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エルフに悪党が多いってイメージはなかったっす。

10・3修正しました。

ナディアと雑談をしながらもふもふ天国ヨークル1号店までの道を案内する。


話をしていてビックリしたが見た目はモデルのようにスラリとしたスレンダーで、腰まで届く金髪を風になびかせて俺より少し背が高い175cmぐらいなんだが、年齢はこう見えても48歳なんだって。

両親が共にエルフだと年のとり方が人族とはまったく違うみたいだな。

10代前半の顔という超童顔で俺よりも背が高くて年上ってのは凄い違和感を感じる。

何か色々と俺の中の常識が崩れていく感じがする。しかもモデル体型の割には・・・結構大きいし。


ナディアの装備している旅人の服が腰がきゅっと締まっていて胸が強調されているので、見ないように頑張っているがどうしても少し目が行ってしまうのが・・・悲しいけど男の性だ。


ナディアの両親は元々、中央大陸にあるエルフの村で過ごしていたが・・・ナディアの両親の両祖父母の4人がエルフの小さな村の生活に飽きて、200年以上前に一族を引き連れて西の大陸『ウェルヅ大陸』に移住してきた。

祖父母はシーパラ連合国の外国との玄関口『ドルガープ』の都市で宿屋を経営して大当たり。

今では大きなホテルを幾つも経営するグラナド商会を作り上げた。

ナディアの両親もブランディックスの町で宿屋を経営していたが80年ほど前に偶然知り合った木工職人に心酔して弟子入り。

宿屋は父親の弟に経営を譲り自分は妻と共にヨークルに職人として生活し始める。

40年ほど前に心酔していた師匠が高齢の為に亡くなると木工職人としての情熱は消えてしまって、今から35年ほど前のゾリオン村開拓の話に乗ってゾリオン村で農業を始めたそうだ・・・・


ナディアの父ちゃん凄いな・・・自由奔放過ぎんだろ。

そんなぶっ飛んだ環境でもナディアの母親は不満を全然もってなくてケンカもほとんどしないほど、今でも両親はラブラブなんだそうだ。

その証拠にナディアの下には現在5歳の弟がいるんだと・・・43歳下の弟って・・・流石にそれには驚いたがエルフって寿命が長い分、親戚関係は複雑に絡み合っててナディアの両祖父母は4人とも440歳以上で、その上の曽祖父母の8人全員も中央大陸に健在らしいし、エルフの世界観では全く珍しいことでもないんだと聞いて驚く。


俺のエルフのイメージというと森の中で自然・精霊と共に暮らすような物静かな性格の人物が多いという先入観があったが、まったく違って人族よりも激情家が多くて意外と飽きっぽい性格の人物の方が多いそうだ。

露草康助をハメて利用していたエルフの王侯貴族や冒険者ギルド本部で幹部をしていた『ノラギス・サザール』のような悪党もかなり多く、長寿で子沢山の家庭が多いのに世界的にエルフ人口が増えないのは同族同士の殺し合いや戦争も多くて長寿を全うして亡くなるエルフがほとんどいないから。

特にエルフの王侯貴族の末裔はエリート意識が信じられないほど高く、他の種族を奴隷にしか思ってないほどの高慢ちきが多くて、それが理由で世界中のエルフの国は何十カ国も出来たが、その全てが崩壊して現存する王国は全て無くなってしまっている。

今いる貴族や王族の末裔とは全てが自称であって金や力を持つとおう講義族の末裔を自称するエルフは多いんだと。

ダークエルフを『穢れた血の一族』と呼びドワーフを天敵として騒動を起こす、エルフの同族からも嫌われている連中が中央大陸には多くいて、中央大陸の教会総本山とも犬猿の仲で毎年のようにイザコザ・紛争・戦争を起こしているんだと。

エルフの村の中で穏やかに暮らし人達は教会側についているので問題は複雑になってるみたいだ。


俺が知らないエルフの情報を教えてくれるナディアの話が面白くて、俺ももふもふ天国ヨークル1号店の中に入ってそのまま2人で雑談を続ける。

エルフなんて地球にはいないし俺の貰った記憶や知識には、露草康助の時のようなエルフの王侯貴族によって迫害を受けてるイメージしか残ってないので、特権階級意識を持たない一般市民のエルフの意識・知識・感覚はさっぱりわからないからこそ・・・ナディアの話は楽しかった。

ナディアが話し上手なんだろう。


俺の貰った知識や記憶って結構偏ったモノが多くて・・・仕方がないって言えば仕方がないが。


神を殺したいと強く願うほどの迫害を受けていたり、戦争で人格が壊れそうなほど同族を他の種族を殺人マシーンのように殺し続けていたり、レジスタンス活動を続けて政権交代に利用されつくした後に毒殺されたりと強烈な経験ばかりで、様々な種族などの情報が俺の中に記憶や知識として入っているのだが『一般市民の普通の生活』ってのがなかったりするので、ナディアの話を聞いてるとメチャクチャ楽しかった。

ナディアもモフモフの愛玩ゴーレム達のくれる癒しに満足してくれたようだ。

そのまま会話をしながら1号店には午後2時半までいたのだが・・・昨日までの混雑は解消されている。

主婦の数は半分以上は減っているので昨日までのように、入店するのに1時間以上待たされることもなく、すぐに入店できて座れたので混雑はとりあえずは解消されたようだった。

店内にも一時間制限などと客を追い出さなくて済む。


明日にシーパラに出発すると言うナディアを冒険者ギルドに送り届けてモフモフ案内ツアーが終了。

シーパラにも俺の作ったもふもふ天国シーパラ店があるよと紙に地図を描いて教えてあげた。

ナディアを送った後はもふもふ天国ヨークル2号店の様子を伺いに行く。

冒険者ギルドからホップボードに乗って2号店に。

2号店にいる店内全部の客が主婦で1号店とは上手く色分けされている様子だった。

今日の開店からの様子をメイドゴーレムの褐色かっしょくに聞いたが、客の流れ的には午前中は出勤前の職人が多く午後からは今のような主婦ばかりになってる。

1号店とは客層がガラリとかわって場所の特色が出てきてるのだろう。

まぁ、まだ昨日の昼過ぎにオープンしたばかりなので今後はわからないけど。


1号店は午後も半分は職人達の商談などで利用されている。

コーヒーや紅茶などのドリンクのテイクアウトもクッキーなどの軽食のテイクアウトも1号店は多いので職人さん達にも、もふもふ天国のお店の味が好かれてきてるようだ。

1号店の混雑解消の為とお客からの要望でドリンクや軽食のテイクアウトを始めたのだが・・・これはこれで売り上げUPに貢献しているようだな。

ドリンク持ち帰り用のポットはオーガ鋼製の別売りなので、既にテイクアウトの常連さんはポットを複数購入している。

もふもふ天国のサポートをしているグレーやシロにはテイクアウト用の防水紙容器やドリンクポットの製造まで任せてる。

1号店は同じような立地条件のシーパラ店でもテイクアウトの量の多さは特色として出てるので味が職人さん達にうけてるのは間違いなさそうだ。

2号店はフライドポテトやクッキーなどの軽食のテイクアウト商品がすでに多く出てる。

2号店は既に奥様方の暇つぶし・・・店内で井戸端会議という流れになってきてるな。

1時間以上店にいる人が多い。

もふもふ天国ヨークル1号店裏にある早乙女商会の専属メイドゴーレム『グレー』に念輪で出入り業者との取引量を増やすように指示する。


一気に3店舗開店になってしまったが売り上げは順調に伸びているだろう。

アマテラスからミルクポットを貰ったので今はミックスジュースは限定販売ではない。

ミックスジュースの女性人気は高く看板ドリンクに既になっている。

それにホワイトとの業務連絡で意外と問い合わせが多いのが


『看板を売ってくれ&作ってくれ』

だった。

ぬいぐるみの看板と簡単に言ってもあれは『雨避けの魔法』と『盗難防止用の移動禁止の封印』が掛けられていて、『簡単な店舗説明用の受け答え』すら出来る様に魔石を4つも使用してる結構高価なものなんだけどな。

『売り物ではありません。オーナーの趣味です』と言ってお断りさせているけど。


愛玩ゴーレムと外の看板ぬいぐるみを盗難しようとしていた人が警備隊の人に5人ほど突き出されてる。

つい出来心というのが許される1度目は警告イエローカードで済ますけど2度も繰り返した人は言い訳も聞かずに警備隊に突き出すようにメイドゴーレム達や拠点防御中のユーロンド達には指示してある。

そもそも1度目の警告の時に、世界中のどんな結界師を連れてきても俺の移動禁止の封印を解いて盗むことなんて出来ないと説明しているのにな。

警備隊に突き出された5人とも犯罪者ギルド系特有の手馴れた感じだったし、つい出来心なんて2度目の言い訳もバカらしくなるほど用意周到なアイテムを多数使って、結局盗めないというバカの上に恥の上塗りみたいだったらしく、後で逮捕に来た警備隊の人にも説教されていたという報告があった。


この状態だと職人ギルドには俺へのゴーレム製造依頼は多くなりそうだ。

親しい人にプレゼントする以外に作る気はまったくない。

これはモフモフと一緒で俺の趣味だ。

俺は冒険者&旅人であって職人になるつもりもない。


もふもふ天国の視察を終えて俺はヨークルの食料品市場に久しぶりに行くことにした。

ホップボードに乗って移動中にフォクサ達とトロール殲滅作戦を実施中の、るびのから業務連絡が入り15時で当初の予定通りの3000頭以上を狩り終えて今から水影の本拠の大樹の奥に広がっている広場で魔獣軍団が大宴会&眷属魔獣会議をはじめるらしい。

エドガーたちの歓迎会も兼ねてるそうだ。

なので俺に骨付きトロール肉を焼いて欲しいと、るびのにお願いされた。

俺は解体された骨付きトロール肉をアイテムボックス内で大量に焼いていってセバスチャンや、るびののアイテムボックスの腕輪に送る。

2t近い量の骨付きトロール肉を焼き上げて送ってやった。


ヨークルの食料品市場に到着して入っていくと、以前来たときに比べ市場の中は様変わりしていた。


甘い香りが漂っているので匂いの元に歩いていくと・・・アンコと抹茶のスイーツ祭りになってる。

俺がリーチェにレシピを渡した饅頭・たい焼き・どら焼きの3種類が既に販売されている。

シーパラで俺が抹茶を買った業者の本拠がヨークルだったので、ここでは抹茶味の饅頭なども既に商品として販売されていた。

正直言ってたい焼きは1ヶ月ぐらいは掛かると思ってたけど数日であのたい焼き器を作り上げるとは・・・ヨークルの鉄職人の腕を舐めてたみたいだ。

しかも3種類とも飛ぶように売れてて、たい焼きにいたっては行列までできている。

何人かの知り合いに話を聞いてみたが3種類とも商業ギルドの公開レシピになっていて誰でも商売できるようになってるようなので、すでに何人かの業者が屋台での移動販売も検討されているみたいだった。

俺がユマキ商会から今度、移動販売に最適なゴーレム馬車が発売されるからそれも検討に入れてみては?

って教えてあげたら、さっそく何人かがユマキ商会に走っていった。


販売されているどら焼きの中に『栗入り』っていうのがあったので1つ購入してすぐに食べてみた。

うん、普通に美味しい。

栗の販売業者を教えてもらいさっそく大量購入しに行った。

栗の業者の店にはソラマメ・青えんどう豆・枝豆が売っていたのでこれも大量に購入しておく。

業者に『ウグイス餡』の作り方をレシピを渡して実演してあげたら、俺が出てくと同時に幾つかの業者が入っていってさっそく商談が始まっていた。

アンコブームがヨークルで始まってきてるような気がしたので『ウグイス餡』まで投入してやった。


岩塩を売っている業者も発見したので購入する。

岩塩の産地ごとに分けて販売していたので味見しながら数種類購入。

この『産地ごとに分けて販売』ってのは俺がコーヒー業者にお願いしたことなんだけど、ヨークルでは既に『○○産の××』と表示されている食品が多くなっていて産地表示が当たり前になってきているのは嬉しいな。

酒が1番良い例だろう・・・地域の特色が出てくると味わい方も増える。


俺のアイテムボックスの中の野菜が減ってきていたので販売業者を探して購入。

ヨークルの食料品市場にはキノコ類も豊富に売ってるので全種類購入していく。

時間が夕方の5時になりそろそろ帰宅することにした。

食料品市場を出てホップボードに乗って早乙女邸に帰宅する。

帰宅中に雨が降ってきた。夕方まで風があって今日は肌寒かったな。

今日は昼から雨が降るんじゃないかと予想していたが夕方までズレ込んだな。

早乙女邸に帰宅してから先に玄関からガレージを抜けて地下練習場に降りて行くとアイリが大剣を振り回していて、奥の壁沿いではクラリーナが無心で弓を引き続けてる。


邪魔をしないように地下のワインセラーに入っていって今日の食料品市場で樽ごと購入した数種類の酒を樽の棚に並べた。ワインやウイスキーだけでなくビールの大きな樽も並べる。

そのままキッチン横の階段で1階まで行くとミーがクロと一緒に豚モツの味噌煮込み料理を作っているのでいい匂いが充満してる横を通って客間まで行って防具から普段着に着替えた。

今日はTシャツにチェックのシャツを上に着て、下はジーンズにした。

リビングで晩ご飯の出来上がりを待ってると、フォクサから念輪連絡が入ってきた。


るびのは今、食後の仮眠中で今夜はこの後に大黒豹達と深夜のトロール狩りに行くそうだ。

そういえば昼間は水影以外の大黒豹は寝ていたみたいで、るびのと狩りに行ってないからな。

それでフォクサは銀大熊軍団・グリーンウルフ・炎虎達をそれぞれの巣に帰してやったところらしい。

捕った獲物も銀大熊の1番大きな巣を持つアキューブの巣に持っていってあげた。

グリーンウルフと炎虎はトロール肉よりも爆走鳥の方が美味しいらしく、今回の全てのトロール肉は銀大熊達のモノになることが話し合いで決定した。

グリーンウルフと炎虎達には俺から余ってる肉類(森林モンキー・オーク)などが定期的に渡される。

とりあえず今日の狩りの成果は半分以上は俺のアイテムボックスに保管される事も決定。

アキューブ達には後日分けて渡される。

それにフォクサとセバスチャンが色々な角度からトロール大量発生の原因を調べたが・・・

『トロール肉に食べ飽きた大黒豹が狩りをしなくなってトロールが増えていくのを放置してたっす』

という原因で最近急に増えたわけでなく以前から徐々に増えていたのが原因という結論になったようだ。


・・・なんだそりゃ。


これからはフォクサの主導で定期的にみんなでエサの交換会を開くことも決定したらしい。

トロール遠征は銀大熊の希望で最低でも1ヶ月に一回は開かれるようだ。

これはトロールを大黒豹が監視して増え過ぎないようにコントロールするという目的がある。

水影からフォクサに連絡が入り次第実施されることも決定。

まぁ・・・魔獣たちのことは、るびのの管轄だし全部フォクサに任せることにした。


フォクサとの念輪連絡を終えた頃にシャワーを終えたアイリとクラリーナが普段着に着替えてリビングにやってきた。

アイリはギンガムチェックのシャツに下は俺と同じジーンズ。

クラリーナはゆるいボディラインのサマーニットのと下はピンクのフレアスカートをはいてる。

先程キッチンの横を通った時に見たミーの今日の服装はパーカーとジーンズだった。


「2人ともお疲れ様。今日の昼食に帰ってこれなくてゴメンなアイリ」

「今日はクロに手伝ってもらって豚肉のしょうが焼きとミョウガ焼きに挑戦してみたよ。しん君食べてみて!」


俺はしょうが焼きもミョウガ焼きも一口食べてからつまみにしてビールを飲み始める。

クラリーナとアイリも俺から貰ったビールを飲み始めた。


「味付けが少し濃いな。でも、それが冷えたビールに凄く合う」

「確かに・・・アイリさん、少し濃いめの味付けがビールに合いますよ」

「うん。ちょっと昼食で食べた時は失敗したかなと思ってたけど、つまみだと丁度いい味付け具合になるわね。よかったわ」

そんな話で盛り上がってるところにミーが晩ご飯の完成を伝える声が聞こえてくる。


「はいはーい。みんな、晩ご飯が出来たよー」


ダイニングテーブルに移動して晩ご飯はミーの作った豚モツの味噌煮込み料理。

これは少し薄い味付けだったので、俺はミーにことわりをいれてから・・・丼ご飯を用意してご飯の上に乗せて掻っ込み始める。

こうして食べると丁度いい味付けになる。

おかずにアイリの作った豚のしょうが焼きとミョウガ焼きがバッチリ合うな。

無言で美味しそうな笑顔をして掻っ込む俺の姿を見てアイリたちも真似し始めて全員が丼で食べた。


「煮込みが足りなくて味が薄かったけど、こうして食べたら丁度いい具合になったよ。しんちゃんありがとう」

「いえいえ、どういたしまして。煮込み料理の場合は冷ます工程もいるから、どうしても味を素材に染み込ませるには時間が掛かるからな。俺やゴーレムたちは料理スキル魔法で一瞬で終わるけど、普通に料理すると時間は掛かるのは仕方がないよ」

「2回ほど冷ます工程は入れたんだけどね。時間がちょっと足りなかったかなぁ」

「気にするほどじゃないよ。私はこれぐらいの味のほうが美味しいと思うよ」

アイリが話しながら豚モツ味噌煮込み料理を食べている。

「私はしん様と同じように丼料理でいただきましたが、ご飯にとっても合ってると思います。特にこの汁が白いご飯に合ってて丼との相性が最高です」

「ありがとうクラリーナ。クロから貰ったドラゴン汁を使ったんだけど肉の旨味が出ててご飯にはいいわね」

「まぁ、好みの味付けなんて『千差万別』だよ。体調によっても味覚は変わってくるし。だから料理は難しくて奥が深いんだろう」


そんな雑談をしながら晩ご飯を終えたのでリビングに移動する。

ミーとアイリの作ってくれてた料理をつまみにして、チビチビと日本酒を飲み始めた。

嫁たちもびーるを止めてそれぞれの酒を飲み始めてる。


「しんちゃん、るびのって今日はまだ見てないんだけど・・・まだ帰ってきてないの?」

「るびのは今日はこのまま大森林の南側で深夜の狩りを続けるらしいから、帰ってくるのは明日の午前中になるとフォクサから連絡が来たよ」

「へー、そうなんだ。しん君は明日の予定はどうする?」

「まだ決めてないよ。俺はシーパラであった色んな騒動もそろそろ終わりだろうと思うから、次の旅の計画をみんなと話したいなと思ってたんだ」

「次の旅って・・・もしかして私が見たいと言っていた海に沈む夕陽を見に行けるのですか?」


「ああ、予定では次の目的地はシーパラ連合国の海の玄関口『ドルガーブ』の街だったよね? フォレストグリーン商会の現当主『グレゴリオ・シーズ・フォレストグリーン』から聞いた情報では首都シーパラとドルガーブを結ぶ列車は当日券は一般席しか購入できなくて、俺が乗ってみたい最高級個室は前日購入しか出来ないって聞いたんだ。だから、明日予約を入れて明後日ドルガーブに行こうよ」

「最高級個室に乗るの? 凄く高いって聞いてるけど・・・そういえば、私たちってお金に困ってなかったわね。しん君といると自炊が多くて、買い物に行く時以外ほとんどお金を使わない生活をしてるから逆にお金がないように感じちゃう時があるわ」

「アイリさんの言うことが凄くよくわかります。買い物の時にも金額を見ないで購入してるっていうセレブな生活をしているのに、気分的には金を使ってない生活をしてるような気分がしてるのです」


「まぁ、そんなことはさておき・・・私は列車に乗ってみたい。乗った記憶もないのに初体験が最高級個室って贅沢よねぇ。日程は明後日か・・・了解」

「ミーは賛成だね。アイリとクラリーナはどうする?」

「私も賛成。列車に乗って旅してみたいわね」

「私も一緒です。小さい時に乗った記憶は薄っすらとしかないので私の記憶と現実はどう違うのか見てみたいです」

「じゃあ、明日はチケットの前日購入をしてくるよ。みんなとの旅って久しぶりになるな。今回は列車の旅だから楽しみなんだけど半日で終わる旅って残念だな・・・本来の旅ってこんな感じなのかもしれないけど」


明日の予定は嫁達はユーロンド1号・マリア・セバスチャンを連れて、またアゼット迷宮アタックの昨日の続きをするそうだ。俺も明後日の列車の旅の個室チケットを購入した後に追いかけることにする。


そういえば今日の午後の早乙女工房にユマキ商会から手紙が来ていたと報告を聞いてるけど、俺のアイテムボックスに送られてきてる手紙の中身を読んだら『サトシ・シーズ・ユマキ』のユマキ家からの勘当を公式に解除されて、正式にユマキ家の第12代目当主となる事が決定。

それで明日の夕方に行われる12代目当主就任記念パーティーへの案内状だった。

俺だけでなく早乙女一家の嫁3人分の案内状も兼ねている。

アイリ・ミー・クラリーナの3人に案内状を見せると悩んでるみたいだった。

『本音はきれいなドレスを着て参加してみたい』

『でも上流階級のパーティーのマナーや作法とかは全員何も知らない』

『俺に全員に似合うドレスを作って欲しいし、着てみたい』

などなど悩みは尽きないようだな。

案内状の裏には親切に『身内と親しい友人しか呼んでいないアットホームな立食パーティーです。お気軽にお越しください』と書いてあるけど・・・

ドレスと宝石でマナーや作法を封入して何とかできるかなぁ・・・作ってみますか?


そのまま全員で先に風呂をサクッと済ませてから寝室に行ってパーティードレスを作ることにした。

ミーが赤・アイリが青・クラリーナが緑と俺が勝手にイメージするカラーで龍布のドレスを作る。

肌の露出は上半身は肩と腕、下半身は膝下のみにした。

上半身も体にピッタリとした『体のラインを強調してるけど肌の露出は最小限』という感じに纏める為に白いシースルーのボレロを羽織ってもらう。

3人の胸元にはハートの形にカットされた10カラットほどのダイアモンドを中心にしたネックレス。


・・・ダイアモンドは俺が石拾いで採ってきたモノが原石のまま余ってるから惜し気もなく使えるな。

俺の場合は神の創り手スキルで素材の原子から組みなおして不純物を取り除けるし、カットする必要もなくカットした形に組み上げて仕上げるので無駄も出ない。

全員分のイヤリングはイメージカラーの宝石を使って作って金具はミスリル。

アイリはブルーサファイア、ミーはルビー、クラリーナはエメラルド。

形はイヤリングらしく水滴のような形にした。


指輪やブレスレットは今装備しているモノでもいいだろう。

ドレスとネックレスのバランスを崩さないデザインになってるのが幸いした。

ピンヒールまで完全にカスタムメイド品で仕上げてあげて3人の嫁は全員寝室の姿見用の大きなガラスに映る自分の姿を見て、とても嬉しそうにクルクル回ったりしている。

完成したドレスに防御の魔法を封入して、宝石にはマナーや作法の全てを封入する。

このままではただの知識があるだけなので練習を深夜までかかって3人でおこなった。


俺がパーティーで着るのは旅人の服の豪華バージョンだ。

・・・このイーデスハリスの世界には『タキシード』とか『スーツ・背広』というものがない。

男の場合は公式の場所では豪華な装飾が施されていても・・・旅人の服が基本形になる。

軍人の場合は軍服だし、冒険者は防具、商人は旅人の服で職人も旅人の服が基本形だ。

俺も面倒なので旅人の服を龍布で作り上げる。金銀の色をふんだんに使った旅人の服が完成する。

1度着てみて不具合がないか確かめてからパジャマにまた着替える。


和服の裃でも作って着てやろうかと思ったが、この世界では任侠ギルドでしか着られていないファッションなので即却下だな。


マリアとクロの特訓を受けている3人の嫁を見ながら、サトシ達に渡すプレゼントを考える。


ミサキには嫁達に作ったネックレスよりも大きなダイアモンドを付けたネックレスと、手首から指にまでつけるもはや『それって手袋ですか?』ってぐらいのフィンガーブレスレットを作る。

両方とも中心に据えられたダイアモンド1つで・・・ネックレスも30カラットほどの大きさだしフィンガーブレスレットも両手の2つとも20カラット以上はあるだろう。

ダイアモンドの周囲にも、もちろん様々な宝石が取り付けられていて煌びやかな仕上がりにしてある。


サトシには・・・やっぱり剣だろうか。


サトシは二刀流で剣で突くよりも斬るタイプだと対戦時間は短かったが構えから推定できたので、任侠ギルドのトーナメントではグラディウスを二本使っていたけど本来はサーベルを二本使うのがサトシ流なんだろう。

刀身は80cmほどでグリップには『護拳ごけん』と呼ばれる様な、手を守るための半円状の大きなつばを取り付けたサーベルを二本作る。

伝説級レジェンドクラスのサーベルにならないように細心の注意を払って作り上げる。

オーガ鋼のサーベルにミスリルでコーティング。

装飾を鍔・グリップ・鞘を丁寧に作り上げた剣なので特級品ではあるが伝説級にはならなかった。

素材的にはありふれた剣を丁寧に作りこんだ一種の美術品の様な仕上げをしたので、儀礼などの時にも装備できるような少し煌びやかな装飾を施して。派手な鞘の中には再生の魔法を封入する。


マークタイトにはクラリーナの弟に作ってあげたモノと同じナイフ『キラービーナイトの甲殻』で作った護身用のナイフを作ってあげる。

マークタイトのナイフの鞘にも再生の魔法を内側に封入してあげた。

まだ5歳の子供には片手剣のサイズになってるが・・・まぁ、護身用のサイズだと15cmぐらいの刀身なんだけど。


これだけ作ればいいだろう・・・ちょっとヤリ過ぎ感は否めないが気にしないようにする。

宝石なんて拾い物でタダなので、あまりにも俺の中で価値観が低い評価となってる。

デザインも”地球では”ありきたりなものだしな。

嫁達はマナー&作法の練習で既に疲れて寝てしまっている。

俺も眠ることにしようとしたら脳内に『ジリリリリリン』という、昔懐かしい黒電話の呼び出し音が鳴り響いてきた。

アマテラスからの緊急連絡だ。


【真一お兄ちゃん聞こえてますか?】

「おう、アマテラスどうした?」

【真一お兄ちゃんにお願いがあります。今からシーパラの裏世界の奴隷オークションが開催されるんだけど、それに売られている人で救って欲しい男がいるの】

「男? どういうことなんだ?」

【1人は人族ではなくてドワーフなの】

「1人は? って何人も救う人がいるのかよ・・・まぁわかった。詳しく説明してくれ」


アマテラスの説明をまとめると・・・

2人の夫婦で他国から隷属の首輪によって誘拐されてきた。

1人はドワーフの若い職人で『ゴーリク・カイズ』そして、もう1人がカイズの妻の『ゴーリク・サラ』の2人・・・ゴーリク夫婦は2人でゴーレム作りの天才夫婦と裏の世界では言われている。

職人ギルド騒動のときに俺が俺は一撃で壊した犬型ゴーレム『クラッシャーハウンド』の製作者。

まだ世に出て名前が売れる前に誘拐されて後は裏組織の間を転々と転売されている奴隷だ。


・・・ヤバイな。

こんな話は俺の貰った記憶と知識の中にたくさんあって、俺に『全てを壊せ! 怨みを晴らせ!』と突き上げるような破壊衝動が溢れ出てくる。

オークションはこれから開催だったな。

俺はアマテラスと話しながら自分のアイテムボックスの中でサイラスの甲殻鎧の闇バージョンを作る。

おやっさんが俺に作ってくれた甲殻鎧と型は一緒だが、サイラスの甲殻とワイバーンの革に『魔界貴族の角』を混ぜてあるので全身が真っ黒の甲殻鎧、それにセットで同じ素材を使ってヘッドギア(顔を隠すようなマスク付き)・グローブ・ブーツも作った。

鎧の下に着るアンダーシャツとアンダーパンツは、俺の持っている既製品は真っ白なので、龍布で真っ黒の特製品を作る。

装備は持たない腰に暗器である『吸血鞭』が左腰のホルダーに幾つか入ってるし、右腰のホルダーには『霊拘束手錠』が入ってる。


「そんな腐ったオークションなんて参加じゃなくて全部をぶっ壊したいんだけど・・・俺の中の破壊衝動が抑えきれなくなってきてるぞ」

【真一お兄ちゃんはそう言うと思って前もって伝えにきたの。裏の奴隷オークションを開催するのはシーパラの闇を纏める『マフィアギルド』の中でなの。普通、その裏の奴隷オークションに参加するには参加費用100万Gを支払って審査を済ませてから厳重な防衛結界の中に入れるようになるの。真一お兄ちゃんはそれを全部ぶち壊して入りたいんだよね?】

「ああ、全部ぶち壊してマフィアギルドのクソ共を皆殺しにしろと俺をつき動かす破壊衝動が抑え切れそうにない」

【わかった。それなら今からシーパラの教会にある礼拝堂に来て! ここでは伝えられない情報を全部『情報複製』で伝えたい。話で伝えると時間がかかってゴーリク夫妻の不幸を引き伸ばす事になる】

「了解」


俺は自分で作った深夜の襲撃専用防具を装備してシーパラの教会にある礼拝堂に直接転移する。

隠者のスキルを展開して気配と魔力放出を断ち礼拝堂の片隅でブーツを履いてそのままアマテラスとの会話を再開。アマテラスから情報複製でマフィアギルドの情報・今回裏の奴隷オークションが開催される会場の場所名護の情報を貰う。

「アマテラスマフィアギルドに生かして欲しい人物はいるか?」

【今回の奴隷オークションに集まるヤツラは全員が救いようがない悪党なの。オークションに掛けられる奴隷は8名。全員が誘拐されてきた奴隷だから、真一お兄ちゃんに救って欲しいの】

「わかったよ。報酬はまた後だな」

【何が欲しいとかリクエストはある?】

「釣り道具を作るための情報が欲しい。リール・竿・ラインなんかの構造などの情報があると俺もここの世界で釣りが出来るようになるから」

【うん、わかった。地球で情報を集めておくね】

「あぁ、まかせたよ」


アマテラスとの話が終わったので転移してマフィアギルドの正門前に立つ。

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