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アマテラスへの結婚の報告・・・4人目っす。

1・15修正しました。

今回は徒影を呼ばずに身長1mほどの忍を大量に投入して、時間を短縮させる事とする。

忍は戦闘用のスキルは忍術と無手格闘系しか封入してないが、乱戦・混戦・パニックの時に気配を消して攻撃してくる恐怖というのは格別なモノだろう。

例え忍に攻撃できたとしても忍の表面はワイバーンの革製なので生半可な攻撃では傷すらつけられない。

アイテムボックスに作り置きをしてある忍を100体ほど砦の内部に次々と放出させて、敵を狩る手伝いをさせる。

忍をあちこちに放出して歩きながら、俺も私兵や砦内に暮らしている女子供までも殺戮しながら砦内部を探索、小さなワイバーンの様な忍が次々と出てきて飛び回って獲物を探してまわる。

ここの砦にいる奴らはすべて殺人や殺人教唆など全員が犯罪者だ。

生かす価値もない犯罪者集団に一切の情けは必要ない。

人の命を何とも思わずに潰し続けてきたヤツラを無慈悲に潰していくのが俺が頼まれた仕事だし、権力に取りつかれた者たちによって利用されて迫害を受けてきた転生者達の無念を昇華させるのも俺の仕事だ。

次々と巻き起こる殺人劇と破壊に砦内は狂気が満ち溢れて絶望が支配し始めてる。


伝説級の防具を持つ私兵の総隊長にステータスからの剥ぎ取りで防具を一瞬にして脱がせてから殺害したり、召喚師が召喚させた悪魔の攻撃を闇属性の甲殻鎧の効果で無効化してから、ジャブ1発で消滅させたりと多彩な敵からの攻撃もものともしないで殺害しながら探索してまわる。

護符使いや蟲使いなどもいて多種多彩な攻撃を仕掛けてくるが、今日はすでに日の出も近い時間だし遊んでる余裕はないので、あっけないほどにサクサクと終わらせる。

名乗りを上げてくる冒険者くずれの口上も聞く気もないから、動きを止めて名乗りを上げようとした瞬間に背後から忍が飛び蹴りで頭部が吹き飛び死んでいく。

全員の武器や防具はアマテラス経由で本国の王国に戻してやるので、なるべく壊さないようにして殺害。

伝説級の武器が4点、伝説級の防具が1点、特級品の武器が6点、特級品の防具が12点。

そのほかにもアイテムも多数あって・・・どこまで持ち逃げしてるんだこのバカどもは・・・身ぐるみ剥ぎ取って全部回収だけどな。

俺のアイテムボックスに入れて3点魔法で洗浄した後にゴッデスに連絡してアマテラスに送ってもらった。

今回は魔石や魔結晶も金もアイテムも俺は何も受け取らずに、すべて本国に返却してやってくれとアマテラスに言っておいた。

貰ってもなんか縁起悪そうだし。

綺麗に剥ぎ取るためにも良さげな武器や防具を持つ敵は俺が初めに重点的に狩ることにした。

組織の上の方の奴が良いモノをもって使ってるのが多いから、組織の指揮系統にダメージを与えるのは上から潰していくに限る。

忍が殺した敵も俺は武器や防具を回収して転送魔法で飛び回る。


そんな事を並立する思考の中で考えながら私兵を殺してる。

特級品以上の良さそうな武器や防具を持つ敵は狩り終わったので・・・今はゴーストTIMEは終了して歩いて殺戮ゲームを再開させた。

鎖鎌を振り回す男の鎖鎌を掴んで男を振り回して周囲の敵を粉砕したり、手甲を装備して殴ってきた女性兵士の手甲ごと俺の手刀で叩き斬ったり、シーフが俺の後ろに回って背中にナイフを突き立てようとして振りかぶった顔面を裏拳で粉砕する。

2500人以上の殺戮だから俺のサイラスの闇属性甲殻鎧は飛び散る鮮血や脳漿などが混じったのを浴びて、少し乾いてまた血を浴びてを繰り返していくうちに・・・浴びた血がどす黒く変色して元々真っ黒だった鎧が、幽鬼の様な姿となって凄まじい臭気を漂わせてる。

途中から俺と忍が繰り広げる凄まじい殺戮の状況を物語る臭気が、現場となってる砦の中に充満し始めて誰もが正常な判断を失ってきたのだろう・・・パニックになっても逃げ場が一切ない絶望からの狂気から兵士たちは狂い始めて味方同士で殺し合いを始めた。


・・・思ったよりは長く正気を保った方だな・・・もっと早く発狂すると思って、精神的に追い込んでいたんだけど。


俺は指揮する奴もいない敵同士の殺し合いを眺めながら後始末は忍に任せて、隠し通路の中でどうすれば逃げられる様になるのかわからずに、味方同士で言い争いをしている亡命政権側の首脳陣と親衛隊の目の前に転移魔法で跳んだ。


「だから逃げられないって言っただろ? ボケるのもその辺までにしておけよ」

「俺は彼らに雇われただけだ! 摂政たちとは関係ないんだ! 本国に戻って裁判を受けるから助けてくれ!」


親衛隊どもが武器を捨てて両膝を付き俺に手を合わせて懇願してきたが・・・そんな程度で許されるわけがない。

一度目を瞑って『看破の魔眼』を発動させて隠し通路の薄暗い中でも爛々と赤く輝く瞳で見つめながら彼らの問いに答える。


「誰が関係ないんだ? お前達は雇われただけだと言ってるが、俺もアマテラスに雇われただけだ。言い逃れはこの看破の魔眼を通して真実のみを語ってアマテラスにお願いしろよ」

「あ・・・」

「早く言えよ。ほらほらどうしたんだ? 黙ってると言う事もないって事でいいんだな?」

「うぐぐっ」

「そもそもさぁ、なんでお前らは愛する子供・妻・愛人・側室の全部素捨てて、どこに行くつもりだ?」

「うっ・・・」

「愛してるのは金だけなんだろ? この1つの行動だけでも話を聞くに値しないって事がわかるよ。まだ邸内には自分の子供や妻を守ろうと必死に戦ってる兵士たちもいるのにな・・・まぁ無駄なあがきですけど」

「・・・え?」

「他人を殺して奴隷を殺して、他人の尊厳を踏みにじってきたヤツラが、今更善人ぶったところで手遅れって事だ。ヤツラが守ろうとしてるのは自分だけ自分の愛する者達だけって事さ。そんな奴らが愛する妻や愛する子供を守りたい? 笑わせるなよ。俺が言った『死んで詫びろ』というのは無念のまま亡くなっていった犠牲者の言葉だ。犠牲者たちが俺を復讐者にしてるんだから・・・彼らにはお前らの言う”許してほしい”という言葉に聞く耳を持ってると思うのか?」

「・・・」

「許されるわけがないじゃん。死んでるんだからさ」

「・・・」

「だからこそ”全員”に対して死んで詫びろって言ってるんだよ。さぁ、おしゃべりしてる間にお前達が持ってるデータのコピーは終了したし、外の殺戮も終わったから生き残ったのはお前達だけだな」

「ギャッハッハ、お前もこれだけの人々の無念と恨みを受けて殺しまくったんだ、この土地には悪魔や幽霊が住み着いて永遠にお前を呪い続ける事となるんだ! その呪いを受けろ!」

「考え方もカスだな・・・でもジジィの言ってる事もわかるよ。ただ、俺はお前達が考えてるよりも遥か高みにいるんだよ!」


怨恨絶おんこんぜつ浄化』

『神聖浄化』

恨みや怨念を完全に浄化させてさらに追加で神聖浄化を付け足してこの巨大な邸宅の敷地全域に2つの魔法をかけた。

『3点セット魔法』

周辺全域に血の匂いがこびりついてるのは俺が汚れていたからだろう。

俺も含めたすべての血や肉片などの残骸を敷地全域にかけた3点セット魔法を使って、浄化の光でさらに綺麗になったようだ。

匂いまで浄化されて爽やかな空気が流れ込んでくる。


「なっ・・・あれだけの空気の澱みを一瞬で消し去るなんて、信じられん・・・」

「別にお前達が信じる必要はないさ。どうせすぐに死にゆく運命なんだ。じゃあな」


俺はここにいる29名全員の防具と武器を次々とステータスから身包みを剥して裸にさせてから・・・虐殺を再開。

目の前で俺に向かって土下座していた親衛隊の頭を下から蹴り上げて頭部を消失させ、足を下ろす時に隣で土下座してる親衛隊の頭部に踵落しをする。

通路の反対側を通って逃げようとした先はすでに先手を打って結界で塞いであるので、もはや逃げ隠れる場所もなく一方的に蹂躙していく。


素っ裸で逃げ惑うオッサン連中とジジィ連中の浅ましき執着に辟易としながらも殺す手も足も止まらない。

29名を殺し終わってコイツらにも神聖浄化・怨恨絶浄化・3点セット魔法の完全浄化セット魔法を使って、隠し通路内の澱んだ空気も汚れた壁も浄化して・・・キチガイじみた虐殺劇の幕を下ろす。

隠者スキルで自分の気配を消してから隠し通路から砦上空に転移魔法で移動。

解き放って殺戮劇の手伝いをしてくれてた忍を全部アイテムボックスに回収して3点セット魔法で浄化。

これで俺の頼まれていた仕事は終了した。

外は夜明けの時間なんだが・・・今日は天気があまり良くなくて曇っているために、まだ周囲は真っ暗というぐらい暗い。

探査魔法で砦内全てを探ったが虫以外に生物の反応は存在しなかった。

念入りに完全浄化セット魔法をかけてあるのでアンデッド化する心配もない。

後始末はもうすぐやってくる聖騎士団とシグチス駐留軍に任せて、俺は厳重に施した封印結界を解除して臭気結界だけを掛けて効果が12時間ほど続く様に設定して退散する。

早乙女商会シグチス支部に転移。




こうして日の出の時間を過ぎて、俺が転生してきてから43日目、5月13日の朝を迎える事になった。

天気は少し蒸し暑い曇り。

今日の夕方からは崩れて夜には雨が降ってきそうだな。

風は今は微風だけど夕方から強くなりそうだ。

という・・・脳内にある釣りMAPからの朝の天気予報を聞きながら、俺は自分で朝食を用意して食べ始める。

昨日の仮眠の後から活動してるので腹が減ったなと爆走鳥の肉と卵を使って親子丼を作ってみたら・・・大成功だ・・・マジで美味かった。

さすが料理スキル。

もう5時半だというのに早乙女商会シグチス支部の前は、まだ賞金稼ぎ達がやってきてユーロンドにフルボッコされてるし、正門周辺の飲み屋もゴーレム駐車場で屋台の店を開いてる人達もまだまだ元気に開店して酔っぱらい達で盛り上がってる。

騒いでる客層は夜勤明けの人達に順次入れ替わってるようだが、客足も賞金稼ぎも止まりそうにないな。


外でいまだに続いてる喧騒をよそに4人の嫁達がここにやってくるまでの間、執務室の肘掛け椅子を倒して仮眠することにした。



クラリーナに揺すぶられて起こされた時刻は8時チョイ過ぎのほぼ予定時刻だな。

4人の嫁に起きてからキスをせがまれたのでチュっとキスすると嬉しそうだ・・・朝から5人でバカップルごっこしてる。

幸せには変わりないから気にしない。

早速ステータスからラフな服装・・・襟がある長袖の緑色のポロシャツとグレーのカーゴパンツに着替えて、シューズはハイカットのスポーツシューズにした。

そういえばカレンには現代日本風の服を作ってあげてないので、カレン・ファンションショーを開始する。

カレンはモデルのようにスラリとした体型でありながら出るところは出てるという・・・女性の理想形の様な体つきをしてるので、結局のところ”美人モデルは何を着ても似合ってしまう”みたいだな。


アイリの好きなキッチリとしたスーツ系を着ても美しい秘書の様だし、クラリーナが好きなフワフワ系の服装も犬耳がついてるので似合ってしまう。

ミーの好きな軍隊の様な迷彩柄も美しい兵士の様だし、俺の好きなラフな格好も雑誌モデルの様で綺麗だ。

とりあえず一通り作ってあげてシューズも同じように一通り作ってプレゼントして・・・最後に龍布で反物を作り何着かの着物を作ってあげたら大喜びしてくれた。

すでに9時近い時間になって今は着物をノンビリと着付けする時間がないので、今夜のお楽しみにして和装小物も全部作ってプレゼントしてあげた。

カレン自身はクラリーナと一緒でフワフワしてる可愛い女の子ファッションがお気に入りの様で、今日は白地にピンクの花柄でグリーンも混じってるノースリーブワンピースを着ることにした様だった。

お尻の尻尾がユラユラ振られているのは嬉しい証拠だろう。

クラリーナもピンクの花柄のワンピースの袖ありバージョンで花柄が細かいタイプだな。

アイリは襟の広いシャツと縦じまのタイトスカートをキッチリ着こなしてるし、ミーはロンTとジーンズを来てジャングルブーツを履いてる。


正門前でセバスチャンがキャンピングバスを取り出して内部を俺が改造してカレン専用のシートも作ってあげた。

正門が開くと周囲がどよめく。

早乙女商会シグチス支部ができてから今まで、全く開かれる事がなかった正門が開放されて、中には見た事もないゴーレム馬車が出てきて走って行ったんだからな。

賞金稼ぎ達も近づくこともできない様に周囲をユーロンドが固めた状態で走り去った。

俺は運転をセバスチャンに任せてまずは教会へと向かってもらう。


そうはいっても近所なのですぐに到着しちゃうんだけどな。

ゴーレム馬車駐車場に停車したキャンピングバスの防衛はセバスチャンとマリアに任せて俺は4人の嫁を連れて教会の礼拝堂へと歩いていく。

礼拝堂の長椅子に腰かけてアマテラスにカレンとの結婚の報告をする。

いつものように目の前も脳内も真っ白の光の洪水が俺を包み、神々の過ごす世界へと連れて行かれる。

テンションMAXなアマテラスが俺の目の前でクルクル回ってから抱きついてきた。


【真一お兄ちゃんが久しぶりに、キタ━━━(゜∀゜)━( ゜∀)━(  ゜)━(  )━(  )━(゜  )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━━!!】

「なんでそれ知ってるんだよ、お前は・・・ネラーかよ」

【勉強しました! とう!】

「うぉっと。そんなの覚えるなよ。バカになるぞ?」

【えへへへうふふふふ】

「・・・」

【でゅふふふふふぐふふふふ】

「大丈夫か、お前?」

【くんかくんか・・・スーハ―、スーハ―】

「・・・ホントに大丈夫? ってヨダレ付けんなコラ!」

『バチン!』

【ぐふぅ・・・あれっ?】


すでに危ない状態になってるアマテラスを強引に引き離して額のド真ん中にデコピンを喰らわせて正気を取り戻させた。


【ごめんなさい。久しぶり過ぎて嬉しくてテンションあがっておかしくなってました】

「久しぶりは良いけど、俺がゴッデス様経由で送ったアイテム類や金は本国に戻してあげたのか?」

【さっき武器・防具・アイテム・お金も全部送り終えたところだから大丈夫なの。ありがとうね、真一お兄ちゃん】

「まぁ可愛い妹からの頼みだったからな。これでもけっこう疲れ・・・」

【ツンデレお兄ちゃんのデレ期がキタ━━━(゜∀゜)━( ゜∀)━(  ゜)━(  )━(  )━(゜  )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━━!!】

『いい加減にしなさい、バチン』

【ぎゃん・・・ごめんなさい】

「ったく、変な事だけ勉強熱心なんだな・・・」

【変な事じゃないですぅ~、けっこう重要で楽しい事なんですぅ~】

「ウザっ、変な話し方すんなよ・・・それでカレンの結婚のお祝いは何をあげたんだ?」

【真一お兄ちゃんに聞いてもらえるのを今か今かと待ってました。カレンお姉ちゃんにあげた祝福は2つです。1つはアイテムボックス(大)】

「おぉ、さすが転生者」

【それはあるね。カレンお姉ちゃんは特に魔法属性値の低い犬獣人なんだけど、転生者だからステータスの数値的には亜人並みの数値があるからね。もともとゴッデス様からアイテムボックス(中)を頂いてた事でもあるしね】

「ふむふむ」


【それでもう一個の祝福は・・・生活魔法です】

「・・・は?」

【だってさぁ、カレンお姉ちゃんに何か欲しいスキルはありますかと聞いたら、真一お兄ちゃんとのHで格闘技系のスキルが覚醒しまくってて、もういらないって言われちゃったんだもん】

「・・・」

【それで生産系でもなんでもいいよって言ったら生活魔法でいいって、魔法が使ってみたいって言われちゃったんだもん】

「それだったらアマテラスの得意魔法の回復とか風魔法ぐらいつけてやればいいんじゃないの?」

【それはあげるって私は言ったんだけど、そんなにいらないって断られちゃった】

「ほー、遠慮して辞退したんじゃなくてホントにいらないんだな」

【そうみたいね。真一お兄ちゃんには報酬は別に今は欲しいモノがないなって2回も断られるし、カレンお姉ちゃんにはそんなにいらないって言われるし・・・私っていらない子なの? ・・・ブツブツ】

「まぁ、そんなに気にすんなよ・・・」

【うん、そうする!】

「いや、ちょっとは気にしろよ」

【ううん、忘れてしまってそんな事は無かったことに・・・】

「無かった事には出来ないからな? 俺はアマテラスに貸し2つあるんだからな? 忘れたフリでもしたら頼みごとは今後シカトするからな?」

【あう~、ごめんなさい】

「じゃあそろそろ帰る時間だな。また今度なアマテラス」

【あぁ~~、真一お兄ちゃんが行ってしまう~・・・あ! そういえば・・・真一お兄ちゃんが結婚すれば、教会に結婚の報告に必ず来るんだから、次から次へと美女を真一お兄ちゃんに送り込めば・・・エッチな真一お兄ちゃんの事だ・・・どんどんハーレム・・・これはいい・・・から】


光に包まれて消えていくアマテラスが危険な事を呟き始めて・・・


「ちょっと待てコラ!」

「ふあああ」

「あぁ、ごめんなさい。申し訳ないです・・・これお詫びです。美味しいですよ?」

「あっ、ホントだ。甘くて美味しいです・・・ありがとうございます」


俺が意識が戻った時に反射的に大声を出してしまって、たまたま近くを掃除していた若い見習いシスターがビックリして泣きだしそうだったんで・・・口封じのためにも、ほかほかのタイ焼きをあげたらハムハムとお礼を言って食べてくれた。

助かったな・・・でも、こ、これは餌付けじゃないから・・・

俺も食べながら雑談してると嫁達が次々と意識が戻ってきてみんなでタイ焼きを食べてから、教会に500万Gを寄付して、次の目的地に向かってキャンピングバスに乗り込む。

お次は冒険者ギルドにカレンの復活登録と早乙女遊撃隊の加入手続き。

カレンと一緒に俺・アイリ・ミー・クラリーナの5人で冒険者ギルドの中に入っていくと、ギルド内が騒然とし始める。

何しろ冒険者としての活動を停止していたSクラスの冒険者カレンが緊急事態で呼び出されたわけでなく、自分から冒険者ギルドに10年ぶりに顔を出したって事は『冒険者復活して活動を再開する』以外には考えられない事だからな。

慣れ親しんだような雰囲気を纏って歩くカレンが足を止めて受付の初老の男性に話しかけた。


「カレンさん、お久しぶりですね。今日来ていただいた用件は冒険者復活でよろしいですか?」

「お久しぶりですね、ドミニクさん。冒険者復活と登録名変更、それとしん殿のチーム早乙女遊撃隊への加入手続きです」

「登録名変更ってご結婚されたのですか?」

「ハイ。この殿方が私の『だぁーりん』の早乙女真一様ですわ」


カレンが隣に立ってる俺の腕を両手で抱き付いてきた。

アイテムボックスからステータスカードと金色に輝くSクラスの冒険者ギルドカードを提出する。

俺はステータスカードのカレンの名前を見たが『劉・ステファニア・カレン』という名前から『早乙女・劉・カレン』という名前に替わっていたので驚いた。

名字が早乙女になってステファニアの方が消えるんだ・・・俺にはよく分からない法則があるのかな・・・カレンにも聞いてみたがよく分からないようなので放置だな。

受付横のソファーにカレンを座らせて手続きを開始する。

俺はボケッと立って外を眺めてると俺より少し身長の高い生傷まみれの筋肉隆々の厳ついオッサンが来て話しかけてきた。


「おいおい坊主、良い女たくさん連れてるな・・・俺にも1人と言わずに全部おいてけ」


俺は感動していた・・・とうとう来たよ、このテンプレ。

目にうっすら涙をためながら上の天井を見て涙がこぼれないように目をつぶった。

異世界に転移してきて43日目にして初の『女置いてけ』さんだった。

いつか来ると信じて待ってたが・・・長かったな。

感動してる俺の横で話は進んでいる。


「しん君知ってる人? って、わけないわね。なんかトリップしてるし」

「体中に生傷がついていて凄い迫力ですね」

「クラリーナ、これはね『ヘタレの生傷男』って言ってねぇ、恥ずかしい部類に入るのよ。カレンさんとか真の腕利きと呼ばれる人達は傷痕に残っちゃうような傷なんてしないのよ」

「そうなんですか?」

「うん、そうよ。ねぇカレンさん・・・」

「お前ら、可愛いと思って調子に乗りやがって・・・」

「なんですか? うるさいですね・・・って、もしかしてグリゴリー君ですか? 久しぶりですね」

「か、カレンの姐さん! おおおお、お久しぶりです!」


カレンの顔を見て筋肉ダルマが大声で叫びながらペコペコと頭を下げ始めたので、俺はトリップから帰ってこれたが・・・筋肉は走って外に逃げていった


「ふぁ! あれ? 俺って君に絡まれてたんじゃなかったっけ?」

「サーセン、したぁ! で、では自分はこれから用事があるんで失礼するッス」

「なんだったのでしょうか、あれ・・・カレンさんのお知り合いの方ですか?」

「はい・・・私と同い年のグレゴリー君ですよ。20年前に何度か一緒に依頼をこなした事がありますね」

「へー、でも走って逃げちゃったけど・・・カレン、追わなくていいのか?」

「『逃げ足』はグレゴリー君の得意技ですからね。いつも外で魔獣と対面した瞬間にぴゅーっと・・・」

「はぁ? カレンさん、それでも冒険者が勤まるの? 仕事を選ぶ必要があるんだけど」

「まだ冒険者の服装をしてましたし、傷も増えてたようですから・・・アイリの言うように仕事を頑張って選べば自分1人が生きていくぐらいだったら何とかなるのではないのですか?」

「な、なんかすごい世界ですね・・・傷まみれって一口に言っても色々な事があるんですね」


冒険者の闇をクラリーナと俺が垣間見たところで、カレンの手続きはすべて終わったのだが、冒険者ギルドシグチス支部ギルドマスターから呼出しに来た職員に促されて、ギルドマスター室に行ってみんなで話を聞いてくることになった。

ギルドマスター室に入っていくとソファーに座っていた狼獣人が席を立って挨拶してきた。

流石に女性とはいえ狼獣人なのでとにかくデカい。

身長はゆうに2.2m以上はあるだろうし、元冒険者らしく横幅も体の厚みもかなりあって縦にも横にもかなり大きい印象がある。


ギルマスはカレンの昔のチームメイトだった元冒険者で女性の大剣使い『ディアナ・ハイデルベルン』


10年前にカレンが自分のチームを解散させて冒険者を引退し、イニエスタ町に工房を作ってアイテム作り職人になってしまった。

ディアナさん自身も結婚して出産するために冒険者ギルドの職員に就職したんだが・・・

元々は俺が冒険者ギルドマスターの緊急会議で脱糞させたエルフ『ノラギス・サザール』が、シグチスの冒険者ギルド・ギルドマスターを長年独占していた。

ディアナが就職して後で青木勘十郎の起こした冒険者ギルドを揺るがすクーデターがあって、証拠不十分とはいえノラギスの身分はシーパラ本部預かりになり更迭されてしまった。

その影響で元Aクラスの冒険者だったという理由のみで、なぜかディアナが持ってるカリスマ性をあてにされて、周囲に押し上げられてギルドマスターに就任させられてしまった被害者だった。

強制的に座らされたギルドマスターという職に不満タラタラらしい。

何しろノラギスの関係者がちょいちょい嫌がらせをしてきたみたいだし・・・アイツしつこそうだからな。

それでノラギスを俺がギロチン送りにしてやって天上天下商会も潰したはずだが、ノラギスの関係者の中でシグチス警備隊に金を払って逃走に成功した奴らもいたようで、他の街に逃げることもなくそのままシグチスに住んでいたというのは、いかにシグチスという都市が腐っていたのかを物語ってる。

流石に権力も金も失った逃亡者たちはディアナにちょっかい出す余裕はなくなったが、現れた仇敵と言える俺の登場で地下に潜って活動し始めた。

ヤツラの足取りが消えてしまってるとディアナから教えてもらった。


「それで冒険者・早乙女真一と結婚してカレンは冒険者復活をしたのか・・・羨ましい。私もそろそろギルドマスターを引退して冒険者に戻りたい」

「ディアナが冒険者復活をして、旦那様とお子様は許していただけるのですか?」

「許すも何も・・・息子ももうすぐ9歳だし、旦那は私とは逆に『冒険者を一時的に休業して冒険者ギルドで働こうかな』なんて勝手な事ぬかしてんのよ。あちこちの場所でさんざん女遊びしてたくせに、今まで子供と遊んだり触れ合ったりする暇がなかったってぼやいてるわ」

「あらら、相変わらずですねぇ、あのお方は。私も2回は口説かれたことありますし」

「あらミーもなの? 私も2回口説かれた思い出がありますわね・・・アイリは一回本気で揉めた事がありましたよね?」

「そういえばありましたね・・・思い出しました。ディアナさんと付き合ってると、ディアナさん本人から聞いてると言ってるのに『それでもホントに好きなのはお前だ』とかいって口説いてきたんですから。あれはさすがに節操なさすぎで腹が立ちましたね」

「あれは病気ね・・・不治の病よ、治る見込みもないわ。そろそろ息子の手もかからなくなってきた年頃だし、あの男を本気で捨てちゃおうかと悩んでるのよね。たまにしか帰ってこないオジサンに息子もまったく懐いてないから」


・・・アマテラス、聞いてるか? これが世間一般の女性の意見だよ。

全部本気の意見じゃないとは思うし、冗談も混ざってるのだけど・・・妻や子がいるくせに女の子を口説いてばかりいるとこうなってしまう見本みたいな男らしいぞ?

だから、俺に会いたいという一心だけ女を送り込んでくるなよ?

【ぎくっ】

ギクッじゃねぇーって。ちゃんと遊びに行ってやるから・・・

【やばっ・・・】

やばってなんだよ。何しでかしたんだお前は・・・

【・・・】

くそっ、返事もしねぇ・・・なんか女がらみで嫌な予感がするんだけど。


俺が脳内でアマテラスの会話をしてる間も嫁4人とディアナさんで旦那の愚痴で盛り上がっていた。

チャラ男か? と聞きたくなるほどの全方向ナンパマシーンとなってる様な旦那さんだった・・・違う意味で初志貫徹してて男として生まれたからには一度やってみたい事ではあるが、社会的は信用はマイナスに陥るので真似する事は出来ないな。

一度として地に落ちた信用は元に戻すだけでも多大な労力と長い時間を必要とする。

女を口説いて、ただヤルだけならイメージがマイナスからの方が口説きやすかったりもする・・・マイナスから、ほんの少しだけプラスになる様な事をすると『良い人』ってイメージに激変しちゃうからな・・・けど、社会的信用を無くしてまで女を口説きたいとは思えないし。

行きつく答えは『人それぞれ』って事になるんだけどね。

なので心のどこかで旦那さんの事を『羨ましい』って思う気持ちは、ほんの少しなんだけど確かに存在してる・・・メリットとデメリットを考えるとやらない。


15分ほど雑談して最後に俺を呼び出しした理由を聞いてみたら、最高評議会から冒険者ギルドへの相談という名前の通達があった。

『シグチスにおいて悪人撲滅をし続ける早乙女真一氏を冒険者Sクラスへ昇進を推挙をする』

という最高評議会の要請で、アマテラス様からのご神託が下されてるようだ。

以前から冒険者ギルド内の幹部会議でも早乙女真一の昇進をすでに検討していた事もあって、今日の早朝7時に緊急ギルマス会議が開かれ、全会一致でSクラスへの昇進が決定された。

なので昇進の授与式をしたいという事で俺の都合を聞きたかったようだ。


「授与式って必ずしなきゃいけないんですか?」

「早乙女さん、どういう事なんでしょうか?」

「俺ってどこかの金持ちから20億Gの賞金が懸けられているんですけど・・・カレンの時みたいに大騒動になるのが目に浮かぶのですが」

「あぁ・・・それは考慮されてないわね」

「うへぇ、あれはもう2度としたくない経験です。考えるだけでも気が滅入ってきてしまいますわ」

「SSクラスじゃないんですけど教会だけで出来ませんか? ケミライネン家と角館家に賞金首にされてるので安全を考慮してって形にすれば、Sクラスへの昇進は明日にでもいいですよ」

「なるほど・・・それは面白そうな提案ですね。批判はシーズの2つ家に押し付けることができますし、準備も簡単に済みますのですぐにでも可能ですね・・・大至急、本部に連絡してみます」


ディアナはそういってギルマス専用の本部との通信室へと行ってしまったので、俺達はしばらく冒険者ギルドシグチス支部ギルドマスター室で待機させられる事となった。

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