水神の涙ってアイテムをセバスチャンが発見してたっす。
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以上で俺の冒険者ギルドに伝えるべき情報は終了。
明日に冒険者ギルド本部に持ち込んで俺が渡した情報を精査するために緊急幹部会を開いて、明日の午後に正式に発表するような流れになるようだ。
まぁ、あとは冒険者の俺の手を離れ冒険者ギルドから正式発表するという話なので、全部任せて俺は帰宅することにする。
嫁達もすでに少し眠そうだ。
俺は外に出てキャンピングバスをセバスチャンのアイテムボックスから取り出してもらい、中に乗り込むとブランディックスの町を出たらすぐに嫁3人を連れて、セバスチャンとマリアを残して早乙女邸の浴室横の更衣室に転移した。
セバスチャンとマリアはしばらくキャンピングバスを運転してもらってから、周囲の安全を確かめて早乙女邸のガレージにキャンピングバスごと転移してきてもらう。
俺は更衣室で嫁達とお風呂でローションを使ったエアーマット遊びをして楽しんだ。
・・・そういえばアマテラスにローションポットをもらっていたけど、全く使ってなかったという事を風呂に入って思いだしたからだった。
冒険者ギルドブランディックス支部を出たばかりのときは大したことがなかった雨も、早乙女邸の更衣室で防具を脱いでエアーマットで全身洗いを4人で交代で楽しみ、終わってから露天風呂に入ろうと外に出たらザーザー降りとなっていた。
仕方がなかったので内風呂をみんなで雑談しながら楽しんでいた時にローションポットの事を思い出し、みんなにローションの正しい(?)使い方を教えながらイチャイチャと4人の夫婦生活を満喫する。
風呂から上がって今夜はゆっくりと時間をかけてたくさん寝ることにした。
おやすみなさい。
明けて転生してから36日目。
5月6日の朝は土砂降りで、朝の7時に起きたのにまだ外は暗い。
嵐のように雨も風も強く吹き荒れてる・・・外は風雨が強くて5月なのに肌寒い気温しかない。
ここまで天気が悪いのはイーデスハリスの世界に転生してきてから数えるほどしかないな。
この時期の天気の状況から考えると明日の天気も悪そうだ。
寝室のベッドの周りでは毎朝のいつもの風景が繰り返されている。
『今朝の朝食はダイニングで俺の故郷の朝食スタイルで食べてくるよ』
そんなところに俺は嫁達に告げて、今日は肌寒いのでロンTの上にパーカーを羽織り、ズボンはチノパンをはいて1階のダイニングに降りて行った。
こういっておくと誰も下に降りてこない・・・俺が納豆を食べるのを知ってるからな。
俺はクロにほうじ茶を入れてもらいながら自分で朝食の準備をする。
ご飯・味噌汁・漬物・納豆・魚の干物・卵焼き・・・シンプル和朝食だ。
漬物はミルクル特製の糠漬けのきゅうりとなす・魚の干物はアジの開きは自作・卵焼きは大根おろしと醤油で。
朝食を食べ終わってリビングに移動して食後のコーヒーをすすっていると、るびのから念輪連絡が入ってきたんだが・・・昨日フォクサの故郷のウェルヅ大陸最北端の岩場に露天風呂に入りに行くと言って出かけてから、るびのもフォクサも帰ってきてないようなんだけど・・・
「とうちゃん、今日は大森林のオーク&トロール狩りに行ってくる予定だったんだけど・・・昨日の緊急魔獣念輪会議で中止になったんだ。それで今からで悪いんだけど・・・とうちゃんにこっちに来てもらってもいいかな?」
「えっ? るびの・・・済まんが、もうちょっと詳しく話してくれないか?」
「今回は選抜チームで狩りをする予定だったんだけど・・・今日はあいにくの天気だし明日になっても天候が回復しそうもないんで、天候が回復するまで延期になったんだ。それで昨日の露天風呂に入りに行ったときに狐魔獣達と話をしたんだけど・・・次回からはぜひ自分たちも参加したいってことで、今日はフォクサに頼んで狐魔獣を連れて他の魔獣たちへの挨拶回りをすることを決定したんだ」
「ふむふむ」
「それで、とうちゃんにお願いしたいのは挨拶回りに行く前の狐魔獣たちに会ってもらって、とうちゃんの子分になって念輪を作ってあげてほしい」
「あぁ、そういうことな、了解・・・あっ、ちょっと待っててくれ」
ちょうど着替えと朝食を終えて降りてきた嫁達に俺が今からフォクサの故郷に行って狐魔獣たちに挨拶に行ってくると言うと、嫁達も一緒に行きたいという意見だった。
「るびの、母さんたちも一緒に挨拶したいって事なんだけどいいかな?」
「それは大歓迎だよ! それと、北の方はまだ雪が残ってるし外は寒いけど狐魔獣が住んでる洞窟の中は、家の中よりもかなり暖かいから・・・気を付けてね? じゃあ、狐魔獣の巣の場所はセバスにーさんが知ってるから、ここでみんなで待ってるね?」
「おぅ、すぐに行くよ」
暖かそうな服装でも作ろうと思ってたが・・・現地に行ってからでもいいな。
全員で玄関に行って靴を履いてからセバスチャンの転移魔法で狐魔獣の巣の洞窟に移動した。
巣の洞窟の中は北の山岳部の洞窟というよりも、ムシっとしてて湿度も気温も高いので南部のダンジョンの中にいるかのようだ。
さすがにアマテラスにもらったMAPにも狐魔獣の巣の洞窟内部まではデータが入力されていないので、探査魔法で探りとりMAPを埋めておく・・・ここもグリーンウルフダンジョン並み広さがあるな。
こちらは2層構造なんだけど範囲がグリーンウルフダンジョンよりもかなり広いから・・・名前はシンプルな『狐魔獣ダンジョン』でいいな。
セバスチャンに案内されて狐魔獣のリーダーで、るびのの新しい眷属となった『博閃』の住んでる部屋に連れて行ってもらう。
博閃の部屋は狐魔獣ダンジョンの中で一番広い空間で、狐魔獣の集合場所にしている大広間となってる部屋の隣にあった。
狐魔獣は大広間に30頭以上集まっていて・・・相変わらず魔獣は獣と違ってみんなデカいな。
炎虎達と大きさはほとんど変わらないぐらいで尻尾まで含めると全長4m以上は確実にある。
・・・しかもモッフモフだ。
博閃と挨拶をする。
るびのの眷属になるとまるで歌舞伎役者のようなクマドリができるみたいだな。
クマドリの色は大黒豹の水影も銀色だった・・・アキューブはどうなってるんだろうか?
全身銀色の毛皮に覆われた『銀大熊』なんだけどな・・・
アキューブのクマドリの謎は置いておいて、狐魔獣といろいろと雑談をする。
雑談の中で出た話だったんだがこの岩場周辺には狐魔獣の餌となるような魔獣が数種類いて、その中でも狐魔獣が好きなのは蟹魔獣とエビ魔獣と『シプラコーン』と呼ばれる羊の魔獣。
シプラコーンの毛皮がモコモコで防寒にはもってこいな毛皮と言われてる。
人間が入り込む事ができないようなウェルヅ大陸の北部の険しい山岳地帯となってる場所にシプラコーンは住んでいて、空を飛ぶ魔法を使いこなせるような魔導師がいなくなった今では、シプラコーンが住んでいる場所に行くことができないので狩れない。
それで古代から伝わる山岳信仰集団の海から出入りできる海岸線にある『祠』に、年に3度ほどオーク肉とトロール肉をお供えして10日後に祠に行ってみるとシプラコーンの毛皮に山の神様が取り換えてくれて、普段手に入らないシプラコーンの毛皮が安定して取れるという伝説が今も続いてる。
まっ、狐魔獣と古代人との契約が今も残ってて狐魔獣たちは普段手に入らない美味しい肉が手に入るってだけだし、人間側も狐魔獣のおかげだと知ってるので伝説だけ利用して安く手に入れた肉を高級な毛皮に替えてる。
それで去年バカが祠にアイテムを使って身を隠し中に入り込んで待ち伏せして罠を仕掛け、シプラコーンの毛皮を運んできた若い狐魔獣10頭が油断してるのを良い事に、シプラコーンの毛皮ごと捕獲して船で仲間とともに逃げ去った。
狐魔獣側は若い者たちが消えてしまったので山の神様に訴える。
山の神『ヤマガミ』は全てを探って・・・大激怒!
ヤマガミは即座に対応して闇マーケットに流れそうだった若い狐魔獣10頭を、シーパラ連合国最北端の都市『エクステンド』近郊にある隠れ家に隠されているのを補足。
博閃を筆頭に狐魔獣選抜隊100頭を『山の神の使い』という加護を一時的に与えてステータスを爆上げさせて転移魔法で選抜隊を隠れ家周辺に送って急襲させた。
見事にさらわれていた若い狐魔獣10頭を取り戻すことに成功。
ヤマガミは祠を守っていた山岳信仰集団の中にいる内通者と敵の組織全員に『ヤマガミの呪い』をかけて下半身不随にさせる。
さらに関係者全員に神託をくだして今後の契約の打ち切りを通告。
神託がくだされた関係者は評議会に訴え出てた。
評議会は緊急会議を開き国軍を使って下半身不随になった全員を捕縛して、真偽官を伴った裁判を行う。
事実が確認されると全員が見せしめでギロチンを使い処刑された。
犯罪者は全員処罰されたが・・・それから祠で誰が祈っても古代から伝わるどんな儀式を行ってもヤマガミと狐魔獣は沈黙を守り返事もしてないらしい。
教会関係者がアマテラスに祈った時にアマテラスがくだした神託は・・・
『神を冒涜した結果です。祈り続け謝罪し続けなさい』
こんな状況になったことだし狐魔獣もあと数年はトロール肉もオーク肉も食べられないと我慢していたが、るびのとフォクサが来て大量にトロール肉もオーク肉も持ち込んでくれたおかげで、我慢すらも必要なくなってしまった。
それに蟹魔獣とエビ魔獣を火魔法で焼いて食うと滅茶苦茶美味しいってことまでも教わったので、もはや古代人から伝わる人族との契約なんてどうでもいいって状態になってる。
るびのとフォクサのおかげもあって今は狐魔獣の怒りは消滅してしまったが・・・
ヤマガミが絶賛ブチ切れ続行中の『激おこ』状態。
それで昨日、るびのから大森林の遠征話を聞いて・・・狐魔獣達は今後は自分たちの手で安定的に供給できるように、自分たちも合同作戦に参加したいって事になった。
しかしながら、本日の早朝に行われた『念輪による眷属だけの緊急会議』で天候不良で遠征は延期になった。
突如として暇な1日になったので各魔獣の挨拶回りにフォクサに連れて行ってもらうみたい。
るびのとフォクサとの会話の中で・・・博閃も念輪が欲しいという話になって俺に連絡してきたみたいだ。
俺がアイテムボックスから取り出した念輪を博閃に装備させてあげてる時に、昨年から今日までにあった裏話を教えてもらった。
「なるほどな・・・それで博閃達はシプラコーンの毛皮とか角はどうするんだ?」
「るびの様とフォクサさんからボスがこういうのが好きで集めてるって聞いてますので、ボスに子分にさせてもらったお礼に溜まってる分を差し上げます」
「はぁ?」
「っていうよりも、自分たちには肉と骨以外必要ないんで処分してくれませんか? 大量にあって処分に困ってるんです。人族には防寒具とかに最適だから高級品だってヤマガミ様に聞いてますんで」
若い狐魔獣たちに案内されて倉庫に行ったが・・・倉庫の部屋からすごく溢れてるよ・・・1000以上は余ってるらしい。
毛皮は防寒着に作れるし、この毛から高級セーター・高級毛布なんかも作られてる。
シプラコーンの角は金属加工で使われる高級素材だ。
金属・・・中でもミスリルの硬度を一切下げずに粘度のみを大幅に上げてくれるので、超高級品のレイピアなどで使われている。
『MS鋼』と武器・防具職人たちの間では呼ばれているもので、世間一般にはほぼ知られてない。
シプラコーンの角自体がなかなか市場で出回らないアイテムだから仕方がない事だし、MS鋼を使った武器・防具を製造して・・・自身の名前が武器・防具名に入ると名工・熟練職人としての名声が得られるぐらいに熟練の技術がいる。
とりあえず1000頭分の毛皮と角をもらっておいた。
シプラコーンは最低でも年に200頭ぐらい狩らないと、いくつもの山をはげ山にしちゃうほど食欲が旺盛なのでヤマガミからの依頼で狐魔獣が定期的に狩りをして増えすぎないように間引いて調整されてる。
狐魔獣とヤマガミの数千年続く関係があるので・・・昨年の若い狐魔獣が捕獲されて浚われた時に、博閃から訴えを聞いたヤマガミが激怒した経緯があるらしい。
博閃達は仲間も取り戻せたし、るびのとフォクサのおかげで肉の我慢も必要なくなってしまったので怒りは消えた・・・だけど神はそんな優しくないし”たかが人間ごときに神が舐められた&侮辱された”・・・恨みが晴れるのは数年がかりになりそう。
1000頭分のシプラコーンの毛皮と角を俺のアイテムボックスに入れたので倉庫の中はほとんどなくなったんだけど大丈夫なのか?
博閃に聞いたら・・・ヤマガミから聞いた話ではこの後問題がなければ2年後から契約は再開するみたいだけど、取引レートがしばらく強制的に変更され・・・数年間は人間に渡す毛皮と角の量はほんの少しずつでいいので、すぐにまた溜まるだろうって計算まで終わってるんだと。
まぁ貰えるものはありがたく頂く。
アイテムボックスで全員分のシプラコーンの毛皮製の頭にかぶれるフード付きコートと耳付きの飛行帽のような防寒帽・首と顔を覆えるマフラー・毛皮の手袋まで作った。
全員で服の上から着て狐魔獣ダンジョンの外に出てみたが確かにメチャクチャ暖かくて、さすがは最高級防寒素材だな。
内側には龍布を張り付けたので実は防御力も非常に高く作られている。
MS鋼もアイテムボックスの中で作って全員分のレイピアも作るが、刀剣類の扱い方を知らないクラリーナには・・・刃の長さは45cm程にして防御用で取り扱いやすい長さの肉厚な短剣にした。
俺以外の全員分の剣には重量軽減する重力魔法で使用者には取り扱いやすく500gも重さは感じないようにしてある。
全員分の剣を儀礼時でも装備可能な華やかな装飾できれいに飾りつけたので、剣の名前が『早乙女儀剣』となっている。
アイテムボックスで作り終えてから嫁達にそれぞれ渡し、全員に軽く振ってもらって好みのバランスにする加工をした。
クラリーナは500gでも片手では重そうだったので100g程度にしてあげた。
狐魔獣ダンジョンの外に捨てられていた蟹魔獣とエビ魔獣の甲殻をもらう事にした・・・貝の魔獣の貝殻も捨てられていたので一緒にいただいておく。
さすがの狐魔獣も蟹魔獣やエビ魔獣の甲羅や貝魔獣の固い部分は食わないみたい・・・力づくで開いて中身はペロッと食ってるけどな・・・それで食えない固い部分はゴミとして巣の外に大量に捨てられて山となってた。
海の甲殻類・貝類の魔獣からとれた甲殻は・・・金属よりも大幅に軽くてサソリオオクモなどの昆虫魔獣系の甲殻よりも熱に強いので鎧や盾の素材として結構人気がある。
マリアとセバスチャンにも手伝ってもらって拾い終わって・・・何しろ大きめの穴が掘ってあるのだが、今では穴を超えて山になってたからな。
全回収が終了したので博閃に挨拶して転移魔法で嫁達を連れて帰宅することに。
博閃はこれから狐魔獣選抜メンバーとともにフォクサに連れて行ってもらって魔獣の各本拠地に行く挨拶回りだ。
昨日の深夜にフォクサ・るびのと共にお土産にする蟹魔獣を狩って焼いたモノを持っていくと言って笑ってた。
るびのとフォクサの登場で大草原や大森林に住む魔獣たちの食生活は獲物の交換で潤ってきてるな・・・
ノンビリしてたけど早乙女邸に帰宅してもまだ朝の9時半だった。
嫁達はそのまま地下訓練場に行ってそれぞれの武器の練習をすると言ってガレージから地下に行った。
俺も地下室には行くが階段は使用しないでワインセラーの方に転移で移動する。
ドルガーブなどで大量に酒を購入したので、熟成させる酒はワインセラーに置いておく。
アイテムボックス内では一切の時間経過が停止してしまうので、熟成・発酵・醸造などは全くできない。
樽やビンを並べ終えて・・・酒の量や種類がかなり増えてきてるので分かり難いかと思い・・・樽の外には簡単なパネル・ビン類には名刺サイズの説明文などをビンから紐でつるしておいた。
お酒の整理整頓が済むとワインセラーから出て熱心に練習しているみんなの様子をうかがう。
アイリは今は大剣を使って魔獣ゴーレムと師匠ゴーレムとの実戦に近い練習をしてる。
ミーは俺が先ほど作って渡した早乙女儀剣を右手に、左手にはロードクイーンのエストックを装備してレイピア二刀流の練習を熱心にしてる。
クラリーナはまだ練習用の弓で10m離れた的に向かって撃ち込んでるが・・・今のクラリーナの初心者レベルの腕ではさすがにこの距離でも直径50cmぐらいの的には5本に1本ぐらいが何とか的に当たるってぐらいで、ほとんど当たっていないようだ。
俺は邪魔をしないように階段の上から静かに見学をしてそのままガレージに戻った。
玄関から外に出ると朝から降ってる雨は断続的ではあるが時折強く土砂降りになったりして雨は止んでいない。
早乙女邸の庭は表も裏もほとんどが既にセバスチャンとマリアの手によって畑と花壇に変えられている。
畑といっても野菜や果物だけでなく塀があって一日中太陽ががほとんど当たらない場所には、あえて木製の簡単な屋根をつけてキノコの栽培までしている。
裏庭も芝生が植えてありガーデンパーティーなどで裸足で遊べそうな部分も残ってはいるが、家族で楽しむスペースを残して半分以上が今は畑になってる。
シーパラ大河の堤防と庭の境目のところには、下に降りる階段の入り口の扉の部分以外は樹木がずらりと並んでいる。
河に浮かぶ船からの視線から早乙女邸を守るためだ。
その畑の作物・花壇の花・樹木を守るために早乙女邸の敷地内には必要以上に風雨が入らないように結界が張ってあり結界内からシーパラ大河へと転送される。
庭の畑を見て回りながら・・・作物がデカいし、成長力が凄まじいな。
マリアとセバスチャンから報告は受けていたが・・・深夜の暇な時間にウェルヅリステル南部で聖獣『みかみ』がいた地底湖に何度も行って、地底湖の水の中に残ってる栄養分の抽出に成功していた。
セバスチャンとマリアも始めは地底湖近くの土を持って帰ってきて早乙女邸の畑に使用していたけど、そのうちに地底湖の水を運ぶことにした。
しかし地底湖の水は海水が混じっているので直接畑には使用することができない。
地底湖の水から塩分・ミネラル・栄養分などと料理スキルで分離・精製などを繰り返すうちに『ミネラル豊富な塩』と『作物を育てる栄養豊富な水』に分離することができるようになった。
作物を育てる栄養豊富な水からさらに1段階進んで・・・栄養豊富な水から栄養素の塊『水神の涙』というアイテムの完全分離に成功するまでには時間はかからなかった。
今はこの『水神の涙の希釈液を使用して作物は何倍になるのか?』という実験段階。
100倍希釈液~1000倍希釈液を様々に使い『作物の大きさの変化』『成長度合い』『収穫時期の変化』などなど実験してることはかなり多い。
セバスチャンとマリアに転移魔法を封入してあるので、今は大草原のグリーンウルフダンジョンの近所・大森林の水影の巣の近く・地底湖の上にある丘などに実験農場を各地に作って、大量のデータを集めてるようだ。
・・・有能すぎる執事とメイドに頭が下がるな。
ここで思い出したのは・・・昨日から早乙女式馬車によるおにぎりの試験販売が始まっている事。
俺は早乙女商会のシーパラ支部に転移魔法で跳んで見学しに行くことにした。
さすがに豪雨なので苦労してるかなと思ったが・・・そういえば早乙女邸と同じように、もふもふ天国全店・早乙女商会の全支部・早乙女工房は結界内に入ってくる雨と風の量を制限してるので・・・ちょっとした避難所&休憩所みたいになっているようだな。
このゴーレム馬車駐車場で雨具のコートだけでは足りなかった人達が、道すがら一時的に避難してきて雨具のコートの上にポンチョを羽織ってから移動していく人もいたりして、もふもふ天国シーパラ店のゴーレム馬車駐車場は大混雑をしていた。
もふもふ天国も行列ができるまではいってないが店内は混雑しているようだし、おにぎりの販売も好調そうだった。
雨でベッチャベチャに濡れてる人に・・・
『もふもふ天国の店内に入ると入り口に乾燥の魔法が掛けられてるので一時的に避難されてはいかがですか? 時間があればでいいのですけど・・・ブーツも同じように下駄箱で乾燥してくれます』
と宣伝すると髪の毛がベチャベチャに濡れた女性が数人店内に入っていった。
念輪でゴーレム馬車駐車場で交通整理をしているユーロンドに俺が今言った事を教えて宣伝するように指示を出しておく。
すると早乙女工房のメイドゴーレム『空』から念輪で連絡が入ってきた。
「ご主人様、ただいまガルディア商会の秘書の方が見えられまして、今日の今から早乙女工房での早乙女式馬車でのおにぎり販売をさせてほしいとのことですがいかがされますか? ちなみに早乙女式馬車はすでにゴーレム馬車駐車場に停車してます」
「秘書と早乙女式馬車が来てるってことは、何かの計画が変更されてるようだな・・・わかった。今からそっちに向かうから中の駐車場で待たせておいてくれ」
「了解しました。伝えておきます」
俺はもふもふ天国はこのままゴーレムたちに任せてホップボートを取り出して移動することにした。
真っ直ぐに中央行政区を南北に横切って行くだけなので15分ほどで到着する・・・ゴーレム馬車で道路が混雑する時間ではないから、ホップボードだとすぐに到着できる。
早乙女工房に到着してビックリしたのは・・・ここも緊急避難場所のようになってるな。
確かに外は豪雨で雨も風も酷い状態だが早乙女工房の敷地内はパラパラしか雨は入ってこない。
みんな何で知ってるんだろう・・・
俺はそのまま中のゴーレム駐車場に入っていくと中には俺は製作した早乙女式馬車が停車していた。
俺が見た事のあるゾリオンの秘書だったので詳しく話を聞くと・・・
ガルディア商会本部ビルのゴーレム馬車駐車場で豪雨の中でのおにぎり販売は、お客様の要望で本部ビルの中で販売することになった・・・こんな時間・豪雨に係わらず並んで購入してくれていたお客様の声を無視するわけにはいかないって判断らしい。
本部ビル内部の受付の横の空いたスペースで今後はおにぎりを販売していく事が決定された。
それで早乙女式馬車が宙に浮いてしまうことになったので、急きょ予定を早めて早乙女工房の駐車場で販売させてもらえないかとの交渉に来たみたいだ・・・仮契約しかしてないからな。
さっそく正式に契約書を交わして外のゴーレム馬車駐車場で早乙女式馬車によるおにぎり販売の正式契約をしただけでなく、このまま秘書から渡された商業ギルドに提出する早乙女工房ゴーレム馬車駐車場での、おにぎり販売出店届に合意者としてサインした。
早乙女式馬車内でおにぎり販売の準備をしてる間に、秘書はこのまま商業ギルドに行っておにぎり販売出店届を提出するみたいだ。
秘書が外へと走り出て行って早乙女式馬車も外のゴーレム馬車駐車場の契約した駐車場所に移動して開店準備に入るようだ。
何事かと見ていた避難者に聞かれたのでおにぎり販売の説明をしておいた。
周囲を警戒しているユーロンド達にも説明するように指示を出す。
あとは自分たちでも販売できるだろうし・・・今日のような豪雨で早乙女工房の敷地が緊急避難場所となってるようなときには意外と宣伝効果があるかもしれんな・・・
秘書が帰ってきた頃には美味しそうなご飯の炊きたての香りが周囲に漂ってくる。
早速おにぎりの販売が始まり、匂いに釣られて早乙女工房に避難していた人達の中から何人かが列をなしていた。
ここで販売している店員には『ナディア・グラナド』がいた。
準備で忙しそうだったので話しかけはしなかったが、笑顔で手を振っておいたら笑顔の会釈が返ってきた。
こうやって見てるとナディアの母の妹でシーパラ教会大聖堂で働く『シル・バリトネット司教』にも似てるけど・・・2人ともドルガーブに住む『ミルクル・マキアート』に似てるんだな。
エルフの美形の顔ってのはミルクルみたいな顔になるんだろう。
おにぎりの販売は中身の具の種類が4種類『梅干し』『おかか』『昆布』『赤紫蘇の混ぜご飯』
1つ150Gで4つセットは500Gで販売されることが決定されてる。
海苔は先に包んでおくか後で自分で包むかが選べる・・・俺はしんなりした海苔も好きだし食べる直前でまいてパリパリのまま食べるおにぎりのどちらも美味しいと思うので・・・どっちの海苔も好き。
敷地の外を歩く人たちも、時間に余裕のある人たちは足を止めて中を伺ってくるし、その中には興味を持って購入してその場で食べてる人もいる。
俺は邪魔しないように早乙女工房の中に入っていった・・・暇だな・・・何か作ろうかな?
早乙女工房の2Fにいって応接室に腰かけて悩んでいるとメイドゴーレムの紺がきてコーヒーを入れてもらっている時に橙に話しかけられた。
「ご主人様にお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」
「んっ? どうした?」
「早乙女工房に簡易ゲートを置いてマヅゲーラの街と繋ぐことによって、早乙女工房は任侠ギルドの足掛かりの拠点となっているのですが・・・これは一時的なものなのでしょうか?」
「今のところ一時的な措置だな。俺の考えでは任侠ギルドでシーパラにある裏組織の本拠を潰して乗っ取ろうかと思ってるんだが・・・敷地・建物を任侠ギルドで購入して改造よりも手っ取り早そうだからな。そうは言っても任侠ギルドの幹部会でもまだ何も決定されてないから何とも言えないな」
「乗っ取るのは本拠だけですか?」
「というと?」
「組織ごと乗っ取るというのはいかがでしょうか?」
「人員コミか・・・でもなぁ・・・」
忍20体と徒影6号~20号の探り取った情報で今まで俺が受け取った報告によると、俺が潰した組織から探り取った情報の中で今のところ生き残ってる下部組織はあと1つだけだ。
ここはあまりに小さすぎて資金力が既に尽きていて、俺が何もしなくてもそろそろ捜査の手が入って消滅しそうだ。
それでこの前叩き潰したマフィアギルドの下部組織の動向を忍と徒影を使って探らせたが・・・こっちの方は3つある。
組織ごと乗っ取る気もなくなるほど3つとも腐ってる組織なので、任侠ギルドで潰して建物と敷地だけいただこうかと思っていた。
「それでしたら、なおさらマフィアギルドの下部組織の人員を奴隷にして、死ぬまで働かせた方が良くないですか?」
「誘拐した奴隷で私腹を肥やしていた人間たちを奴隷とするのか・・・なるほど、いいアイデアだな」
「さらにマヅゲーラの街でこれまでは無料ボランティアで任侠ギルドがしていた清掃を請け負う無料清掃員としてコキ使えば街もきれいになりますし、シーパラの警備隊・国軍の捜査組織の監視の目からも逃れる事が可能だと思われます」
「それもいいアイデアだな。皆殺しにするよりも良い見せしめになりそうだな」
潰す組織は3つだが手に入る敷地と建物は2つ・・・1つは小さくて集合場所が決まってるだけの組織。
3つとも上部組織が完全崩壊させられて逃げようとしてるという情報もあるし・・・
これは急いだ方がいいかもしれんな。