2つの展示会と帰りの汽車の旅っす。
10・31修正しました。
朝日が全部昇ってから伝声管を使い朝食を部屋まで運んでもらう。
今日の朝食はバケットいっぱいの焼きたてのパンとコーンスープとフルーツたっぷりヨーグルトだった。
パンに塗るバターとジャムも小皿にこんもりと盛られてるので使い放題っぽいな。
バケットをいっぱいにしてる焼きたてのパンはクロワッサンやロールパンなど種類も量も凄いな。
コーヒーか紅茶を選べたようなので俺は紅茶にした。
カートワゴンで朝食を運んできた時から茶葉の豊潤な香りが凄く良くて、かなり高級な紅茶らしいので俺は紅茶にしたんだが、嫁3人も紅茶だったのは驚いた。
クラリーナはミルクティーにしてもらってる。
俺は一杯目はストレートで飲んで2杯目はミルクティーにしたら、ミーもアイリも同じように2杯目はミルクティーにしていた。
ロールパンもクロワッサンも美味しかったし、小鉢に入ってるポテトサラダやスクランブルエッグもおかずとして出てきていてかなり美味しかった。
食後はそのままの状態で寝室に行ってカーテンを閉めずに寝てしまった・・・俺は夜更かししていたし。
嫁達もまだ朝が早かったのか雑談していたみたいだが俺と同じように二度寝してしまってたようだ。
起きたら朝の10時を過ぎていた。
嫁達はリビングで雑談してる。
俺は起き上がってパジャマにしていたガウンを脱いで、パーカーとカーゴパンツに着替え靴はハイカットのスニーカーにした。
リビングに行くと女性陣ももちろん着替えは終えてる。
クラリーナは真っ白のフリルブラウスにグレーでチェック柄のサスペンダー付きのフレアスカート。
黒いヒールのパンプスで脚が長いのにさらに長く見えてしまう。
ブロンドの長髪を後ろで三つ編みにして毛先にブルーのリボンを結んでとめてあるから、お嬢様っぽくてクラリーナに似合っている。
ミーは全くの正反対でワイルドそのもの。
こげ茶色の革のジャングルブーツを履き、その上は迷彩柄のカーゴパンツ。
上半身は赤黒のボーダーのロンTを着てる。
茶髪の長髪をポニーテールで無造作に結んでいてワイルド感があがってるな。
アイリはまた服装の系統がミーともクラリーナとも違ってる。
緑のタータンチェックのシャツに下は白いストレートパンツを履いてシューズはヒールの高さが低めのピンクのパンプス。
これで凄く大人に見える。赤いショートカットの髪がなぜか落ち着いた雰囲気を出してる。
起きてきてリビングの空いてるソファーに俺が座ると質問される。
「しん君、よく眠れた?」
「うん、熟睡させてもらったよ。おかげで気分爽快だな」
「しん様、今日って午後4時の列車に乗ってシーパラに帰るのですよね?」
「そうだな、晩ご飯は列車の中での食事・・・そうだ! これを渡しておくよ」
俺は魔石と魔水晶を加工して作ったブレスレットを渡す・・・改良版の念輪だった。
「しんちゃん、これって念輪なの?」
「ああ、そうだよ。魔石にテーブルマナーを入れておいた。これをいつでも装備しておけば、緊張で味がよくわからないって事にはならないだろう。使い方はドレスと一緒だ、念輪のテーブルマナーに身を委ねればいい。みんなの分の念輪と交換して」
「ほんとに? ありがとう」
全員からお礼を言われながら念輪を取り出して交換してもらった。
せっかく高い料金を支払って美味しい食事を味わえないなんて残念だからな。
「今日はこれからどうします?」
「予定は何もないんだよなぁ・・・ドルガーブに来た目的って『海に沈む夕陽を見ること』だからすでに目的は終わってる。ほかの観光って・・・昨日行った船舶博物館は面白かったな」
「面白かったねぇ。帆船の中に入りたかっただけなのに、あそこまで面白いとは思ってなかったよね。しかもグラナドホテルの宿泊者は無料で入れたのも結構嬉しかったしね」
「そうなんだよな。このグラナドホテルって今ミーが言ったように売店で買うと1割引きになったり、船舶博物館は無料だったりと・・・何かこのドルガーブの都市の中で色んなサービスをしていそうなんだ」
「それはありそうね。私が思うに色々な場所の割引サービスなどをグラナドホテルはしているんじゃないのかな?」
「あっ! そういえば今のアイリさんの話を聞いて思い出したのですが、ホテルのフロントの横に物凄い数のパンフレットがありましたよ」
「それが俺も言いたかったんだ。今からホテルのフロントに行ってどこか面白そうなところを探さないか? その方がこのドルガーブの楽しみ方がありそうなんだよな。フロントの従業員に聞けばより効率的に遊べそうだしな」
「そうしようよ。今から行こう」
ミーの立ち上がりながらの声で全員が立ち上がって、まずはホテルのフロント横に出かけることになった。
4人で転移室へ行きフロントまで歩いていく。
フロント横にある細長いテーブルにたくさんのパンフレットが置いてあった。
・・・半分以上はちょっと時間的に不可能だ。
夕方以降に開かれる賭博場やカジノ、日中に開催されている『格闘場』という場所まである。
しかも賭博してるというのもあって・・・ギャンブル関連のパンフレットが多いな。
っていうか、ギャンブル関連のパンフレットなんてはじめて見たよ。
これはこれで面白そうだったのでパンフレットだけ貰っておく。
『血沸き肉踊る』とか『一攫千金』なんて赤や金色の文字までパンフレットにたくさんあって、キャッチコピーが面白かったのでアイテムボックスに入れた。
俺がギャンブル関連のパンフレットを面白そうに手にとってアイテムボックスに入れているのでフロントの従業員が親切に色々教えてくれた。
都市ドルガーブには賭博ギルドというのがあってカジノや賭博などギャンブル関連の部分を取り仕切っている組織があるみたいだ。
賭博ギルドというアンダーグラウンドな名はつけられているが・・・シーパラ連合国の政府の直営となっていて、決められたオープンルールに則って組織運営されて国の国庫を潤してるんだと・・・合法組織化されてるのか・・・任侠ギルドとはだいぶ違うな。
どっちにしてもすでに金稼ぎにもギャンブルにも興味ない俺には関係ないな。
パンフレットが面白かったから貰っていくだけだと、説明したらフロントにいた男性従業員が奥から古いパンフレットを何種類か持って来てくれた。
面白い絵面などが載っているパンフレットで全部説明してくれる・・・こういうのを集めるのが好きな人だったみたいだ。
俺の面白いという話で変なスイッチを入れてしまったな。
男性従業員の説明がマジで楽しかったので、ありがたく貰っておく事にする。
その後で隣にいた女性従業員がホテルの2階の催事場で行われてる展示会で『時計博覧会』が開催されているんだと説明してくれた。
もう一人の女性従業員は嫁達にパンフレットを見せてくれて、このグラナドホテル本店から歩いていけるぐらいの程近い場所にある美術館で行われてる『宝石展』というのもある。
他にもいくつか話があったが面白そうなものはこの2つだった。
時計博覧会・・・イーデスハリスの世界にはステータスカードやギルドカードに時計機能があるために、一般社会には全く普及することがなかった。
転生者によってもたらされた『美術品』『機械工芸品』としての価値以外はない。
お金持ちの遊び心と職人の職人魂をくすぐることしかしてない。
魔力を動力として発達しているので『電力』というものが一切発展しなかったこの世界では転生者が持ち込んだ時計は、修理すら出来ない状況なので『時計=王侯貴族や大金持ちのオモチャ』でしかなかった。
それらの転生者が持ち込んだ時計や転生者の中には時計職人がいなかったおかげで大きな模型しか作れなかった失敗作などを集めて展示されているらしい。
グラナド商会代表の趣味で世界中から集められて・・・騙されて買わされた物すらギャグのように展示されてるみたいだ。
それで宝石展はグラナドホテル近くの私設美術館があって、そこの美術館はシーズの家でこのドルガーブに本拠を持つ『フォレストグリーン家』の所有する宝石が飾られているみたいだ。
入場料は半額割引で2500Gと意外と高額だが、女性には一見の価値はあるらしい・・・これは嫁達がぜひ見たいとリクエストされた。
今は朝10事半、嫁達と相談の結果・・・今から午前中にホテルの時計博覧会を見て部屋に戻って昼食後に宝石展を見学。
その後はチェックアウトして駅横の食料品市場で列車出発時刻までの買い物という名前の時間つぶしをすることが決定した。
なので・・・今からそのままホテル2階の催事場に行って時計博覧会の見学をする。
宿泊客は無料で一般客は入場料が1000Gもかかるこの時計博覧会は俺にとっても嫁達にとっても面白かった・・・俺たち以外にこんな時間にこの場所にいる人は皆無だったけど。
腕時計・置時計・携帯電話やスマホらしきものまであった。
周囲には誰もいないけど声に出さずに念輪で嫁達に1つずつわかるものは説明していく。
いくつかは完全に分解されて全ての部品を並べられているのもあって、パネルに機械製図のように構造を説明されているものもあった。
全部面白かったのでヘルプさんに記憶しておいて貰う。
時計が脳内表示されるようになったので腕時計をはめる必要は全くないのだが、まぁヒマになったら作るかもしれないしな。
電池は製造出来ないが魔石での代用品でこの世界で製造された幾つかの時計も合った。
やはり歯車の製造に苦慮したらしく小型化は出来なかったが大型の置き時計で振り子時計は製造されたみたいだった。
これも製造させた外国の貴族の趣味で大金を投じて作られている。
機械製図までセットで展示されていたのでヘルプさんに記憶を頼んだ。
それでグラナド商会代表が騙されて購入した時計とは『携帯電話』と『スマートフォン』の事だった。
どうやって騙されたのかという経緯などもパネルに表示されてて笑った。
俺が笑った意味も説明したが携帯やスマホの事が全く分からない嫁達には理解不能だったみたいだな。
ただ代表が騙されて大金を払って気づいた時には詐欺師に逃げられていた事は分かるので笑っていたが。
見終わったら11時半だったので部屋に戻って昼食をとる。
昼食は『味噌ラーメン』だった・・・メイドに聞いたがミルクルの旦那でこのホテルの総料理長がとんこつラーメンに惚れこんで作ったが、ヨークルのとんこつラーメンを味で超えることが不可能だったので試行錯誤の結果、味噌ラーメンに辿り着いたらしい。
しかもいまだに試行錯誤しているらしく『とんこつラーメン』『味噌ラーメン』『塩ラーメン』はすでにメニューに載っていて、今は『しょうゆラーメン』まで開発中みたいだ。
以前知り合った転生者から聞いた話だけで試行錯誤して作ってるとは・・・すげぇな総料理長。
味噌ラーメンの味は美味かった。
メンは太目の縮れ麺で味噌ラーメンの、こってりしたスープにからんで美味い・・・だけど俺は野菜が多すぎてラーメンを味わえないし、元々それほど味噌ラーメンは好きではないので・・・とんこつラーメンほどの感動は無かったのは仕方が無いことだろう、人には好みが必ずあるし。
食後は少し休憩して今度は宝石展。
近くにある1番大きな高層建築物のフォレストグリーン商会の本店の1階部分にあるフォレストグリーン私設美術館だった。
これは確かにでかいビルだ・・・しかもグラナドホテルの南側にあって大幅に視界を遮ってるな。
近いとはいっても駅前の片側2車線のゴーレム馬車通路と敷地面積がお互いあるので10分ぐらいはかかってしまう。
入り口で宿泊プレートを4人で提示して4人分の入場料1万Gを俺の冒険者カードから支払って入場すると女性陣の目が輝いて展示物をじっくり見始める。
どこかの滅びたエルフ王族の王冠やティアラなど巨大な宝石がちりばめられている。
滅びた王家の王笏のレガリアや玉璽まである。
こちらもわかりやすくフォレストグリーン家が購入するに至った経緯までパネルで展示されていて俺はパネルに興味津々だったが、嫁3人は光り輝く宝石から目が離せなくなってる。
このイーデスハリスの世界では宝石はけっこうゴロゴロとあるみたいだし、昔はレベルの高い宝石職人がたくさんいたので、500カラットを超すダイヤモンドは数多くあるようだった。
宝石職人スキルマスターのスキル魔法を使用すれば元素からの組み換えで不純物を取り除いて作ることができるので、わざわざカットしなくても好きな形に作り上げることができるからな。
展示されてる王笏には先端に800カラットを越すダイヤモンド・・・160g以上の重さがある・・・が取り付けてあるみたいだ。
さすがにここまでデカい大きさだとガラスの偽物の付いた子供のおもちゃにしか見えないな。
ここの施設内は封印結界が凄いな。
移動禁止の封印が全部の展示品にかけられてるし、展示ケースには接触禁止の結界が張られているのでガラスに触ってるつもりでも数mm離れてる状態だ。
警備員は出入り口にしかいないのは入り口の警備だけじゃなくて出られないようにするためだろう。
フォレストグリーン家の公式の場に出る際に取り出されて使用するティアラ・ペンダント・ブレスレットなども展示されている。
情勢用だけでなく男性用の王笏・ボタンなども大きな宝石が取り付けられていて・・・さすがにフォレストグリーンはシーズ家だ・・・贅を尽くした素晴らしいコレクションがある。
順路に従ってグルっと1周回ってくるだけで1時間以上かかった。
すでに時刻は昼の3時前なのでホテルに戻って宿泊プレートを返却し予定通り食料品市場へ。
出発予定時刻まで軽く見て回るぐらいしか時間は残ってないが・・・時間つぶしだな。
果物の量が豊富で安かったので、俺が持ってないフルーツをいくつか購入しておいた。
フォレストグリーン商会の直売所があって梅酢・紅ショウガ・ミョウガの梅酢漬けが新商品として販売されていたので試食ができたので味見してから購入。
直売所ではおにぎりも販売開始していたので一緒に購入しておく。
時間になったので駅に入って乗車券プレートを全員で提示してホームに入る。
すでに出発準備が終わっているようだ。
巨大な列車はホームに鎮座していて出発の刻を待っているようだ。
昨日乗車した列車とは違うな・・・今日の乗る列車のほうがかなり外観の色が黒いし屋根の形も若干違う。
最後尾の車両の乗車用の階段に立つ駅員に個室プレートを渡して4枚のルームキープレートをもらって嫁達に配り、先を歩くメイドの案内に従って階段を上って個室まで入っていく。
今日はメイドによる個室の施設案内は断って全員分のワインとフライドポテトとチーズの盛り合わせを直接注文したら、メイドはメニューを全員に配ってから注文を確認して控室にさがっていった。
注文したモノが運ばれてきた後にみんなで乾杯をした瞬間に列車の汽笛の音が鳴り響き列車が発進した。
手に持っていたワイングラスをテーブルに置き、最後尾のテラスに出て動き出した列車の上から離れ行く駅と中で働く従業員達に向かって手を振る。
個室に戻ってくるがまだ外は明るい・・・今日の日の入りの時刻は夕方6時40分。
今日は早めの夕食をとって夕陽は列車のテラスで楽しもうよと嫁達にを提案したら全員一致で賛成だった。
アマテラスにもらった釣りMAPによって、満潮と干潮の時刻がわかる潮時差表だけでなく日の出日の入り時刻までデータで入ってきてしまってる。
必要ないかと思っていたがこういう時は便利だな。
伝声管で17時に夕食をとることをメイドに告げて準備をお願いした。
それまではのんびりと流れる景色を見ながらワイングラスを傾けて嫁達との雑談を楽しむ。
るびのも先ほどフォクサと一緒に早乙女邸に帰宅したようで、セバスチャンから念輪による連絡があった。
ウェルヅ大陸最北端のフォクサの故郷は豊富な魚介類があふれかえっているらしい。
蟹もエビも貝類も魔獣化していてデカくなっているようだった。
俺のアイテムボックスに送られてきていた魚介類の魔獣の解体された素材はどれも巨大だった。
蟹もセバスチャンからの報告では3m以上あってはさみだけで俺の身長よりもデカい・・・魔獣すげぇ。
そんな話で盛り上がっているとメイドから部屋の外から呼ばれた・・・夕食の準備が整ったようだ。
先導するメイドの後に続き今日も食堂車の一番奥のテーブルに着席。
今日は肉料理の食事プレートを取り出して渡し、メイン料理は一角ギューからとれたであろう鹿肉でのロースト肉だった。
一度別の場所の窯でじっくり時間をかけて焼き上げられているのだが、固くならないように工夫されて焼かれた鹿肉が非常に柔らかくて味わい深く美味しかった。
前菜のオーク肉の湯引きサラダも美味しかったし野菜たっぷりのミネストローネも絶品だったな。
嫁達も今日は新型の念輪機能によってマナーを気にしないで食事を楽しむ事ができたみたいで満足してくれたようだ。
個室に帰り大草原に夕陽が沈んでいくのをテラス席から見学できた。
これも最高級個室ならではの特権だな。
陽が沈み個室に戻るとみんなで列車の窓から眺める三日月を肴に酒盛り。
昨日、俺は特製ミルクばかり飲んでいたので今日は酒をたくさん注文する。
昨日の午前便はソフトドリンクの方が多かったドリンクメニューだが、今日の午後便は逆に酒の方が多い。
つまみも種類がたくさんあってメニューの中は『芋の盛り合わせ』とか『肉系の盛り合わせ』などのようなパーティーの時のような料理が並んでいる。
俺達も何種類かのつまみを頼んでいろいろな酒を飲みまくった。
少しほろ酔い気分な嫁達にたくさんのキスを迫られる・・・イチャイチャ成分は今日も補給できたな。
ドルガーブに到着した時と同じように、シーパラの外壁手前で左にカーブしてバックから駅構内に侵入していくのを、外のテラスの最前列で最上級個室の特権で楽しませてもらう。
メイドには後片付けを頼んだ。
別のメイドにルームキープレートを返却して列車の旅は終了した。
最後にテラスからの風景を楽しんだのは嫁達には気分のいい酔い覚ましとなったようだった。
列車を降りてホームを歩いていった先にある出口で乗車券プレートを返却。
シーパラ駅の構内を歩いて外へと向かっていってる最中に俺に遠見魔法が掛けられる。
反射的に相手の場所と魔法を使用した相手を探すと・・・場所はドルガーブのグラナドホテル本店1階の売店からで相手は精霊王のデュアリスだった。
即座にミルクルに見つかって後頭部にチョップを食らってまた正座させられて説教されてる・・・懲りない妖精王様だな。
誰にも気付かれずに早乙女夫婦に張られている結界を少し濃くしてデュアリスの追跡は振り切る。
全員でホップボードに乗って周囲を俺とクラリーナが浮かべたライトの魔法で明るくさせて早乙女工房に移動する。
早乙女工房に到着してみると早乙女工房専属のメイドゴーレム『紺』に5通の手紙を渡される。
一昨日に俺が招待されたので出席したユマキ家本宅でのパーティー、サトシの第12代ユマキ家当主就任記念パーティーで騒動を起こしたシーズ『フォンマイ家』の現27代目当主『ゲルアー・シーズ・フォンマイ』からの手紙が1通と・・・その他は話したこともないシーズの家の誕生日パーティーや先々代の還暦祝いパーティーなどのお誘いが2通。
1通は教会からでまたいつでもいいので勉強を教えてほしいんだそうだ。
最後の1通が冒険者ギルド本部ギルドマスター『青木勘十郎』からの会談の申込書だった。
5通とも今日に届けられたものだが、教会から来た手紙以外の4通は明日にでも返事が欲しいと、明日の朝にまた返事を聞きに来るそうだ。
今夜にでも内容を読むことにして手紙を受け取り、俺の転移魔法で早乙女邸に帰還する。
嫁達にはリビングで酒盛りの続きでもしてもらって・・・と思ったら、るびのとフォクサがリビングにやってきて今日は嫁達に甘えたいんだそうだ。
モフモフに戯れる2頭と3人をリビングに残し、俺は隣の客間に移動してから一番上になっていた青木さんからの手紙を最初に読んでいく。
内容は俺に届いてる報奨金や賞金、治療費の国からの立て替え費用など総額10億を超す金額の受け取りのサインが欲しいって事と、昨日の夜に到着したビッタート卿を交えた会談がしたいとの申し出だった。
これは緊急を要するわけじゃなさそうだが・・・行ったほうがよさそうだな。
教会からは今度はシーパラの『司祭教育の指導教師』に教えてほしいらしい。
なのでこのシーパラの早乙女工房に手紙を持ってきたようだ。
この前ヨークルで子供に教えたのと違ってプライドが高そうなエリートっぽいので面倒臭いから断る方向でいいな。
2通のパーティーは正直なんで俺に参加して欲しいのかも理解したくないので断る。
直接会いもしないしメイドゴーレムどころかユーロンドに断らせる事にする。
お前らは知らない商人からいきなりパーティーに誘われてヒョコヒョコ行くのか?
って小一時間問い詰めたい気分になりそうだから、明日来てもユーロンドに俺直筆の『知らない人のパーティーに出るわけがありません。不参加です』という紙だけ渡させる・・・親切でいい人だなぁ、俺・・・人は俺を『お人好し』と呼ぶけどな。
ゲルアーからの手紙は反省文が半分で後半は出来れば直接会って正式な謝罪をさせてほしいので都合のいい日程を教えて欲しいとの事だった。
・・・これは日程を組む必要性があるな。
リビングに戻るとみんなでウェルヅ大陸最北端のフォクサの故郷の話で盛り上がっていた。
るびのが面白おかしくした話をフォクサが話を補足していく感じだった。
嫁達もフォクサがアイテムボックスから取り出した巨大なエビのしっぽを見て爆笑してたりする。
焼いて食ったんかよ・・・こんがり焼かれてるエビのしっぽを見てわかった。
狐魔獣は今現在、北の岩場で200頭ほどの群れがいてリーダーの『博閃』は、るびのにお願いして眷属にさせたもらったんだそうだ。
るびのとフォクサから『食材は焼いて食うとさらに美味い』ってのを教えてもらって自分たちで焼いて食って感動していたようだ。
狐魔獣は火を自在に操る力を、るびのから与えられたと言われてるらしく・・・食材を焼いて食った方が美味いって派閥と生の方が美味しいっていう派閥に分かれて昨夜は議論をしていたようだった。
みんなで狩りをしたり温泉に入ったりしてのんびりできたとフォクサもうれしそうだった。
俺は今日来た手紙で冒険者ギルドの青木勘十郎との会談とゲルアーとの話し合いの2つの予定が出来た事を伝え、明日以降のみんなの予定・やりたい事を聞くことにした。
アイリとミーは同じ意見で・・・『ブランディックスダンジョンで罠解除の練習がしたい!』
クラリーナは・・・『どこでもいいからダンジョンに行きたい!』
るびのとフォクサは・・・『どこでもいいからみんなで狩りがしたい』
となっていた。
俺は青木とビッタート卿との会談とゲルアーとの話し合いは丸1日はかかるだろうと思ってるので、明日はみんなでブランディックスダンジョンで罠解除の練習をしてもらうことにした。
嫁3人とセバスチャン・マリア・るびの・フォクサがいれば何とかなるだろう。
地下10階のボス部屋には近づかないように言っておく。
この面子なら問題はないだろうが・・・俺が見てみたいので後日一緒にクリアーしようという事にしてもらった。
明後日はみんなでアゼット迷宮の攻略を進めることが決定した。
るびのは昨日、夜更かしをしていたらしく眠くなったので自分の部屋に戻っていった。
フォクサも眠くなったっすと言って自分の部屋に転移魔法で帰った。
2人とも早乙女隊に入ってくる時は全長1.5mで体重は60kg程にに小さくなってきてくれる。
このぐらいのサイズが早乙女邸内では動きやすいんだそうだ。
フォクサも最初は60cmぐらいの大きさだったんだが・・・今ではすでに尻尾まで含めると3mを超すほどの大きさになり、るびのとほとんど変わらない大きさとなってる。
彼らの場合は成長とは呼んではいけないのかもしれないな・・・元の大きさに駆け足で戻ろうとしてるだけのように思える。
食べた栄養のすべてが成長に行ってるような気がしてくるほど、日に日に大きくなってるし・・・るびのもフォクサと合流したことで色々とコツを聞いて大きさも体重も自由自在になったようだ。
俺もゴッデスとかに教えてもらっていない『るびの情報』をフォクサは持っているのでありがたいな。
俺は嫁達と風呂に行って今夜はお風呂でも飲もうかと話をしてたらマヅゲーラの街にいる徒影2号から緊急の念輪連絡が入った。
「ご主人様一大事です。任侠ギルドサブマスター、マナガルム様が女性と会っている時に襲撃を受けました。襲撃者は5名、3人は殺害したものの2名は逃げられました。マナガルム様は軽傷なれど一緒にいた女性は重傷で危篤状態です。大至急ご主人様の治療が必要です」
「わかった今すぐ行く」
嫁達に手早く説明して後片付けはマリアに任せて俺はセバスチャンを連れてマヅゲーラの任侠ギルドのギルドマスター宿直室に転移魔法で跳ぶ。
ギルドマスター宿直室から出て応接室に出ると任侠ギルド幹部の『ガスタード・ウェイト』と徒影2号が待機していた。
マナガルムと重症者の女性は闘技場の方の治療室にいるようだ。
緊急事態なのでシーパラの陰で活動している徒影と忍が10体ずつ応援に来るように命令した。
早乙女工房の簡易ゲートから続々と集まってきてるんで大至急、襲撃者の割り出しと敵の本拠の情報収集をさせる。
命令を下すと俺はセバスチャン・ガス・徒影2号を連れて一気に転移魔法で治療室まで飛んだ。
まずは重症者の女性の状況を鑑識魔法で調べる。
最初の襲撃者の攻撃でマナガルムをかばって受けた攻撃が背中から肋骨を折り、折れた肋骨が肺や横隔膜を傷つけているようだ。
声を出さずに『エクストラヒール』をかける・・・もう大丈夫だ、完治したな。
女性の体にハイポーションを3本分飲ませる作業はセバスチャンに任せて、別室の応接室に移ってマナガルムに状況を聞く。
少し興奮しているようだが女性が完治したと聞いてだいぶ落ち着いたな。
応接室に封印と結界を厳重にかけてマナガルムとガスにいれたてのコーヒーをポットからマグカップに注いで渡した。
コーヒーの香りが応接室を充満してマナガルムもガスも冷静さを取り戻したようなので詳しい状況を順をおって話させた。
元枢機卿から売られてきたシスター3人の引き渡しが終わり、任侠ギルドですら把握してなかった闇のさらに裏の部分に蠢いていた勢力をマナガルムが指揮してガスが先頭に立ち叩き潰したのは昨日のこと。
今夜は今後のシーパラ進出の話し合いを幹部会で会議して進出する先遣隊の選出作業と拠点の確保をどうするかという話の後で解散になった。
マナガルムは最近、馴染みの飲み屋で働く女性を口説き落としていて、今夜は気まぐれに女性宅に行ったら、中に襲撃者が隠れていたらしい。
護衛の徒影2号と5号が女性宅の玄関までマナガルムを送って少し離れた直後だった・・・マナガルムも徒影も油断となっていた。
襲撃の初撃に失敗した襲撃者5名はすぐにあきらめて逃走したところを後ろから徒影5号が襲い掛かり、3名を盾にしたリーダー格らしき2名が逃亡したらしい。
すぐに追うことができなかったのは女性が襲撃者の存在に気付き、とっさにマナガルムをかばったので襲撃者の棍棒の1撃が背中に当たり重傷を負い治療するため離れられなくなってしまったのだった。