俺には帰るべき巣ができたんだ、こんなに嬉しいことはない! っす。
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どうせ冒険者ギルドに行くなら万全の装備で行った方がいいとウルスの親父に言われて、俺はウルスの親父の店で買った甲殻鎧を装備して腰にカタナを帯びる。
アイリとミネルバは今日はワンピースを着ていたので・・・良かった。綺麗だった。
しかしあの爆乳はけしからん。
2人共だ! まったくもってけしからん! 意識して目を逸らせるようにしてないと、自然に目線が吸い込まれてしまう。
俺は決して巨乳マニアではない。おっぱいは大好きだ。
『おっぱいに貴賎はない』
名言だと思う。
歴史の教科書に載せて未来永劫称えるべき名言だ。
おっぱいに貴賎はない。まさしくそのとおり。大きいおっぱいにも小さいおっぱいにも夢はいっぱいおっぱいに詰まっているのだ。
ツルペタもおっぱいだ貴賎は存在しない。
が、ロリはダメだ。除外だ。
・・・ふぅ、何かの衝動に突き動かされてなにか熱く語ってしまった。
とりあえず、アイリとミネルバは防具を装備するために1度家に帰る。ウルスの親父も憤慨してて装備を整えてから来ると言って出ていった。
俺は紅茶を飲んで待ってた。腰のカタナは無論外した。ソファーには座れないしな。
ゆっくり待ってホテルを出る。
ホテルの入り口の門の横にたたずんでいたらみんなが来た。
フル装備だ。
頭装備までしてる。フェイスガードは上に上げてるが、完全装備だ。
ミネルバにいたっては長槍装備だ。ウルスの親父もアイリとほぼ同じ装備でアイリとは体格差の関係上、盾の形が違う、だがシールダーの完全装備だ。
ウルスの親父が俺に頭装備をくれた。
「サービスだ。受け取れ」
ラグビーのヘッドギアみたいな装備で額と後頭部には俺の鎧と同じ甲殻が固定化してある。
「じゃあ行くぞ!」
ウルスの親父の掛け声とともに冒険者ギルドに向かう。
ウルスの親父・150cm
俺170cm
ミネルバ183cm
アイリ184cm
の、順番でちょうど背の高さ順に並んでいた。
前衛シールダー・中衛カタナ・槍・後衛シールダー
敵のバックアタックも怖くない最強の布陣だな。
おのおの方、討ち入りでござる。
冒険者ギルドに到着。外から見てもわかるぐらいに混んでた。
すげーな朝はいつもこんなに混んでるのか?
周囲の人たちは依頼票をまったくみてない。
「あのババァのトドメはきっちり・・・」
聞こえてくる声はアイリたちと同じようなこと言ってるな。
なにかあったんだろうな。
理由は物凄く簡単で単純なことだった。
クソババァと筋肉バカ軍団は以前も同じような騒ぎを起こしているのだ。
そのときはBランクのチームの新人相手にからんだ筋肉バカ。
新人とはいえBランクのチームに入れるほどの有望新人。
あっさりと気絶させられて捕まり牢屋に入れられた。
その時もギルドマスターが昨日の様に散々有望新人相手に難癖をつけまくった。
筋肉バカの攻撃はまったく当たってない。
当たった攻撃は筋肉バカ軍団を気絶させた新人君のチョップの攻撃だけ。
だから真偽官の受け答えの質問を都合のいいように変えて暴力を奮ったのは新人君。やられたのは筋肉バカ軍団と話をすり替えることに成功。
そして逮捕した職員は首になった。
クビの理由は『誤認逮捕』ってやつらしい。
新人君に損害賠償を請求しBランクチームには指名依頼以外は受けさせないように、ギルドマスターは毎日受付窓口の横に立って嫌がらせを続けたらしい。
もともと優秀で指名依頼が絶えないBランクチーム。
新人君の賠償金をあっさりと支払い、自分達と同じようにヨークルの冒険者ギルドを見限った知り合いのチーム多数も引き連れて本拠を首都シーパラにうつした。
BランクチームはいまやAランクにいるし新人君だった男はもうCランクで近々Bになるだろうと言われてる。
それで本拠を移動した人たちもみなランクアップしている。
その彼らが『冒険者ギルドのヨークル支部は信用ならない』というのだ。
真実だから反論できない。
他の人間に聞いても皆が同じ事を言うのだ。
ギルド職員としてはたまらない。一番上の人間が自らギルドの信用を率先して貶めて泥をぬってるのだ。
しかもルールに従って行動した職員は首にされてしまう。これも事実。
冒険者にとってもたまらない。降りかかる火の粉が払えないのだ。
逃げ続けるしかない。
だからこそのこの騒ぎなんだと。
「目を離したら牢屋から逃げるかもしれないから俺も牢屋を見張らせろ」
「個室での取調べは信用ならないから大部屋で大人数の前で取調べをして調書をとれ」
みんなこんなことを口々に言って集まってくるのだ。冒険者も、非番のギルド職員も。
俺の場合は筋肉バカの攻撃でリーダーのはじめの突き押しだけかわして、後は動かずに殴られ続けただけ。
筋肉バカ軍団の攻撃はほぼ全て当たっている、その目撃者数は多数。
俺が殴られているところをみんな見ているのだ。
それでもあのババァの事だから、どんな言い訳をして逃げ出すかわからない。
どんな行動をして逃げ出すのかわからない。
だから取調べの立会いを俺にもさせてくれ。じゃないとまた戻ってくるかもしれない。
絶対にここでトドメをさしてヨークルから追放したい。この国から追放したい。
あの筋肉バカ達も同じだ。ババァが治療を目的に逃走させるかもしれない。
大混雑の冒険者ギルドの中でギルド職員に何とか話しをする事ができた。
ババァは凄くおとなしく取り調べもすんなりしていて、自分の罪も全部認めてるし、過去の罪も告白している。機密費などのギルドマスターがある程度自由にできるお金を、自分の親類に融資していたり、さらに内部留保の予算も使い込んでるとも告白している。
ババァはひどくおびえてるらしい。
逮捕されるとき暴れると思っていたので思いっきり殺気を放っていたからな、俺。
反抗すれば殺してOKなんて考えてました。
しかし、それにしても・・・ババァ好き放題やりすぎ。
ババァが3年前にこのヨークルに赴任してから、ババァの親戚は100人以上ヨークルにやってきてる。その全員が自宅待機の軟禁中で監視下に置かれている。
監視しておかないと好き勝手にやってきた連中だから誘拐されて始末される可能性がある。
現に10人以上の親戚と言っていた人間に連絡がつかない。
逃亡してる可能性はすこしだけある。
殺して外にポイ・・・イーデスハリスの世界では、これでほぼ完全犯罪なのだ。
人間は生きてるとアイテムボックスには入れられないが死体なら入れることが可能。
アイテムボックス(極小)サイズの人でも人間1人ぐらいなら折り曲げれば入れられる。
ダンジョンで魔獣との戦いに敗れて亡くなるとステータスカードが残るが、それは生きてダンジョンに入ってきた人間だけ。
死体で入ってきた場合は残らないのだ。
おびえたババァが何もかも全て告白してるのでヤバイ連中は始末されてるかもしれない。
ババァも今は冒険者ギルドの牢屋にいることで安全だと思ってる。
俺、なんか気が抜けたな。
「なんか気が抜けた。これだけの人間がいたんじゃババァも流石に何もできないだろ」
「確かに気が抜けたなぁ、俺なんて久しぶりにフル装備して気合入れてきたのに」
「だね。気合入れた分だけ・・・ね」
「ホントだよねぇアイリ。はぁ、気抜けちゃったねぇ」
「じゃあさ、これからみんなでパーティーの準備しない?」
俺のこの一言が祭りの始まりだったのだろう。
すぐさま『お祭り』準備委員会を立ち上がる。
準備委員会実行委員の4人は家(俺は宿泊してるホテル)に戻り、フル装備からお祭り実行委員としての作業服(汚れてもいいってだけの服)に着替えて集合。
楽しむ為に準備は怠らない・・・実行委員の4人の思いはひとつだ。
たくさんの種類を買い込むためにヨークルの食料品市場に行く。食材・調味料などの売り場を4人で歩き回り買い込んで行く。俺は欲しかったモノもついでに買っておく。またこれるようにMAPに入力。
酒も豪快に買った。樽で買った商品もあるしビンでも購入してる。
後は料理。俺はホテルに帰り料理スキルを使い次々作っていく。デザートも忘れずに作っておく。
アイテムボックスでどれほどの量でも保存ができるので作り溜めしておく。
ウルスの親父も家に帰る。
おかみさんもご招待ではなく実行委員の1人だ。家で自慢の料理を作っているので準備が終わり次第、一緒に祭りに合流の予定だ。
アイリとミネルバも家に帰ってジュースや料理を作ったりする。カタリナも俺に御礼が言いたいそうなので、少しだけだが来るそうだ。ドミニアン司祭が馬車で送り迎えするんだと。
そのドミニアン司祭が真偽官も連れてきてくれるそうだ。
俺・アイリ・ミネルバ・ウルスの親父・おかみさんがそろったところで『祭り』は始まった。
まず乾杯の前に俺からの提案でみんなの呼び方をかえよう!
相談した結果・・・
俺はアイリをそのまま呼び捨て。アイリは俺のことを『しんいち君』と呼ぶことに。
俺はミネルバを『ミー』。ミネルバは俺を『しんちゃん』。
ウルスの親父は『おやっさん』。アイリとミネルバもおやっさんと呼ぶことに。
ウルスの親父は俺を今までと変わらず『早乙女』。
ウルスの奥さんでドワーフとクマ獣人のハーフ『ガルパシア・ピニリー』って名前のおかみさんはやはり『おかみさん』。アイリとミネルバもこれからはおかみさんと呼ぶことになった。
おかみさんは俺を『早乙女君』。
これに決定した。これが各々が呼びやすくて妥協し決定した名前の呼び方だった。
こうして打ち解けあいそして俺は『転生してきた人間』であることをみんなに告白した。
これまでの全てをみんなに聞いて欲しかった。
会ってからの時間はまだ少しだけど、自分が信頼できると直感で判断した人には聞いてほしかった。
それに、彼ら4人なら秘密を共有してくれるかもと期待したからだった。
俺の秘密は俺だけに閉じ込めておくには大きすぎる。
神を4人殺したこと。
神に運命を弄ばれて神を怨む転生した人たち、何十人もの記憶と経験が俺の中に生きてること。
何十人もの彼らは自分が得た経験や知識を『殺す』事だけじゃなく『生かす』事に使って欲しいことに俺に願い託し、俺の中に全てをコピーしたこと。元々生きていた地球と言う場所では35歳だったこと。
そしてこの世界に来て盗賊を銀大熊を退治して大金を稼いだこと。
エクストラヒールを使いゾリオン村の2人を治療しゾリオンに信頼されてカタナをもらったこと。
全てを離し終えた今ならわかる、
俺誰かに話したかったんだな。仲間がほしかったんだなぁ。
こんな俺だけど、これからもよろしくお願いします。って言って頭を下げたら4人は俺を抱きしめてくれた。告白してくれて、教えてくれてありがとうと抱きしめて俺を受け入れてくれた。
「早乙女君が15歳だって聞いてたから遠慮して言わなかったけど、私達は秘密を共有して仲間になった。だから早乙女君にお願いがあるの。アイリとミネルバと結婚してもらえないかしら。2人とあなたが結婚する。私達夫婦が仲を取り持つ。これで私達はみんなでひとつの家族になれるのよ!」
「結婚? 何かいきなり話がぶっ飛んでるような気がするんだけど・・・」
「諦めろ。ああなったピニリーはかえられない。まず『結論ありき』だ」
おかみさんのいきなりな提案に俺がストップをかけようとしたが、逆におやっさんにストップを止められてしまう。
「正直、俺にはとても魅力的な話だと思う。俺はこの世界に家族と呼べる存在がいない。だから帰るという場所がないんだ。俺は旅が好きだ。いろいろな場所に行って見てみたい、触れてみたい、体験してみたい。だけど俺には帰る場所がない。帰る場所がない旅はしたくない。だからこそ今の話はとても嬉しい。・・・だけど、2人の奥さんをいきなりもらってもいいのか?」
「早乙女、この世界はお互いが了承すれば結婚相手が何人いたっていいんだ」
「「私達じゃダメかな?」」
「逆だよ逆。俺でいいのか? 俺でいいなら俺と結婚してください」
「「よろしくお願いします」」
こうして俺はファミリーができた。
「でも結婚ってこんなに簡単に決めていいのかな」
「いいんだよ。結婚はこの人だ! って決めた人とすればいい。私もウルスとそうだったんだし。あとは教会に行って神様に報告するだけ。何も難しくない。一緒に暮らしてから、ダメだと思えば1人で教会に行って無理でしたって言えばいいだけ」
イーデスハリスの世界では意外と結婚と離婚についての感覚が緩いみたいだな。
恋愛のほんの少し先にあるって感じ。慰謝料とかグチャグチャした部分もあるみたいだが凄く珍しい話でほぼないらしい。
離婚時の話し合いは教会で真偽官が立ち会うためにウソがない、すぐばれるので意味がない。財産などの数字的問題は離婚話し合い時の真偽官に計算されて終わる。
「結婚したからには新居がねぇーとなぁ早乙女? 予算はどうする?」
「お願いします。予算の前に税金ってどうなるの?」
「所属するギルドによって税金は違う。冒険者なら家賃に税金は含まれない。冒険者はギルドで依頼を受け依頼報酬で生活してる。依頼報酬には何割かの税金がすでに引かれてるんだ。だから依頼達成ごとに税金は払ってることになるから家賃への税金はない。これは冒険者が賃貸で部屋や家を借りた時に払う税金だな。宿屋は別だ。宿屋は料金の中に税金が入ってる」
「それで商人だと売り上げで税金が変わる。この世界にお金ってモノはない、だから商人の売り上げや仕入れの支払いは商業ギルドが発行してるカードで行う。売り上げの中から一定の金額を税金として支払う。残った儲けの金額で家賃の税金が決まってくるんだ。商人が店舗とは別の家を自宅として借りてる場合は同じ税金がかかる。商人の自宅や店舗の購入の場合は購入時に税金がかかり購入金額に加算されている。買ってしまえばその後の税金は永久にないな」
「農業ギルドや漁業ギルドの場合は・・・スマンがよくわからんな。収入によってかわってくるって話だな」
「それで家購入の場合はどのギルド所属でも一緒で購入時の金額に全て含まれている。で、早乙女はどうする?」
「家を買いたいですね。土地だけでもいい」
「土地だけでいいってどういうことだ?」
「建築スキルがあるから、どんな家でも自由自在だ」
「それはやめたほうがいいな。建築スキルは持ってる人間が少なすぎて、この国では希少なスキルなんだ。金持ちがスカウトに来て面倒なことになるぞ? だから、使うなら内装だけにしておけ。内装だけの改築スキルを使う人間はこのヨークルでも何人かいるから騒ぎになりにくい」
俺は気楽に考えていたがおやっさんに否定されてしまった。
もっともな話だから反論すら出来ない。
「じゃあ、そうしましょう。予算は・・・1億ぐらいですね」
「わかった。商業ギルドにいる知り合いに話をしよう。紹介するよ」
「色々決まったけど、明日は教会に行って報告ね。明日、ホテルを引き払ってから店に来てね。一緒に教会に行って『私達も家族ができました』って報告するのよ!」
「おやっさんとおかみさんも一緒に行くんですか?」
「早乙女、すまんな。ピニリーは初めての妊娠中に流行り病にかかって死産になったんだ。それから妊娠できない体になって・・・お前を息子認定してしまった。スマンが諦めてくれ」
「へ? 妊娠できない? 大丈夫! できますよ。ほら『エクストラヒール』」
おかみさんが薄く光る膜に包まれて、膜が体に吸い込まれるようにして消えていく。
「「エクストラヒールって、不妊にもきくの(か)?」」
2人の当然な疑問に俺の中にある知識と経験で答える。
「ハイ。大丈夫です。おやっさんとおかみさんは今、いくつですか? 平均な寿命も教えてください」
「俺は312歳、ドワーフだからな。あと200年ほどは生きられる」
「私は283歳、ドワーフでもクマ獣人とのハーフだからあと100年ほど生きられるわよ」
「じゃあ、あと50年は妊娠できますね。子供も20人までぐらいなら大丈夫です」
「「今からでも妊娠できるんだって? 本当なのか?」」
「ちょっと! 掴んで揺らさないでください。大丈夫です。妊娠ですから絶対とは言えませんが、妊娠・出産はあと50年は可能です。俺の中にある『医者としての知識や経験』に基づくものですから間違いありませんよ。大丈夫です! 妊娠できます!」
泣きながら崩れ落ちるおかみさん。それを支えるおやっさん。美しい家族の光景だ。
できれば2人の子供が間に入ってくるのが望ましいと思う。
だから俺は迷うことなくエクストラヒールを使った。不妊に絶大な効果ありって知識にある。