畳を貰ったっす。
1・12修正しました。
そこからはまた面倒なお礼の話になってしまう・・・が、しかし今回は違う。
俺は欲しいものがある! フッフッフッフ・・・
『畳をください』
「はぁ?」
・・・1分ほど俺以外の全員がフリーズしてしまった。
「ダメですか? 足りないなら金を払ってもいいです」
「いやいやいや、妻の命と妻の親友の命、それだけでなくイニエスタ商会の危機まで救っていただいた方のお礼に畳って・・・ありえないのですが」
「でも俺は畳が欲しいんです。金もアイテムもたくさん持ってますし・・・ましてや先祖代々伝わる家宝なんて必要ないです・・・畳以外に何もいりません」
「必要ないですか・・・それで畳はいかほど必要ですか?」
「そうですねぇ・・・最低でも15畳は欲しいですね」
「15畳って・・・30畳までならすぐにでも渡せますけど」
「では30畳ください。それに今回の救出劇はアマテラス様の依頼でしたものですから。アマテラス様に感謝してくださいね。俺はアマテラス様から別途で何かもらえるって聞いてますので」
「あぁ、そういう事なんですか・・・わかりました。では家族を救っていただいた感謝の気持ちを教会に寄進させていただきます」
「ぜひ、それでお願いしますね」
凄く強引に話を決めてしまった。
俺は執事に連れられてイニエスタ家の裏庭にある倉庫に行って、さっそく30畳の畳を貰う事にした。
補修用の素材もあったので藺草も麻糸も分けてもらったし、藺草を販売している商会の店のある場所も執事に地図を書いてもらって、紹介状まで貰ったので俺には大満足だ。
一緒に倉庫まできたイニエスタ家の面々はしきりに首をひねってるが、俺が満足そうにニコニコしてるのでやや不満が残りながらも納得はしてくれたようだ。
『いやいやいや、何か違う。何かがおかしい』
と、チェスターがウンウンと唸りながら呟いてるが俺はテンションが上がり過ぎて気にもならない。
それからイニエスタ家のリビングに移動してシャテルの7才の娘と5才の息子にも挨拶をして、シャテルの家族と共に抹茶とお饅頭を楽しみながら雑談して楽しい時間を過ごす。
雑談をしてみんなで笑いあってるとチェスターも途中から吹っ切れたようだな。
一緒になって大爆笑してる。
雑談の時に教えてもらったのだが・・・このイニエスタ家本宅の和風建築は、シグチスの南側にあるイニエスタ町から南にある村などではごく当たり前の建築物で、古代からの言い伝えでは和風建築と畳は転生者によってもたらされた伝統的なモノらしい。
それで古代から続く『大工ギルド』という組織が職人ギルドの中にあり、和風建築物の一切を取り仕切っていて、シーパラ連合国内の高級な道場建築などでは定番と言えるのが和風建築。
それと強烈な和風建築マニアもそこそこいるようで、時代が変わってもマニアな彼らが一定数以上いるおかげで大工スキルや畳の製法が上手く受け継がれてきたのだろう。
料理スキルや結界師の知識と違って古代にやってきた転生者がもたらした大工の持つ技術や畳の製法などを秘密にして独占しようとしたりしてないので上手に受け継いできている。
ただ、畳は全て手作りの為に高級品となってる・・・以前は1畳で50万Gもしていたようだ。
イニエスタ家と畳工房の努力で20万Gまで価格を抑えこめるようになったが、まだまだ高級品と言える金額なので、和風建築=板の間という図式で畳は金持ちが趣味で揃えるものという事が常識になってる。
それと雑談ついでに『なぜイニエスタ家では犬獣人しか雇ってないのか?』という俺の疑問にセドリックが答えてくれたんだが、ただ偶然が重なったというだけで、それほど深い意味はないようだ。
それに犬獣人だからといって群れる習性はないと教えてもらった。
このイニエスタ家を訪れた人は必ず聞いてくる定番の質問らしくてシャテルの家族全員が苦笑してた。
雑談も一区切りついたので俺はそろそろお暇させてもらう事にする。
シャテルの護衛をさせていた師匠ゴーレムをアイテムボックスに入れてから、同じくアイテムボックスに入れていた早乙女邸専属メイドゴーレムのクロと一緒に転送魔法で早乙女邸に送り帰還させた。
シャテルの家族全員とカレンと握手をして俺はイニエスタ家を後にする。
ホップボードに乗って早乙女商会シグチス支部に帰ってくると、早速俺を襲ってくる集団がいた。
そういえば俺って賞金首になってるんだったな。
「早乙女ぁ~~! 死ねぇ~~!」
死ねって言われてもなぁ・・・こんな攻撃当たったところで傷もつかないし。
もちろん俺がワザワザ避けるという動作をする事もなく、正門前に立って警護中のシグチス・ユーロンドによって排除される。
早乙女商会シグチス支部は聖騎士団とシグチス警備隊のパトロールコースになってるので、パトロールにきた彼らに回収されるまで、全身の骨をイヤというほど粉砕されて這う事も出来ないぐらいの瀕死の重傷になるまで、フルボッコにされる運命しか彼らには残ってない。
彼らは逮捕されてから契約してマッサージゴーレムの治療を受けるまでこのまま放置される。
7人ほどの賞金稼ぎが俺に触れることもできずに1体のユーロンドによってフルボッコにされるシーンは見飽きてるので、いちいち振り返りもせずに俺は早乙女商会シグチス支部の通用門から中に入っていく。
ビルドゴーレムからの念輪報告で裏スパイギルド跡地とカレンたちが捕えられていた裏組織の跡地・・・2つの建物全部を改築して任侠ギルドの寮にしたという報告があった。
遠見魔法で確認したが元々は倉庫だった建物を大幅に改造して、増えた奴隷達を住まわせるための寮にした。
借金奴隷の寮なので独房に近い様な内部構造をしてる。
食事は食堂を使って自分達が交代制で準備する・・・日本でいう部活の合宿生活に近いだろう。
そんな生活でも奴隷の待遇の中では破格の生活だとヘルプさんから教えてもらう。
他ではタコ部屋らしいからな。
任侠ギルドには奴隷と言っても2種類いる。
こちらの独房の方はトイレも風呂も個別に設置されてて、内部職員として事務仕事などスキルを持ってる借金奴隷職員用の待遇となってる。
もう一つの奴隷は下働きしかできない奴専用・・・あえて長期間の奴隷にするために下働きしか”させていない”っていう奴隷も含んでいる・・・こちらの寮の方はよその奴隷と差がない待遇でタコ部屋の3段ベッドで大部屋に9人が詰まって生活。
トイレも風呂も共同の完全タコ部屋の軍隊の様な生活。
食事だけは同じ待遇で同じような食事が食べられるがそれ以外の部分は差が激しくなる様に設定してある。
他にもヘルプさんの報告があってシーパラの早乙女工房でも襲撃騒ぎがあったようだ。
しかし襲撃の少し前に俺に手紙を渡しに来た最高評議会議員のイワノス・ゲッペンスキーがいて、メイドゴーレムに手紙を渡して返事は後日でいいよと伝言してちょうど帰ろうとしていたところだったので、イワノスとユーロンドによって鎮圧されている。
こちらは戦闘奴隷を使った襲撃だったので奴隷ギルドの人間が賞金欲しさに襲撃をかけてきたみたいだという報告も貰ってる。
イワノスが最後に残した言葉は・・・
『ここには獲物が向こうからやってくるんだな。実戦練習代わりに時々来てみるかな』
だった。
早乙女工房の専属メイドゴーレムの空からアイテムボックス経由で手紙がいくつか送られてきた。
イワノスからの手紙は左手の傷が完治した後のリハビリが終了したので手合わせを願いたいというものだった。
これは急ぐ案件でもないし俺がシグチスからヨークルに戻ってきてからでも良いらしく、返事はいらない様なので・・・イワノスからの報告に近いな。
マツオ・ユマキからの手紙は販売が延期になって遅れていた早乙女式馬車が正式に今日より発売された。
新型の早乙女式馬車はすでに注文が殺到して予約販売になっている事と、ガルディア商会から早乙女式コンロと早乙女式冷蔵庫も今日より発売になってる事の報告だった。
当面は早乙女式馬車は各都市にある乗合ゴーレム馬車などの行政側の注文を優先して販売するようなので、一般の販売は完全予約制で発売半日で3ヶ月待ちとなってしまってる。
俺がキャンピングバスを乗り回していたヨークルでの注文が一番多かったようだ。
増産する計画を前倒しして対応をすると手紙には書かれてる。
ナディーネ・シーズ・ウォーカーからも手紙が来ている。
最高評議会の承認と評議会の承認も得られて大森林線路復活プロジェクトは無事スタートできたようだ。
線路跡の先行調査によって、旧線路沿いに設置してある結界用の魔石とミスリル棒も無事発見できて回収出来た。
長年放置されているので結界を再び張ることは出来ないが材料としてならそのまま使えるので、俺がレンタルしたアタッシュケース型の専用転送器に入れられる様に作り直すだけで良く、計画していた材料費は大幅に削ることができそうだと喜んでる。
先行して建設中の奴隷用の仮設住宅建設も順調に進んでいる事などが書いてあった。
俺が行動することで犯罪組織が壊滅して奴隷が増えてるのと、材料の確保の負担が減ったことで線路復活計画は大幅に短縮されそうだと書いてあった。
それに息子のフィルマン・ウォーカーがゴーリク夫妻と共に俺の作った『もふもふ天国』に毎日通っているようだ・・・これはメイドゴーレムからの報告もあって俺も知ってる情報。
もふもふ天国の中にいる『愛玩ゴーレム』こそフィルマンとゴーリク夫妻が思い描く理想的なゴーレムの平和利用の形ではないかという事を、3人が店内で熱く語り合ってる姿は周囲の噂になってる。
連日午前中のもふもふ天国が空いてる時間の10時から12時までを店舗で過ごして愛玩ゴーレムの観察をして、午後からは工房に戻って3人でガチャガチャと試行錯誤して愛玩ゴーレム造りに没頭しているんだそうだ。
ゴーレム造りの天才と呼ばれてるゴーリク夫妻もいるので、そのうちに形になってウォーカー商会から販売される事となるだろうが半年以上はかかるだろうな。
俺もメイドゴーレムも見学するのは良いけどヒントすら教えるつもりは全くないから、これから何度も失敗を繰り返して作り上げていく事になるだろう。
ゴーリク夫妻と共同で作っていくので半年程度で済んでるけど、普通だったら10年を超える。
ゴーリク夫妻は戦闘用のゴーレムを製作した経験は多いだろうけど、愛玩ゴーレムみたいな”会話”機能を搭載したゴーレムを作った経験がないだろうから半年ぐらい掛かると予想してる。
俺からすればまずはDOLLの研究から始めた方が良いような気がするけど、DOLLは希少価値が高すぎて現物がないから研究できないのかな?
早乙女工房に来た手紙はこの3通だった。
それ以外にも招待状は何通か運ばれてきたようだが、メイドゴーレムに知らない人からの招待状は受け取りすら断らせて貰ってる・・・どうせ行かないからな。
ただいまの時刻は17時過ぎ・・・ヘルプさんからの報告で、おやっさんとおかみさんが親戚の壇ノ浦ラシェルを見舞うために昨夜からシーパラ大河高速連絡船に乗船して移動していたのだが、もうすぐ首都シーパラに到着するようだ。
おやっさんに念輪で連絡をとると4・5日は壇ノ浦家本宅に滞在させてもらって、ラシェルの体調次第だが蒸気機関高速鉄道に乗って壇ノ浦家の家族と一緒にドルガーブに遊びに行く予定だと教えてもらった。
最近はゆっくりする暇もなく仕事の合間に視察もしていたので、いい機会なので羽を伸ばすようだ。
おやっさんには内緒だが忍が2体陰から護衛をするために尾行している。
まぁ、けっこう勘の鋭い所もあるおやっさんなので俺が護衛のゴーレムをつけてる事は気付いてると思う。
シグチスは明日の午後にレオーン・ゲッペンスキーが制圧部隊として上陸するまでは、シグチスの街が危険すぎて嫁達を呼ぶこともできない。
今のタイミングで嫁達を呼び寄せても外で遊べないから意味ないしな。
明後日には街の中を買い物して遊べるようにと頑張ってる最中だ。
シグチスはシーパラ連合国と外国とを結ぶ南回りの交易路の拠点となっている都市なので、海を渡ってきた輸入品の外国産のモノが多いだけでなく、海外の巨大商会が店を出してるのがドルガーブ以上に多い。
今までは規制というものがあってもそれを取り締まる係官の裁量がゆるゆる過ぎて犯罪者を多量に呼び寄せていた。
犯罪結社の様な商会が多すぎて今から規制するのは苦労が多いが非人道的な犯罪をなくすためには仕方がない。
俺がイーデスハリスの世界に転生してきた初日に壊滅させた『草原の暴風』の様な犯罪者集団の盗賊を、入り口で規制しないといけない。
俺がゾリオン村に入った時に聞いた『商業で成り立つシーパラ連合国において”犯罪者以外は”みんなお客さん』というところの犯罪者の入国を規制したり、中に入った犯罪者を取り締まれてない現状が今の状況を作っているんだろう。
シーパラ連合国は一旦中に入ってしまえば、人里離れた場所であっても自給自足できてしまうほど、作物が簡単に収穫できる。
世界中の国の中でも国土が広く収穫できる作物が国民が必要とする以上の量を自然の恵みだけで賄えてしまうのがシーパラ連合国。
ウェルヅ帝国vs白虎の戦争において国民が数日間で1/10以下に減らされてしまった影響が今も残ってるという証拠だろう。
俺が大森林の奥地で簡単に早乙女ゴブリン村を作れるのも、国土の中に余裕な部分が大きく残ってるからだし、これが他国を追われた犯罪者集団や亡命政権が簡単に国の中に勝手に国を作れてしまう事実がある。
だからこそ入国管理官は賄賂と接待で大儲け出来る・・・
早乙女商会シグチス支部の執務室の肘掛け椅子の背もたれに体を預けながら様々な事を考えて、並列する思考でヘルプさんの報告を聞いている。
ゴブリン一郎からの念輪連絡でゴブリン村に襲撃してきたゴブリンを吸収して、配下のゴブリンが100頭以上増えたようだ。
早乙女ゴブリンの配下の証である魔道石英ガラスのネックレスをアイテムボックスで作って一郎のアイテムボックスに300個ほど送った。
ビルドゴーレムを新たに3体作って『任侠ギルド』の登録をしてから転送魔法で派遣して、早乙女ゴブリン村をセバスチャンが管理していた畑ごと周辺を取り囲み、早乙女ゴブリン”砦”へと拡張するように指示を出した。
ここの大森林地底湖周辺はウォーカー家が頑張って復活させている路線とは違う方向にある。
ウェルヅシグチスから100km以上離れた南側で、冒険者も入ってこない様な大森林の中の奥地にあり周辺には川も道もないので・・・こんな辺鄙な場所に俺が勝手に砦を築いても誰も気が付かないだろうという計算がはたらいてる。
それに大森林地底湖周辺には、みかみの流した涙の影響がまだ色濃く残っていて、植物が巨大化しているだけでなくて収穫物も多いし、何しろ俺の大好きな釣りが楽しめる場所がある。
こんな場所に拠点を築くのも悪くない。
ビルドゴーレム3~5号は転移魔法も可能なアップデートで大草原北側の山岳地帯から岩を持ってきて、頑丈な砦を作成させることにする。
地球みたいに飛行機が飛び交う時代じゃないので上空から見ることができないからできる事なんだけどな。
まぁ急いでないので3日ほどかけてじっくりと砦を作ってもらう事にする。
それと配下のゴブリン達の身長や体型のサイズが全員ほぼ一緒なので俺のアイテムボックスに余っているワイバーンの革鎧とブーツを数百セット作って制服にする。
武器はオーガ鋼製でミスリルコーティングした短剣&バックラーの様なスモールシールドのセット。
一郎たちにはゴブリンの教育も任せて簡単な会話ができるようになるまで頑張ってもらう。
今夜も任侠ギルドと共にシグチス裏社会の非人道的組織壊滅に俺は活動することとなるので、今のうちに仮眠をしておくことにした。
早乙女邸に帰還して風呂に入ってサッパリした後で寝室で本格的な仮眠をする。
仮眠から起きたら夜の9時を回っていた。
嫁達がまだ帰ってきてなかったんで念輪回線を繋いで話を聞くと、今までアゼットダンジョンで夜間の狩りをしていたが、劉・ステファニア・カレンからの念輪連絡で今夜は早乙女邸でみんなで飲み会をするんだそうだ。
セバスチャンが全部送り迎えをしてくれるので俺はこのままここに待機していてほしいらしい。
そうこうしてるうちに早乙女邸に来客があってアイリの母親の『カタリナ・クリストハーグ』と『ドミニアン・クリストバーグ』夫妻がアイリ達の招きで早乙女邸にやってきた。
それと『ローグランド・ペスカトーレ』真偽官夫妻も子供を連れてやってきてこれから早乙女邸でパーティーなんだそうだ。
俺はサマーニットシャツとチノパンの普段着に着替えて慌ててリビングに降りていくと、マリアとクロの手によってパーティーの準備はすでに終わっていた。
今夜は裏庭の芝生でバーベキューパーティーをする計画らしい。
客間に行ってペスカトーレ夫妻とクリストハーグ夫妻に挨拶をする。
おかみさんに作ってもらった龍布の下着と服をローグの3人の子供たちまで装備してる。
みんなと挨拶を済ませ雑談してて分かったのだがローグとドミニアンはヨークルで俺の関与したここ一連の騒動の功績を買われ、以前からの働きもあるので優秀さがさらに認められて出世していて、率いる部下を育成していくだけでなく幹部育成すら任せられていたようだった。
ローグの場合は元から名声を得ていた事もありヨークルの真偽官の責任者にまで出世することが内定していて、ドミニアンも今は司教になっているが、じきに司教長となってヨークル教会のトップになるという事が内定してるらしい。
2名とも首都シーパラに呼ばれたが家族の事もあって断ったのでこういう形になったようだ。
元々この2人の場合は俺は関係なしでも超絶有能コンビだからな。
カリスマ性も高いので、ちょっと目立っただけですぐに出世できるだろう。
ローグには広い家に引っ越せてありがとうと、改めて礼を言われる。
ローグの奥さんもキッチンが大きくなって嬉しい、ローグの息子たちも自分の部屋ができてうれしいと言って俺にお礼を言ってくれた。
そこまで言ってもらうと提供した側の俺もうれしい。
ローグの奥さんには給料も大幅に上がるので家賃を増やそうかと言われたが、俺に家賃収入で儲けようという気がないので断った。
ローグの子供たちは優秀なので教会から奨学金が支払われる事になってるし、まだ2ヶ月の小さい末娘は先天的真偽魔眼持ちという事で真偽官ギルドから給付金まで貰える。
教育資金も必要なくなったのでという奥さんからの申し出だったが、俺にはこれ以上の金を仲間から請求するつもりはない。
子供たちはすでに眠そうなので早乙女邸の2階にあるゲストルームに寝させることにした。
明日の朝に家に送ってあげるので今夜は久しぶりのローグ夫妻に夫婦水入らずの時間をプレゼントしてあげてもいい。
2ヶ月の娘の世話はベテランメイドスキルを持つマリアもクロもいるので何の心配もいらない。
それでドミニアンとカタリナに恥ずかしそうに教えてもらったが・・・アイリに兄弟が出来たようだ。
アマテラス様からのご神託があって息子ができたと教えてもらった。
そこにちょうど冒険を終わらせたアイリ・ミー・クラリーナが帰宅してきて、一緒にやってきたカレンまで加わって、全員からおめでとうと祝福されてさらに照れて真っ赤になってしまったカタリナさんは本当にクラリーナに似てるな。
カタリナさんは今は44才、出産するときは45才と高齢出産になるから心配でアマテラスに確認したら、カタリナさんには無事に出産できるように加護を与えてあるので、あともう一人出産出来ますよという事はすでにクリストハーグ夫妻には伝えてあると教えてくれた。
皆にカレンを紹介しようとしたら全員が面識があって俺だけが知らなかったようだ。
さすがにショックを受けたが、俺がこのイーデスハリスの世界に来て42日・・・みんなとは歴史が違うから当たり前だなと気を取り直して、早乙女邸の裏庭に移動して焼肉パーティーを始める事にした。
俺のアイテムボックスからクロのアイテムボックスへ食材は大量に送ってあるので、肉も野菜も魚介類も次々とクロの手で焼かれて皿の上に並んでいく。
みんなは酒を飲んで談笑しながら俺だけ晩御飯を食べてない様なのでまずは食いまくる。
シグチスに到着してからの連日の闘争で俺の中でドロドロと溜まっていたストレスが昇華していくのがわかる。
シグチスという都市にはまだまだ時間が掛かりそうなほどの金で薄汚れた澱みがある。
というより今この時点でも早乙女商会シグチス支部には襲撃してくるヤツラがいるからな。
20億の賞金首というのはバカタレホイホイとしてかなり優秀なのかもしれない。
ヨークルとシーパラの方はすでに裏社会に多大なダメージを俺が与えていて、裏社会の中でも風俗関係や博打関係は、俺が襲撃しないので被害はほとんどなく通常営業状態で俺と敵対しようという組織もない。
風俗関係でも裏奴隷を使って肉体にダメージが残る様なエグい店舗は任侠ギルドに襲撃させて、ヨークル・マヅゲーラ・シーパラではすでに存在が消えているし通いこんでいた客にもアマテラスの神託を使った聖騎士団の手入れがあって何人かはすでに逮捕されている状態だ。
まぁプレイで済んでいるうちは良いが、行き過ぎは犯罪という事だ。
麻薬関係の組織はヨークル・シーパラからは消えている。
今やドルガーブにすら存在してないぐらいに完全に壊滅された。
ドルガーブの麻薬組織を壊滅させたのは賭博ギルドが実行していて、麻薬組織の情報を流したのは忍を使って得た情報をまとめて俺が流出させただけ。
麻薬組織が残ってる都市はシグチスと最北の都市エクステンドだけ。
エクステンドは元々肉体労働者が多く賭博ギルドが牛耳ってる都市なので麻薬関係の組織は入り込んでも裏で細々としか活動できない。
政府公認の賭博ギルドは多数の闘士を抱えていて犯罪者&麻薬の組織壊滅を目指すという政府の目的があり、全面的に協力することでいろんな優遇措置を受けてる。
賭博ギルドは闘技場の猛者たちが中心となって、麻薬組織を力で壊滅させに来るので旨味が少なすぎてほとんど入ってきていない。
麻薬を取り扱ってると噂が流れた数時間後には闘技場で第一線級の猛者たちが踏み込んでくると言う噂があると忍からの報告されているから安心だろう。
ただエクステンドは裏奴隷の移動の際の中継地点になっているいるようで、そちらの情報は最高評議会から流されてエクステンドの警備隊によって摘発されると思うが、エクステンドの警備隊が情報をコントロールして逮捕できるのか、情報が洩れて敵に逃げられるのかのテストも兼ねられるのだろう。
その点だとシグチスは最悪だった。
俺が壊滅した数々の組織のシグチス支部にいた人間はほぼ全員が逃げられている・・・警備隊や国軍の情報が売られている為だし、逃げることもなくそのままシグチスで別の組織を作って新たに活動してるのだから、警備隊も国軍も行政側も犯罪者達とズブズブの関係だという証明までしてるからな。
シグチスの薬関係の組織の洗い出しはすでに終わって今夜まとめて任侠ギルドで全滅させる計画だ。
大きな組織は2つ。
麻薬関係の裏組織が2つ・・・片方はシグチスに古くからある麻薬組織で、もう片方は外国から最近進出してきた大きな組織。
早乙女邸の裏庭でみんなと飲んで盛り上がりながら、並列する思考で今夜の悪党どもの抹殺計画をヘルプさんに手伝ってもらいながら計画を立ててる。
作った計画書は徒影を通じて任侠ギルドのメンバーに配る。
シグチスの街中に広がってる下っ端の麻薬売人や奴隷組織の誘拐犯たちは今夜の襲撃に合わせて、忍と徒影を使って任侠ギルドの手によって壊滅させる。
俺の2つの組織への襲撃も街中の売人と奴隷犯罪者壊滅計画も逮捕はしない・・・死をもって詫びさせてやるだけだ。
どうせ裁判しても死刑になるだけだし・・・ただし奴隷で強制的に働かされていた人達は除く。
奴隷たちは救いステータスカードと犯罪の証拠となるレポートを現場の死体の横に置いておくだけだ。
他の組織に所属しながら裏の奴隷売買や麻薬の販売を手伝っていた”協力者”達は俺が情報を集めてからアマテラスに報告して聖騎士団と警備隊で順次逮捕させていく。
そこら辺の周辺掃除はアマテラス経由で聖騎士団と警備隊で何とかなるだろう。
ここでペスカトーレ夫妻とクリストハーグ夫妻は帰って行った。
4名ともけっこう酔っているので2台のゴーレム馬車は師匠ゴーレムが運転して送っていく。
ローグの子供たちは早乙女邸に泊まっていく。
明日は息子たちをここ早乙女邸から直接魔法学校の方へ通わせて、2ヶ月の娘は奥さんが迎えに来るという約束をする。
ついでにもう一つの部屋にはカレンが泊まっていくようだ。
嫁達と一緒に今から露天風呂を楽しむといって4人で風呂場に行ってしまった。
俺は後片付けをセバスチャンに任せて早乙女商会シグチス支部に転移。
任侠ギルドシグチス支部に行く前にいつもの襲撃者用のサイラスの闇属性甲殻鎧セットにステータスから着替えてから転移魔法で移動した。
任侠ギルドシグチス支部には俺専用の転送部屋を設置してあるので、そこに移動してから歩いてみんなが待ってる会議室に向かう。
会議室にはマナガルムもマティアスもいて徒影も壁際に沿って立っている。
計算していた予定の時間よりは3分ほど遅れたが、ほぼ予定通り会議が始められた。
「お待たせしましたみなさん。では早速はじめましょう!」
俺の到着を待っていたみんなも席について俺の挨拶を皮切りに会議が始まった。
今回の襲撃でマナガルムの率いるAチームとマティアスが率いるBチームに分かれて襲撃をかける。
すでに俺がいない場所でも何度かチームを率いて襲撃をしているマナガルムが率いるAチームは別動隊として待機していてもらう。
俺はマティアスとBチームを率いて2つの組織を壊滅させて情報を引き出し、その情報を元に下部組織や襲撃地点にいなかった組織の人間を襲って殺害させて同時に壊滅させていく・・・今夜でシグチスの裏組織の大きい組織の息の根を止める。
名付けて『終末作戦』とした。
和製英語の方がダサさが倍増してかえって良いと思って付けた・・・後悔はしていない。
「では皆さんに事前にお配りしていた資料をお読みください。今回の襲撃のポイントが2つ・・・1つ目は麻薬組織の関係者は”皆殺し”です。2つ目は出来るだけ”残虐”に・・・これだけです」
「・・・」
「それで襲撃する時系列からの作戦の概要ですか・・・」
説明は10分程度で終わった。
すでに資料は渡してあったので今の会議は確認と気合を入れるする為だけだ。
マナガルムとAチームと徒影1号と2号を会議室に待機させて、俺はマティアスとBチームを率いて・・・まずは古い方の麻薬組織からだ。
こちらはシグチスの南側の巨大な倉庫街の中にある。
深夜の街中を武装した集団での移動するのはさすがに目立つのでマティアスとBチームを率いて転移魔法で移動する。
先行させて探らせていた忍からの報告では内部にいるのは250名・・・そのうち奴隷が215名。
この組織は警備隊に多額の賄賂を渡して麻薬売買の実行犯は奴隷にやらせ、捕まりそうなときは多額の賄賂と奴隷を差出して終了。
時々警備隊の点数稼ぎでも奴隷を渡していたので・・・持ちつ持たれつのズブズブの関係を警備隊と築いていた。
今回俺が警備隊の不正をまとめて引きずり出した事で一気に焙り出されて『組織の存在・組織の行動』が逆に浮き彫りになってきた事で、忍による組織の内定調査を実行・・・そんなプロセスを経て組織の全貌が分かったシグチスの暗部だ。
別のルートからも一斉捜査情報を買っていて裏切り者が出た時でも上手く逃走し、後日裏切り者にはお礼参りを奴隷にさせてる、美味しい部分だけ吸い取って汚れた部分は奴隷にやらせる極悪非道の麻薬密売組織だ。
奴隷は全員を今夜だけ一時的に任侠ギルドで保護して健康状態などをチェックしておくが、何も問題がなければ明日の朝には教会の方に向かわせその後の処置を任せる。
麻薬組織の敷地全域にいつもの厳重な封印結界を張り、奴隷を転送魔法で次々と目の前に呼び寄せて隷属の首輪を解除して健康状態をチェック。
メガヒールやエクストラヒールを駆使して奴隷全員の体調を完全回復させて食事と着替えを渡す。
今回は以前大量に作り置きしておいた豚汁とおにぎり。
もふもふ天国シグチス支店のメイドゴーレム1・2・3号を転送魔法で呼び寄せて食事の世話を任せる。
215名を保護してから大混乱に陥ってる敷地内に入っていく。
マティアスを先頭にBグループが突入した。
ド派手に暴れるために武器はそれぞれの得意武器を渡してあるし、全員がワイバーンの革鎧の制服を着てるので少々の攻撃を食らっても怪我もしないようになってる。
それにこの組織の奴隷215名を除いた残りの35名が組織の人間で彼らは戦闘や犯罪は全部奴隷にやらせていたので何もできない金儲けだけ上手いヤツラだ・・・殲滅戦を開始させる。
マティアスたちは碌な抵抗も受けずに片っ端から瀕死の状態にさせる。
コイツラの犯罪は人にやらせてるので”教唆”となってるので、ステータスカードには表示されない。
コイツラの犯した犯罪の詳細なレポートをかけるのは俺だけだしな。
俺は倒れてるカスどもの知識と経験を次々奪ってレポートを仕上げてからとどめを刺し、犯罪履歴をアイテムボックス内で作成して横に添えていく。
最深部に回って震えている組織のトップとその取り巻きの知識を奪い幹部達の大量の犯罪履歴を作成したら、死体の横に置いて終末作戦の第一段階の完了した。
奪った知識をヘルプさんがまとめて精査してから今日は出勤していない組織の人間の15人の始末と、4つの下部組織の殲滅にマナガルムとAチームを向かわせる。
15人の死体はAチームに同行する徒影がこの麻薬組織の敷地に転送魔法で送らせる。
外部で働かされている奴隷たちの保護は街中に放ってある徒影と忍に任せて、任侠ギルドの寮に送るように指示を下した。
俺は麻薬組織の敷地内に掛けられてある封印と結界を解除して新たに臭気結界だけを施して、この現場から撤退して次の現場へと転移魔法で仲間を連れて跳んだ。
この現場にはもう少ししたら聖騎士団のチームと警備隊の部隊がやってきて捜査を始める事で終末作戦の半分の計画が終了。
次の現場は外国からやってきた麻薬組織で、戦闘員数が300名ほどいる。
ここの現場は内部を遠見魔法と鑑識魔法で内部で働いているヤツラを観察し最終確認を自分でしたが、全員が極悪犯罪や殺人をしてる様なカスどもだ。
犯罪履歴なんて必要ないが・・・ボスと上級幹部連中の知識と経験だけ情報複製でヘルプさんに送り内通者や情報提供者、外部にいる組織の人間や麻薬の売人などなどの情報を探らせる。
ステータスカードに数々の犯罪履歴が残ってるだろう・・・後は皆殺しだな。
俺はいつもの封印結界を施すと後ろに息をひそめて待機してるマティアスとBグループに指示を出す。
「ここは犯罪履歴はいらん。皆殺しだけでいい」
「「はっ」」
「武器を抜け! 突入するぞ! 動く者はすべて破壊しろ! テイムされている魔獣には手を出すな、俺に任せろ」
「「はっ」」
「では作戦を開始する! ド派手に暴れて殺せ!」
「「「ウォ~~!」」」
喚声と共に全員で突入を開始する。
俺は内部にいるグリーンウルフ5頭のステータスにあるテイマーの名前欄を早乙女真一に書き換えて、その場で待機するように指示を下した。
俺はゆっくりと前進してマティアスたちは俺の横から次々と走って目に付く敵を攻撃していく。
Bグループはマティアスが選抜した10人でこの作戦終了後は任侠ギルドシグチス支部の幹部となる候補生たちだ。
年齢も種族も装備してる武器も様々だが・・・裏の地下闘技場で戦い続けてきた猛者の中でもさらに強いといえるレベルの幹部候補たちなので安心して俺は進んでいく。
悠々と進む俺に踊りかかってくる敵はいない。
俺の左右と後ろに突如現れて一緒に歩んでいる徒影3体が、次々と襲いかかってくる敵を八つ裂きにしてしまうから、俺の目の前に出てくることもできない。
矢の一本すら俺に当たることはない。
俺の周囲の安全地帯とは別に阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられているが・・・罪悪感も使命感も何の感情もわかないな。
それと、さすが他国の犯罪者たちだな・・・魔法を使ってくる敵も多くいる。
だけどマティアスも幹部候補たちも不利な戦いの中で知恵と勇気を振り絞って生き残ってきた闘士たちなので怯む様子もない。
ゴッデスの推薦にウソ偽りなしだな・・・これは優秀な人員を紹介してもらった。
マティアスは戦闘もさることながら10人を指揮する能力も高い。
絶妙な指示を出して敵に付け入る隙を与えることなく次々と抹殺していく。
忍3体を最後の守りとして彼らにはつけてあるが必要なかったようだ。
『散開! 待機中のグリーンウルフたちはこっちにこい!』
俺の周りにいて警護してくれていた徒影に指示を与えて徒影達はそれぞれの敵を求めて突き進んでいく。
終末作戦を俺も楽しむ事にする。
グリーンウルフ5頭が超スピードでやってきて俺の後ろに横一列になって並ぶ。
左右の腕に装備してある手甲を胸の前で拳同志を叩きつけてガチャンと打ち鳴らすと、周囲に挑発スキルを叩きつけながら叫ぶ。
『いくぞコラ! ガンガンこい!』
俺の周りを取り囲んでいたカスどもが文字通り飛び掛かってきた。




