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残党狩りは順調に進んでるっす。

女性の折れた肋骨が内臓の複数の臓器や横隔膜までを傷つけていて、相当な重傷で出血がひどく徒影2体でハイヒールとハイポーションを掛け続けるしか女性の生命維持が出来なかった。

長時間の移動に耐えられないと判断した徒影は一番近い施設のこの格闘場に運んできた。

今日のこの時間のこの治療室で医師と看護師とガスで、たまたま偶然だが今後のトーナメント時の治療報酬をどうするかという話し合いがあり、全医師と全看護師を集めての意見交換会だったために・・・何とか治療を任せて徒影2号が俺に連絡することができるようになり、奇跡的に俺が来るまで命を持たせる事が出来た。


とりあえず女性を助けることが最優先なので、必死で治療にあたっていたこともあり・・・敵が誰なのかもわからない状況らしいな。

任侠ギルドはサブマスター襲撃でサブマスターは軽傷で済んだがそばにいた女性が重傷という情報を聞いて『売られたケンカは買う! 報復だ!』と言って沸き立ってしまっているようだ。

これが初めてのサブマスター襲撃ではないし、今回はマヅゲーラで働く女性の重傷のケガ人まで出てるので任侠ギルドの面目の問題まで発生してる。


ガスを任侠ギルド本部に転送魔法で戻らせて全職員を落ち着かせて勝手に動かないように厳命した。

半端に動き出されるとこちらの動きを敵に知られて逃げられてしまう恐れがあるからな。

そこで以前からマナガルムも徒影もすでに何度かの襲撃は受けているとの報告があったので両者に詳しく話を聞く事にしたんだが・・・今までは敵の組織の姿がまったく見えてこないらしく、敵の目的もわからないみたいだ。

捕えられるのは下っ端ばかりで幹部クラスはまだ誰も捕えることができなかった。

1度チャンスはあったのだが自害したようだ・・・徹底してるな。

敵が何の目的で襲撃してるのかすら把握できないので全部が後手に回ってしまい、こちらサイドからは敵の攻撃を受け続けているだけという・・・いい様にやられてしまってるな。


昨日も路上で襲撃されたので今夜は徒影の護衛を増やし敵の痕跡を探ろうとしていたのだが、今回は裏をかかれて路上で襲うのではなく女性宅にあらかじめ侵入させていた襲撃者にやられてしまったみたいだ。

徒影のアイテムボックスに入っていた襲撃者3人の死体を俺のアイテムボックスに転送して詳しく解析したが出てくる情報は少なかったが・・・3人のアイテムボックスに入っていたメモから、共通の寝床となっていた場所と幹部らしき逃亡者と密会していた場所が判明したので、応援に来ていた徒影と忍を使って周辺を探らせる。


アマテラスにもらった『釣りMAP』は釣れる場所の情報だけでなく、この西方のウェルヅ大陸のすべてが網羅されてるMAPになってるので物凄い情報量がある。

このマヅゲーラにある全部の建物の正確な見取り図まで入っているのだ。

・・・非常に便利でいいんだけど・・・アマテラスはこれで俺にまた何かさせたいんだろうなと勘ぐってしまうほどストレスは溜まってるがな。


重傷の怪我をした2名が探っていた寝床近くの路上で発見したとの情報が忍からあり、俺はマナガルムに断りを入れて1人で現場に転移魔法で跳ぶ。


虫の息の2名だが襲撃者でトカゲのしっぽ切りされた感が濃厚なので、惜しげもなくエクストラヒールで2名を完全復活させた。

10名以上のヤツラの俺を見てる感覚があるので誘い出されたようだ。

遠見魔法で2つの場所から俺も見てる事まで分かった。

遠見魔法と鑑識魔法を使ってマヅゲーラの南側の街から見てるヤツラの場所へ忍3体・徒影2体ずつを両方に転送魔法で送り探らせてから突入して襲撃させる。

俺が来たからには手繰り寄せた敵のしっぽをつかんで引きずりだして皆殺しに決定だ。

俺は2名を復活させると隷属の首輪をはめて転送魔法で2名を任侠ギルド本部に送った。

本部にいる徒影3号に念輪で指示を送り、ガスと共同でこの2名の尋問は任せて、俺は目の前にいる襲撃者の追い込みを始めることにする。


「さぁ、俺の使った魔法が君らにはないかわかるか? 君たちと俺とのレベルの差が理解できたかな?」

「・・・」

「もしかしてまだ逃げられると思ってる? 案外おめでたいヤツラだな」

「・・・」

「アッハッハッハ、周囲をキョロキョロしても誰もいないから安心していいよ。お前らは俺と任侠ギルドにケンカを売ったんだからもう許さんよ」


俺はここで逃走しようとした10名全員に移動禁止の封印を掛けると、10名が俺の目の前に転送されてしまう。

コイツらを逃がすつもりはない。

逃げられないとわからないレベルのバカなんだろう。

全員が必死に走って逃げようと足を動かしているが、動くのは足だけで全く俺から離れられない。

コイツらには知っている情報を全部を語ってもらう必要がある。

全員に隷属の首輪を装備させてから10人に掛けた封印を解除、1人残らず任侠ギルドに送った。


遠見魔法を使って俺を監視しようとしていたヤツと周囲にいた関係者を徒影と忍が乗り込んでショック魔法を使用、全員無傷で確保することができたので隷属の首輪をはめさせてから、俺が魔法で全員を任侠ギルドに転送して・・・とりあえずは情報収集で敵を探る作業に入る。

アイテムボックスで忍を10体ほど新たに製造してマヅゲーラの街に放ち、今後の活動の情報収集と徒影のフォローをさせることにした。

シーパラから応援に来てくれてた徒影10体と忍10体は任務が終わったので撤収させる。


・・・任侠ギルド本部はすごい事になってそうだが、今回の事件は任侠ギルドの揉め事なので俺は積極的に介入するつもりはない・・・ただ手助けしただけだ。

闘技場の治療室の近くの応接にいるマナガルムの前に転移した。


「ボス、ありがとうございます。ボスのおかげで誰も犠牲を出さずに彼女を救う事が出来ました」

「俺もちょっと忙しくてマナガルムにはこのマヅゲーラと任侠ギルドを押し付けてしまってるからな、これぐらいは容易いことだよ」

「徒影達もワシも今まで襲撃を路上で2回ずつ攻撃されていて、知らないうちに襲撃は路上という自分勝手な固定観念が出来てしまっていたようだった。今回はその油断に足を掬われた形になってしまった。誠に申し訳ない」


マナガルムが頭を下げるが肩を叩いて『問題ないから謝らなくていい』と伝える。

それに女性も無事だったようで安心だな。

マナガルムに今回の件に係わったと思われるヤツラを全員捕獲して任侠ギルド本部に全員送ったので後は任せると言おうとした時に、ドアが開いてセバスチャンと女性が応接室に現れた。

マナガルムは俺が助けた女性と無事を喜んで抱き合っている。


それから自己紹介が始まった。

女性の名前は『アビーノ・キリサキ』額に2本の小さな角を持ち、少し緑がかった肌でエルフのような尖った耳・・・魔族の中の『鬼人きじん魔族』という話だった。

巨人族系獣人の鬼獣人とは違って身長は俺とほとんど変わらない170cmぐらい。

長命の魔族の一員なので実はマナガルムと年齢が近くてアビーノの年齢は350才を超えている。

2人はかなり前からの知り合いだったけどマナガルムが口説いたのは初めてらしかった。


3人で雑談をしてるさなかに任侠ギルド本部にいる徒影3号から念輪連絡が入った。


「敵の組織の全体像と本拠地が割れました。早急に突入する予定ですがご主人様はいかがされますか?」

「了解。全員連れて本部に戻るのでちょっと待っててくれ」


マナガルムに手早く説明をしてから安全確保のために、俺・セバスチャン・徒影2号・5号・マナガルム・アビーノを連れて転移魔法を使って任侠ギルド本部ギルドマスター宿直室にとんだ。

俺たちが到着するとちょうど応接室からガスと徒影3号が入ってきたところだった。

宿直室にアビーノと護衛のセバスチャンを残して残りは応接室に行って詳しい状況を説明してもらった。


敵の組織は俺が今まで潰した組織『天上天下商会』『ザイモア商会』『アントローグ商会』『昇竜商会』などの元々繋がりのあった組織の末端にいた幹部連中が生き残りを集めて、捜査の追手を逃れて警備隊や聖騎士団が存在しないマヅゲーラの街に入り込んで隠れ家に潜伏していた。

50人以上という大人数になってきたので任侠ギルドに戦争を吹っかけてきた。

彼らは・・・早乙女抹殺を目指して『早殺隊そうさつたい』と名乗っていた。

俺を逆恨みしてるヤツラの犯行かよ・・・

活動資金は潰された組織から持ち出した宝石や貴重アイテムなどの、換金しやすいものから活動資金に充てていたみたいだ。


マヅゲーラの中にあった昇竜商会の末端組織の『ダークネス商会』が隠れ家などを提供していて、その商会の本部がアジトなんだそうだ。

存在すら知らなかったなダークネス商会なんて。

俺が強制捜査で知り得た情報ではマヅゲーラにあった昇竜商会の末端組織は1つだけだと思ってたので、そちらは即座に徒影5体で叩き潰していたし・・・


俺が徒影5体に招集命令を出すとマナガルムとガスも参加したいと言ってきた。

ガスに任侠ギルド本部の防衛はどうなるのか聞いたら、ガスと同期で任侠ギルド幹部の『バクト兄弟』という鬼獣人がいて彼ら2名は盾職で元Cランクの冒険者で、任侠ギルドの本部防衛を10年以上も務めて拠点防衛に手馴れているんだそうだ。

今現在は緊急招集で任侠ギルド本部の防衛に入っているので安心だと説明してくれた。


それなら安心できるかなと俺を含めた8人でカチコミをすることに決定。


マヅゲーラの街に展開していた忍10体のうち5体を敵の隠れ家周辺に展開させて先行で探らせる。

マナガルムとガスが装備に着替えるまで待ってから2人に光魔法『聖者の福音』を掛けた。

これは敵の幹部の中に闇魔法『洗脳』の使い手がいるとの情報があったので、闇魔法の精神攻撃を無効化する光魔法を使用した。

隠れ家に突撃する前に任侠ギルド本部内で打ち合わせを済ませておく。

俺は今回はサポートに徹してカチコミはマナガルム・ガス・徒影5体の7人の任侠ギルド最高幹部連で始末させることに決定する。


転移魔法で隠れ家の正門前に移動して、まずはいつものように隠れ家全域に厳重な封印結界を掛ける。

移動禁止の封印と音漏れ禁止の結界も掛けてからカチコミ開始のスタートだ。

マナガルムの大剣で正門門扉を叩き壊してから8人は中に侵入して暴れ始める。

俺は正門の外で隠者スキルで気配を完全に断ち腕を組んで見学。

隠れ家の構造も複雑なものじゃないし罠や鍵は解除されてるので、生き残り総勢41名らしいからここで10分ほど待ってるだけで終了だな。


マナガルムたちが死体回収までの処分を終えて隠れ家から出てきたのは7分後だった。

ここの土地建物は任侠ギルドで回収し直属の土地になる。

マナガルムの新居をここに作ってやることにした。

この土地は任侠ギルド本部から歩いて5分ほどにあるので便利でいいだろう。

サブマスターの新居として使えるように俺は残って改築することにしたのでガスと徒影5体は転送魔法で任侠ギルド本部に帰還させる。

俺はマナガルムの要望を聞きながら20分ほどで敵のアジトを地上3階建て地下に倉庫ありを完全に作り変えた。

外見だけは全く一緒だが中身は全く違う・・・2階建ての中2階のロフト付きにして地下室は広げて倉庫ではなくワインセラーと俺の転移室にした。

転移室には簡易ゲートをヨークルの早乙女商会ヨークル支部に繋げておいて、いざという時の逃走経路としてマナガルムに教えておく。


「それにしてもボスの多種多様な魔法と技術にワシは驚かされっぱなしですな」

「まぁ、他言無用で頼む」

「ワシが言ったところで目の前で見せられない限り誰も信用しないレベルですよ。ワシも他人から聞かされたらまず信用しないでしょう」

「今回は俺のせいでアビーノさんにまで迷惑をかけたんだから、お詫びとして受け取ってくれ。マナガルムはアビーノさんと結婚する気なんだろう? ここに一緒に住んでくれると安全だからとついでにプロポーズしたらどうだ?」

「な・・・そうだな・・・アビーノの安全の為にもそうした方がいいな。これからプロポーズしてくるよ」


ついでに俺はこの敷地防衛のためにアイテムボックスから取り出した忍3体をマナガルムに紹介しておく。

2体は敷地防衛で1体はアビーノを陰ながら護衛することにした。

俺はマナガルムを連れて宿直室に転移、アビーノをプロポーズするマナガルムを残してセバスチャンを連れて部屋の外に出る。

応接室で座ってセバスチャンが入れてくれたコーヒーを飲んでるとガスがノックしてから部屋にやってきて最終報告を受けた。


今回の騒動を引き起こした敵は組織もサポートしていた組織も完全に潰すことができた。

俺が捕えた連中も全部の情報を引き出した後に処分が終えてガスから隷属の首輪を返却された。

これ以上の生き残りの存在は確認できないというか・・・横のつながりがほぼないので末端幹部程度にはこれ以上の情報は無かったという話だった。


「という事で、これで終わりだな。ガスにお願いしたいのは任侠ギルドが把握できてなかった裏組織の発見・潜入・捜査は徒影達に任せろ。突入して殲滅するのはマナガルムと任侠ギルドで頼む。誘拐されてきていたような被害者は教会シーパラ本部の『アーシェル・ペスカトーレ枢機卿』と『シル・バリトネット司教』宛で護送してやってくれ。護送前に俺に連絡を必ず入れるようにな・・・教会には恩を売っておくさ」

「了解しました。任侠ギルドは闇組織壊滅に動くという事を全職員に徹底させます」

「ああ、頼む。今後はどんなガセっぽい情報でもいいからガスにまで上げるようにしておいてくれ。ガセかどうかの確認は徒影達が行い俺に報告させるようにしてある」

「わかりました。お店で働く女性達からの情報はいかがしますか?」

「全部徒影達に伝えてくれ。後・・・女性達だけでなく男娼達には任侠ギルドって係わってるのか?」

「任侠ギルドの扱いは働く女性達と取扱いに全く変わりませんね。貴重な情報源&収入源であるために働く人達の保護は任侠ギルドの義務でもありますので」

「わかった、引き続き頼む。では俺はそろそろ帰らせてもらうよ」

「お疲れ様でしたボス」


俺が飲んでいたコーヒーのマグカップをアイテムボックスに入れて、応接室のソファーから立ち上がった時にマナガルムはアビーノの肩を抱いて宿直室から出てきた。

プロポーズが成功したみたいだな。

このまま二人は俺がプレゼントした新居で生活するようだ。

徒影1号と4号の2体に新居まで送らせることにして、俺とマナガルムは今日は解散となった。

ガスはこのまま任侠ギルド職員たちに今日の出来事をかいつまんで説明してから、今後の方針を伝える緊急幹部会議を開くと言って部屋を出て行った。


俺も全部終わったのでセバスチャンを連れて早乙女邸に転移魔法で帰宅した。

嫁達はすでに熟睡中の深夜12時・・・風呂に入ることにする。

露店風呂のある外に出てみると今夜は月はすでに沈んでいて満点の星空の下で『星見酒』を楽しむ。

ドルガーブで購入した辛口の大吟醸で、つまみは塩茹でしたソラマメと小魚の素揚げ。

満点の星明りを堪能するために露天風呂で光る魔道ランプをすべて消した。

すべての魔眼を持つ俺に暗闇は存在しない。


これはいい・・・ムードも満点になったな。

体が火照ってきたので露天風呂の周囲の岩に腰を下ろして足だけを入れて星見酒を堪能する。

風呂から上がり体を石鹸で洗って今度は内風呂に入ってから外に出る。

素っ裸で温泉で火照る体の上にガウンを1枚羽織り、リビングに戻って酒をウイスキーの水割りに切り替えてつまみはビターなチョコレートにした。


飲みながら最近溜まっていた報告をまとめてもらい、念輪のパーティーラインをつないでゴーレムによる報告会を開催することにした。


モフモフ天国各店の売り上げと苦情などの報告から・・・

ヨークルは2店舗つくったことで客の入りは落着きを取り戻したようだ。

まだ多少並ぶ時間帯はあるようだが混雑するまでには至っていない。

シーパラ店は少しずつ順調に客の入りを増やしているようで固定客も増加の傾向にあるとの報告。

苦情は今のところ上がってないみたい。

アマテラスから魔法ミルクポットをもらったので供給に不安がなくなったので、明日からメニューに『ホットミルク』と『アイスミルク』を入れることに決定する。

練乳付きはサービスだ。


ユーロンド達からヨークルの早乙女邸は封印結界が俺の特別製で強力なので人数を減らせるのではないかという報告があった。

今現在は8人のユーロンドで組織されてるが早乙女邸横の倉庫まで込みでも、5体でも余裕があるほどらしい。

モフモフ天国ヨークル2号店ではユーロンド5体となっているのも、ヨークルの悪党が激減したおかげで3体でも行けるという・・・

早乙女邸のユーロンド6・7・8号の3体をヨークル2号店に転送させて、今まで護衛任務に就いていた5体を転送魔法で俺のアイテムボックス内に引き戻したが・・・考え直して早乙女工房に5体とも送った。

あそこは敷地面積以上に最近は敵の襲撃の集中があるからな。

待機させておくだけでもいいだろう。

それの早乙女工房にはマヅゲーラとの簡易ゲートがあって行き来はゴーレムでもできる。

いざという時の応援もできるので一石二鳥だろう。


逆に徒影からマヅゲーラの徒影を増やしてほしいとの依頼があったので、俺はアイテムボックス内で10体の徒影を作成して任侠ギルドでマスター権限で登録をしてから、転送魔法でマヅゲーラに送った。

しばらくの間は裏組織壊滅作戦の実施中なので15体の徒影で問題解決と要人護衛任務に就かせる。

忍も10体余分に作成して一緒にマヅゲーラに送った。

マヅゲーラは徒影15体と忍23体の厳戒態勢となったな。

ユーロンドも応援が可能できるようになってる。


セバスチャンより最後の質問された。


「ご主人様にご報告が・・・私が看病していた『アビーノ・キリサキ』様から譫言で明らかに敵襲撃者の幹部の名前を言っていましたがいかがなされますか?」

「俺が鑑識魔法でアビーノと敵幹部の両方を調べた限りでは・・・2人共の脳内を全部調べたわけではないが俺の鑑識魔法では店の常連という情報しか出なかったな。これは極秘だが忍にはアビーノの護衛と『監視』を言い渡してる。マナガルム邸に残した忍は特別製で鑑識魔法が使えるようにしてある。変な動きがあった場合は徒影に連絡があってすぐさま対処できるよう指示も済ませてる。マナガルムには忍1体が必ず護衛につくと伝えたが、正確には2体がアビーノに付きっ切りとなるように手配した」

「という事はしばらく泳がすという事でよろしいですか?」

「ああ、そうなるな・・・俺たちが抱えてる秘密は大きい。ほんの少しでも引っ掛かりがあるなら完全に疑いが消えるまでは警戒は解けないな。アビーノには、はるか昔に洗脳された痕跡があった」

「洗脳の痕跡があったのに泳がすのですか?」

「アビーノの洗脳の痕跡はマナガルムにすら会ってない頃のもので300年以上前だ。今回の事件とは関係がないとは思うがな・・・何かしらのキッカケでトラウマが発動する可能性もあるしな。だからアビーノを『監視』するんだ。何かしらの組織が接触を図ってくる可能性が否定できないからな」

「なるほど、了解しました。それと昨日・一昨日のフォクサの故郷のことなのですが・・・」


ウェルヅ大陸北の山岳部には温泉の地熱があって野菜が豊富に自生していたと報告があった。

しかも海風の影響かミネラル豊富で野菜も俺の想像していたモノの倍ほどの大きさだった。

海岸部には海藻も多く昆布・ワカメ・ヒジキなどもデカいし豊富。

それらを食べて生活していた魚介類が巨大化して魔獣へと変化していったようだ。

それと温泉と同じように洞窟もたくさんあってセバスチャンとマリアが俺用でフォクサに狐魔獣が使用していない人間用の小さな洞窟を貰って改造してきてくれたみたいだな。

MAPで詳しい場所を聞き登録しておき、セバスチャンとマリアに深夜の暇な時間にでも改造しておくように指示を出した。

それといくつかの洞窟内にウドやホワイトアスパラなんかも自生していたようなので、洞窟内での栽培する野菜を研究してもらうことにした。


今日の報告会はこれで終了だな。

リビングのテーブルの上に広げてあったモノをアイテムボックスに入れてから、セバスチャンのアイテムボックスに明日の嫁達のダンジョンアタック用にキャンピングバスを送って、俺は寝室に行って寝ることにした。




翌朝は8時に起床した。

天気は薄く曇ってて少し湿度が高いので今夜から雨が降りそうだな。

風は微風で昨日とほぼ変化なし。

るびのと嫁達はセバスチャンとマリアとフォクサとともに出かけて行った。

ブランディックスダンジョンのB7Fからの攻略再開をすでに始めているだろう。

俺はクロに起こしてもらい早乙女邸1Fのダイニングで朝食をとる。

今朝は自作でチョココロネを作ってみたら大成功だったんで手が空いてるメイドゴーレムに作っておいてもらうように指示を飛ばした。


今日は赤系のチェックのシャツ・真っ白のTシャツ・黒系のジーンズ・茶褐色のワイバーンの革製ロングブーツというおよそ冒険者らしくないファッションに着替えてから早乙女工房に転移した。

早乙女工房の2Fに応接室をこれから作ることにする。

転送室からパーテーションで強引に仕切って、途中でいくつかの扉を作るが全部ダミーだ。

パーテーションで仕切られた応接室を作成した。

豪勢というわけではないがそこそこぐらいは客を出迎える雰囲気を出す。

ソファーやテーブルにそれなりのゴージャス感を出した・・・ユマキ家でこの国の金持ちのゴージャスさは見てきたので、ソックリになりすぎないように作り上げていく。


9時ちょうどに教会の人間が先にやってきたようなので先に会うことにした。

ちなみに面識のない人間からのパーティーの誘いは今朝の7時に返事を聞きに来たらしく、2組ともユーロンドによって俺直筆の手紙を持って追い返されてる。

使者では俺のサイン入りの手紙の入った封筒を開封することはできないから一度持ち帰るしかない。

時間稼ぎでしかないので、そのうちまた来るだろうが今度は何と言って誘ってくるのかの反応が知りたかっただけだったりする。

ワザとイラつかせるような挑発的な返答を出したので、今後の対応次第ではパーティーに参加しても良いぐらいには思ってる。


教会の使者の人間はメガネを光らせながらニヤニヤと俺を見下した視線で、上から下まで嘗め回す様に俺を見てから鼻で嘲笑うような教官だったので、アイテムボックス内でこんなカスを寄越した大司教の露草桜に宛てて文句をしたためて作成した手紙を、その男に返事だと言って渡した。

これにも俺のサインが入っているし宛先の露草桜の名前まで入ってるので使者には開封できない。

目の前で手紙を書いた訳じゃなくアイテムボックスからさも用意してましたというように封印された手紙を出したので、この男は桜に怒られてから驚愕するだろう。

ちなみに教会の司祭教育の指導教師への教育は『ちょっと待っててほしい』という1文が最後の1行に書かれてるだけで、それ以外はコイツの再教育法についてミッチリと便箋5枚に分けられて書かれていたりする。


俺が露草桜宛の手紙を渡したことでうれしそうな顔をしたので・・・桜に惚れてるなこのバカ・・・この後の君には説教され手再教育を命じられる運命だけど・・・ご褒美になっちゃったかな?

再指導方法の超スパルタ教育の指示は手紙に書いた・・・最終試験が聖騎士団の1ヶ月入隊(笑)

・・・だけど俺は教育者じゃないからな。まぁ、その辺もコミで桜に任せておく。

桜に手紙を渡せるので直接会えるチャンスに顔を火照らせながらバカメガネ君は飛び跳ねるように帰って行った。

あえてこんな奴を送ってきた露草桜の真意は教官の質の低下を悩んでいて、再教育を俺にマジで頼みたかったのと、このカスの処分を公式にするために俺に頼みたかったんだろうとまで読めたので、全部乗っかって本人に手紙を持たせてやった・・・自分が処分される証拠付きの手紙だ。


教会からの鼻持ちならない使者が帰っていくと今度はフォンマイ家からの使者がすでに待機しているので、引き続き応接室に籠りっきりになってしまってるな。

今夜の夕方17時になら行けると返事を伝えると、この早乙女工房に迎えのゴーレム馬車を送りますと言って帰って行った。

こちらはスムーズに終わる。

もう一人もスムーズだ・・・今から一緒に冒険者ギルド本部に行くんだからな。

しかも使者となって来たのは俺と周知の人間・・・いや、正確には人間ではなく犬獣人の『ニール・オスキャル』だ。

会話も簡単で挨拶と握手を済ませると即移動を開始する。


早乙女工房のメイドゴーレムとユーロンドに今日の早朝に追い返したヤツラがそろそろ新しい手を考えて、やってくると思うので警戒しておくように念輪で指示をだした。


ニールが乗ってきたゴーレム馬車に乗り込んですぐに冒険者ギルド本部に到着する。

歩いていくことができるほどすぐ近所だしな・・・まぁこれも形式通りってことになるんだろう。

冒険者ギルド本部の中に入るときに冒険者ギルドのAランクカードを提示して中に入っていくと、受付の横のシートにビッタート卿が座っていた。

ニールはここまででお役御免なようだ・・・ニールと別れて今度はビッタート卿に先導されて冒険者ギルド本部のギルドマスター室に案内される。


ギルドマスター室の扉を見てビックリした・・・扉の目線の高さにあるネームプレートがすでに青木勘十郎からアクセルビッタートに変更されていたからだった。

俺が横にいるビッタート卿の顔を見ると、俺の目線の意味に気付いたビッタート卿はすでに諦めの境地に入っている笑顔で笑ってた・・・すでに悟りを開いてそうだ。

ビッタート卿がノックをして中に入っていくと応接室のソファーに座っていた青木が立ち上がって俺を出迎えてくれた。


「ワザワザ呼び出しして済まないな早乙女君。扉のネームプレートを見て分かるように今日から正式に冒険者ギルド本部ギルドマスターはアクセルが就任することになった。俺は20日間ほど引継ぎを手伝って、晴れて冒険者に戻れるよ」

「それはおめでとうございますと言った方がいいのかな?」

「青木君にとっては喜ばしいことだけど、ワシにとっては悲劇の始まりだがな」

「まぁまぁビッタート卿には楽してもらえるようにギルド本部に巣食ってる悪党共は、早乙女君の協力のおかげで早期解決が出来たんだ。俺は冒険者ギルド本部理事会に巣食う悪党理事3人を一緒に引退に追い込むことが成功したから、これからビッタート卿にはギルド本部の幹部育成をお願いしておきますよ」


こんな感じの緩い雑談で『俺』『青木勘十郎』『アクセル・ビッタート』の3者会談は始まった。

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