完了して船に送りました・・・こちらも何とか時間に間に合いました」

「凄いですね。500人以上のリストなんですから、大変だったでしょう。すでに時刻は12時を回って5月14日ですか・・・そうだ、ここらで休憩って事で夜食にでもしませんか?」

「いいですね、早速準備を・・・」

「俺の奢りでいいですよ!」


俺はアイテムボックスから早乙女式馬車で販売中の『おにぎり4個セット』を大量に取り出して、警備隊本部で働く隊員や内部職員の為に配り始めた。

周囲にいた平隊員がバケツリレーのように配り終えて1000個以上の色とりどりの箱に入った夜食を取り出す。

警備隊本部の中でみんなで少し手を止めておにぎりをパクつく。

深夜に食べるおにぎりの塩分が体の疲れを少しだけ癒してくれるような気がした。

食後はアイザックの命令で警備隊全職員の1/3のみ残して交代して仮眠をとることになった。


俺はシグチス行政本部とシグチス教会に出向いてここでも頑張って夜勤をしてる人達におにぎりを配ってから、俺も早乙女商会シグチス支部に歩いて帰った。

早乙女商会シグチス支部には全く利用されてない部分があることに今気付いたから、これから改造することにする。

モフモフマッサージ天国の2階部分に作った任侠ギルドシグチス支部の予定だった場所だった。

ここはマヅゲーラに繋いだ簡易ゲートまでが全く使用されてない状態でそのまま残ってる。


ここを6LDKの3階建ての屋敷に改造した。

外から見ると3階建てだが1階はモフモフマッサージ天国で2・3階は裏の転送部屋から入る形式なので、1階と2階部分をつなぐ階段が存在しない・・・建物は繋がってるが内部は分離してる。

簡易ゲートをマヅゲーラから回収してきて、シーパラにある早乙女工房に繋いだ。

格安で郷澤家族に貸し出す予定・・・・気に入ってもらえればだけど。

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