俺がいるパーティーでは騒動が起きちゃうっす。
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俺は持ってる秘密も多いし腹の探りあいは面倒極まりないのでなるべくそちらには行かない様にして、すでに嫁達がいる女子の多い手まり寿司の方に行って食うことにしたが・・・こちらもなかなか面倒臭そうだ。
アイリたちが気付いて俺の周りを固めてくれたおかげで、俺は安心して手まり寿司を味わうことが出来た。
上流階級の女性からのアタックは商人同士の腹の探りあいよりも面倒そうなので助かる。
大きなお皿に色とりどりの手まり寿司が並んでいるのは美しい。
眺めてるだけで満足してしまいそうな美術品の様な趣がある。
上の具材も魚介類だけでなく野菜や肉まで乗っているので見た目以上に味わって食べる事が出来た。
数十種類も具材があるので全部味わいたくなってしまうのは俺が食いしん坊な証拠だろう。
といっても嫁達はすでに全員が全種類コンプしたようだった。
メイドが運んでくれるカクテルを味わいながら周囲の状況を探っているが、嫁達も思ってた以上に華やかな雰囲気になじんでいるようでありがたいな。
普段の生活には無い金持ちの食事や煌びやかなパーティーの雰囲気を楽しんでる余裕を感じてる。
巨大な庭の一部まで開放された立食パーティーには様々な人種・立場・身分が集まってる。
それにしてもこのパーティー会場内に入ってきてから俺たちの注目度は相当高い。
このパーティー会場内でチーム早乙女遊撃隊の注目度が高いのは俺のヒーローとしての様々な噂・3人の嫁達の華やかさと煌びやかさ(俺の作ったドレスと宝石類)・他に類を見ないほど滑らかに動くメイドゴーレムとゴーレム執事など合わさった結果だろう。
この全員でチーム早乙女遊撃隊なのだ・・・今は、るびのがいないけどな。
今現在でシーパラ連合国で様々な噂を振りまいている話題の中心人物達が目の前にいるんだから、さも興味津々なのだろう。
俺に聞こえないようにヒソヒソ話してる声は全部俺の耳に入ってきてるし、ヘルプさんによって耳から入ってきた全部の情報がファイル分けまでされて噂話データが蓄えられていく。
今回のパーティー出席の影に隠されたテーマ『上流階級の噂収集』という部分は順調だ。
俺が手まり寿司を食べ終わってからぞろぞろとデザートテーブルに行って驚いたのが・・・すでに手まり寿司サイズのおにぎりが出されていたことだった。
彩りは手まり寿司には及ばないのは具材が中に入っているので仕方が無い。
でもこちらは食べてみないと味がわからないというビックリ箱のような楽しみ方になってるので、男の子に大人気になっていた。
しかも一切の説明が無いまま、こちらの小さなおにぎりたちは巨大な皿の上に並んでいて、同じ皿の上にも同じ味が見つからないほど種類が豊富だ。
それを自分で選んで食べるのだが、海苔に上手く隠されているので全く見分けが付かないな。
俺も嫁達もいくつか食べて味わったんだけど、こういう演出は素晴らしいな・・・おにぎりの『中身が見えない』って部分を上手く遊びに変えて活用している。
俺は考えもしなかった遊びの部分の演出に舌を巻く。
横のテーブルには普通サイズのおにぎりも置かれていて、こちらはメイドがついて中身の説明をしている。
普通の方のおにぎりを1つ食べ終えたところで満腹になった。
嫁達は俺が小さいおにぎりを堪能している途中で満腹になったと言って・・・デザートテーブルにセバスチャンたちを連れて行ってしまった。
途中でクラリーナがアンコのデザートテーブルがあると言っていたので、そちらを先に見に行ったみたいだ。
女性の『スイーツは別腹』ってのはイーデスハリスの世界だけでなく地球も含めた全世界の女性の共通認識らしい。
俺は一息つこうと壁際に並べられたイスにとりあえず座ることにしたが、座った途端に知らない25歳ぐらいの美しい女性に話しかけられてしまう。
「早乙女様、主人のマツオがお話したいと席を設けたのですが・・・何しろ多忙でゴーレム馬車駐車場までおこしくださいませんか?」
「はぁ・・・俺に嘘は通じませんよ?」
「何のことでしょうか? 主人のマツオが多忙の中、早乙女様と話がしたいとおっしゃってるだけなのですが・・・」
「騒ぎを起こすつもりもないし面倒だから主人呼んできてよ『フォンマイ商会』の秘書のアセリアさん。それとも貴女が愛人契約を結んだ『ゲルアー・シーズ・フォンマイ』さんと名指しで呼ぼうか?」
流石に自分と主人の本名をずばりと言われて顔が強張ってるな。
こういう時は聞き耳を立てていた周囲が静かになったのを利用して、少し大きな声を出して追い込むことにする。
「俺と会って話をしても結果は同じだよって伝えといてくれ『俺のゴーレム作りは趣味』って。金儲けにも興味は無いし、ゴーレムで商売するなら1人でするんであしからず。それで最後に伝えて欲しい言葉を一つ・・・『フォンマイ商会は俺と敵対したいのか?』って聞いといて」
「わ、わかりました」
周囲の突き刺さる視線に耐えかねてアセリアは足早に去っていく。
商業ギルドでリーチェやマリスから何度も何度も断ってる商会からの商売の話で、俺にリーチェとマリスの2人ともが愚痴をこぼしていた相手が『フォンマイ商会』だった。
なのでたくさんの話を2人から教えてもらったのでフォンマイ商会の成り立ちから知っている。
フォンマイ商会は元々シーパラ連合国の南にある都市『シグチス』に本拠地があって、1000年以上前に綿花の栽培とサトウキビの栽培に成功して巨大化した商会。
500年前に起きた『聖獣白虎戦争』で、るびのによってウェルヅ帝国が滅び首都ウェルヅリステルが消滅すると、フォンマイ商会はシグチスでカジノを経営してシグチスの歓楽街化に成功。
シグチスの裏と表の権力を握りさらに綿花と砂糖の流通網を利用して唸るような財力を集めてシーパラ連合国最大の商社として時代を築いた。
だがしかし・・・シーズ12家の財力を借りてシーパラ連合国を立ち上げたまでは良かったのだが、国家の権力を握ることには失敗して敵対者を増やす結果になる。
建国時から地方に生き残ってたウェルヅ帝国の貴族の生き残りを始末するためには『ゲッペンスキー家』や『ガルディア家』のような武人を多く排出するシーズ家の協力が無いと国家の存続すら出来なかった。
それに最高評議会による立法の時も私利私欲に走った結果、最高評議会の中での票集めに失敗して発言力でも劣る結果になってる。
フォンマイ家の『権力を我が物としようとする暴走行為』は最高評議会の信頼低下を招いて、最高評議会を監視・監督する組織『評議会』設立の影の立役者だとも言われてる始末だ。
さらに近年にはマツオとの馬車競争にも負けてシーパラの主要都市の中から荷馬車が追い出される結果になり、最大商社としての地位までも奪われた結果となってしまってる。
今のフォンマイ家27代目当主は『ゲルアー・シーズ・フォンマイ』で、まだ22歳と若くカリスマ性も持ってて頭も切れるらしいのだが、いかんせんまだ若過ぎて強引な手法で全て行動しているので・・・味方も多いが敵も多いというタイプらしい。
俺が拾ったヒソヒソ話の中にゲルアーからアセリアへの指示内容まで入っているので騙しようが無い。
こういった騒がしいパーティーで俺の地獄耳を逃れる術は筆談しかない。
声を出した話は全部拾ってしまってるからな。
それにしても・・・確かにリーチェたちが愚痴るような強引な手法だ。
商業ギルドにも圧力をかけてきてると聞いている。
俺の事をなんだと思ってるのかは知らないが、敵対するならシグチスの歓楽街を任侠ギルドを使って叩き潰しマツオと組んで山岳地帯ですら行き来できるゴーレム馬車を世に出して、フォンマイ家が仕切る荷馬車の流通網の全てを奪い取り・・・儲けも権力も何もかも全部を奪い取ってやってもいい。
シグチスの歓楽街程度は一晩で隣に作れる。
中で働く従業員は全部ゴーレムなので24時間営業なんて簡単だし。
ゲルアーの目的はゴーレム以外にわからないが・・・さぁ、どう動いてくるかな。
そもそもユマキ商会の人間はココのパーティーにおいてマツオの事を『主人』なんて呼ばない。
今、俺達みんながいるのは『サトシのユマキ家第12代目当主襲名披露パーティー』
ユマキ商会の人間は『先代』もしくは『先々代』って呼ぶように徹底されているだろう。
その程度もわからないってのは・・・ゲルアーはフォンマイ家の傑物って噂も眉唾物かもな。
そもそもマツオが切れ者なのは、俺を呼び出すのに俺の知らない人間を絶対に使わない。
自分自ら・・・もしくは相手に面識がある人間を絶対に使うのがマツオの恐ろしいところだろう。
知らない人間にはどんな人間でも警戒心が沸いてしまうが、知ってる人間には素直に応じてしまう商人の心理をついて利用してる。
ゲルアーは来ないが嫁達はデザートを持って戻ってきた。
アンコ系は胃にもたれそうだったので俺は遠慮したが嫁達は美味しそうに食べてる。
饅頭やたい焼きの小さなサイズが並べられていたようだな。
俺達夫婦がイスに座って寛いで雑談してるとグレゴリオとゾリオンがやってきた。
ゾリオンは嫁達も知っているがグレゴリオとは初めてだったのでみんなでまた自己紹介・・・ゾリオンとグレゴリオも妻を連れてきていたようなので俺もみんなと同じように自己紹介をした。
女性連中はデザートのたい焼きと饅頭を取りにまた出かけることになった。
俺が明日は列車に乗ってドルガーブに観光に行くと言ったらグレゴリオが嬉しそうな顔をして、ドルガーブの海に沈む夕陽の美しさを自慢してる時に・・・俺に強烈な殺気が叩きつけられた。
ゾリオンと周囲にいた親衛隊が反応して身構えているが、俺は全く気付いていないグレゴリオを庇うように涼しい顔をしたまま前に進み出る。
『ゲルアー・シーズ・フォンマイ』本人の登場だった。
銀色の長髪をオールバックに撫で付けて首の後ろに結び、190cmほどの長身で俺も見下ろしている。
幾つかの獣人の血が混じっているようだが先祖返りで銀狐獣人の血が色濃く出ているようだ。
頭の上にある狐の耳と銀毛が輝く尻尾で主張している。
銀狐獣人は虎獣人に次ぐ戦闘民族でプライドの高さはエルフ王族並みだという言い伝えがあるが・・・あながち間違いではなさそうだ。
俺に強烈な殺気を叩きつけたまま睨み付けていて、そのまま周囲を黙らせたまま俺の声をかけてきた。
「貴様、我を呼び出すとはいい度胸だな」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますね。ご自慢の美しい愛人を使って俺を呼び出したかったのかもしれませんが生憎ながらまだ新婚ホヤホヤでして・・・色仕掛けに落ちるほど耄碌はしておりません。誰かさんの先祖のようにね」
フォンマイ家の先々代はマツオとの荷馬車競争の時に新しく作った愛人と遊び呆けていて、対処が遅れて後手後手に回り競争に敗れた・・・愛人はマツオによって送り込まれたハニートラップだという噂を利用して叩きつけてやった。
俺に向けられた殺気が膨れ上がっている。
もはや冷静な判断すらブッ飛びそうなレベルでブチギレしかかってるようだな・・・さらに追い込むことにする。
「・・・ぐぬぬ。その言葉、我に言っておるのか?」
「フフン、まぁ正直に言って失望しましたね。この程度のあおりで殺気を振りまいて周囲に当たってるとは。『フォンマイ家の傑物』ってのは商売の方面ではなく戦闘のみに限られているようだな。フフッ」
「それを知ってなお、我を愚弄する貴様は・・・死にたいのかな?」
ここでゾリオンが俺の隣に立ってゲルアーに叱りつけて睨み付けたまま目を離さずに俺に謝罪してきた。
「フォンマイの坊主、貴様も調子に乗るのもいい加減にしておけよ? 早乙女君すまない。シーパラ連合国はまた君に厄介ごとを押し付ける形になってしまった」
「いつもいつも人の顔を見ると説教しやがって五月蝿いジジィだな。貴様も一緒に死んどくか?」
「坊主、年寄りだ思って舐めてると痛い目に合うぞ?」
ゾリオンはおちょくられて、中に眠らせてある戦闘一族の家系の血が騒ぎ始めたのか・・・歯を剥き出して凶悪な顔で笑っている。
体内の気が膨れ上がり、額に血管が浮き上がってきている。
ガルディア家はゾリオン・長男のギル・次男のバイド・3男のヨシュア・長女のミーシャの全員と面識があるが格闘能力の高いステータスを全員が持ってるし、何かしらの武器のマスタースキルを先天的に持って生まれてくるという生まれながらの戦闘一族だ。
血がたぎってきちゃったかな?
「ゾリオンさん大丈夫ですよ・・・それとゲルアー様、出来もしないことは口に出して言わないほうが良いですよ・・・接待戦闘で強くなっただけのアホだと周囲にバレてしまいますので。ゲルアー様には私を傷つけることすら出来ません・・・あぁ、もう面倒だな。お前は俺と話がしたいのか殺し合いがしたいのかどっちだ?」
いい加減に腹が立ってきて俺は隠されていた俺の存在感・魔力・生命力などを開放し始めた。
俺の隣に立ってゲルアーの動きを注視していたゾリオンや周囲の親衛隊や元冒険者などの人々が目を見開いて俺に視線を移して固まっている。
むろん俺に殺気を叩きつけていたゲルアーからの殺気は霧散して、面白いように歯をガチガチと鳴らしてブルブルと恐怖で膝だけじゃなく全身が震えだす。
ショック死しないように途中で開放を止めたが、過去に存在した魔王に従ってる四天王程度のレベルの生命力と魔力を解放しただけだ。
周囲の何十人から俺へ鑑定の魔法がかけられるが、レベルが違いすぎて俺には鑑定は効かない・・・というよりも、鑑定の魔法で俺の名前が脳内に表示されるだけで年齢も性別すらも『不明』としかでてこない。
悪いが今回はゲルアーをここの全員・・・すなわちシーパラ連合国のシーズ家の関係者全員に俺の本当の恐ろしさを認識させるためにワザと追い込んで利用させてもらうことにした。
自分達が束になって掛かってもかなわない相手で、しかも上限すらもわからない相手・手の内すらわからない相手というのは敵にまわしたらどれだけの恐怖の存在なのかを・・・鑑定魔法ですら探れない相手、人物鑑定でも俺は『お人好し』ぐらいしか表示されないらしいし。
ゲルアーが俺の正面に立って対峙する恐怖に耐えられずに、膝から崩れ落ちて土下座のように蹲ったところで終了だな。
俺はほんの少しだけ解放していたモノをいつもの状態に戻した。
蹲るゲルアーに近づいて肩をポンポンと叩くと真っ青になった顔を上げて、初めて俺の目を怒りや侮蔑といった濁りが無い、ゲルアー本来の自分の目で見上げてきた・・・これなら大丈夫そうかな。
「まっ、そういうことなんで俺に上から目線で話しかけない事だな。話し合いなら聞いてやるから手紙でも書いて持ってこい」
「あ、あぁ、誠に申し訳なかった」
「それと周囲にイエスマンばかり置くなよ? 君への批判・讒言はとても聞いているだけでツライだろうが君の成長の糧となる勇気のある人の言葉だ。甘やかされて育っても悲劇にしかならないよ・・・なぁ、ジュンローさんとマツオさん?」
俺の後ろから近寄って騒ぎを止めようとしたが俺の存在感の解放で動けなくなっていたジュンローとマツオに話しかけると、ジュンローが申し訳なさそうに頭をかきながら俺の質問に答える。
「全く持って耳が痛いですね、早乙女様。子育てに向いていない私から言えた事ではないですけど・・・ゲルアー様はそこまでバカではないですよ。やり直せる力と才能は持っていますよ」
俺が手を差し出すとゲルアーは無意識に握ってきたので、そのまま引っ張って立たせてやった。
立ち上がってからゲルアーのケツをバチンと叩いてやった。
「気合入れろ! まだ君の人生は長いんだ。ここまで銀狐獣人の血が色濃く出ているって事は300歳以上の寿命があるんだ」
「ああ、そうだな」
「ま、早乙女邸の場所や早乙女工房・早乙女商会などの場所はすでに知っているだろう? どこでも手紙を届けてくれれば俺に必ず届く手筈になってるから、落ち着いてから考えを手紙に纏め持ってきてくれ」
「ああ、そうするよ。迷惑をかけてすまなかった」
俺の手を握り続けていたゲルアーは手を離して周囲に謝り始めた・・・何かつき物が落ちたような爽やかな笑顔になってる。
「マツオさん、ジュンローさん迷惑をかけました。申し訳ありませんでした。このお詫びは後日改めて伺います・・・周囲にいる皆様、めでたい席に空気を壊して申し訳ございません。余興だと思って笑ってやってください、失礼しました」
周囲に頭を下げるとゲルアーは引き連れてきた人間をまた引き連れて颯爽と帰っていく。
去り際まで・・・イケメンだ、くそっ。
が、しかしここから俺が想像もしなかった事態が引き起こされることになる。
俺と話がしたいなら手紙を書けば言いという噂がシーパラ連合国を席巻していくことになったのだ。
俺の持つヒーロー・正義の執行官・目利きのグルメとしての噂とともに。
直接会いに来られるよりはほんの少しマシになったが・・・手紙の信憑性は皆無だし困ったもんだな。
それともう一つ面倒なことがある。
ゲルアーが頭を下げて俺に謝罪した事で俺に対して侮蔑と怒りの目を向ける女性が3人いた。
自分の憧れ(アイドル?)の男性であるゲルアー・シーズ・フォンマイが俺のような冴えない人間に無理矢理頭を下げさせられたという、完全に間違った認識を持っている女性がいた事だ。
極稀にだが女性にはこうした負の感情によって理性や常識とか現実と、かけ離れた妄想を事実として勝手に認識してしまう装置でもあるのだろうか?
こういう人間が権力をなまじ持ってるのが悲劇の始まりになることを本人は理解しないし、感情が暴走して引き起こされる悲劇はほとんどの場合、家族だけで収まらずに周囲に不幸を撒き散らす結果になることを数多くの歴史が物語っているのだが・・・
まぁ、要注意人物として3人の女性を鑑識で調べてデータを入れておく。
フォンマイ家の人間が去っていったので騒動は終了してまた騒がしいパーティーの続きが再開する。
周囲の人間が去ったので嫁達が帰って来れたのでテーブルのある他の部屋に移動して雑談することになった。部屋はジュンローが俺の家族の為にキープしてくれてたみたいだ。
ジュンローの案内で早乙女一家・ゾリオン夫妻・グレゴリオ夫妻とゾロゾロと部屋に移動していくが・・・まぁ、俺はマツオに呼び出されているのでマツオについていって来客用の応接室に直行することになった。
嫁達には適当な時間になったら待たなくて良いので遅くならなうちに帰っておいてと言って別れた。
応接室のソファーに座ると熟練のメイドがやってきて俺とマツオにコーヒーを入れてくれる。
メイドが部屋を離れてから面倒な腹の探りあいがスタートする。
「早乙女君、まずはお呼びだてして申し訳ない。それとうちの職員が君の迷惑も顧みないで面倒なことを頼んでしまったようだ。重ね重ねになってしまうが誠に申し訳ない」
マツオが応接室のテーブルに手を突いて額をテーブルに押し付けるように深く頭を下げる。
「まぁ、良しとしましょう・・・謝罪を受け入れることにします。それに俺はどこの商会にも専属職人になる契約はする気もないので早乙女式馬車はユマキ商会の手で作ってください。俺が指導して職人までも育てて作らないといけないようでしたら・・・早乙女式馬車のユマキ商会との独占の部分契約を打ち切れると契約書にある一項を利用させていただき独占の契約を打ち切ります。俺とガルディア商会でこれぐらいならすぐ出来ますので。まぁまだ敵対する気は無いので脅迫で留めましたが」
「留まってもらってありがたい。うちの職員にはキツク教育しておいた。俺には自分たちだけで作り上げます、任せて置いてくださいと宣言しておいて、舌の根も乾かないうちに早乙女君に頼るなんて事を・・・」
「それで魔道冷蔵庫と魔道コンロはどうなるんですか? 完全にゴーレム馬車用だけでなく『早乙女式』になってしまっていますけど」
「それについてなんだが・・・ゾリオン君とグレゴリオ君と3人で話し合った結果、私共のユマキ商会が入ったことで1番儲けの少ない形になってしまったガルディア商会で製造させてもらえないか? というお願いなんだ」
「って事はまた職人ギルドですか?」
「君に専属職人としての契約を分散して君への負担を減らそうということになってるんだ。今日の午後に3人で話し合ってユマキ商会にある君の試作した早乙女式魔道コンロ・魔道冷蔵庫は設計図とともにすでにガルディア商会の工房に運んであり、君への許可待ちになってるんだ。ガルディア商会の職人は元々生産していて取り扱っている商品なので、君の作ってくれたサンプルと設計図を見ただけですぐに複製が可能だった」
「なるほどね。そちらの話も作業も今後の計画も全部終わって、後は俺の職人ギルドへの新設計登録と独占製造契約を待ってるだけって事か・・・」
「ああ、面倒なことは全てこちらで処理しておいた」
「面倒ねぇ・・・」
まぁ、薄々感じてたが・・・マツオはやはり俺の囲い込みにゾリオンとグレゴリオを利用してきたな。
自分の儲けをゾリオンに渡してでも転生者の俺が持っているこの世界の中に無い情報を”3人で”活用していこうというフシまで見えてくるな。
その先に待っているのは莫大な儲け話。
さらに俺が面倒ごとに関わりあいたくないという性格も考慮されてて、断りにくいように考えられてるな。
もう一ついえるのは・・・俺がここまで全部読んでる事も、そして読んでても乗ってくるであろうことも計算がされているし、グレゴリオはここまで裏まで読む能力はなさそうだが、ゾリオンは全部わかってて乗ってくるだろう事も計算がされている。
元々ガルディア商会は魔石・魔結晶・魔水晶・鉱石などの巨大な販売網を持っていて、ガルディア一族が持ってる冒険者ギルドの太いパイプを利用して、ギルドからの買取や依頼も多くダンジョンの恵みも数多く取り扱っている。
取引額の総量はシーパラ連合国髄一だ。他の大陸への定期便も数多く取り揃えている。
だけど多くの物資を運ぶための船や働いている人員、そして大量の物資を保管する倉庫などを数多く取り揃えないと維持できない部分も多く、莫大な儲けは経費に消費されてしまっているので、純利益は意外と少ないってのは色々な人間から聞いている。
ここの儲け話は乗ってきて自分の商会で取り扱っている商品の独占製造して独占販売を狙ってくるだろう。
・・・まぁ、俺が悩む話ではないな。
マツオも読んでいるように俺には自分で儲けようという気もない。
今回のおにぎり販売計画も自分だけで全部できることをガルディア商会とフォレストグリーン商会とユマキ商会にまで話を分散して、儲けも全部他人任せにしてしまってることなのだ。
しょうがないなと返事をして今から職人ギルドに行って登録してくることになった。
ゾリオンと一緒にジュンローの運転する早乙女式馬車に乗って職人ギルドに向かう。
距離もそこまで離れていないのですぐに到着する。
ジュンローが先導してゾリオンと並んでゴーレム馬車駐車場から職人ギルドシーパラ本部入り口へと、もはや違う意味でVIPの扱いで職人ギルドに入っていく。
この国のTOP3の企業ガルディア商会の当主ゾリオンと並んで歩き、No.1企業ユマキ商会の大番頭ジュンローに案内されて・・・数日前に職人ギルド本部の大粛清をした張本人の俺がきたんだからざわつくギルド本部内。
ジュンローが手配して小会議室に入っていく。
『早乙女式魔道コンロの設計図』と『早乙女式魔道冷蔵庫の設計図』の登録を職員ギルドの女性幹部立会いのもとに行われて、幾つかの質問に答えた後に登録完了。
そしてそのまま独占製造契約と販売契約をガルディア商会のゾリオンと交わす。
報酬は早乙女式馬車と同じで販売価格の10%にした。
そうすることで今までの半額ぐらいの値段で同じ性能のものが製造できるし、今までと同じ価格で業務用の巨大な物が作れるので業務用の価格は1/3まで減らせるようになった。
しかもそれだけの値引きをしても今まで以上に儲けがでてくるらしい。
早乙女式魔道コンロと魔道冷蔵庫の登場で様々なサイズのものが販売され、オーダーメイドの商品も販売されるようになっていくことになる。
早乙女式馬車と同じで基礎の動力部分を商会で購入して改造して販売できるようにしてあるので、職人達はガルディア商会で勉強して基礎を学び工房を立ち上げて独立出来るようなシステムとなった。
契約書を俺・ゾリオン・職人ギルドと3方で分け合ってそれぞれが持つ事になるので、内容を全て確認してサインする契約書は多い。
30分以上掛かって何とか終わらせてユマキ家本宅に戻ったのは22時を超えてて、すでにパーティーは終わってみんなが帰っていた。
ゾリオンは職人ギルドにガルディア商会のゴーレム馬車を迎えに来させていて、そのまま乗って自宅に帰っていった。
嫁達も早乙女工房に戻ってから普段着に着替えてセバスチャンの転移魔法でヨークルの自宅に帰宅したと先程マリアから念輪があったし、すでにお風呂も済ませて寝室で酒を飲んでいるところらしい。
マツオは2度目のユマキ商会代表引退記念でサトシと2人で酒を飲んでいると聞いてるので、孫との会話を邪魔しないように俺もすぐさま帰ることにする。
ジュンローにお礼を言ってそのまま歩いて早乙女工房に帰っていく時にユマキ家本宅を離れると同時に、早速遠見魔法の監視が2つ入った。
反射的に俺も遠見魔法で相手を見ると・・・1つはどこかの商会の執務室・・・遠見魔法で俺を監視しようとしていたのは以前も見たことのある男で、性懲りも無く俺をまた監視しようとしているんだが・・・こいつは目的がわからないんだよな。
今日のパーティーにも見かけたのだがデータが全く無い。
面倒だったので鑑識魔法で全部調べ上げた・・・ああ、そういうことね。
もう一つはどこかのギルドの会議室みたいな場所で遠見魔法を使っている男の後ろにいるのは、さっきのパーティーのゲルアーとの騒動の後で俺に怒りの感情を見せていた3人の女性がそのまま座ってる・・・ここはスパイギルドのシーパラ本部っぽいんだけど・・・コイツラはアホか?
頭にきたので少し大きな声で遠見魔法で監視していた合計6人にだけ聞こえる声で叫んだ。
「クソヤロウどもが! 遠見魔法で見るなら戦争になると以前も言ったよな? これから俺とお前達で戦争だ。今から攻めるから・・・全員が俺から目が離せないようにしてやんよ」
『呪いの映像』
俺が右手を上げると呪術師のスキルの呪い魔法で6人が全員呪いに掛かる。
掛けた呪いは俺がすることがずーーっと頭の中に映像として浮かび続けるモノだ。
目を閉じても寝ていても悪夢のように夢で見続けることになる。
俺が呪いを解除するまで永遠に俺が指定したシーンを永久にエンドレスで繰り返される。
俺が指定したシーンは俺が薄笑いしながら盗賊や迷賊を殺しているところだ。
しかも視点は全部殺される側の盗賊視点であって、最後は自分が殺害されて暗闇になって終わったと思ったら最初のシーンに戻る・・・をエンドレス。
6人が大騒ぎしている状況を遠見魔法で見て笑いながら語りかけてやる。
「ハッハッハ、どうだこれがお前らが見たがっていたリアルな俺だよ。俺は親切だから盗賊の視点で見させてやんよ。俺からすればお前らも盗賊と何ら変わりが無い”ゲス”どもなんだからな」
すでに全員がこれから永遠に続くかもしれない恐怖におののき軽いパニックになってる。
光魔法の呪い解除をしようと頑張っているが俺の特別製の呪いはアマテラスにだって解除できない。
闇魔法であれば光魔法で対抗して消滅させることが出来るが、俺のは呪術師のスキル魔法なので呪いをかけた術師以外が力技で解除するには、掛けた術師以上のレベルが必要になってくるので解除できるのはゴッデスのみだ。
このバカ共にはトラウマになるぐらいの恐怖を植えつけないと永久に繰り返すほどのバカなんだろう。
他人のプライバシーを覗く事がどれだけの恐怖を生むか味わってもらうために20分ほど放置することにした。
6人は完全にパニックになって騒いでるところに救いの声をかけてやる。
呪いの映像を一時停止させて俺は目をつぶり再び開いたときは瞳は赤く光輝く『看破の魔眼』を発動させる。
6人には看破の魔眼を光らせた俺の瞳だけが見えるように演出した。
「ではこれから覗き共の裁判を始める。俺の看破の魔眼を誤魔化せることは不可能なので正直に答えるように・・・ではお前らの名前から答えろ」
全員のありとあらゆる情報をしゃべらせてヘルプさんの中にいれてある鑑識魔法で吸い取ったデータと照合して確認。
嘘付いたヤツは他の全員が答え終わるまでエンドレス映像を見させる。
女3人はバカなヤツラで全員二度以上嘘をついてる。
俺は並列して存在する脳内で裁判を続けながら・・・立ち止まることなく普通に動いている。
もちろん歩いて早乙女工房に帰って普段着に着替えてから転移魔法でそのままお風呂に直行で帰宅した。
露天風呂で満天の星空を眺めながら風呂に浮かべた桶につまみの自作のチャーシューをのせて日本酒飲んで風流を味わってる・・・明日はいい天気になりそうだな。