シグチスに蔓延する悪を粛清する夜・・・っす。
12・19修正しました。
徒影にマナガルムを連れてきてもらったのはマティアスと引き合わせるため。
ガスは部下5人ほどを引き連れてきてもらってこれから任侠ギルドシグチス支部を立ち上げるにあたって、内勤ができる事務方の人間を揃えてもらった。
ここにいるのは元闘士で事務のできそうな人間は皆無だったので、奴隷だけにさせてもチェックもできない状態ってのは危うい感じがしたので徒影に指示を出して事務方でも教育できるベテランクラスを連れてきてもらった。
マティアスに計算の得意な人を選んでもらってチェック出来るような体制まで、ベテランにはここで数日間は教育してもらう事にする。
この地下闘技場の建て替えは一緒に来たビルドゴーレムが請け負うので、俺のここでの仕事はひとまずここまでだ。
俺が結界封印を解除してからビルドゴーレムが新しく結界封印を張り替えて、俺は早乙女商会シグチス支部の執務室に転移魔法で帰還する。
まだ出勤してくる地下闘技場の職員がいるのでマッサージメイドゴーレムは2体を残して、それ以外の8体は転送魔法でモフモフマッサージ天国シグチス支部に帰還させた。
執務室の自分のイスに座る前にステータスから装備を普通バージョンのサイラスの甲殻鎧に変更して腰のカタナは2本ともアイテムボックスに片付ける。
襲撃と任侠ギルド進出の足掛かりを済ませて戻ってきて・・・今の時刻は夕方6時。
陽はかなり傾いてきて執務室にはすでに魔道ランプの明かりが光っている。
嫁達に今夜の晩御飯を聞いたら今夜は自宅でパエリアを作っていて、今日は味付けに成功してかなり美味しく仕上がったので、時間に余裕があれば帰ってきて一緒に食べようとの事。
隠し味に入れた日本酒がかなり良かったのことだ。
俺も食べたくなったので装備を元の私服に替えて帰宅することにした。
家で嫁達と雑談しながら楽しい夕食。
るびのとフォクサに念輪で連絡を取ると・・・大黒豹数十頭のチームを大森林からグリーンウルフダンジョンに連れてきて、今は馬狩りの準備で忙しいらしい。
嫁達と一緒にワインを楽しみながらパエリアを食べて雑談で盛り上がってる最中に、早乙女商会シグチス支部から念輪が入り夕方になって人通りがある場所なのにもかかわらず、警備隊の受付の人間(カスの方)がやってきて先ほど貰ったここの引き渡し書類に不備があるから今すぐに出頭しろという事を正門前で大声で喚いているらしい。
無論ユーロンドは俺へ報告だけしてバカを監視してるだけ。
ガン無視して正門前に立ってるだけ。
はたから見ると・・・封鎖されてた道場の正門前に昨日までなかった全身鎧に怒鳴ってるオッサンの姿に、周囲の人が興味津々で見てるだけでヒソヒソと噂話をしてる状態らしい。
『何あの人・・・可哀想ねぇ、今日は朝から暑かったから、とうとう・・・』
『おいおい、あんまりジロジロ見るなって・・・』
『でもあの人、警備隊の正式革鎧をきてるわよ・・・』
なんて声が聞こえてくるので余計に大声で喚いてるって悪循環をグルグル回ってる。
ちょっと見たくなったけど今は嫁達との楽しい時間を満喫中。
なので、随時の報告を受けるのではなくて・・・並列する思考でユーロンドの目の部分に遠見魔法&地獄耳スキルをセットしてバカの顔を直接見えて、声も聞こえるようにるようにした。
馬鹿は大声で怒鳴りながら騒いでるが、すでに何を言ってるのか意味不明だな。
唾が飛んでくるし汚ぇーな。
ブチ切れても答えない・・・実は最初にこのバカがやってきたときにはユーロンドは受け答えをしてゴーレムだって事をバカだけが知っている。
しかしバカが大騒ぎして周囲の注目を集めた頃には何も答えなくなったので、余計に馬鹿はブチ切れて大騒ぎ。
・・・通りかかりの人が見ると鎧に向かってブチ切れてるかわいそうな人にしか見えない構図の出来上がりだった。
それも長くは続かなかった。
馬鹿がとうとう完全に切れて腰のカタナを抜きユーロンドを斬りまくり始めた。
全部見てる俺は拍子抜けしてる・・・何このバカの剣技も酷いなコレ・・・旧紫村流道場出身者って実力も知能も、カスしかいないのか?
ここから近いのは警備隊ではなくて教会なので、周囲のギャラリーから呼ばれた聖騎士団が現れた。
バカは焦り走って逃走しようとしてユーロンドに取り押さえられて御用となった。
ユーロンドが突如動いてバカを取り押さえたので今度はギャラリーから驚愕の声が上がる。
聖騎士団の団員はすでに俺のゴーレムだと理解してるので話は早い。
初めからの経緯をユーロンドから説明させてバカを引き連れて行ってもらい最後に敬礼して元の位置に戻るユーロンドに周囲のギャラリーから感嘆の声が上がる。
聖騎士団がバカを連行していった後、何人ものギャラリーがユーロンドに話しかけに来る。
ユーロンドが早乙女商会、早乙女真一のゴーレムだと聞いてギャラリーは声をあげて喜んでる。
『あの正義の執行官が・・・』
『これでシグチスも住みやすくなりそう・・・』
『素晴らしいゴーレムの技術だな・・・』
などの声が多い。
確かにこのシグチスには悪党も多いだろうけど、大半は善良な一般市民。
今まで酷い目にあってきた人達にとっては正義のヒーローなのかもしれないな。
近日中にもふもふ天国シグチス店とモフモフマッサージ天国シグチス店を開業するのでしばらくお待ちください、今は開店準備中ですのでとユーロンドに宣伝させるのも忘れずに行う。
店の内容も聞かれたので宣伝させておいた。
ギャラリーに紛れて監視してる人間の監視は忍の仕事だ。
先程逮捕されたバカも保釈金を支払って今日の深夜にでも釈放されるだろうから忍がマークして監視する。
何しろ大した罪ではないからな。
ユーロンドは傷一つないから私有地に無断で侵入してカタナを振り回したことぐらいだ。
被害と言ったらカタナがボロボロになって途中で折れたぐらい。
ゴッデスにヘルプさんをアップデートしてもらって情報処理速度が飛躍的に上がったので、情報収集してる忍と徒影から上がってくる生の情報は瞬時にヘルプさんが整理して仕分けをしてくれる。
地下闘技場のオーナーの知識や経験を情報複製で俺の中に貰ったのだが、結構時間が掛かってた今までと比べて1秒もかからずに仕分けされてるので大幅な能力向上だろう。
脳内MAPの3D表示もかなり使い勝手が良さそうだ。
そんなことを並列する思考で考察しながら、嫁との雑談も続けてる。
「ところで・・・今日は何で急にパエリアになったんだ?」
「お昼にしん君の作ってくれたとんこつラーメン&チャーハンが凄く美味しかったからよ。みんなで午後の練習場での休憩中に話し合ってみんなで何を作ろうか相談したのよ」
「ですね。そうしたらミーさんが以前ご友人に”パエリアに日本酒を隠し味で入れると美味しくなる”という事を聞いていたと思い出してくれましたので、挑戦することにしたのです」
「ふふふっ、我ながらナイスタイミングで思い出したわよねぇ~。しかも結果は大成功だから持つべきものは友達って事ね」
「確かにこれは美味しかった。今日つかった材料や調味料の量をクロは見ていたか?」
「ハイ、ご主人様。複製は可能です」
クロがパエリア鍋をアイテムボックスから取り出して全く同じ材料も取り出して料理スキル魔法で仕上げると、寸分たがわぬ同じ味のパエリアが瞬時に出来上がる。
「料理スキルって素晴らしいけど・・・時に残酷よねぇ。こんな簡単に同じ味ができちゃうなんて・・・」
「それもこれもクロが横で手伝ってたからこれができるんだよ。ミー、見本となるべきモノがなければ不可能なんだから」
「そういう事よね。私達が作り上げた味があっての事ってわかってるわよ。でもさすがに全く同じ味というのは凄いわね」
「アイリさんもミーさんも凹んでないで美味しいものは美味しく頂きましょう!」
さすがにパエリアだけでは飽きるだろうし、もともと嫁達が持っていたパエリア鍋は3人前ぐらいなので少し足りなかったのでおかずを付け足す事にする。
シプラコーンの肉を香草焼きにして1品、サーモンのマリネをサラダにして。。。こんなもんでいいかな。
また食事をしながらの雑談に戻る。
「明日の日の出は4時50分になってるから、みんなには4時過ぎには起きてもらうから・・・今日は早く寝ちゃってね?」
「わかったわ。でも・・・ミーには楽しみ過ぎて眠れないかもね?」
「それは自分でも心配してるわよ。長年見たくて夢に見ていた風景だからねぇ・・・もうすでに今からワクワクしてるよ」
「どうしても眠れなそうだったらそばにいるクロに言ってね? スリープ魔法で気付いたら起きる時間ってぐらいに熟睡するから」
「実は私もミーさんやアイリさんから何度も話を聞いてるので、楽しみで楽しみでワクワクしてます」
「それは俺も一緒だよ。ミーがいつも話してくれる時はキラキラした笑顔で話してくれるからな。この話をミーから直接聞いて、それでも興味が湧かないってやつの方が少ないだろ」
「私とミーは直接見てるからね。25年前の話で美化されてる部分はあるだろうけど、今でも名物って言われてるのはありがたい事ね。やっぱり大幅に風景が変わってるというのは見たくない事だしね」
食事が終わって後片付けをクロに任せて俺達はリビングに移動する。
「しん様、デザートに新作のモノってありますか?」
「新作ねぇ・・・こんなのはどうだ?」
俺が作ったのはぜんざいを作ってから冷やして上に冷たいソフトクリームを乗せる・・・
クリームぜんざいを作って出してあげた。
満面の笑みでゆっくりと味わって食べてる嫁達には、クロにレシピを渡したので次からいつでも食えると教えておく。
俺も自分の分のクリームぜんざいを食べるがこれは美味しくできた。
おかわり! と3人の嫁に言われたので今度は上に乗ってるソフトクリームを抹茶味にしてあげる。
これも美味しかったらしい。
ソフトクリームよりも早く溶けちゃいそうな笑顔で食べてる嫁の顔を見ながら、こちらのレシピもクロに渡しておいた。
ゴッデスに知識のアップデートをしてもらったけど、料理のレシピは大幅に増えてるな・・・美味しそうだから問題ないんだけどね。
情報収集をしている忍から気になる情報が入ってきたので・・・そろそろ俺は雑談を打ち切ってシグチスに戻ることにした。
3人の嫁と別れ早乙女商会シグチス支部の執務室に戻る。
時刻は夜の8時少し前、周囲はすでに真っ暗だ。
また同じように私服からサイラスの闇甲殻鎧に変更してから、忍からの情報収集の成果をヘルプさんから聞く。
これからシグチスの街外れの場所で闇の奴隷オークションが開催されるらしい。
今回売られる奴隷はすべて女性。
世界中から誘拐されてきた闇奴隷だ。
すでにオークション会場には奴隷も金持ちも集まってきてるようだ。
前回のマフィアギルド襲撃の時よりも集まってきてる人数は多いが半分以上が奴隷の護衛だ。
なのでアマテラスほっとラインを繋いでアマテラスに確認を取る。
「アマテラス聞こえる? 俺の事を見てたんだろ? 奴隷はどうするんだ?」
【今回の闇オークション会場んに集まってきてる女性の奴隷は全員性奴隷ね。メイドって形にしてる人達もいるけど・・・あっ真一お兄ちゃん、ちょっと待って!】
「アマテラスどうしたんだ?」
【子供が10人いるけど今回の子供は全部誘拐されてきた子供たちね。オークションに掛けられる前だから怪我や虐待は受けてない。だけど客が連れてきた女性はすべて性奴隷になってるから・・・真一お兄ちゃんに救ってほしい人物は子供13名、奴隷18名の合計31名です。そのリストをゴッデス様経由で真一お兄ちゃんに送るね】
俺の脳内に送られてきたデータはヘルプさんによって整理され俺の脳内にリストが浮かび上がる。
31人全員の顔画像つきリストが俺の脳内に浮かび上がる。
18人の奴隷で15人は女性で3人は男の性奴隷となってる。
これは襲撃をかけた場合・・・人質や盾にされる可能性もあるな・・・アマテラスにシーパラの大聖堂に露草桜を待機させるように言うとすぐに準備しておくという返事を聞いてからアマテラスほっとラインの回線を切った。
まずは闇オークション会場の敷地上空に転移魔法で移動して飛翔魔法で空中に浮かぶ。
各探査魔法で敷地の全てを探りとり、スリープ魔法で全員を眠らせて・・・これで終了だな。
敷地全部をいつもの封印結界で覆い誰も逃げられないようにしてから奴隷の待機部屋に転移魔法で直接潜入して、売られそうになっていた奴隷もすでに売られていた奴隷も31人全員を救助する。
その時になって俺の隣に光の衣を纏った露草桜が具現化して現れた。
聖母の祝福を使って”神の使徒”となった露草桜の初めての姿だった。
もちろん俺が渡したゴーレムの『コースケ』と『シェリアス』の2体も一緒についてきている。
俺は桜に断ってからコースケとシェリアスをアイテムボックスに入れて2体のアップデートを行った。
シェリアスには転移魔法も使えるようにしたし、コースケには強力な封印結界を張ることも壊すこともできるようにした。
身体的な強化も行ったのでセバスチャン・マリア達と遜色がないレベルになったので安心だ。
改良を終えたシェリアスとコースケを桜に返した。
保護した31名もの奴隷たちを連れて桜たちは帰っていく・・・今はお互い忙しいので仕方がないのだが、桜は今度はゆっくりお茶でもしましょうねと言って帰っていった。
俺は寝ているクソども25人を全員を〆て回る。
ただの護衛でしかない41人は眠らせたままで25人のクソは身ぐるみ剥いでアイテムボックスの中身も犯罪の証拠になるもだけを残して残りは俺のアイテムボックス内に移し替えた。
殺害方法は以前と同じように延髄を人差し指で抉るだけ。
アマテラスの神託の指令を受けた聖騎士団がもうすぐ到着するので、俺は早乙女商会シグチス支部の執務室のイスの上に帰る事にした。
聖騎士団が捜査をし尽くした後に真偽官を交えて警備隊に引き渡す形となるので、シグチス警備隊は信用に値しないとして捜査には参加できずに蚊帳の外となる計画のようだ。
警備隊が無能&犯罪の証拠隠滅をしかねないので仕方がないが聖騎士団にはフルで働いてもらう。
アマテラスもシグチスの聖騎士団は120名ほどしかいないが良く訓練された精鋭揃いらしい。
執務室のイスにゆったりと座りホットコーヒーを啜りながら私服に着替えてリラックスをする。
ここでゴッデスからの追加で情報があり・・・ゴッデスの神託を受けた最高評議会秘密会議においてシグチスに国軍を出すことが秘密裏に決定した。
元冒険者で親子4代でAクラスの実力を持つイワノス・ゲッペンスキーの長男で今は最高評議会議員の『レオーン・ゲッペンスキー』を制圧軍の将軍に任命して、副官にイワノスの次男で警備隊の粛清をするためにン参加する『アイザック・ゲッペンスキー』と犯罪捜査の取り締まり強化で最高評議会特別捜査隊の隊長『マスカー・フレデリック』まで参加してるようだ。
1000名の国軍・1000名の警備隊・100名の最特隊・・・それとシグチス聖騎士団増強の為に500名の精鋭の聖騎士団も一緒に参加することが決定してる。
今から3時間半後の5月12日の深夜零時に15隻もの国軍所属の高速輸送艦隊を率いてシグチスに出発する事が決定したようだ。
さらに国軍はこの1000名はあくまで先発隊であって追加で2500名ほどの軍を動かすことが決定。
高速輸送艦隊はそのままシーパラに戻る時は捕まえた逮捕者を乗せて戻り、また国軍を乗せてやってくると言う事になったらしい。
国軍の高速輸送艦は1隻で最大200名の人員を運ぶことができて40ノットという高速で外洋を巡航することが可能な船・・・早乙女式の動力技術を導入して改良され、スピードアップと消費魔力エネルギー半減に成功した船のようだ。
しかも今回は1隻分はシグチスに突入した後にでも単独で行動できるように食糧も運んでくるようなので本腰を入れてシグチスを制圧する気になってるな。
まぁ俺の今までの抗争で逮捕された人達の中で外国から来てる犯罪者はシグチスから来てる。
入国管理がザルすぎるのだ。
金で犯罪者でもすぐに入国できて犯罪履歴を調べられることもないし、シグチスに入れば商業ギルドカードも冒険者ギルドカードも金で他人のモノが買えるというので、シーパラ連合国はシグチスのせいで多大な迷惑をかけられ続けてる。
今回はすべてを粛清して厳罰をもって処理し犯罪者撲滅するのだろう。
それと・・・非公式だが今日の昼過ぎに任侠ギルドシーパラ支部に最高評議会からの使者が訪れて任侠ギルドを公式な組織として認め友好な関係を築きたいという親書が渡されたようだ。
親書には税金に関しては今までと同じ儲けの15%で、公式のギルドとして登録されたら商業ギルドを通しての公式な商会設立も可能となるようだ・・・それで、担当者は俺が知らないあと一人のシーズの家の『セグエラ家』の先代当主『ハロルド・セグエラ』の名が最後に書いてあり、間違いなく最高評議会からの親書だとわかるように最高評議会16名の議員全員の直筆のサインが書かれた紙が同封されていてそこの担当者がハロルドになったと書いてある。
セグエラ家は当主が指名した人に漁業ギルドのギルドマスターをさせてるほど漁業専門のセグエラ商会の当主。
輸送船や各地の定期便などとは関係が深いし資金の貸し付けや漁師育成・船員育成など船に関することは関係が深くて、任侠ギルドとは昔から馴染み深いシーズの家になるだろう。
以前からの付き合いを考慮されて担当窓口に指名されたんだろうけど。
しかし・・これはすぐにどうこうできる話じゃないし、いろいろと交渉しなければいけないと思うので幹部で外商担当をしてる人間と交渉事に強いベテラン幹部をセットにして当たらせる事にする。
時間が掛かるだろうが任侠ギルドの将来が掛かってる事なので、なるべく優位に進めたいから時間をかけて交渉するようにと手紙を書いて、急遽だが任侠ギルド外交官に指名して指令書と一緒に2名に渡すように徒影に送る。
徒影と同じ龍布で作った裃とサラシと雪駄と白足袋のセットを外交官用の制服として一緒に渡す。
徒影の着ている裃セットが任侠ギルド職員に大人気で徒影に聞いて真似した裃を着ている職員までいるらしいので送ってみたのだけどな。
などと今後の対応を考えてる時にバカの仲間が保釈金を払って自宅ではない場所に向かったという念輪連絡を、バカをずっと監視してマークしている忍から入る。
その倉庫には仲間が既に集合していてこれからここの早乙女商会シグチス支部に襲撃をするようだ。
・・・なんなんだ、アホすぎるだろコイツラ。
しかもこのバカ警備隊に所属しながら俺にイチャモンつけて逮捕されていて、保釈金を払っての仮釈放中にまた襲撃をかけるって・・・どこまで罪を重ねたいのか・・・キチガイだな。
もうすぐ夜の9時と言ってもここらは繁華街の通りの近くにあり、周囲に街灯はまだ光ってるしシーパラと違って周囲にまだ人は通行してる。
彼らは10台のゴーレム馬車に乗り込んで130人で乗り込んでくる・・・目の前で見たらあまりのバカさに大爆笑しちゃいそうだな、俺・・・遠見魔法で見てるだけにする。
門の外にはシグチス・ユーロンド1~5号が横一線に並んで待ってる。
ゴーレム馬車が10台続々と登場して敵の大将らしき人間が大声で叫んでる。
『紫村流侍道場の再興の時ぞ! 我は紫村流7代目当主紫村上総介じゃ! 悪を懲らしめよ!』
『おおおぅ~~!』
『隊列を組め! 紫村流の侍が負ける事なぞない!』
・・・好き勝手に言ってるなぁ。
完敗したから紫村流道場は消滅したんだけどな。
でも初めて組織だった侍の動きを見られるかもな。
アイテムボックスからフルーツを乗せたハーブクッキーを取り出して齧りながら遠見魔法で見学させてもらう事にする。
同じように遠見魔法でこの騒動を見てる人間が2名いたので忍に情報収集させるように指示を出す。
早乙女商会の正門周囲には近所から野次馬が溢れ出して見物してる。
『抜刀1番隊構えぇ~! ・・・突撃!』
カタナを抜いた先頭を走る30名ほどがそれぞれの目標のユーロンドに向かって走り6人ずつが一斉に斬り込んできた。
しかも斬れないとわかると全員がユーロンドの関節部分にカタナの刃を当てたまま全力で抑えも込もうと腰を落としてスタンスを広げてカタナの力を振り絞ってる。
『まだまだ行くぞ! 二番隊かかれぇ~!』
次の30名はカタナを抜くと走り出して抜刀隊の背中に乗ってジャンプしてユーロンドを飛び越えながら、次から次へとユーロンドの頭部を斬りつける波状攻撃をしてきた。
初めて見た紫村流の組織だった動きに『おおおぉ~~』という関心の声が俺の口から出てくる。
この騒動の周囲で見てるギャラリーからも大きな声が上がる。
『カッカッカ、何もできないのか。よし隊列を元に戻せ! 3番隊と4番隊が前へ! 1番隊と2番隊は後ろで待機ぃ~~!』
『な、なんと・・・無傷だとでもいうのか!』
周囲のギャラリーから今度は『うおおおぉ~~!!!』という歓声が上がったのはユーロンドはどこにも傷つくことなく立ったままで、襲撃者達の1番隊と2番隊の隊長からは『カタナがボロボロです!』などという悲痛な叫びが上がってる。
まぁ俺が丹精込めて作ってるユーロンドゴーレムにコイツラのナマクラ刀で普通程度の腕で切り付けたらこうなるわな。
ユーロンドの最後通牒が周囲に響き渡る。
「貴方達を襲撃者とみなして今から強制排除いたします」
4mほどの高さがある正門をピョンと飛び越えてシグチス・ユーロンド6~10号も出てきた。
いきなり倍に増えたゴーレムと高い正門を飛び越えて着地しても物音1つ立てない身軽さに驚愕して動揺してる間に、10体のユーロンドは130名の襲撃者の周囲を取り囲むようにして展開する。
外見がフルプレートアーマーのゴーレムがガチャリとも音も立てずに超高速で動き回り、しかもその防御力は侍のカタナで何十回も斬られてるのに傷一つない・・・対立する敵側にとっては悪夢のような状況だろう。
自分達の攻撃は一切通用しない相手だからな。
自分達の置かれた状況にやっと気づき始めた襲撃者達。
しかし、すでに逃げ道はない。
1番隊の隊長がカタナを捨てて両手を上げてユーロンドに近づいてきた・・・現場からニヤニヤと笑みを浮かべながら逃走しようとした両手を上げたままの男に、シグチス・ユーロンド7号の双鞭による強烈無比な左右からの一撃が1番隊隊長の両ひざに叩きこまれ粉砕されて転がったところを、上から尻を踏まれて骨盤も粉砕骨折して外に蹴り出される。
転がりまわる事すら出来なくなった重症者が出来上がる。
「貴様ぁ! 降参してる相手を! 人を何だと思っておる!」
「さぁ、ゴーレムですから。敵を排除するだけだけです」
「くっ・・・ぐぬぬ」
このやり取りで遠見魔法で見てるだけの俺も机をバシバシたたきながら大爆笑してしまった。
そりゃそうだ、ゴーレムだもん。
つーか、ゴーレムにそんなあたりまえな事聞くなよ。
周囲で見学してるだけのギャラリーも手を叩きながら俺と同じように大爆笑してる。
元々暴力と金が渦巻くこのシグチスの街で生きてきた人間達だ・・・力なき者は死に知恵無き者は利用され勇気無き者は声を出せない街。
この程度の暴力事件は掃いて捨てるほどある。
巡回パトロール中の警備隊が現れる頃には130人の襲撃者は逃げることもできずに全員がイモムシのように地面を這いずるだけの存在になって数分たってギャラリーの数が少なくなった頃だった。
警備隊が周囲にいるギャラリーに話を聞いて俺を呼び出しに来たが俺は出る気もない。
結局・・・目撃者から調書を書き、警備隊はユーロンドの言に従いマッサージメイドゴーレムの治療をお願いするしかなくて、契約書を作って全員に治療費2000万Gの借金を背負わせてからメガヒールを掛けて治療する。
26億って・・・また大金が早乙女商会に転がり込んでくることになったな。
今や既に早乙女商会には50億近くのGが溜まってる。
私有地に無断で侵入して暴行(?)事件を引き起こした罪と俺のボッタクリ治療費でめでたく借金奴隷も追加された。
彼らも奴隷として大森林の鉄道再開計画に参加させられるだろう。
130人もドナドナされてどうするのか知らないけど、それは警備隊の仕事なので俺には関係ない。
隷属の首輪もそこまで持ってないようだったのでユーロンドが100個ほどレンタルしてあげることにした。むろん契約書を交わした正式のモノだ。
明日にでも返却しに来るらしい。
コイツラ襲撃者が乗ってきたゴーレム馬車に乗って警備隊本部に連れていかれたけど・・・この警備隊は信用してないのでどこかで逃がそうがどうでもいい。
どうせこのバカどもに残された道は逃げるしかないし、逃げたところで就職して働く事が不可能になったこのシーパラ連合国で生きていく事はキツイから盗賊になるぐらいしか道がない。
それに130人もの犯罪者を逃がし俺への治療費26億を回収できなくなったら国は警備隊を許さないだろうから・・・詰んでるな。
味方ですら見捨てるレベルの詰みっぷり。
敵がどうなろうと俺には関係ないからどうでもいい事なんだけどね。
この襲撃は俺は見物してるだけだったな。
シグチス・ユーロンドはすでに通常業務の警備に戻り早乙女商会シグチス支部の正門前にいるのはシグチス・ユーロンド6号のシールダーのみとなってる。
周りを賑わしていたギャラリーは今はなく、ただ早乙女商会シグチス支部の前に睥睨するようにしてユーロンドが立っているだけ。
見学を終えると俺はコーヒーを飲み干してアイテムボックスにマグカップを仕舞い、ステータスからサイラスの暗闇甲殻鎧セットに装備をチェンジする。
マティアスの情報によると全員が奴隷闘士にさせられたのは世界中でそれぞれ別の場所なんだけど、シグチスに入ってきたときの窓口の男は全員が同じ男ではないが同じ事務所の入国管理が係わっているようで、そこに今から襲撃をかけるらしい。
そこに闇奴隷貿易が深くかかわっている。
事務所にはいつも奴隷が働かされているし、入国管理官は何人もの闇奴隷と金を賄賂でもらって大金持ちの状態の様だ。
俺は一緒に突入することを決めた。
入国管理官の持ってる情報を頼りに芋づる式にクソどもを一掃する計画だ。