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早乙女家の紋章が決定した後のフォンマイ騒動再びっす。

10・31修正しました。

「あ、そういえば早乙女君に渡さなくてはいけないものがありましたね」


ビッタート卿が話しながら自分のアイテムボックスから魔水晶と契約書などの束を取り出して俺に見せる。

俺が今まで討伐した盗賊や迷族の所持金や最近、俺を襲撃してきたヤツラの治療費などがすべて溜まって来ていたようで総額11億Gゴルドル程になっていた。

それを全部の書類を確認しながら入金を確認して契約書と受け取りのサインをして冒険者ギルドカードに入金していく。

・・・なかなか骨の折れる仕事が残っていたようだ。


それで長時間ついでに手が空いてて俺とビッタート卿を眺めてるだけの青木に、今までの大森林の魔獣の巣などやダンジョンアタックで拾ったステータスカードと、任侠ギルドトーナメントや任侠ギルドに所属している徒影が殺害したヤツラのステータスカードも全部提出した。

その数は400枚ほど・・・卯月要市朗などのステータスカードも入ってる。

青木は全部を確認するのに長時間を要するのでまた何日か後に連絡するといって外に走って行った。


外から戻ってきた青木がまだ作業中の俺とビッタート卿の分のコーヒーを入れてくれた。

1時間以上の時間がかかってやっとすべてが終わった・・・すでに時刻は午前11時半に近い。

青木に昼食を誘われて・・・場所が俺の行った事のないところで、話を聞いて早急に済ませないといけない用事があったので誘いを受けることにした。


「早乙女君、昼食なんだけど我々と一緒に評議会の最上階の展望レストランで食べないか?」

「それは行った事のない場所ですね。俺を連れて行く用事が何かがあるんですか?」

「ああ、ラザニードから聞いてると思うが早乙女君もAクラスに昇進したんで『紋章』を早急に作る必要がある。評議会の紋章師からせっつかれていてね・・・今日の昼に会って一緒に会食する予定だったんだ。君を連れて行けばワシらの仕事は終わりさ。それとも何か用事があったかな?」

「用事は今日の夕方5時まで大丈夫です。紋章かぁ・・・ハッキリ言って忘れてましたね」

「ふつうはすぐに来るものだと言って紋章師の方も困惑しておったよ。遅くなるっていう連絡もないので痺れを切らせて冒険者ギルドに問い合わせが来たんだ」

「それは申し訳なかったですね。昨日までドルガーブの列車の旅を楽しんでいましたんで連絡するってどころか、紋章の存在すら忘れてました」

「アッハッハッハ、やはり俺とアクセルも見込んだ通り早乙女君は面白い男だな。まぉ、参考になればと思って今から俺の紋章を見せてあげるよ」


青木の提案でミスリルプレートに刻まれて色づけされている『紋章プレート』なるものを青木の分とビッタート卿の分を見せてもらった。

青木は弓と薙刀が中央で交差して描かれていて四隅には撫子が描かれている。

意味は武器の二つは青木家のメイン武器とサブ武器で・・・撫子は青木が一番好きな花でこの3つの組み合わせは他国にもなかったから決定された。

ビッタート卿のはチェッカーフラッグのような交互に黒白になっている。

真ん中に円が描かれていて、円の中には家紋の三つ巴のような模様がありそれぞれ色が金・銀・グレーとなっている。

意味はダークエルフで白黒の模様を混ぜて真ん中の模様は・・・悩んでたら天啓がおりたと言ってる。


パッと見だけど紋章に家紋が混じってる感じだな。

俺はどうしようかな・・・そういえば早乙女家の家紋ってなんだったっけ?

確か『鐶桜かんざくら』って言って幾何学模様みたいなヤツだったけど、細かいところまで覚えてないや・・・と悩んでいたら、るびのの顔が浮かんだので白虎で描こうかな。

白虎と鐶桜を足したのは他にいないだろう。


俺は悩んだままビッタート卿と青木に連れられて初めて評議会に行くことになった。

ゴーレム馬車で行くことになったんだけどこちらも近くてすぐに到着・・・ホントなら歩いていった方が早いレベルだ。

新旧の冒険者ギルド本部ギルドマスターが先導して俺が後を付いていってるので、評議会の中に入っていくのにも係わらずVIP待遇になってる。

入り口で冒険者ギルドカードを一度提示しただけで転送部屋に入って最上階の展望レストランへ。

最高評議会とは高さが違うので最高評議会側はキッチンがあって見えないようにしてあるのだが、3方向の展望は素晴らしいの一言で終わってしまうのがもったいないほどの景色だ。


個室に通されると既に紋章師らしき女性が着席していた。

まずは挨拶から済ます。

評議会に所属していて学術ギルドに所属している公式の紋章師・・・世界中で100人程しかいない紋章師で、紋章師ギルドに所属できるようになるまで100年かかると言われてる・・・に所属する『モモコ・セントルーク』さんでふくろう獣人の女性だった。

梟獣人の翼はすでに退化して小さくなってしまっているので飛ぶことはできないが、ちゃんと自分の意志で動かすことのできる翼をもっている・・・翼以外は人間と外見は変わらないな。

鳥系獣人のなかでも梟獣人の数は非常に少なくて、純粋な梟獣人はイーデスハリスの世界中で1万に満たないと言われている。

異常なまでの知識欲とプライドの高い種族らしいって聞いてはいるけど、目の前の女性からは高慢な様子はうかがえないな。


昼食はイタリアンの肉料理のフルコースだった。

紋章を考えるのは食後にして今は雑談と食事を楽しむ。

俺の完璧なテーブルマナーを見て、青木・ビッタート卿・モモコはそれぞれに俺のことを探るような目で見てくるが、聞かれてもいない事を言うはずもなく沈黙で答える。


モモコさんは中央大陸の山岳部にある狐獣人と梟獣人が数多くいる王国でドワーフによって創られた『地底王国』の出身。

地底王国は強大なドワーフの武力によって守られた国、狐獣人と梟獣人だけでなく中央大陸のエルフの王族によって迫害を受けた希少民族を保護して今までに数多くのエルフの王国を叩き潰した国でもある。

なにしろ好戦的なエルフ王国が何度攻め込んでもビクともしないほど、中央大陸山岳部の洞窟を全て繋いだダンジョン化しているような地底王国の防御力は完璧だ。

エルフが大軍で攻め込んだところで罠にハマって身動きが取れなくなる頃には、ドワーフの別動隊によって本国が攻め込まれてしまう。

国が滅ぶ頃には軍は生き埋めにされて全滅という事が何度も繰り返されている。


ドワーフは頑固一徹すぎるのでドワーフの民族内ではイジメや迫害もあるが、対外的には平和主義者で売られたケンカしか買わないから、エルフ以外の獣人国家とも人間国家とも中央大陸の教会総本山とも仲が良くて連携して反撃してくるし、エルフの精霊魔法で守られたエルフ本国の防御壁は地中から攻め込んでくるドワーフには全く通じない。

地の精霊はドワーフの守護者でエルフと仲が悪く地中に張り巡らせた結界は無効化されてしまう。

エルフがドワーフに攻め込まなくても他の民族の救援要請には即座に反応してエルフ王国の本国を攻撃して全部叩き潰されてしまう。

好戦的で高い技術力を誇るエルフが中央大陸で覇を唱えられなかったのは天敵のドワーフが、エルフが住む森の隣の山岳地帯で要塞を築いていたからだろう。


エルフが高慢なので目立たないが梟獣人もプライドは高いと聞いていたが『知識』に関するプライドが高そうってだけで、高慢とか他人を見下すっていう雰囲気は一切なかった。

モモコは俺が知らなかったドワーフや梟獣人の話をしてくれた。

食後にデザートでチョコレートフォンデュが出てきたのはビビった・・・ついこないだ俺が北の食料品市場のフルーツ屋大将に教えたばかりなのに・・・

食事を運んでくれるウェイターに詳しく聞いたらパティシエが昨日、北の食料品市場で売られているのを食べて即購入して業者と契約、今日からメニューとして載せるんだそうだ。

これは女性のモモコよりもなぜか青木がハマってた・・・相当美味かったらしい。

売ってる店の場所を教えてあげるとホクホク顔で喜んでる・・・甘党か?

話を聞いたら甘いスイーツも酒も大好きな両刀使いみたいだな。


食後のコーヒーの頃になると青木とビッタート卿は冒険者ギルドに帰って行った。

俺はこれからモモコが評議会特別議員として与えられている部屋に行って早乙女家の紋章を決めないとならないからな。

コーヒーを飲み終えてから今度はモモコに先導されてモモコの部屋に向かった。

食事の料金はモモコの接待費で落ちるみたいでモモコの顔パスだった。

部屋にたどり着く前に2回ほど冒険者ギルドカードのチェックを受ける。

これでも最高評議会に比べたら緩い方だろう。

最高評議会での内部の移動は外部の人間の場合は必ず職員が先導しないといけないみたいだからな。


モモコの部屋に入ってから本格的に紋章の図案作成が始まった。

俺が考えた『白虎』と『鐶桜』の組み合わせは紙に書いてモモコに見せたが類似する紋章はどこにもないようだったので、2人であれこれと考えながら絵を描いていく。

紋章師がなぜ狭き門なのかというと世界中の貴族や冒険者が持つ紋章を覚えることは”あたりまえ”であって、それからさらに紋章を形にするという『絵心』が必要になる職業だからだ。

モモコも俺が描いたリアルな絵を遠くからでも見やすくてわかりやすい模様に変えていく腕は凄い。

時間は2時間以上かかったが・・・面積いっぱいに広がる鐶桜の紋様の中央部に略式化された図柄の白虎が正面を見据える紋章に決定した。色はシンプルに白黒のみ。


紙に書いた紋章を紋章師のスキル魔法によってミスリルプレートに刻まれていって出来上がる。

白旗も同じようにスキル魔法で紋章がつけられた。

最後に俺の左手の人差し指のサイズに合わせた指輪にも判子のように刻み込まれる。

これで手紙の封蝋に使用するんだそうだ。

しかも指輪の形をしているが誰も指輪としてはめない・・・デカ過ぎるからな。

チェーンで首から下げてる人の方が多いらしいと、モモコから教えてもらったのでアイテムボックス内で専用のチェーンを作っておいた。

俺の紋章の入った『旗』『紋章ミスリルプレート』『印章リング』の3点セットを受け取ると、紋章師ギルドで管理する俺の紋章が刻まれたプレートにサインをして終了した。


俺は早乙女工房に歩いて帰ってフォンマイ家の迎えのゴーレム馬車が来るまで最上階の居住区でノンビリすることにした。

セバスチャンと念輪をつないで報告を聞いたが嫁達は順調に罠解除のスキルを成長させてるようだ。

嫁3人がマリアのサポートで罠解除の練習をして、るびのとフォクサとセバスチャンが敵を排除している。

全員が今日のがんばりで罠解除スキルの中級まで到達できたのはは喜ばしい。

あと1時間半ぐらい頑張って夕方5時半になったら帰宅する予定みたいなので俺は今日は何時に帰ってこれるのか分からないから、普通通り過ごすようにセバスチャンから伝えといてもらう。


迎えが来る時間まで1時間・・・暇だな。

アイテムボックス内の整理をしてると釣り道具の設計図をもらっていたのを忘れてたな。

素材はこのイーデスハリスの世界にあるものしかないので代用品を考えながら製作した。

龍糸繊維・森林モンキーのしっぽ・ミスリル・オリハルコンなどをふんだんに使って作り上げていく。

何種類ものロッド・リール・ラインなども実験のように作る。

電動リールならぬ『魔道リール』も作ってみた。

実際に作ってみれば次回からは簡単にできるからな何種類かのロッドを実際に取り出してみて振ってみたりした。


時間が近づいてきたので旅人の服に着替える・・・招待されてるんだから正装の方が失礼はないだろう。

パーティー用の派手な旅人の服ではなくてシックな色合いのもので宝石類は一切付けてない。

商談などで着るような服装だと思う。

これは自作の旅人の服でなく既製品。

腰には何もいらないのでホルダーそのものを全部外してただのベルトにした。

ブーツもワイバーン革製のブーツをそのまま履くことに。

早乙女工房専属メイドゴーレムの『そら』から迎えが来たとの念輪連絡が来たので居住区の玄関に行ってブーツを履いて、玄関の外の転送部屋から1F受付横の転送部屋に移動した。

受付前にはフォンマイ家の有能そうな執事が迎えに来ていた。


さぁ、ゲルアーがフォンマイ家がフォンマイ商会がどうでてくるんだろうか?


看破の魔眼とは違って瞳が赤く光ったりしないので見た目は全く分からないが、執事にあった瞬間から『鑑識の魔眼』を解放した。

御者も馬車も不審な点は全くないな。

罠は俺には精神系の攻撃は効果がないし傷つけることも不可能なので怖くも何ともない。

ワザと全部引っかかるつもりでいるんだが・・・俺がどんな反応をするのかと考えてる相手の顔が見たいからな。

1番良いのは俺の考えすぎで杞憂で終わることなんだけど・・・ゲルアーが俺にやられる前のイケイケっぷりと、シーズの先輩であるゾリオンとかに対する言葉使いから考えると・・・周囲にそんなバカな取り巻きをたくさん置いていそうだし、俺自身が今日の会談が無事済むとは思ってない。


ゴーレム馬車でフォンマイ家本宅まで移動する。

シーパラはヨークルとは違ってごく普通のゴーレム馬車でも微振動はほぼない。

道路が完璧に整備されていて傷ついても自己修復の魔力で翌朝には元通りだ。

ふつうのゴーレム馬車は自転車のようなタイヤ構造をしてるので微振動は吸収できるようになってる。

高級車は車体と車軸の間には板バネが入っているので小石を踏んだ時の振動はいつまでも続いてかえって不快だ・・・ダンパーを入れればいいんだけど・・・そういえばユマキ商会にダンパーの話をするのを忘れてたな。

ゴーレム馬車が動き出してからそんなに時間もかからずにユマキ家本宅とほぼ大きさが変わらないフォンマイ家本宅に到着した。


正門前でゴーレム馬車が停車してフォンマイ商会の幹部がゴーレム馬車に乗り込んできて身分証明の提示を求められた。

執事がそんな話は聞いてないと立ち上がったところを幹部に押されてヨロヨロと着席した。

俺がしぶしぶ冒険者ギルドカードを見せると・・・幹部がニヤニヤしながら俺に命令してくる。


「これは冒険者ギルドカードですよね? 身分証明のカードと言ったらステータスカードでしょうが! これだから田舎者には困るんだよ。早く出せ」

「そんな理不尽な話を聞いたこともないな」

「シーズの家にくるんだ、ステータスカードの全表示が当たり前ってことも知らないのか?」

「それが俺を客人として招いたゲルアー・シーズ・フォンマイの出した答えなのか?」

「ゲルアー様は関係ない」

「全世界のどこの身分証明で冒険者ギルドAランクカードでは通用しないなんて聞いたこともない。早くカードを返せ。俺はムカついたら相手を殺すことにしてるんだけど・・・お前も死にたいのか?」


俺の目がスッと細められると俺の体の中から殺気があふれだしてくる。

俺に権力を振りかざした瞬間から俺の中にあるもらった記憶から殺意が抑えられないほど溢れ出す。

ガクガクと震えて動かなくなった幹部の手から冒険者ギルドカードを奪い返し、俺がゴーレム馬車から降りようと席を立った瞬間に幹部が恐怖のあまり、腰に差していたナイフを抜いて俺の腹に突き立てた。

俺の向かい側に座って一部始終の行動を見ていた執事が大声を出す。

叫び声で我に返った幹部は傷つけることさえできなかったナイフを投げ捨ててゴーレム馬車から転がり落ちて出て行った。


「ぎゃーーー・・・って、刺さってないんですか?」

「お前らAランク冒険者を舐め過ぎだ。この程度のナマクラが刺さるわけないだろう(ウソ)」

「あ、そうなんですか・・・」

「というよりも、執事のお前に聞く。これはゲルアーの指示なのか?」

「いえ、身分証明なんて必要ないから早く連れてきてくれとしか聞いてません」

「なるほどな。じゃあ、ゲルアーに言っとけ・・・この騒動はお前がイケイケバカを重宝した結果がこうなんだと」

「以前よりゲルアー様に苦言してはいたのですが聞き入れてもらえませんでした。なにしろゲルアー様自身がイケイケこそが正しいと常日頃からおっしゃってましたし」

「じゃあ、俺がゴーレム馬車から降りたらお前は大至急正面玄関で待ってるゲルアーに伝えてこい。御者も聞こえたな?」

「ハイ。了解です」


俺はヒラリとゴーレム馬車から飛び降りるとドアが開いたままゴーレム馬車は走って行った。

正門はすでに閉じられていて、俺の周りを10人以上の警備の人間と親衛隊が取り囲んでいる。

俺は周囲を取り囲む警備の人間に事情を説明した。


「俺はAランク冒険者にこないだ昇進した早乙女真一だ。お前らに聞きたい! いつからフォンマイ家本宅に入る場合はステータスカードの全表示が義務付けられたんだ?」


俺の問いかけに警備の隊長格の人間が答えた。


「そんな話は聞いたことがありません。そもそも早乙女さんに身分証明は必要ないという指示しか聞いてません・・・お前どういう事なんだ? お前は早乙女さんとは面識があるから挨拶がしたいと言ってゴーレム馬車を止めさせたんだろうが」

「俺とコイツが知り合い? っていうか、コイツってってバイサム商会のスパイじゃん」


鑑識の魔眼が出っぱなしになってたからコイツの知りたくもない情報まで俺の脳内に入ってくる。

スパイは俺に指摘されて逃走しようとしたが自分は警備隊に周囲において後ろから

『コイツを殺せー! 俺は殺されかけたんだ!』

と言っていたので逃げられるような隙間なんてない・・・即座に捕まって取り押さえられる。

ここにきてようやくゲルアーがゴーレム馬車にも乗らずに走ってきた。


ゴーレム馬車に乗って全部を見ていた執事も到着して全部の説明がゲルアーに報告された。


「早乙女さん、私共の不手際です。誠に申し訳ありません」

「まぁ、予想通りっていえば予想通りだよ。これからはフォンマイ商会・フォンマイ家で働く者の中にスパイがいないか、真偽官を交えて徹底的に調べた方が良いだろうな・・・これは氷山の一角でしかないよ。それまで客は呼ぶな・・・じゃないとコイツ等スパイはお前・フォンマイ家・フォンマイ商会の悪評を振りまきたいだけの存在だからな。これもお前が招いた事だ・・・自分で始末しろ」

「わかりました」

「全部が終わったらまた手紙をくれ。今日のところは帰るよ。じゃあな」


そういって俺は帰宅することにした。

まだ明るいし雨はまだ降ってなかったのでホップボードに乗って早乙女工房に帰ると・・・そういえば招かれてたのってあと3組いたな。

俺が早乙女工房に到着した時は騒動が収束したところだった。

ユーロンドからの報告を聞く。

1組は教会関係者でシル・バリトネット司教が手紙を持ってきただけ・・・シルの持ってきた手紙を渡された。

あと2組がいつものように早乙女工房前で騒動を引き起こしたようだった。


俺を強引にでも連れてこいと命令されていたようで・・・ゴーレム馬車3台で30人以上連れて同時に剣を抜いて襲撃してきた。

2つ合わせて60人以上いたがユーロンド2体に歯が立たず逃亡することもできずに叩きのめされ全員失神して変則的な土下座状態にさせられた。

そこに国軍第二遊撃隊隊長で今は肩書きが変わって『最高評議会特別捜査隊隊長 マスカー・フレデリック』が部下と一緒に歩いてきて俺と飯でも食いに行こうと誘いに来たので、事情を聴いて大騒動になってしまったらしい。


ユーロンドから事情を聴いたマスカーが隣にいた部下を走らせて警備隊に連絡を取って、護送車で全員を国軍の訓練場に運んで行った。

マスカーは最高評議会の所属。

この2つの相手はシーズの家の関係者なので変な横ヤリが入らないうちに事件を公開したいようだな。

事件を公開された後で圧力を掛けたら大火傷を負うことになるし、マスカーとすれば貸しが作れるんだろうな。

ユーロンドに『明日にでもまた連絡するから、今度はゆっくり飯でも食おうぜ』という俺への伝言だけを残して行っちゃったらしい。


早乙女工房が変な奴ホイホイになってるなぁ・・・と、ゲンナリした気分になってくる。

あとはユーロンドに任せて俺は早乙女邸に帰宅した。

嫁達はまだ帰ってきてなかった・・・そういえば今日はフォクサ・るびのを連れているのでキャンピングバスで移動してるとセバスチャンが言ってたな。

早乙女工房からはセバスチャンかフォクサの転移魔法で帰ってくるんだろうけど。


旅人の服の腹部でナイフを突き立てられた穴は修復して普段着のロンTとジーンズに着替える。

ワザワザ着替えて気を使う必要すらなかったな・・・バカは自業自得で浮き出てきてたし。

今夜の晩御飯は俺が作ることにした。

オーク肉とトロール肉の合挽きのハンバーグでつなぎにデカウサギの肉もワイバーンの出汁も混ぜる。

ハンバーグの中にチーズを入れてチーズハンバーグになった。

ハンバーグに掛けるソースにワイバーンの出汁を少し入れてデミグラスソース風に仕上げた・・・メインディッシュは完成。

生野菜でサラダを作りスープは・・・焼いたマツタケを浮かべたお吸い物にした。

土瓶蒸しは次回だな。

完成した頃に嫁達が帰ってきたんでそのまま晩御飯にした。


嫁達は帰りのキャンピングバスの中で着替えをしてきたみたいでダイニングテーブルに並べると食事がすぐに始まる。

るびのとフォクサはそのまま自分の部屋に行ったのでガレージで別れてきたようだ。

俺も食事をし始めるが・・・このハンバーグは成功だな。

クロに指示して同じ作り方でおかわりを作ってもらい、マリアに指示してハンバーガー用のパティもこの作り方で作っておいてもらう。

美味しかったのでおかわりをしたら嫁も一緒におかわりしてた。

2枚目を大根おろしとポン酢でいただこうとしたら・・・無言で嫁からガン見されたのでクロに指示して同じものを3つ作らせた。

こっちの方が女性陣には好評なようだ。


食後はリビングに移って食後にウイスキーを舐めながら今日会ったことをみんなに話した。


「なるほど・・・しん君は3つのシーズの家と揉めてるってこと?」

「正確にはフォンマイ家とは揉めてないな。今日からフォンマイ家・フォンマイ商会の2つの組織には粛清の嵐が吹き荒れるだろうが・・・内部の問題なんで俺には関係ないよ。それに残り2つのシーズの家は関係者が暴走してユーロンドに制圧されて、その身柄を最高評議会特別捜査隊が引き取って行った・・・駆け引きはこれからだろうが被害者とはいえマスカーに間に入られたんだ・・・一方的に俺の言い分は通らないだろう。向こうの言い分も聞かなきゃならん羽目になりそうだ」

「2つのシーズの家ってしんちゃんは知らないの?」

「どこだったっけ? ・・・ええっと招待状がまだ残ってたな」


アイテムボックスから2通の招待状を取り出してテーブルの上に出す。

1つは『ケミライネン家』からの先々代の還暦祝いパーティーの招待状だった。

ケミライネン家はテイマーギルドの歴代のギルドマスターを歴任してて魔獣の従魔化に取り組んでいたついでに、餌関係で食肉業界に多大な影響力を持ってるシーズの家だ。

魔獣の生肉の買い取り関係で冒険者ギルドにも太いパイプと影響力を持ってる。


もう1つは『角館かくのだて家』からの当主が溺愛してると噂の娘の15歳の成人の誕生日パーティーの招待状。

角館家は奴隷商ギルドを掌握するシーズの家だ。

表のれっきとした奴隷商売で別にやましい所は何もないはずだが、奴隷制度のない日本で育った俺からすれば馴染みのない職業し、奴隷商売ってだけで胡散臭く感じてしまうのは仕方がないことだろう。

鉱山送りしかない奴隷以外を政府から買い取ってオークションに掛けたり、借金奴隷として売られてきた奴隷の特技などを見極めて販売している。

工場などで働く下働きや子供の奴隷を清掃人ギルドに送ったりして手に職業をつけさせる職業斡旋等もしているし、隷属の首輪や手枷足枷などの販売も牛耳ってる。


・・・と、俺の知らない情報をアイリ・ミー・クラリーナが教えてくれた。

両方とものメインの仕事と俺は関係ねぇーじゃん・・・面倒臭ぇな。

4人で話し合ったけど何が目的かまで分からなかった・・・マスカーが明らかにしてくれるだろう。

マスカーはマスカーの思惑があるし特別捜査隊隊長としての立場もあるので、彼に無理強いは出来ないけれど・・・俺は被害者なんで後日に目的ぐらいは教えてくれるだろう。

マスカーからすればうまく立ち回って俺を納得させつつ緩やかな処分で済ませれば、2つのシーズの家に貸しが作れるから、必死に落としどころを上司の『イワノス・ゲッペンスキー』と探ってくるだろう。


ケミライネン家と角館家は今後の対応次第だな。

しつこくからんできて俺を引き込もうとか、家族にまで手を出してきたりと・・・これ以上の迷惑をかけるようであれば2つとも末端まで叩き潰す・・・ってのはどこの組織に対しても同じ決定事項だ。


教会からシルが持ってきた手紙は露草桜からの手紙だった。

先に手紙を持って来たバカは・・・自分から手紙を渡せば俺は恐れ多くて断ってくるかもしれませんと意味不明な自尊心の塊みたいな屑だったんで、面白そうだから行かせてみたと桜は手紙で謝ってた。

処分は俺の提案通りに再教育になると教えてくれた。

しかもあのアホは俺の手紙を見せられて腰が抜けてしまったらしい。

・・・おいおい。


それで何で司祭の教育者を再指導したいのかという説明が詳しく書いてあった。

桜は今月末にこのウェルヅ大陸を離れて中央大陸に行くことが決定したので、以前より目に余っていた特権階級意識の強い司祭の教育者達を懲らしめてやろうとして今回の事を仕組んだようだ。

この事件をキッカケにして司祭教育者の再指導にメスが入れられると御礼まで書いてあった。

何人かは賄賂要求などの不正がいくつか発覚してるので追放処分になるらしい。

全部がアマテラス様のご神託による指示なんだと・・・露草桜とアマテラスには上手く利用されたけど・・・これぐらいなら気にもならないので、まぁいいや。

それに俺が書いたバカの指導方法が今後の教育者再指導プログラムになると書いてあり、それにしたがって進められるので俺の直接教育はいらなくなったと書いて締めくくられていた。


アマテラスもこうやってくれれば俺の負担は減るんだと学習して欲しいな。

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