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ブランディックスダンジョンの地下10階のボスを攻略したっす。

11・9修正しました。

嫁達と酒盛りしながら、酒と話は進んでいく。

俺はウイスキーのコーラ割りを飲んでみた。

アマテラスからコーラの製造方法を教えてもらって作ってみたが・・・嫁達には不評だった。

シュワシュワする炭酸がキツかったみたいだ。

微炭酸にしたがそれでも無理っぽいな・・・シャンパンはガブガブ飲めるのにな・・・何か釈然としないが人の味覚は千差万別。


焼肉のタレもすでに作った・・・ワイバーンの生肉から抽出したドラゴン汁を少量加えたらコクが増してより美味しくなったのはうれしい発見だった・・・セバスチャンが発見したんだが。

今ではドラゴン汁は早乙女家の肉料理での隠し味としてコクを増す為には欠かせない調味料となってる。


嫁達もそれぞれが好きな酒を飲んでる。

つまみとして列車で購入したチーズを溶かして蒸かしたイモに掛けて食べる。

歯ごたえが欲しいというミーのリクエストにこたえて大量に余ってるトロール肉のジャーキーを作って、リビングのテーブルの上に置いた皿の上に出した。

ジャーキーを薄くスライスして蒸かしイモとチーズの間に挟んで食べてみたが、これも美味しくできたようだ。


嫁達との話し合いでの結論は・・・

教会の中の傍迷惑な奴はまだまだいるようだけど・・・小物感が凄いな。

アマテラスさんよ・・・これぐらいは俺の手を使わずに神託ぐらいで何とかしとけって思うほどの小物っぷりだ・・・なので放置に決定した。

シーズの家2つ『ケミライネン家』『角館家』は保留にするしかないな。

マスカーに間に入られている以上、こちらから積極的に動くこともできない。

フォンマイ家は俺の手を離れてゲルアーが自分自身で解決するしかない・・・組織の内部の問題だからな。

こちらも時間がかかるだろうし俺が手伝うって話じゃないから放置するしかない。

・・・こんなところかな。


俺は今日の紋章師の話に移って、今日できたばかりの早乙女家の紋章プラチナプレートと旗と印章リングを嫁達に見せた。

早乙女家の家紋の鐶桜かんざくらと、るびのの顔をあしらった白虎の紋章はシンプルで格好良いと大好評だったので、作った時の悩んでいた話なんかで盛り上がった。

アイリの父親とミーの実の両親もBクラスの冒険者だったので紋章は持ってなかった。

なので、感動しているみたいだ。

クラリーナの実家も初代は紋章もちのようだったが、何代か前から戦闘能力は受け継がなくなってしまい事務方に回されて軍を任せられなくなってしまったので、実家のタンスに封されていてクラリーナも1度しか見た事がないって話を聞いた。


アイリとミーから聞いて意外だったのが・・・『ガルパシア・ウルス』通称”おやっさん”が紋章もちみたいだ・・・デリカシーもないくせに・・・

ああ見えて元の生まれはドワーフ貴族の末端の人間で、若い頃はエルフとの戦争で大活躍。

国家勲章を授与されて貴族『騎士ナイト』の称号を与えられ、紋章もその時に作っているようだ。

10年以上前にだけどおやっさんとおかみさんがが酔っぱらった時に紋章プラチナプレートを見せてもらったと教えてくれた。

盾が中央で交差していて真ん中に『巌』の文字が書いてあって・・・シールダーとしては憧れるとアイリが言ってた・・・やるな、おやっさん。


俺からの今日の出来事の話は終わったので嫁達の今日のブランディックスダンジョンの成果をもらう。


・・・正直に言って今までここのダンジョンで出てきたアイテム達は、残念すぎて悲しい気分になるほどの素材や使えない武器、欠点がありまくりな防具などのオンパレードだった。

今日の成果はほぼ素材だけ。


B8F『ダンジョンモンキー』は森林モンキーと違ってしっぽは通常ドロップアイテムの毛皮のベルトになって出てくる。何の特徴もない普通のダンジョンモンキーの革製ベルトにダンジョンモンキーのグリーン色の毛が生えてるだけ。

レアドロップアイテムだともっと意味不明で『サルの手』ミイラになったサルの手が出てくる。

これは呪術師が呪いで使う・もしくは悪魔召喚の儀式でしか使い道がなくレアのくせにチョコチョコとドロップ率が高いアイテムなので貴重アイテムでもなんでもない・・・残念なアイテムだな。


B9Fに出てくる魔獣は『大蝙蝠』

これは遠距離から超音波で敵に不快感を与えてイライラさせる攻撃を繰り返ししてきて、滅茶苦茶ウザい攻撃をしてくるが遠くにいて近づいてこないので・・・なおさらムカつくみたいだ。

ウインドカーテンを使って超音波を乱反射させると逆に攻撃に向かってくるという・・・超音波攻撃で相手をイライラとムカつかせてどこかに行かせたいのか?

超音波が自分が当たると怒って出てくるので全く持って意味不明な生物だと、購入したMAPの解説書にすら書かれてる。

大蝙蝠の通常ドロップアイテムが『蝙蝠の羽』なのだが・・・これも呪いアイテムと悪魔召喚のアイテムでしか使えない。

レアドロップアイテムはあまりのドロップ率の低さに幻とまで言われてる『蝙蝠の革』で、これは万能解毒薬の素材になるアイテムなんだが・・・ダンジョンではドロップしないほどレア度は高くても、夜間の大森林に行けばどこにでもいる大蝙蝠で、こちらからは解体すれば同じ物が普通に入手できるので商品価値は低い。


B10Fに出る魔獣は『肉食バッタ』

コイツはドロップアイテムがバッタの牙しかない。

レアドロップはないが魔石をよく落とすので昆虫魔獣としては珍しい種類となってる。

コイツの牙は何故か金属のダマスカス鋼製で出来ており・・・こんな牙でかじられたら痛そうだな。

ダマスカス鋼は牙の先端部分と表面だけなので、加工して使用できるのは1本あたり数gしかない。

これも残念極まりないアイテムとなってるようだな。


このB10Fの罠解除が複雑に絡み合ってて、B11Fへと降りる階段までは簡単だったようだが、それを過ぎてボス部屋の寸前までクリアーしてきたら嫁全員が罠解除スキルが中級までいけた。

それで俺との約束通りボス部屋には行かずにB11Fにいって罠解除の練習に明け暮れていたみたいだ。


B11Fからはマッスル解除はとたんに難しくなる。

罠の解除に失敗すると神経毒の毒霧が地面から吹き出てきたり数十本の猛毒の矢が飛んできたりと、罠解除の専門職がいないとどうにもならなくなってくる。

毒関連の攻撃が厄介なのは掠っただけで、吸気しただけで行動不能になったりするからな。


出てくる魔獣も毒攻撃が多くなってくるのも特徴の一つでウザさも倍増する。

B11Fは『毒霧クモ』が出てくる。2mほどの大きさで足の長さも2mほどある。

名前の通り毒霧を吐いてきて目に入ると涙が止まらなくなったり、吸気すると喉に焼け付くような痛みを引き起こしたりして戦闘どころではなくなってしまう。

水溶性の毒物で水魔法のウォーターカーテンで完全に無効化されるし、水で洗い流せば体内に入った毒物は無効化できるのだが、吸気して肺にまで到達してしまった場合は、水蒸気を10分以上は吸い続けないと治せなくて24時間は七転八倒して苦しみ続ける事となる。

遠距離攻撃できる武器で戦うか魔法が使えないとマスクやゴークルを装備して戦わないといけないので簡単に一言でいうと・・・『面倒臭い敵』


なのでここではセバスチャンが主に狩って回収もセバスチャンがしていたみたいだな。

るびのとフォクサは完全にサポート&魔法防御側に回っていたようだ。

まぁ、ゴーレムには一切効果のない毒だしな・・・毒霧が直撃しても3点セット魔法で完全に除去できる。


セバスチャンが物は試しで毒霧クモに3点セット魔法を使用してみたところ、もがき苦しんで5秒ほどで絶命したみたい・・・光魔法『浄化』と火魔法と風魔法の複合魔法『乾燥』がかなり効果的みたいだ。


毒霧クモの通常ドロップアイテムは痺れ薬袋。

何故か理由はわからないが袋の中に水を入れ1時間ほど放置すると痺れ薬の効果のある水になって出てくる・・・効果は10分ほどらしいが1口飲むだけで全身しびれて動けなくなる。

ただ痺れ薬入りの水は銀製・鉄製・ガラス製・木製・革製・陶器製のカップなどなど、どんなコップをもってしても”赤いマダラ模様に染まってしまう効果”があるので人に使おうとするとあまりの毒毒しさに即座にバレてしまったりする。

なので獣を捕獲するための罠に使うか・・・もしくは同じマダラ模様ってのが出ないので色付けに使われたりしていて・・・今現在は芸術家や職人には大人気なアイテムで高額取引されていたりしてる。

高額商品ではあるが割に合わないので市場に出回る数が圧倒的に少ないってだけのアイテムだ。

高レベル冒険者はもっと楽に稼げるから仕方がないんだが。


レアドロップアイテムは『クモの涙』というアイテムで・・・これはこのままでも解毒薬になってるし、より高度な『万能解毒薬』を作るには欠かせないアイテムなので・・・こちらも高額で引き取ってもらえるアイテムだ。

通常もレアもドロップアイテムは高額で取引されてるアイテムなのだが、流通量が少ないので高額の商品となってるだけで、毒霧クモの面倒臭さのために敬遠されてるので高レベルの冒険者が”大金を積まれて頼まれでもしない限りワザワザ狩りに行かない”ってのが現状みたいだ。

アイリとミーによればどちらの商品も、冒険者ギルドのどこの支部にでもいつでも依頼票があるアイテムなので、アイテムを持参すれば後からでも受付してもらえる。


B11Fの罠を全解除してB12Fに降りた頃に時間になったので階段横の転送室で地上に戻って、今日のダンジョンアタックは終了したようだった。


みんなの明日の予定を確認しようとしたら嫁の意見は全員一致だった。

『ブランディックスダンジョンのB10Fのボスを攻略したい』

これには俺の方が驚いたんだが途中でやめたってのがどうも気に障るらしい。


「なるほどね・・・それなら明日にでも行ってみますか?」


俺の一言で明日もブランディックスダンジョンに明日は全員で行くことが決まった・・・

るびのとフォクサに念輪で連絡を取るが明日は大草原の魔獣選抜軍を率いて大森林のトロール&オーク狩りがあるらしいので残念だけど・・・と断られてしまった。

今日のダンジョンアタックも退屈で退屈でたまらなかったようだし。

それなら明日は嫁達の護衛にユーロンド1~5号を連れて行くことにした。

早乙女邸の防衛は師匠ゴーレムと魔獣ゴーレムの計11体で余裕だし・・・つーか今からでもボス攻略ならいけるぞ?


「ブランディックスダンジョンの地下10階のボス『肉食スチールバッタ』ぐらいなら食後の軽い運動で余裕だよ。なんだったら今から行ってみるか?」

「ウソっ! しんちゃんと一緒だとそんなに簡単になっちゃうの?」

「肉食スチールバッタがたかが500匹程度だろ? 俺の白扇子の風神・雷神の複合技で瞬殺だよ」

「そんなに簡単にクリアーしちゃっていいのかなぁ・・・って心配しちゃうんだけど」

「私もアイリさんと同意見ですね」


俺が詳しく説明するが白扇子の風神の力『暴風』で嵐を巻き起こして全部の肉食スチールバッタを地面に叩き落とし、雷神の力『轟雷ごうらい』の力で落雷の範囲攻撃で瞬殺が可能だ。

神器なので冒険者ギルドにも『最近、アマテラス様の役に立ってご褒美でもらっちゃいました! テヘ』で説明も楽にできるだろう。


嫁3人が俺の簡単で分かりやすい説明に、何か釈然としないって表情ながら・・・今からブランディックスダンジョンに行くことが決定した。

明日の予定は未定になってしまったが。


師匠ゴーレムと魔獣ゴーレムに早乙女邸の防衛を任せて、ユーロンド1~5号をアイテムボックスに転送魔法で入れ、ついでにバージョンアップで魔結晶を大型のものに取り換えて、武器も魔法もバージョンアップさせることにする。

今まではショックとスリープしか封入されていなかった魔法もシールド系の全魔法を入れて、攻撃よりも防御中心だな。

アイテムボックスに全員分の盾職用の巨大な盾を入れて、武器も大剣・ショートソード・ロングソードなど一般的な武器を数種類で、本格的な刃の付いたものを作ってアイテムボックスに送って対人専用の拠点防御用ゴーレムから冒険者ゴーレムも対応できる仕様にしておく。

リビングのソファーから立ち上がったアイリに話しかけられた。


「ねぇ、しん君・・・私って大剣とシールダーのどっちの方がいいの?」

「あっ、私はレイピアとミネルバオークウィップ(改)にしちゃってもいいのかな?」

「アイリもミーも好きな方でいいよ。ユーランド5体には盾職をしてもらって、セバスチャンとマリアにはシールダーをしてもらうから。クラリーナも含めて3人には見学しててもらう予定だから」

「しん様・・・そんなのでいいのですか?」

「いいって、いいって。今回は神器の白扇子で全部倒すんだから、俺もほとんど何もせずに見てるだけだよ」


俺の説明でとりあえずは納得してくれたかな。

嫁達が装備に着替えるためにリビングのン隣の客間に入って行ったので俺は後ろから『着替え終わったらガレージに集合ね』と声をかけておいた。

るびのとフォクサに念輪で連絡したら今からフォクサの故郷に行って天然露天風呂に入りに行ってくるらしい。

そっちも楽しそうだが俺達は今からブランディックスダンジョンに行ってくると伝えておいた。

俺はリビングでサイラスの甲殻鎧のフルセットに着替えて俺の準備は完了した。

とりあえず集合場所のガレージに行ってサイラスの甲殻ブーツまで履いて待機だな。

久しぶりにアンコが食べたくなってアイテムボックスから焼きたてのたい焼き取り出してかじってると、嫁達が装備を終えて出てきた。


アイリはシールダー用のフルプレートアーマーは大剣でもシールダーでもどちらも対応可能。

背中にシールダーの専用盾4枚と左右の腰につけた丸盾2枚も装備してるのは本格的なシールダー装備だが、おやっさんの作ったシールダー用のフルプレートアーマーの構造が素晴らしいのでこのままでも大剣で戦えるようになってる。

ミーは俺と同じサイラスの甲殻鎧・・・全身フルセットまで全く同じだ。

クラリーナはシルバードの毛皮のコートで森林モンキーの毛皮の飛行帽。ワイバーン革のブーツを履いて手には早乙女バラ杖で・・・クラリーナもフルセットだな。


嫁3人とセバスチャンとマリアを連れてブランディックスダンジョンの入り口近くの光が当たらない暗がりに転移魔法で移動してからブランディックスダンジョンに入っていった。


B1Fの転送部屋に入ってB10Fへ。

俺はアイテムボックスからユーロンド5体を出して盾を装備させて嫁3人の前後左右に広がって展開する。

また嫁達に罠解除の練習をしてもらって俺は時々出てくる肉食バッタを狩る。

俺の装備は腰に白扇子をホルダーに入れて手には早乙女強弓を装備して体長40cmほどの肉食バッタを矢で射抜いていく。

この階層のボス『肉食スチールバッタ』は体長5cmほどの大きさで、数も500匹と大量なので弓で攻撃してるような悠長な余裕はないが、ボス部屋に入るまでは弓の方が楽だしな。

セバスチャンとマリアが俺が退治した肉食バッタのドロップアイテムの牙と魔石を、回収するために走りまわってる。

嫁達は昼間に1度クリアーした罠解除を始めからやり直すことになったんだが、すでにボス部屋寸前まで1度行ってるので20分程でクリアーできた。


最後に罠を解除した正面の壁に這う蔦がブチブチブチと大きな音を立てて切れたと思ったら、今まで蔦で覆われて何も見えなかった壁の中に隙間から光が漏れる扉が現れる。


「さぁこれから冒険者チーム早乙女遊撃隊の名前をブランディックスダンジョンの歴史の中に刻む時間の開始だ! みんな準備はいいな?」


無言で頷く嫁達の顔を順番に見ていく・・・クラリーナが若干だけど緊張してるかな?

ポンポンと優しくクラリーナの頭を叩きながら語りかける。

アイリとミーもクラリーナの左右から肩を叩いてニコニコ笑ってる。


「クラリーナ、緊張してると大事な場面を見逃すってくらいにすぐに終わっちゃうから注意な?」

「はっ、ハイ」

「クラリーナは知らないだろうけど、ボス部屋が終わってダンジョンが広がるときは面白いことがあるから・・・楽しみに待ってると良いわよ?」

「えっ、アイリさんどういう事なんですか?」

「まぁまぁ、私も噂では聞いてるけどアイリも私も初体験なんだから、詳しくは言えないわよ。しんちゃんは貰った知識と経験の中にあるかもしれないけどね」

「俺も初体験だから楽しみだよ。知識と経験は俺のもらったもので俺が実際に経験したことじゃないからな・・・さぁ、行こう!」


俺が右手の拳を軽く握ってみんなの前に突き出すと嫁3人も拳を握って俺の拳にガツンと当てる。


俺達が扉を開けて中に入っていくと・・・凄まじい数の肉食スチールバッタがすでに臨戦態勢になってブーンと羽音を立てて飛び上がる寸前の体勢になっていた。

俺は左手で持っていた早乙女強弓をアイテムボックスに入れて腰のホルダーの中の白扇子を抜き出す。

一番後ろのセバスチャンが入ってきたドアを閉めるとガチャリと施錠されて戦闘が開始された。


500匹の肉食スチールバッタの大軍がブワっと飛び上がってこちらに向かって飛んでくる。

俺は右手だけで白扇子を『バン!』と音を立てて広げ左右にフワリフワリと軽く2振りさせると、風神の力によって『暴風』が巻き起こる。

飛び上がってた肉食スチールバッタだけでなくまだ飛び上がる前の肉食スチールバッタまで、全部の敵が俺たちのいる扉と反対側の壁に叩きつけられて・・・これだけで10%以上70匹の肉食スチールバッタは即死となった。

敵が動き出す前に最後の攻撃をする。

右手で持つ白扇子を人差し指を使って器用に横に2回転させると敵の集団の中央部にバリバリバリという音が鳴り響き『轟雷』が炸裂した。


全ての肉食スチールバッタが轟雷を浴びて即死。

轟雷によって引き起こされた砂煙が消える頃には全部の敵の姿は消えていた。

残ってるのは100を超える魔石・30ほどの大きな魔結晶・200kgのダマスカス鋼のインゴットという、肉食スチールバッタのドロップアイテムのみが残されていた。


その時に突然ダンジョン内だけでなくダンジョンの外にまで『ビー! ビー! ビー!』というサイレン音が鳴り響いて機械音声の放送が始まる。


≪こちらはダンジョン管理センターです。ただいま早乙女遊撃隊という名前の冒険者チームの力で地下10階のボスがクリアーされました。これにより封印されていた地下10階の隠し通路を解放します≫


ブランディックスダンジョン内外のあちこちから歓声が上がるとボス部屋入口の扉が開錠されて、ボス部屋入口とは別の3つの場所から微振動と轟音が鳴り響いて壁の一部が崩れ落ちて新たな通路を作り出した。

俺達の目の前には光り輝く物体が地中から浮き出てきて・・・マーブル模様の湾曲した板バネのようなモノが姿を現す。


「もしかして、これが先ほどボス部屋に入ってくる前に皆さんがおっしゃっていた事なのですか?」

「・・・あぁ、これがこのダンジョンにおいて初のボスをクリアーした記念のようなものなのよ。私とアイリもしんちゃんも初めての経験の事だから、少し感動しちゃったわ」

「これは凄いわね。今頃はブランディックスダンジョンの中も外も大騒ぎになってるわよ」

「俺もこれは知識として経験として持ってるだけで自分自身では初体験だからな・・・確かにこれはちょっと感動もんだ」


俺達が感慨に浸ってる中をゴーレムたちはドロップアイテムを拾い集めてる。

最後に出てきたマーブル模様の湾曲した板バネみたいな奴をセバスチャンが俺に差し出してきたので受け取って鑑識魔法で確認した。


吸魂きゅうこん魔弓『BRブランディックス・ローズ魔弓』

所有者 早乙女真一

魔力の弦によって生み出される魔法の矢を飛ばす魔弓。伝説級レジェンドクラスの武器。

ブランデイックスダンジョン地下10階のボスの初回クリアー報酬アイテム。

弓はダマスカス鋼製で魔力によって生み出される矢もダマスカス鋼製。

矢は対象物に刺さると中に木魔法『茨の蔦』の種子を植え付けてから消滅。

種子は敵の体内の水分・血液・生命力を瞬時に吸い取って成長。

体外に飛び出した後に最後は大輪のバラの花を生命力で咲かせ、命が消滅するとバラも消滅する。


・・・結構エグイ武器だな。

矢を抜き取る前に消えて中に種を残して、種は体内で成長させるのかよ。

しかもバラの花が咲いた頃は死んでるのかよ・・・


俺が魔弓を眺めてるとボス部屋の壁の一部が動きだし小部屋が現れ部屋の中には空中に浮かぶ魔水晶。

この迷宮の地下10階を封印してた魔結晶で大きさは地球の1.5リットルのペットボトルサイズ。

色はブランディックスダンジョンらしく少し黄緑がかってる色だが属性色ではないようだな。

俺はアイテムボックスから無色のクズ魔結晶を取り出して空中に浮かぶ魔結晶と取り換えた。

地面に埋め込まれた魔水晶が点滅を始めた。

俺が知ってる知識によれば俺がこの部屋を出た瞬間からこの部屋は封印がかかり、この宙に浮かぶクズ魔結晶が元通りの大きさに成長するまで、この部屋の封印は開けられなくなる。


俺が小部屋の外に出ると自動でドアが閉まり・・・扉が消滅して元の壁に戻った。


俺は手で持った巨大な魔結晶をアイテムボックスの中に片づけた。

嫁達と少し雑談してBR魔弓の説明をしたらクラリーナが食いついてきたが、さすがに伝説級の魔弓はクラリーナの初心者レベルの弓の腕では任せられない。

せめて中級レベルの腕がないと実戦では使い物にならない。

俺が口で弓の使用方法を説明してもあまり理解ができないみたいだ。

なので新しく広がったMAPに足を踏み入れて、俺の探査魔法で引っかかった新たな敵『リザードマン』を実際に目の前で倒すことにする。


ボス部屋をクリアーしたことで新たに広がったダンジョンではすでに冒険者達がMAPを作ろうとして、10を超えるチームが先行している。

俺達も足を踏み入れると俺と身長が同じぐらいのリザードマンがムキムキな体をさらして走って攻撃してきた。

現れたリザードマンの総勢は27頭。

アイリとミーは即座に展開しているユーロンド2体ずつを引き連れて攻撃をしに行く。

俺は横にクラリーナを立たせていてBR魔弓を実戦で使用するところを目の前で見せる事にする。

左右にセバスチャンとマリアがいてバックアタックを警戒しているのがユーロンド1号。


俺はクラリーナに説明しながら左手で握るBR魔弓のグリップに魔力を込めると、弓の両端についてる魔水晶が緑色に薄く光り魔水晶の間に魔法の弦を生み出す。


「こうやって魔力を込めることでこのBR魔弓は起動する。両端に取り付けられている魔水晶の間には魔力で生み出された弦が張られたのが見えるか?」

「はい。薄い緑色の弦です」

「そうだな。そしてこれは力もいらないぐらいに軽くつまんで弦を引いて射る・・・たったこれだけだ。狙いは自身の脳内イメージだけ。それだけでこのBR魔弓のグリップの親指部分についている魔水晶から、魔力によって生み出された矢が飛び出して脳内でイメージしたとおりに魔法の矢が飛んでいく・・・こんな感じだな」


目の前で戦っているセバスチャンの上に飛び上がって、後方にいる俺達を狙って来たリザードマンが俺が放った魔法の矢を打ち払おうとして、両手に持ってるグラディウスを左右に切り払ったが矢は普通ではありえない運動を見せた。

剣にあたる瞬間にビュンと上にジャンプでもするかのような動きをしてリザードマンの脳天に突き刺さったのだ。

リザードマンはそのまま叩き落されて頭からバラの蔦が飛び出しバラの花が咲いてリザードマンの体ごと消滅した。


「こんな感じで自由自在な変化をさせられるのが魔弓の特徴だな。動き方は魔法と全く同じでただ弓矢を動かせてるだけだ。敵の動きを予測して瞬時に判断して矢を放つのが大事で、1番重要なのがイメージってのは魔法の素養の高いクラリーナには向いてる弓だと思うよ。クラリーナの弓の腕が中級まで上がったら実戦で使ってもいいけど、それまで使用するのは練習だけにとどめておいてね」

「了解です・・・なるほど~、勉強になりますです」


俺はクラリーナに口で説明しながら次から次へとあらわれるリザードマンを射続ける。

クラリーナも真剣な表情で矢の動き・敵のリザードマンの動きを見続ける。

俺が射殺したリザードマンが35頭を超えたころになってようやく周囲のリザードマンは全滅したようだった。

チーム早乙女遊撃隊で88頭も狩っている。


「クラリーナが今日すぐにこの弓を使って実戦練習っていうのは無理だが、今後の参考で今日は俺の撃った矢の方の動きと敵の動きを見学しておいてくれ」

「わかりました」


それからはみんなで30分ほどだけ動いて200頭以上のリザードマンを狩ったところで今夜のダンジョンアタックは終了することにした。

すでに時刻は夜の9時を回ってる・・・俺たちの場合は冒険者ギルドに所属する者の仕事として、冒険者ギルドのブランディックス支部に行ってボス部屋の説明と魔結晶を見せるという”一種の儀式”が残ってるからな。

迷宮の外に出ると外に待っていた冒険者と冒険者ギルド職員に拍手で出迎えられる。

冒険者ギルドが用意した夜間移動用の特別仕立ての馬車に乗せられてブランディクスの町に移動する。

冒険者ギルド・ブランディックス支部のギルドマスター室にまで案内されていく。


ギルドマスター室ではブランディックス支部のギルドマスターと幹部職員の二人がこれから俺の話の記録を取るために待ち構えていた。

ギルドマスターは昨年就任したんだが・・・就任した直後にブランディックスダンジョンの地下30階が解放されてブランディックスの町は大騒ぎになってしまった。

最近やっと落ち着いてきたと思ったら、俺のせいで今日のこの時間になって大騒ぎが広がっているみたいだな。


挨拶もそこそこに早速説明に入る。


B10Fにあったボス部屋の場所とトラップの解除方法。

嫁達が昼に発見したんだが危険を感じて俺と再チャレンジした事。

出てきたボスは『肉食スチールバッタ』で体長は5cmほどで全身をダマスカス鋼でコーティングされた肉食バッタの上位群生種500匹であること。

俺が退治したやり方を説明した時に白扇子の話をしてから、ギルドマスターにアマテラスからもらった経緯・・・いくつかの神託をクリアーして役に立ったご褒美でもらった・・・という事を説明しながら実際に見せてあげた。


広がった10階の話はしたがどれほど広がったのかはあえて教えなかった。

これからMAPを描く連中がブランディックスダンジョンに入っていって解明していくだろう。

そのチームの楽しみを奪ってもしょうがないからな。


それでクリアー後に出てきた報酬のBR魔弓を見せて、奥の小部屋から取り出してクズ魔結晶と交換してきた巨大な魔結晶も見せる。

ドロップアイテムだったダマスカス鋼の200㎏のインゴットも見せてあげた。

俺の取り出した魔結晶は地下30階のクリアー報酬の魔結晶に比べれば半分ほどの大きさしかないらしいが・・・それでもこの大きさの魔結晶は、生物ではドラゴンぐらいに長命な種族じゃないとここまでは成長させられない。


ついでだがクリアーした後に戦ったリザードマンの特徴とドロップアイテムも教えておく。

通常ドロップアイテムは『リザードマンの尻尾』だ。

森林モンキーの尻尾と加工方法は同じなんだがこれはその反対バージョンで・・・『摩擦係数が非常に高く頑丈』なアイテムだ。

ダンジョンの外にいるリザードマンの尻尾にはこんな特徴はない。

このシーパラ連合国にある別のダンジョンにリザードマンは出てこないので、これは今まで国外から輸入するしか入手できなかったとされていたアイテムだ。

シーパラ連合国の需要を賄えれるほどというのは無理だろうが、外国との一方的な関係はこの発見で変化していくだろう。

今後の経済的な影響は商人からの視点で考えると物凄く大きい。

レアドロップアイテムは尻尾が3本出てくるのは理解できるまでに鑑識魔法を使わざるを得なかった。

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