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最高評議会の会議が始まったっす。俺はオブザーバーでしたっす。

11・29修正しました。

今回の騒動は俺は指示だけ出してユーロンドに処理させる事にしたので64名のイモムシが転がってても、警備隊に『不法侵入者を引き取りに来い』と言う連絡だけはしてあるが・・・完全に放置だ。

早乙女工房にも警備隊がやってきて3つの道場の事の説明を求められたが、俺はもらった決闘状だけをユーロンドから渡して終わりにさせた。

俺が出した返事の手紙は現場で回収されている事だろう、それを見て俺のところに話を聞きにきた事は想像できる。

現場での判断はできないだろうから決闘状を持って彼らは警備隊シーパラ本部に戻っていった。


早乙女商会ドルガーブ支部にやってきた警備隊の隊長だけ応接室に通して話をするが、不法侵入した襲撃者を力で排除したことを罰する法律はイーデスハリスの世界中のどの国でも存在しない。

治療ぐらいならしてやってもいいが高額になるぞと言うと、構いませんのでお願いしますと即答された。

警備隊の隊長と共にゴーレム馬車駐車場まで出ていくが、治療すらも俺は一切タッチしない。

マッサージメイドゴーレムにすべてをさせて俺は警備隊の人間の立会いの下で契約書にサインをするだけ。

ケガ人1人あたりメガヒールを何回か掛けたとか計算するのが面倒になってきたんで・・・治療費は一律1人2000万Gゴルドルにして警備隊の隊長と治療契約を交わす。

これも早乙女商会の口座に後日に振り込まれるように警備隊の隊長のアイテムボックスから取り出した魔水晶に俺の商業者ギルドカードを登録して契約完了。

稼いだのはマッサージメイドゴーレム達なので早乙女商会でも大丈夫だろう。


これで彼らは犯罪者&借金奴隷になった・・・ナディーネが発案して一大国家プロジェクトになった『大森林鉄道再開計画』がはかどるだろう。

つーか、俺が40日近く動いただけで2000人以上もの犯罪者&借金奴隷を作り出してる。

それと一緒にテイム魔獣も捕獲されているので、奴隷市場も魔獣市場もパンクするのも仕方がないな。

だからと言って調子に乗ったケミライネン家と角館家を許すつもりはさらさらないが。

64名の人間は隷属の首輪を装備させられてアイテムボックスの中身を全部出し、武器や防具も外して囚人服に着替えて護送車に運ばれていった。

必要ないのでいらないんだけどルール上は俺の所有物になってしまうので面倒だけどアイテムボックスに入れて全部素材に戻す。

食べ物系はアイテムボックスにすら入れたくないのでアイテムボックスに入れるフリして遠く離れた海の上に転送魔法で送って素材に分解してから捨てた。


ゴーレムに対処させたので正当防衛の被害者という形にしたのが功を奏して、計画した予想通り俺が調書を取られることもなくて済んだな。

早乙女工房にやってきた警備隊も手紙を持たせてからはその後に訪れる事はなかったので、計画は成功したと言ってもいいだろう。

今後、襲撃してくるバカにはこの対応でOKだな。

事件が起こっても俺の手が掛かることもなくなりそうだから安心。

事件の処理も終了したようなので早乙女邸に帰還する。


嫁達はまだリビングで酒を飲んでいた。

まだと言っても、俺が出かけてから1時間もかからない帰還で嫁達は驚いているが、嬉しそうに抱きついてきてホッペにキスしてくれたのでうれしくなってくるな。

俺もソファーに座って酒盛りに加わることにする。

今まで飲んでなかったシャンパンを開けて以前購入した生ハムをツマミに飲みだした。

夫婦でくだらない雑談をしながら酒を飲んで笑ってるって幸せな時間だな。

そういえば嫁達に話がしたい事があったので早く帰ってきたってことを思い出したので話しかける。


「そういえば・・・明日は最高評議会の会議に出席するために出発は無理になっちゃったんけど、明後日から次の目的地『シグチス』に向かって旅立とうと思うんだけど・・・いいかな?」

「私が見たかった景色の『山の上から見る朝日』がようやく見られるって嬉しいけど、ゴタゴタが続いてるみたいだから出発しちゃっても大丈夫なの?」

「明日と明後日は少し曇るけど、そのあとは3日間ぐらいは晴れた日が続きそうだからいいチャンスだと思ってね。どうせゴタゴタは終わる気配も無く続くだろうしね」

「しん様、シグチスまでの移動距離はどれぐらいですか? 時間はどれほど掛かるのでしょうか?」

「ウェルヅリステルから距離にして陸路では3000km弱だけど、海路では3200kmほどってところかな。俺の魔力パワーボートだと巡航で時速90km以上の50ノットは楽に出せるから・・・35時間ぐらいかな。明後日の朝の6時に出発すれば明々後日の夕方5時には到着できるよ。今日は5月8日だから・・・5月10日に出発して5月11日の到着、5月12日の朝日をみんなで山登りして見に行こうよ」

「シーパラからシグチスまで1日半なんて・・・しん君は凄い船を作ったんですね」


「そうよねぇ、私が聞いた話では高速船でも3日ぐらいは時間が掛かるっていう話なのに・・・」

「魔力パワーボートは・・・俺の妄想にイーデスハリスの世界ならではという魔法技術を融合させたから出来上がったモノだしな。全力を使って趣味のモノを作るとこうなってしまった。ホバーボードと魔力パワーボートは人には見せられない作品になってしまった」

「しんちゃんの場合は人に見せられない作品って今後ドンドン増えていきそうで怖いよ」

「それは否定できないな。今はそこまではないけど、今後の生活で何か欲しいものが出来たら全力で作っちゃいそうだし。デザートとかは拡散しまくってるし」

「デザートは美味しいですしレシピがあれば誰でも作れるというのが良いんです。アンコもチョコレートも素晴らしいのでヨークルとシーパラですでに発達し始めてますし・・・でも、しん様が作り出した船とかは誰も真似出来ない技術なので、少しだけ心配してしまいますね」


るびのから念輪が入って風呂を出たようなので、俺達も風呂に移動して露天風呂で酒を飲みながら雑談を続ける。

天気はあまり良くなく月の出てない今日は雲の隙間からたまに星が見える程度で、露天風呂から見える景色は曇ってるのであまり良くないな。


「そういう訳で明後日からシグチスに移動することになるけど、みんなは自由に過ごしてくれていいよ。シグチスでもホテルに泊まらなくて紫村道場跡地に早乙女商会シグチス支部・もふもふ天国シグチス支店・モフモフマッサージ天国シグチス支店・それで転送部屋をつくって、そこから山小屋まで移動して朝日を見るだけだし」

「山小屋にも宿泊されないのですか?」

「俺が計画してるのは山小屋とはちょっと離れた場所まで早乙女商会シグチス支部から飛翔魔法で移動して、上空から朝日を見てみないか? って事を計画してるんだ。空を飛んで上空から景色を見たいって以前にみんなも言ってただろ?」

「それは面白そうねぇ。以前見た景色とは多少違うのかもしれないけど、上空から景色を眺めるってのが追加されてて・・・すぐにでも見たくなってくるわね」

「アイリさんと同じで私も上空に飛び上がって風景を見られるなんて・・・鳥さんになって飛び回れるようでワクワクしてしまいますね」

「俺の飛翔魔法で浮いた状態だから自由に飛び回るっていう訳にはいかないだろうけど、鳥たちが上空から見てる景色は味わえると思うよ。ミーもリクエストの『山小屋から見る朝日』とは違ってきちゃうけどいいかな?」


目を瞑り俺達の話を聞いてるだけのミーに話しかける。


「大丈夫よ。私の見たかった景色がもうすぐみられそうだと、それに鳥の様に飛んでみたいっていう私の願望まで叶いそうだから感動してるだけだよ。しんちゃんありがとう」


そういってミーが抱き着いてきた。

俺もミーを受け止めて抱きしめ・・・夫婦の愛情を体で確かめ合う事にする。

今日は全員で寝室に移動してから1人ずつ愛を確かめ合う。

順番はミー・アイリ・クラリーナの順番になったようだな。

愛を確かめ合った後はガウンを着て全員で就寝。




明けて翌日の転送してきてから39日目の5月9日の朝を迎えた。

天気は予想通り曇り。

曇ってるが雨は降りそうになく、5月にしてはちょっと肌寒い程度の過ごしやすい1日となりそうだ。

ちなみに明日も同じような天気で風もなく穏やかな一日になりそう。

今日は嫁達は俺以外の早乙女遊撃隊の面々を引き連れて大森林で森林モンキーの巣に突入して殲滅狩りをしてくると言ってた。

参加メンバーはアイリ・ミー・クラリーナ・るびの・フォクサ・セバスチャン・マリア・ユーロンド1号の総勢8名。


アイリとミーはセバスチャンとマリアに合気道を習いながらの実戦練習。

2人とも俺と同じサイラスの甲殻鎧に早乙女ガントレットを装備しての素手での戦いになる。

クラリーナも守備にユーロンド1号をつけてユーロンド1号から弓の講習も受けれるように、弓のマスタースキルをユーロンド1号にアップデートしておいた。

るびのとフォクサは遊撃隊の本領発揮で遊びながらも護衛をお願いしておいた。

大森林三角池周辺での狩りになるそうだが、転送魔法が使えるメンツが多いのであちこちと時間の許す限りの実戦練習ができるだろう。

休憩できるようにキャンピングバスをセバスチャンに持たせてあるのでトイレで苦労することもないだろう。


俺は半分寝ぼけながら嫁達が行ってきますのチュウをホッペに受けて・・・目が覚めたころには嫁達は出かけてしまった後だった。

まだ7時かぁ・・・今日の俺の予定は9時に最高評議会の会議に出席するために、シーズのウォーカー家からの迎えのゴーレム馬車が来るので、それまでがヒマなんだよなぁ。

早乙女邸専属メイドゴーレムのクロが入れてくれたコーヒーを飲みながら、いまだに眠ろうとする脳に活を入れる。

アタッシュケース型の専用転送器40台が全部確実に動くかどうかの最終実験をするために、アイテムボックスから取り出した専用転送器40台を寝室に並べて、実際に何も封入されてない魔石付きミスリル棒をセットしてから実験を開始する。


その間に俺は和風の朝食を済ませて、ついでに着替えも済ませておく。

今日は最高評議会の会議に出席するために旅人の服を装備する。

実験は大成功だった。全部を鑑識の魔眼を解放して確かめたが何の問題もない。

まだ時間が余ってるので神器作成スキルでハサミを製作してクロに俺の髪の毛を切ってもらう事にする。

俺が転生者からもらった美容師のスキルをクロにはアップデートで封入する。

俺の髪の毛を切るためだけに神器作成を使用したのは・・・切れるかどうかわからなかったから。

体毛は元々薄かったし髭なんてイーデスハリスの世界にきてから一度も剃ってもいないが、さすがに40日ぐらいで髪の毛は伸びて邪魔になってきてた。

カットした髪の毛は全部回収して袋に入れてアイテムボックスに入れておく。

髪の毛を指で櫛のようにかしながら思ったのは・・・俺はこれぐらいの長さの髪の毛の方が楽でいいな。これからは10日おき位でカットしてもらう事にする。


時間になったので早乙女工房に転移魔法で移動。

最上階の居住区ではなく早乙女工房2階の執務室のイスの上に跳んだ。

以前のサトシのパーティーの時に作ったリザードドックジェネラルの鱗で製作した銀色に鈍く輝く鱗革のブーツを履き終えた時に、早乙女工房のユーロンドから念輪連絡が来てナディーネが迎えにやってきたようだった。

腰に早乙女儀剣を装備して白い絹製の手袋をはめて1階受付の隣の転送室へと転移魔法陣で移動した。

絹製の手袋はナディーネからの手紙に書いてあって最高評議会の会議に出席する人のマナーらしい。

冒険者はサーベルのような儀礼用の剣類に限れば装備は認められている。

転送室を出ると受付にはナディーネと親衛隊らしき2名の挨拶を受けて、そのまま雑談もなしに最高評議会へと出かける。

ナディーネの乗るゴーレム馬車に乗ってゴーレム馬車ごと最高評議会に入っていった。

内部のゴーレム馬車駐車場に停車して馬車を降りるとすぐに係員の職員が駆け寄ってきてステータスカードで確認をされる。


係員はそのまま案内係となって俺を小さな応接室へと案内して貰った。

ナディーネは別の応接室に行ったんで途中で別れる。

応接室に入ってソファーに座ってから案内係の女性に教えてもらったのだが、会議は10時からなのでそれまでのんびりとお過ごしください・・・だってさ。

応接室で待機して暇を持て余してるとイワノス・ゲッペンスキーがやってきた。


「おはようございますイワノスさん」

「おはよう早乙女君・・・エクストラヒールを掛けてもらってから10日以上たってるが、左手のリハビリはもう少しかかりそうだ」


とイワノスは寂しそうに笑ってた。


「明日からシグチスに行って旧紫村道場の再開発をしてきますので、戻ってきてからの方が良さそうですね」

「おぅ、その話が聞きたかったんだよ。先々代の4代目紫村しむら上総介かずさのすけまでは良く知ってる人間で歴代の当主とは旧知の仲だったんだけどな・・・5代目の『力こそ正義』『正義は勝つ』『勝った方が正義』っていう謎理論に全くついて行けなくなって付き合いをやめたんだよ。それでも耳に入ってくるのは巨大化した道場と膨れ上がる傲慢な噂・・・碌なものじゃないな」

「何人かの師範代と話はしましたけど『紫村流こそ正義』って感じで話にもなりませんでした」

「というと、張りぼて木刀と鉄心入り木刀っていう噂は本当だったのかな?」

「はい。張りぼて木刀を俺に投げて渡してきて問答無用で木片を張り付けただけのオーガ鋼製の木刀で殴りかかられましたよ」

「はぁー、力にとりつかれた者たちの末路か・・・父上の教えの通りになったな」

「ゲッペンスキー家は卑怯者にはゲッペンスキーの名前を剥奪されるというのは本当なんですか?」


俺がアイテムボックスからチョコレートバーを取り出してイワノスにも渡して食べ始める。


「これが噂のチョコレートってヤツか・・・美味いな。早乙女君の言うように我がゲッペンスキー家には初代から続く家訓があってな『卑怯者の未来には光はない。あるのは一時の栄光と破滅のみ』っていうのがあるんだよ。だから掟によって卑怯者は長男だろうと全て他国に養子に出されるか・・・死をもって粛清される」

「親に殺されるのですか?」

「あぁそういう掟なんだが・・・いまだかつて実行されたことがないな。策と卑怯っていう基準が曖昧でなぁ、愚か者も生き残れないのが冒険者という職業だし商人という職業でもあるからな」

「他人を最大限利用する寝業師も商人とすれば正解でもありますからね」

「そういう事だ。それを見抜く力も親には必要となるんだ」

「なるほど、親として子供を見抜く力ですか・・・勉強になりますね。俺もいつかは父親になると思うから・・・覚えておきますね」

「そこまで深い言葉ってわけではないが・・・まぁ心のどこかにでも留めておいてくれるといい。親は子供に対して見守ることしかできないって育てていくうちにわかるから。ただ間違いはおかすのはいいとしても間違った方向に進むときには早めに修正をかける必要があるからな」

「へぇー・・・」


そんな話をしてるうちにノックがあり最高評議会の会議の準備が出来たらしい。

一緒にいたイワノスと一緒に向かう事となった。

案内係の後を付いて歩いて会議場に向かいながらもイワノスとの雑談は止まらなかった。


「紫村流の剣技の方はどう感じた? 何人かと対戦したんだろう?」

「侍剣術としての奥義とかは対戦すらしてませんよ。唯一の技は『紫村流魔獣殺陣』ですかねぇ・・・剣技を競うっていうなら理解は出来たんですけど、紫村流との抗争は全部タダの殺し合いです。ダンジョンの魔獣の方がよほど組織化された動きでしたよ」

「魔獣殺陣は対個人戦専用の初歩の奥義ではあるんだけどな。侍の集団戦は素晴らしい技と技術の結晶で、確固たる信念の表れでもあったはずなのに・・・どうしてそうなったんだろうか」

「うーーん・・・根本的に間違ってるとしか言いようがないですね。『強さ』と『勝利』が別のモノであるはずなのに、勢力拡大と名声をえるために勝利にのみこだわった結果ではないでしょうか。目の前の敵を倒して勝つ事のみに拘りすぎて、勝負そのものを軽視していた傾向はありました・・・勝負だけに拘りすぎるのも問題がありますが」

「そうなると5代目紫村上総介の『勝つ事に拘って力を付ける』って事以上に酷い状態だな。もはや道場の名を借りた裏組織の様だ」

「それは道場破り制度の弊害ともいえる事だとは思いますね。勝ったものが全てを得られるんですから」

「早乙女君からそういう事を聞くのはさすがにツライな。道場破り制度も一定以上の効果はあるんだけど、弊害も多いといわれてしまう事について・・・否定できんな」

「ですよねぇ・・・」


話の途中だったが会議場に到着してイワノスと別れる。

最高評議会で全員参加型の国家プロジェクト会議で、円卓に16人の最高評議会議員が一斉に入ってきた俺を見てくる。

ここには俺の知ってるメンバーはマツオとイワノスだけだ。

議長席の隣にナディーネがいるが今回の提案者としての参加だろう。

最高評議会の会議の開始を告げる議長席からの宣誓があってから会議が始まる。


「これより最新議題『シーパラ連合国・大森林鉄道復活プロジェクト』を始める! 今回はオブザーバーとして早乙女真一君を迎えてる。彼はオブザーバー参加なので議決権はない! 異議のあるものは申し出よ!」

「「「異議なし」」」

「全員異議なしとの事でこれから会議を始める! まずは提案者『ナディーネ・シーズ・ウォーカー』さん、前に出て説明をどうぞ」

「ハイ! ナディーネです。皆様方どうぞよろしくお願いします。今回の国家プロジェクト・大森林鉄道復活は我がウォーカー家の悲願ともいえる計画でございまして、皆さんのお手元に配布した資料の1ページ目にも書いてありますように今まで完全に放置されてきたものであります。その説明は・・・」


いよいよ最高評議会の会議が始まったのだが・・・開始の部分は日本の国会みたいな予定調和な開始だ。

今回の俺の役どころは発言権と提案は出来るが議決権はないオブザーバーとなってる事は、昨日ナディーネからもらった手紙に書いてあった通りだ。

最高評議会の議員でもシーズの家の人間でもない俺だから会議の最初からの参加ではなく、会議の途中から参加して説明をするだけだと思っていたので若干戸惑ってる。


会議でナディーネの説明を全く聞かずに俺を時折睨みつけるような視線を送ってくる3人の人間がいた。

ネームプレートがテーブルにあるので名前がわかる。

1人は角館家先代当主『角館かくのだて将仁まさひと』・・・こいつの孫娘のパーティーで今回の角館家との騒動が始まってる。

当代の当主だけでなく先代の角館将仁も孫を溺愛しているという噂もあって、その孫娘の15歳の成人記念パーティーに俺は招待されていた。

俺が断ると力づくで誘拐しにきて全員が俺のゴーレムに撃退されて逮捕されて、警備隊と国軍にお持ち帰りされてる・・・行動の全てが意味不明だ。

成人記念パーティーはすでに終わってるはずなのに、いまだに俺の係わってくる目的も見えない。

忍からの報告で分かっている事なんだが・・・自慢の孫娘はブサイクだった。

実際に自分の目で遠見魔法を使って確認したんだが、日本でいうと・・・合コンで女友達が連れてくる”可愛い子”レベルのブスだ。

女友達内だけの可愛い子なので合コンで来ると肩とアゴが地面に付きそうなほどガッカリする。

しかもお嬢様特有の超絶ワガママで育ってるので性格は最悪だ。

日本だと『粗大ゴミ』と呼ばれているだろうな。


俺を睨むあと2人は並んで座っていてケミライネン家の先代『エンリコ・ケミライネン』先々代『リカルド・ケミライネン』の2名。

リカルドの還暦のパーティーに招待されたのがキッカケだったな。

ケミライネン家はいまだにリカルドが実権を掌握していて、先代のエンリコが番頭レベル、当代は秘書程度の権力しか持たされていないという噂は本当だと言う報告が忍からきていた。

という事はやはりケミライネン家の騒動も黒幕はリカルドって事で間違いなさそうだ。


しかしそれにしてもこの3人は元商人のくせしやがって、欲望にまみれた自分を隠そうともしないなんて3流以下だ。

秘書あたりが暴走したと言って俺に謝罪して近づいてくると思ってたが、そんな気配もなくあらかさまに俺への侮蔑の視線の合間に睨みつけてくるアホだ。

ナディーネの説明を聞きながらアホと敵対する面倒臭さに内心で溜息を吐いてると、ナディーネの説明にリカルドが口を挟んできた。


「・・・という事でございまして、先日発足した国軍の新設部隊『魔獣兵団』のいくつかの部隊を運用して工事現場の周辺警備を担当してもらえば、魔獣兵団の練習にも最適と言えますしなにしろコストが低く抑えることができると思われます・・・」

「異議あり! 議長、発言の許可を!」

「リカルド・ケミライネンさん、どうぞ」

「なぜ国家プロジェクトの現場にド素人の魔獣兵団なんて使い物になるのかどうかも分からないヤツラを使うんだ? 我がテイマーギルドを軽視してる事となってるではないか。説明を求める」

「私も異議あり! 発言の許可を求める!」

「角館将仁さんも一緒に発言の許可をします。では、どうぞ」

「私からも抗議したい。すでに先日、私の奴隷商ギルドに2000人を超える奴隷を押し付けようとしておいて、こちらが準備を整えつつあるのにもかかわらず、急にやめると言うのはいかなる所存かお聞かせ願いたい」

「議長、私からもいいですか?」

「マツオさん、どうぞ」

「将仁さんとリカルドさん・・・正直に言うがその苦情の段階はとうの昔に過ぎてるのが理解できていないのかな? 昨日の会議で賛成多数で可決したのが国軍の魔獣兵団の創設だ。昨日の会議ではリカルドさんが『ド素人にテイマーの難しさは理解できないから、作れるものなら作ってみろ』って言ってたじゃないですか」


俺も聞いた俺も聞いたと円卓が騒ぎ始める。


「すでに魔獣兵団はスカウトした人員を使って昨日のうちに発足した。それに・・・お2人がその前の会議でこんな売り物にならない奴隷やテイム魔獣を私達に押し付けるんだから、年間維持費を払えと請求した金額がある。これはこの資料の6ページに明記されていて私たちは全員覚えているはずだ。この請求金額が魔獣兵団の年間維持費と大森林の線路復活プロジェクトの経費を全部賄ってもおつりが来る金額だっていうのが・・・この会議の資料に書いてある。これはいったいどういう事か逆に説明して欲しい。あなた方は国家予算からどういう計算で金を取ろうとしてたのか詳しい資料を請求したい」

「それはあくまで試算だから・・・」

「このナディーネによって仕上げられた資料の綿密な計算を見てから言ってくれ。奴隷たちに食べさせるオヤツまで金額に入ってて、さらに魔獣兵団に護衛料金代わりにエサが支払われることまで入っている。エサの買い取り金額も無理のない相場通りの金額だ。この資料の7ページを見てくれ、奴隷の数も2000人ではないぞ? グレンビーズの町にいる余剰人員2000名まで加えられていて、1日24時間を奴隷1000名ずつの8時間労働のローテーション制で1度8時間働いたら24時間の休憩になる事まですべて計算がされてるんだ」

「・・・そ、そんな」


「これで計算すると・・・今までグレンビーズで奴隷を維持するために余分にかかってきた国の予算が余ることまで計算がなされてるんだ。この余った予算で早乙女君に結界の技術料をお支払して、さらに工事に携わるウォーカー商会の技術者たちに給与が支払えられる。この計算を見た我々の疑問は別にある・・・貴方達2名が国に請求した年回維持費の内訳を教えて下さい。これは最高議会の議員としてお訊ねする」

「「・・・」」

「黙っててはわからないし何一つ解決しない。私とイワノスは昨日の夕方に渡されたこの資料の計算に対して疑問に思い、魔獣の肉の金額に詳しいガルディア家当主のゾリオン君に話を聞いたり、人件費・・・奴隷に支払われる最低賃金も我々の手で再計算したんだが・・・出てきた答えは奴隷に払われる賃金は法律によって定められた最低賃金ではなくて、常識の範囲内で計算されていることまでを証明することになった。今からお配りする我々の再計算の詳しい計算式とグラフをお配りするのでここにいる全員で確認して欲しい」


マツオが声を掛けると最高評議会の職員があらかじめ渡されていたであろう資料を俺にまで配り始めた。

資料を見て最高評議会の議員連中の全員がそれぞれ脳内で計算し始めたようだ。

俺も計算するがナディーネの計算やマツオたちの計算が間違いがない事が間違いない事が証明された。

・・・これはマツオ・ナディーネ・ゾリオンで角館家とケミライネン家にガツンとかます為に仕組まれた茶番劇だな。

ここまで来て俺と同じ計算によってマツオ達によって仕組まれた罠だという事が理解できた何人かの議員もいるようだ、俺の顔を見てニヤリと笑ってる人までいる。

ま、確かに裏に隠れてひそかに糸を引いてるのは俺で間違いないんだけどな。


「さぁ、我々の計算した内訳は全部の資料で整った。あとは御二方の年間維持費として請求した金額の内訳を資料として提出することを求める」

「ワシの出した金額はあくまで試算なんで詳しい資料はここにはない。奴隷どもに住まわせる仮設住宅の金額だって入ってるはずだ」

「私のところにも詳しい資料はない。私の試算でも魔獣を住まわせるために仮設住宅の建設する費用までが計算されているはずだし・・・そもそも私たちの計算した金額は実際に国から支払われたわけではないんだから詐欺をしようとしてたとかの話でもないはずだ」

「御二方はナディーネさんが作ってくれた資料を全く読んでない事が証明されたな。皆様方、資料のページをめくって10ページを見てください。ここには工事の計画の内訳が書かれていて・・・工事の初めは先遣隊のウォーカー商会の技術者達が線路の状態を調べてる間に、奴隷たちは周囲の木を伐採してその木材で仮設住宅を建設するという事から始まってるんだ。資材は現地調達して高級木材は販売されて安い木材は仮設住宅に使われる」

「「あ・・・」」

「そうなんだよ。資料を前もって読んでる皆さんはとうにお気づきだと思うが、伐採した高級木材は価格が崩れるだろう事が明記されていて、販売予想金額は低めに設定されてるとかではなく・・・そもそも予算の中には加えられていないんだ。あくまで別枠という形で予想金額が載ってるだけ、下落していく金額なんて予想は難しい事がここにいる皆さんには理解出来るでしょう。あなた方2つの商会が今まで国に請求した金額で追加が掛からなかった事は今までなかったんだ・・・ぜひともここで詳しい計算した資料を出さないことには過去の資料まで全部再計算される事に発展するかもしれないがそれでもよろしいですか?」


マツオの最後の追い込みで角館将仁とリカルド・ケミライネンの2名が明らかに青くなった。

俺が真綿で首を絞めるどころじゃないな・・・首にワイヤーロープが絞まってるのに全力で反対方向に走ってるなコイツラ。

最高評議会のメンバの人数を書き間違えてました。

23名ではなくて16名です。11・30修正しました。

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