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配下のモフモフが増えたっす。今度は羽毛だったっす。

今日はこんなところで早乙女工房での作業は終わりかなと思ったら、るびのから念輪連絡が入った。


「とうちゃん、今夜はフォクサの故郷に泊まってもいいかな?」

「えっと・・・今日はこの前延期した魔獣遠征で早朝から大森林南部にセバスチャンを連れて出かけてたんじゃないのか?」

「遠征は4時には終わったよ。狩りが終わってからみんなで話し合ってたんだけど、今夜はフォクサの故郷で海鮮バーベキューをしてみんなの親睦を深めようってなったんだ。臭くない温泉があって気持ちいいよとオレが教えたらみんなで行こうってなって、今はフォクサにみんな連れてきてもらって博閃はくせんの巣にいるんだ・・・出来ればとうちゃんとかあさん達にも参加して欲しい」

「それは楽しそうだな・・・ちょっと待っててくれ確認してみるよ」


るびのとの念輪回線はつないだまま嫁達との念輪回線をつないで説明するとみんなで参加することが決定した。

俺は以前狐魔獣ダンジョンに行った時に狐魔獣のリーダーで、るびのの眷属となった博閃からもらった空いてる部屋に早速転移魔法を使って跳んだ。

嫁達はシャワーを浴びてからマリアが転移魔法で連れてきてくれる手筈となってる。

俺はみんながいると思われる大広間に歩いていった。


ここはモフモフの桃源郷だな。

ゴワゴワの銀大熊のアキューブ達もいるがグリーンウルフのガウリスク・炎虎達のニャックス・森林タイガーのニャービスもいる。

みんな数頭の幹部を一緒ににつれてきてるみたいだ。

大黒豹の水影みずかげ達は部屋の別の部屋で仮眠中らしい。

俺が見たかったアキューブ16世が、るびのの眷属となった証拠の目の周りのクマドリは黒色だった。

みんながボスの俺に挨拶をしてくる。


「あっ、とうちゃん早かったね」

「おぅるびの、お招きありがとうな。フォクサと博閃達はどうしたんだ?」

「みんなで今夜の為にって張り切ってエビ魔獣とカニ魔獣を捕まえに行っちゃった。オレ達には待っててくれってさ」

「おぉそうか。それは楽しみだな・・・それで君たちは?」

「うん。今日とうちゃんに紹介しようと連れてきた今日から新しくオレの眷属になったグリフォンのリーダー『グリルラン』だよ」


るびのが俺と話し始めると近くにやってきたのがグリフォンだった。

俺に挨拶をして頭を下げてくる。

鷲の翼と上半身を持ちライオンの下半身を持ち、少しプライドの高そうなキツイ顔だちをしてる印象があるが・・・さすがに俺の底知れぬ強さを感じとり素直に頭を下げて挨拶をしてくる。

俺が下げた頭を撫でてあげると少しうれしそうな顔をしてくる。

羽毛の手触りも最高で触ってる俺の手も気持ちいい。

目の周りには銀色のクマドリがあって、るびのの眷属となった証がついてる。


「ボス、グリルランといます。これからよろしくお願いします」

「あぁ、長い付き合いになるだろうから・・・こちらこそよろしくな」

「では子分になった証をいただきたいのですが・・・」

「・・・念輪だな。今装備させてあげるからちょっと待ってくれ」


俺はアイテムボックスから念輪機能付きの首輪を取り出すとグリルランに装備してあげた。

グリフォンは空を駆ける力と自身の体の大きさを変更できるという力を、るびのからもらったと言ってるので念輪の首輪も大きさが変わっても大丈夫なようにサイズが伸び縮みするようなタイプを装備させた。

そうしたら眷属になったガウリスク・ニャックス・ニャービスなども全員が大きさを自由自在に変更できるようになったみたいだ。

フォクサに教えてもらって昨日練習したらしいので、全員分の念輪もサイズ変更できる特殊な首輪に変更してあげてると、フォクサと博閃達が帰ってきて大黒豹の水影も起きてきたので首輪を変えてあげた。


全員の首輪を変え終わった後に嫁達がマリアの転移魔法でやってきたので晩御飯の開始。


俺と嫁達は魔道コンロの上にある網の上でセバスチャンが捕ってきてくれた普通サイズの海鮮や肉を焼いて食べてるが、魔獣達はセバスチャンとマリアが連れてきてくれたクロ・グレー・シロのメイドゴーレムが料理スキルを使ってこんがり焼いたオーク・トロール・蟹魔獣にエビ魔獣達を丸ごとバリボリと食ってる。

おなか一杯食べた後は全員でまったり雑談して過ごす。

魔獣達は俺が桶に出したミルクを飲んで時折薬草などの葉っぱをモシャモシャ食ってる・・・ツマミかな?

俺と嫁達は酒を飲みながらの雑談。

ふせをする魔獣達をクッション代わりにして横になってるのでモフモフに包まれて飲む酒は最高だな。

子供の狐魔獣達がジャレついて甘えてくるんで・・・これこそ、もふもふ天国。


グリフォンの羽毛もフワフワで気持ちが良い。

ここ最近のトラブルとシーズの家とのかけ引き連発でヤサグレかけてた気持ちが解けて昇華していく。

外に出てみんなで臭くない天然の露店風呂に入りに行くことになった。

俺も嫁達も魔獣に乗せてもらって服を脱ぎながらの移動。

外は5月とはいえ北の岩場はまた夜には雪がちらつくレベルの寒さなので、俺は自分と嫁達に保温の魔法をかけて体の周囲の温度を25℃以下にならないようにした。

今日は月はないが満点の星空で39℃ほどのちょうどいい温泉を見つけて嫁達と入る。


露天風呂から見る周囲の景色は絶景というしか表現できないな。

風呂の周囲には雪がまだ岩場の陰の部分にあちこちに残っている。

岩場の向こうには波が押し寄せてしぶきをあげてるのが星空の下でかすかに見える。

その向こうは波の荒い北の海。

周囲にはいくつもの温泉から湯気が上がってまさしく絶景という名前に相応しい。

近くにいたグリルランが色々教えてくれてフォクサも追加で情報をくれる。


グリフォンはここより南側で2000m級の山々からなる山岳地帯に住んで生活している。

ここは古代龍達も住んでいて『龍王山脈』という別名もあって人々は神聖な場所として足を踏み入れない。

フォクサが生まれたころの3500年ほど前に古代龍の一部のグループと、今は絶滅した魔獣達がこの西方大陸を統べる白虎に戦争を吹っかける『魔獣戦争』が勃発。

フォクサが孤児となった戦争だ。

古代龍王が率いる一部の古代龍達はいくつかの魔獣を全滅させるなどをしたので白虎が激怒。

全ての眷属と従属神達を率いて古代龍王に味方した魔獣数種類を絶滅させて北進して龍王山脈を急襲。

海の聖獣『水神』も手下の眷属を古代龍王に狩られて激怒。

敵本拠の龍王山脈に籠る古代龍王を空から急襲した。

2匹の聖獣に空から襲撃をされて古代龍王軍は全滅。

さすがに古代龍王も粘ったらしいが2匹の聖獣の攻撃には耐えられるはずもなく、古代龍王の魂は消滅させられた。


今の龍王は古代龍王と敵対していて聖獣2頭と手を組んで古代龍王軍を壊滅させた反乱軍のリーダー。

空を飛びまわるのが大好きな”スピード狂”で争い事は興味がないし、同じように空を飛ぶグリフォンとは仲が良くてちょいちょい飛び回って遊んでるらしい。

それで今日、るびのに会いにいくと挨拶に行ったグリルランとフォクサが言ったら・・・

『先代が犯した罪は消えることはないが、せめてものお詫びとしてこれを受け取ってほしい』

と言われて渡してきたものを俺に渡してきた・・・るびのが『とうちゃんがそういうのを集めてるからあげて』と言ったようだった。


古代龍王の鱗5枚と古代龍王の枝角。

龍布よりアカン奴が俺の手元に来た・・・古代龍王が死んだ後にアンデッド化を防ぐために水神の『清き雨』という聖獣魔法攻撃で魂ごと昇華させられた・・・そのため3500年以上もの間、風雨に晒されても全く朽ちることなく古代龍王の亡骸は最後の戦いの後のそのままの姿で残っていたとフォクサが教えてくれた。

鱗と言っても直径2mほどの大きさで厚さも15cmぐらいあるし、枝角といっても3m以上もの長さがあって・・・全長50m以上ある古代龍王の亡骸の極一部といっても、このままでも神器レベルの代物で鑑識魔法を使うことなくアイテムボックスにそっと入れた。

触れちゃいけないモノってあるからな。


鱗を乾燥させて粉にしてオリハルコンに混ぜると『龍神鋼りゅうじんこう』になるとか、角は粉にしてドラゴンパウダーにすると死者すらよみがえらせるとか・・・イヤすぎるからな。

見なかったことにしとく・・・俺は何も見ていない。

話題を変えるためにフォクサに話を聞いた。


「るびのの眷属ってグリフォンで終わり?」

「あとはウェルヅ大陸の最南部に住むと言われてる『ユニコーン』と『ペガサス』っすね。昔は大草原に住んでいた2つの種族はグリーンウルフと仲が悪くて、最南端にあるウェルヅ平原に引越ししたらしいんすけど・・・ワタシがブランディックスダンジョンの中で寝てる間の事なので、よくは知らないっす。人族によって狩りつくされてしまったという噂もあるみたいっすね」

「へぇー、そうなんだ」


ここでアイリとミーの2人が話に加わってきた。


「ペガサスもユニコーンも2種類とも生存してるわ。10年前からウェルヅ平原は平和記念公園の敷地とされて、草食動物と草食魔獣たちが暮らす楽園になってるわね」

「酪農だっけ? ゲッペンスキー商会とアギスライト商会が共同で食用肉用の牛・羊・乳牛の研究所があって、ここで大規模生産の研究がされてるって話だよ。ヨークル川の支流と繋がってて船で運ばれてくるようになったから、ヨークルにもミルクが流通し始めてきてたんだし・・・噂では船のスピードをもっと出せるようになればヨークルの需要を賄えると言われてるね」

「それならば来月には何とかなりそうだな。早乙女式馬車の恩恵を先に受けるのは”船”になると思う。ゴーレム馬車の町中でのスピードは時速10kmの固定で行くって話だからより小型化と効率化が求められる。ただゴーレム船は早乙女式理論でも小型化と効率化よりもスピードとハイパワーが求められるだろうから、今の高速船のスピード以上に輸送船の速度はあげられるし、小型高速船は50ノット以上の速度が出るようになるよ」

「それは凄いわね。ハウスボートぐらいの速度の輸送船ができるって事なの?」

「まぁ、商品化されるのは来月ぐらいになるだろうけどな。ハウスボートもセバスチャンがちょこちょこ改造してくれて限界の速度はどんどん上がってる」


のぼせないように風呂から出て3点セット魔法で浄化してから狐魔獣ダンジョンの大広間に魔獣達ごと転移魔法で戻って来た。

驚くことに狐魔獣達は3点セット魔法を大半が既に使いこなしてる。

博閃も転移魔法はまだ無理だが転送魔法の初期型の簡単なものは使えるみたいだし狐魔獣の魔法適正は驚くほど高くて人族では足元にも及ばない・・・むろん魔法の申し子のクラリーナは除くが。

狐魔獣の全部が神童のローグの息子たちレベルの魔法適正の高さを持って生まれてくるようだ。


今夜は狐魔獣ダンジョンの大広間でモフモフにくるまれて、ガウンだけを着て雑魚寝することにした。

俺が風呂前に掛けた保温の魔法は12時間はもつから明日の朝の9時までは余裕でもつだろう。

大黒豹たちは暇なのでセバスチャンとマリアのサポート付きで深夜のシプラコーン狩りに行ってしまった。

俺も嫁達もモフモフにくるまれて幸せ状態で眠る。

やはりモフモフは正義だな・・・おやすみなさい。




明けて・・・翌日は転生して38日目。

5月8日の朝は陽が昇る前に嫁達はセバスチャンによって起こされる。

俺はマリアの入れてくれたコーヒーの香りで目覚めた。

俺は普段着のロンTとカーゴパンツとスポーツシューズに着替えそのまま外に出る。

昨日の保温魔法が残ってるので薄着でも全く寒くない。

顔を洗える場所はないので全身を3点セット魔法でサッパリさせる。


今日はアイリは起きてすぐにクラリーナが3点セット魔法でスッキリしてしまったので、寝ぼけてポヤポヤしてるアイリが見ることが出来なくて少し残念な気分になる。

いつもの朝の風景の中にポヤポヤアイリがすでに含まれてるからな。

全員で歩いて狐魔獣ダンジョンから出ていくと・・・ちょうど陽が昇り始めたところだった。

北の山岳地帯から太陽が少しずつ姿を見せはじめ、殺風景な岩場を金色に染め上げていく。

あちこちに残る雪が光を乱反射させるので少し眩しいが、それでもこの大自然が作り上げる風景は発する言葉もなく、ただ黙って見惚れてしまってるほどの絶景だな。

首都シーパラで見た朝日、ドルガーブで見た朝日そして今ここで見てる朝日、全部が甲乙が柄つけがたいほど素晴らしい。

星空の下の岩場と海の風景も絶景だったが、今見てる朝日も素晴らしい絶景だ・・・ただ一言でしか表現できない。


太陽が昇り切ってから中に戻っていって今頃起きだした魔獣達に朝の挨拶を済ます。

大黒豹たちはかなり眠そうなので挨拶だけ済ませてフォクサに連れられて巣に帰っていった。

るびのは今日は狐魔獣達とグリフォン達と合同で山岳部に行ってシプラコーン狩りをしてくるみたいだ。

シプラコーンの肉も欲しいので後で持って帰ってきてもらうように、るびのにはお願いしておいた。

俺達もそろそろ保温の魔法が切れて寒くなってくる前に帰宅する。

俺・アイリ・ミー・クラリーナ、それとセバスチャンとマリアも連れて一緒に帰宅した。


リビングで俺はコーヒーを飲みながら今日の予定を聞いた。


「私は昨日に引き続き合気道を練習するわ。何かつかめそうな気がするから」

「アイリは気配探査のスキルが発現してる影響が合気道の『気の動きでを相手をみる』という部分に、思いっきりプラスに働いていて・・・昨日1日の特訓ですでに『合気道』のスキルが発現してるな」

「え、ホントに?」

「あぁ、間違いないよ。というよりもステータスカードで自分の目で確認した方が早いよ」

「ホントだ! よかったうれしい!」


俺の言葉にビックリしたアイリが自分のステータスカードで自身の目で確認して喜んでる。

隣にいるクラリーナが羨ましそうな顔で見てたのでクラリーナにも教えてあげる。


「クラリーナもおめでとう! 弓のスキルが発現したよ。 今日からは初心者じゃなくて初級者の練習に変更できるよ」

「え”え”! ・・・本当ですね、うれしいです。もっと時間がかかると思ってました」

「俺もクラリーナは得意分野の武器じゃないから時間はかかると思っていたけど・・・俺と結婚したことでステータスの数値が多少変化していたけど、もしかしたらスキルの習得のし易さにも影響を与えているのかもしれん」

「そうなりますと・・・」

「クラリーナの場合は半年程度で弓の中級マスターぐらいは出来そうだな。アイリの場合は2ヶ月ぐらいで合気道を完全マスターできそうだな。守護者ガーディアンはその後で発現するだろう」


クラリーナとアイリには元々のスキル習得力に差があるからな、これぐらいの差は出るんだろうけど・・・クラリーナの弓のスキル発現は俺もビックリだった。

2人とも俺の予想の半分以下の時間でスキルが出てきてるので再計算をしたのがこの数値だった。


「ねぇしんちゃん、私も無手を修業しようかなって思ってるんだけど・・・どういうのが良いかな?」

「う~~ん、ミーの場合は選択肢が多すぎて逆に難しいよ。アイリのように習得した先にあるものが目的なのか、クラリーナのように興味を持ってというのもでもなさそうだし」

「槍やレイピアの先ってあるの?」

「単純に槍とレイピアに武術としての派生はないよ。弱点を補うとかを考えるなら・・・足技かな?」

「足技って蹴りとか?」

「そう、レイピアと槍は足元に攻撃することはあっても下から足技で攻撃するって事はないから組み合わせることは可能だろうな。拳法・空手などいろいろあるしミーにはどれも習得が早いスキルだから・・・ダークエルフの秘術からの発展形のの武道だったらさすがに時間かけても不可能だけどな」


「え? ダークエルフの秘術って何?」

「アクセル・ビッタート卿の祖父『ノルシアム・ビッタート』が編み出した『魔装術』と組み合わせた最強の『無手流魔装神殺拳』だな。これは無手の技に精通してたノルシアムが組み上げた無手術だよ」

「”武神”と言われた伝説のダークエルフですか? 確か転生者だって・・・もしかして、しんちゃんの中に記憶と知識と経験が入ってるの?」

「あぁ入ってるよ。だから俺の中には無手流魔装神殺拳に加えて主神ゴッデス様から貰った『神殺しの力』が加わってるので、ゴッデス様からは『早乙女流武神神殺拳』となったと言われてる。魔装術や神殺しの力はミーには実現できないけど、ダークエルフ以外には門外不出と言われてる『無手流神殺拳』の技だけならミーにも習得は可能だろう」


「伝説の無手流神殺拳! やってみたい!」

「ただこれは時間がかかるよ。スキルを発現させるだけでもボクシング・空手・合気道・拳法・柔術・レスリングなど多彩な無手のマスターの上にあるのが無手流神殺拳だよ。だからそれらのマスタークラスでないとスキルは発現すらできないよ。ハンマー型の師匠ゴーレムとセバスチャンとマリアには無手流神殺拳が入ってるから、ミーが無手流神殺拳を目指したいなら彼らから習うと良いよ」

「わかった! しんちゃんありがとうやってみるよ」

「まぁ俺たちの人生はエルフ並みに伸びちゃったからな。より上を目指せる・・・それこそダークエルフ並みにな」


アイリ・ミー・クラリーナの3人の嫁が期待に胸を膨らませて地下訓練場に降りていってしまった。

残された俺は・・・暇だな。

早乙女工房には昨日の俺が蒔いた種が早速目を出して問い合わせが殺到してきてる。

結界師ギルドが涙目になる情報・・・

『結界ミスリル棒に魔石をつけると24時間で完全回復出来るから2本差して交代で使えるようにすれば半永久的に使えるよ!』

の影響力が俺の想像をはるかに超えて話が伝わってるようだ。

商業ギルドと結界師ギルドの双方からの問い合わせをする質問状が来てる。


俺は早乙女工房の執務室にある豪華肘掛椅子に転移魔法で跳んで座る。

今日は普通のスポーツシューズを履き、ユーロンドからアイテムボックス経由で送られてきた2通の質問状を読むが内容はほとんど一緒だし、差出人も両方ともギルド本部のマスターからなのがちょっと笑える。

質問状の中身は簡単に省略すると・・・

魔石がミスリル棒に及ぼす効果というものをとあるルートで聞いたが本当か?

うちのギルドで独占販売させてもらえないか?

ついては詳しい話がしたいから都合のいい日を教えてくれないか?

・・・って事だった。


アホか・・・これは最高評議会に対する俺の牽制球だ。

シーパラ連合国が国家独占事業にして違うギルドを成立させて美味しい汁を国に吸い上げようとするに決まってるじゃん。

目の前にエサぶら下げてやったら違うのが飛びついてきてるな。

世界販売すら考えられるほどボロ儲け出来る案だ。

これもゴーレムと一緒で魔石に封入する魔法の方が重要・・・ソフトが俺しか作れないんだよ。

今ある結界の魔法を詰めたミスリル棒に魔石をつけても何もならないからな。


結界師ギルドは大急ぎで実験したけど全く成功できないもんだから俺に独占販売を持ちかけてきてるだろうって事は・・・滑稽だな。

俺の渡したミスリル棒がまだ最高評議会で実験中だろうに・・・

3時間使って3時間休憩でも完全回復できるのが俺の渡した魔石付きミスリル棒だっていうのは知ってるんだろう。

まぁ彼らが何度実験を繰り返しても俺の言ってる事を証明する事しかできないんだけどな。

俺の知ってるデータそのものが古代人たちからの膨大な実験データの裏付けがあるっていう話なんだから。


俺からすればウェルヅリステルからウェルヅ帝国の南部中に張り巡らせてあった線路の結界まで全部を消去させたと言われてる『白虎・るびの』の方が恐ろしいけどな。

白虎戦争の初撃で自分の部下たちを殺した数万人の軍勢を消滅させて、ヨークルなどの城塞都市をいくつもの砦ごと消滅。

ウェルヅ大森林の中にいくつもあった砦をも消滅させて首都ウェルヅリステルへ向かい、首都攻撃の初撃でも全部の結界を消滅させたんだから”恐るべしブチ切れ聖獣”って感じだけどな。


シーパラ連合国はシーパラ大河から南部の線路は白虎戦争以来、絶賛放置中でそのまま大森林のジャングルに飲み込まれてしまってる。

俺が昨日シーズのウォーカー家に示唆した情報は2つだった。

ミスリル棒と魔石の関係という情報と、放置された魔石が線路沿いにあるという情報。

そちらの情報は上手く隠蔽されてるのか心配だな。

馬鹿が掘り返してしまったら余計な経費が掛かる事になるからな。

これは俺が最高評議会の秘密保持がどこまでできるのかという試験でもあったんだが・・・1つの情報は筒抜けだったようだ。

もう1つは冒険者ギルドにでも行けばわかるかな?

筒抜けだったら冒険者ギルドに調査団募集でも出てそうだし・・・大森林の中に飲み込まれてる線路沿いを掘ったりして調査するには、冒険者達の協力か国軍の兵士を展開しないとオークなどの魔獣に襲撃されるのがオチだからな。


俺は魔獣兵団の訓練に調査団を使えと示唆したんだがそれまでに秘密が守られるのかは、昨日の今日で商業ギルドと結界師ギルドにバレている状況では甚だ疑問だな。

俺はウォーカー家に対して情報漏えいの事についての質問状を書いてユーロンドに届けさせた。

俺に商業ギルドと結界師ギルドから手紙が来てることで、あえて漏らしたのかスパイがいるのか情報を売ってる奴がいるのかの質問状だ。

機密情報の取り扱いの為にはあえて漏らしたと思いたいが・・・そうすると俺に迷惑がかかるって事が読めてないという浅はかな考えだし、それも知ってて故意にやってるんであれば今後の協力はしないから後は自分達だけで成し遂げろっていう事も書いた。

もう一つの情報が漏れた瞬間から線路沿いの魔石はなかったものだと思った方が良いという事も書いた。


・・・これは早乙女家の安全の為の担保だ。

交換条件だと言っておいたのだが軽く考えてもらってるのであれば敵対行動だとみなす。

敵に協力なんてする奴はいない。

シーパラ連合国が俺との戦争を選択するのであればいつでもどうぞ、白虎以上の恐怖ってモノを全国民の骨の髄にまで刻み込んでやんよ・・・という事をオブラートと丁寧語に包んで書いた。


商業ギルド本部マスターと結界師ギルド本部マスターにも同様の答えを書いた手紙を届けさせた。

お前等はどっからこのネタを拾ってきたのか知らんが、これは俺とこの国の最高評議会の問題だ。

目の前の金に釣られて出てきたけど・・・これは国家機密情報で間違いがないレベルだ。

ギルドのトップが国家機密を何だと考えているんか?

って事を、これもオブラートと丁寧語で包んで書いた。


・・・さて、昨日流した情報で早速動きがあったけど今後はどう出てくるかな。

馬鹿は2匹釣れたし国へも脅迫しておいた。

俺からしたら・・・商人の国として確実なボロ儲け話が目の前にぶら下がったらどうなるかという実験でもあるんだから『踊れ! 踊れ!』って話なんだけどな。

俺の真意にまで気付く事ができる人はどこまでいるのか知らないが、気付いたところで敵対行動も取れないだろう。

不満は燻ってくるだろうが俺からすれば情報筒抜けで俺に質問状が来ることの方が余程不満だ。

俺の不満を無視して自分達の不満しか考えないのは『特権階級意識』に染まって俺の事を見下してるか、自分達の事しか考えられない程度の人達の集まりなんだろう。


商業ギルド本部のマスターと結界師ギルド本部のマスターは今頃俺の手紙を見て、いかに自分達が目の前の金に目がくらみ軽率な行動を取ったのかが分かって顔を青ざめさせてるだろう。

こういう行動を調べるためにあえてナディーネ・シーズ・ウォーカーが流した情報なのかもしれんがな・・・俺からすればフザケンナって。

ナディーネも俺の手紙を読んで情報を流したスパイを探し出して処分するしか俺への謝罪は始まらない。

まぁ、シーパラ連合国の女帝の腕を見せていただきましょう。


評議会から使者が来たのはそんな考えをしてる時だった。

ユーロンドからの念輪連絡があったので、隣の応接室に通して待たせることにした。

メイドゴーレムの空に応対をさせてドリンクを出した後に俺は応接室に後から入室。


「お待たせしました、早乙女さおとめ真一しんいちです。真一とは発音しにくいようなので、早乙女とお呼びください」

「初めまして。私の名前は『アグマイア・デルカーノ』と申しましてアグマイアとお呼びください」


自己紹介の後にソファーに座ってもらう。

評議会からの使者アグマイアは白いカードを見せてくれた。

これは評議会の連絡官カードで評議会からの通達や連絡を方々に運ぶ仕事をしているという説明を受けた。


「それで評議会から俺への通達ってなんですか?」

「昨日早乙女さんが行った”道場破り”の件です。昨日の警備隊の捜査の後の評議会への届け出によりまして、早乙女さんが行った道場破りは正式なモノとして評議会で受理されました。ですので紫村流侍剣術は昨日をもって消滅、道場および全資産は評議会に一時預かりとなりました。それで早乙女さんには今から『道場破り認定書』にサインをいただきまして、紫村流の持っていた全資産は早乙女さんに譲渡されます」

「は? 道場および全資産ってそんなにいっぱいあるの?」

「えぇっと・・・首都シーパラにある本部の道場で使用していた土地建物は全部紫村流の資産です。紫村流が保有していた資産は他にはドルガーブとシグチスに道場を所有してまして、それらの土地建物は早乙女さんの所有物となります」

「・・・」

「それ以外の都市・街の物件はすべて賃貸の道場ですので持ち主に返還されて前払いされていた家賃が日割り計算されて返却されます。それらの返却金と紫村流道場主、住込みの師範代の個人資産も全部含めますと・・・残った現金資産は15億Gほどになりますね。これには税金はかかります。現金と土地建物の税金までかかりますので税引き後は半額以下の7億2000万Gほどです。3つの道場の土地建物の評価額が10億Gを超えますので税金も多くかかってきてしまいます」


これは想像以上なモノが転がり込んできたな。

ドルガーブとシグチスの道場の大きさはわからないけどシーパラにある本部道場は早乙女邸の隣の倉庫ぐらいの敷地があって周囲の道場の中でも一回り以上大きかったからな・・・

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