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終わったと思ったら新展開炸裂しちゃったっす。

俺とゾリオンとグレゴリオの3人はまた再開された最高評議会の証人喚問に出廷するために案内係の後ろについていって移動をする。

予定では2時間後となっていたのに1時間半ほどで案内係が呼びにきたので証拠の精査が早かったなと思って案内係に聞いたら、全く終わってなくてとりあえず今日わかってるところと今回の事件の事でだけで証人喚問を終了させることに決定したみたいだった。

元枢機卿の関係する犯罪が一気に増え過ぎて、もはや最高評議会では収拾不可能なレベルになってるらしい。


会議場に戻ってみると証人喚問の容疑者席で手枷をはめられているイケメン元枢機卿を見てビックリする。

服は囚人服を着させられているだけなのに物凄く老けたような印象を受ける。

ナイスミドルだった面影は欠片もなくなって、すでにお爺ちゃんになってるな。


隷属の首輪を装着させられた元枢機卿は今度はウソをつくことは許されずに真実しか発言出来なくなってるので質疑がメチャクチャスムーズになった。

再開してから1時間ほどで俺が必要なところは終了した。

最初っからこうすればスムーズに終わったのになと、たぶんこの部屋にいる全員が同じことを思っているだろう。

今回の最高評議会における証人喚問の結果を報告の形でここで全ての説明文を議長と副議長が交代で読み上げている。

途中でゾリオンが発言すると議長が答えてくれたので疑問は聞けば答えてくれる形式みたいだな。

元枢機卿はこれからは全ての罪状を確認してからギロチン刑になる。

ただ犯した犯罪が大小様々であまりにも多すぎるのでギロチン刑の執行は10日は掛かるだろうと議長から説明を受ける。


元枢機卿の子供や正妻などの親族も5人ほど死刑になることがここで確定した。

周囲に迷惑かけても枢機卿の権力をかさにして好き勝手なことをして自由気ままに生きてきた親族だ、命をかけて償ってもらうことは当然だな。

教会関係者もすでに逮捕されている3人が死刑になると議長からの説明が続く。

思わず『教会関係者が死刑になるのか?』って声を出して聞いたら・・・罪状が酷かった。

何の罪もない新入りのシスターを”教会内”で4人で共謀して強姦。

そして権力を使って圧力をかけて揉み消した問題は、最近の日記からだけでも少なくとも5人のシスターが犠牲になり、すでに被害者の2人は自殺しているのだ。

残りの3人は呪いをかけられてマヅゲーラの街に売られているらしい。

傍聴席で黙って聞いていた露草桜の祈りの言葉、謝罪の言葉が物悲しく聞こえ涙まで出そうになってくるほど悲惨な事件で・・・まだ解決してないのだ。


祈りが終わると桜はマヅゲーラの街へと国軍から急使を出すことを提案して議長に了承された。


俺は念輪を使って徒影1~5号の全員に今わかってるだけの3人の特徴を伝えて探しだして任侠ギルドで早急に探し出して保護をすることを命令する。

任侠ギルドで俺がギルマスになって初の仕事なので関係職員全員で探し出すように指示する。

呪いで本名を言うことも封印されているらしいので、探し出すのはマヅゲーラに詳しい任侠ギルドの人を使って人海戦術で探す方法が1番早いだろう。

徒影には人物鑑定をつかって呪いを持つ裏の人間を中心に探るように命令した。

裏の世界にもぐって拘束されて働かされている可能性も否定できないからな。

これを機会に任侠ギルドが把握し切れていない裏の奥に隠れて活動してる組織にまで、これからメスを入れて徹底抗戦で行くと命令しておく。


働かせてた業者は背後関係を洗うために全員拘束・逮捕して、やがてマヅゲーラの街にやってくる国軍に引き渡せとも指示しておく。

女性を確保したら国軍が保護するまでの間はサブマスのマナガルムに任せるようにも指示。

彼なら人生経験も豊富で女性の扱いも上手く対処できると思う。

・・・ビッタート卿と似たような雰囲気を持っている・・・という根拠も何もない、ただの俺の直感でしかないが。


こうやって様々な犯罪を犯して元枢機卿の私欲で集めた私的財産はキャッシュで100億G近くあって、他にも豪邸をいくつか所持しているし、貴金属類などの財産は動産・不動産あわせると凄まじい金額になる。元枢機卿の関係者も含めて全額を国が一時的に没収して、被害者に弁償金として分けられることになった。

足りない分は教会側が負担することを教会側の代表者である露草桜と一緒に来ていたアーシェル新枢機卿とシル司教も賛同して決定となった。

これで今回の証人喚問は終了になった。


今日出廷した最高潮議会の証人喚問での俺の役目はこれで終わり。

後は時間はまだ掛かりそうだが国や教会で解決できるだろう。

俺が会議場を退廷していく時に元枢機卿が俺をあらかさまに睨みつけてきたが気にしない・・・と言うより”気にもならない”だな。

イケメンざまぁとすらも思わなくなるほどの老けっぷりに哀れすぎて失笑すら浮かばない。

哀れみのこもった目で見てやった。

俺が見る稀代の詐欺師の末路かな。

俺の哀れみをもった視線に気付き悔しさに歯軋りしていたのが俺が会議場を出て行くときの最後に見た詐欺師の姿だった。


休憩用の会議室に入ってオヤツに芋の3種盛りも取り出してから食べ始める。

ドリンクは巨大コーヒー豆から自分で作ったコーヒーを飲んで待っているとゾリオンとグレゴリオがやってきて、詐欺師事件の終了を祝って俺と3人で握手を交わしてからおにぎり販売計画の話し合いを再開をする。

この3人でスタートさせて、あの詐欺師集団を死刑にまで持っていって壊滅させたんだからな。


コーヒーはポットごとマグカップと一緒に渡し芋の3種盛りは大皿に乗せて2人にも薦めるとどれも凄く美味しいと喜んでくれた。

俺の言いたいことはほぼ全て言い終わっているので後はガルディア商会とフォレストグリーン商会とユマキ商会の話し合うところだけだしな。

細かな価格設定も盛り込んであって・・・話が進んできているな。

俺は2人に聞かれたことだけを答えていた感じだ。

俺はコーヒーを飲み芋をつまみながら、次の予定のマツオとジュンローの到着を持っていたが・・・ジュンローはやってきたがマツオはやはり証人喚問から開放されるには、まだまだ時間が掛かりそうでこの会議室には来ることは出来ないみたいだな。


俺はジュンローの案内で職人ギルドに行くことになった。

先にユマキ商会の工房に立ち寄って新型ゴーレム馬車『早乙女式馬車』の動力部をの試作品を完成させて欲しいとお願いされた。

俺のゴーレム馬車を作る腕が見たいんだろう・・・まぁ、良いんだけどさ。


ゾリオンとグレゴリオも立ち上がっている。

最上階の展望レストランの個室を取ってこれから一服しながらゆっくり話し合って、そのままマツオを待つんだそうだ。

今夜は3人ともここ最高評議会の展望レストランで晩ご飯を食べることになるだろうと笑ってた。

俺はジュンローの後についてユマキ商会シーパラ本部内にある工房に行く事になった。

会議室のテーブルの上に出してあったコーヒーのマグカップ3個と残っていた芋の3種盛りの大皿3枚をアイテムボックスに入れて、先に歩くジュンローの後ろに続いて歩き転送部屋から最高評議会を後に。

最高評議会を出て行く前に歩きながら探査魔法で探りとった最高評議会のビル内の間取りを全て俺のMAPに入力しておく・・・部屋の名前はわからないので不明になってるが・・・これからも何度もこなきゃいけないような気がしたからな。


時間は夕方3時半で中途半端な時間になっちゃったな。

ユマキ商会は商業ギルドの正門を出てすぐのバカでかいビルだ。

この中央行政区の1等地に巨大な建物も凄いが敷地面積も物凄く広くて凄い・・・さすがシーズの企業でシーパラ連合国最大の企業だな。ガルディア商会もデカかったがそれ以上。

ユマキ商会の中に入るときに面倒なチェックは一切なかった。本来ならこれだけデカイ企業の本部建物の中に入るには様々なチェックが必要なはずなんだろうけど・・・超VIPの待遇だな。

普段は並んで座っているはずの受付嬢までが立ち上がってきて俺が通る時は深々とお辞儀をしてくるし、入り口からずらっと20人以上並ぶ警備員は全員が敬礼をしたまま微動だにしない。

気分は大名行列・・・流石にここまでのVIP待遇は気分が良いな。

俺の中の記憶と経験が警報を鳴らしているが気持ち良いのだから仕方がない。

それに俺の前にはこのユマキ商会で現在ナンバー2のジュンローが俺の前を歩き先導して歩いているのだから、俺だけのVIP待遇じゃないジュンローがいるからだろうと軽く考えることにした。


ユマキ商会本部の1階に幾つも並ぶ転送部屋からユマキ商会の工房に向かう。

転送部屋から工房に出てくると広い部屋だ。

パーテーションで分けられているが上部は全部繋がっている。大きな音があちこちから鳴り響き、ここでゴーレム馬車の動力部の開発をしているんだとジュンローから説明される。

俺は作られた試作機を見て愕然とする・・・箱がでけぇよ。

これじゃあ、中身はすっからかんじゃん。

面倒だから解体して全部作り直すことにする。


動力部分を解体して中身を全部取り出す。

『何だこんなもん』

といって箱の中身がスカスカだったのを見た熟練の頑固な職人達は鼻で笑っていて見る価値もないと立ち去り、見たこともないものに興味津々といった感じの柔軟な発想の持ち主が数人だけ残って、俺の周りが空いたので今までは離れて見ていた若い職人達が我先にと群がってくる。

周囲に見学で集まる若い職人を相手に俺は隣の大きな机に広げられた紙に設計図を書きながら、問題のある全ての箇所を全部指を刺して現物を見せながら説明して新たに組み上げていく。

ゴーレム馬車のサイズを考えてキャンピングバスのように底部に4つ動力をつなげて四輪駆動にさせるのが俺の目的なのだから、動力部はなるべく薄く小さく作っていく。

出来上がったサイズのゴーレム馬車の動力を見て今まで鼻で笑っていた職人達は驚愕している。

実際に実験用に繋いだ大きな車輪を軽々回している動力を見て若い職人達は感動すらしてるのだ。

今まではこのサイズの車輪を回すことすら出来なかったんだと感動して隣で見ているジュンローに説明を受ける。


これをゴーレム馬車の底部に4つ取り付けて御者席を運転席に作り変えていく。ガラスで前後左右と上を覆って屋根と壁を取り付け運転席になった。

ハンドルとアクセルとブレーキを3つの魔石と一緒に取り付けて運転する時に動力をコントロールすることを聞いてる全員に説明していく。

次々に飛び出す質問に的確になるべくわかりやすい言葉を選びながら答えていくと、俺のスキルの中の『カリスマ性』『教育者』が発揮してしまっていて、すでに若い職人は『早乙女先生』と呼び始めていた

・・・俺はまだ15歳なんだから、俺の方が若いんだけどなという考えを飲み込んだ。

教える側が『先生』で教わる側が『生徒』そこに年齢は関係ない。


俺の作ったブレーキというモノに発想の柔軟な職人たちは刺激を受けた顔をしてる。

すでに脳内は新たな発想が駆け巡っているだろう。

俺からすればブレーキのない動力で大きなゴーレム馬車が町中を走り回っている事の方が充分怖いことなんだけどな。エンジンブレーキのみって怖過ぎるよ。


馬車の中は木と布を使ってスキル魔法で一気に作り上げ8人乗りの早乙女式馬車は完成。

これから試運転代わりに職人ギルドに行ってそのあと商業ギルドでゴーレム馬車として登録することになった。

研究用に全く同じものを3つ作ってこれで早乙女式馬車の販売店用の試作で中で料理が出来るように試作車両を作りなさいと渡しておく。

全ての部品からの設計図はこれから職人ギルドに登録してこないといけないから、試作機とともに出かけることにした。

完全バージョンの設計図は何枚か複写魔法で10枚ずつ書いて職人達のグループごとに渡した。

ジュンローに新型の早乙女式馬車の操縦を職人に教えて欲しいと頼まれたので・・・ユマキ商会の工房で働く職人達の中でステータス的にも性格的にも将来有望な6人を選んで一緒に行くことになった。

運転席で運転する俺の隣に乗って運転を教えるのは俺が選んだ6人の中からステータス的に物覚えが速そうだと判断した2人に最初に操縦方法を教える。

運転席の横に乗せて操縦方法を教えながら移動する。


工房で作られたゴーレム馬車がそのまま外に出られるようになっている転送部屋に馬車ごと入ってそのまま近くの職人ギルドまで俺の運転で行く。

ハンドルの横についているレバーを下げると後退するということにも若い職人は興奮して聞いている。

操縦の見本を見せている俺の横に乗る2人は食い入るように見つめていて、俺が職人ギルドの中に入って登録している最中は職人ギルドのゴーレム馬車駐車所で必死になって練習しても良い時間になった。

20台以上の馬車が停めることが可能な駐車場がガラガラだったので出来ることなんだが。

一緒に来た6人の職人達が代わる代わる練習している。


職人ギルドで俺は登録を済ませて職人ギルドカードを貰って早乙女真一の職人デビュー。

早乙女工房の設立と俺が作成した通称『早乙女式馬車』・・・正式名称は『早乙女式ゴーレム動力機関部を積んだゴーレム馬車』の設計図を登録する。


俺が凄まじく精密に作られたゴーレムを多数所持して商業ギルドや冒険者ギルドに登録して、不思議な馬車に乗りムチャクチャ早いボートに乗っていたり、変な板に乗って街中を移動していたりする噂が職人ギルド内にあったみたいで『なぜ今まで職人ギルドに登録しなかったのか』と、俺が登録をしていると奥から出てきた幹部職員に聞かれた。

その答えは・・・簡単だった。

「職人ギルド職員が過去に組織ぐるみで新人の職人が登録した商品の設計図やデータを全部金で売買していたからだ。信用なんてあるわけないだろ・・・信用が0なんじゃない、もうすでにマイナスなんだよ。俺はお前達職人ギルド全職員に対して『データや設計図を職員は必ず売る』という前提で考えてる。今回もユマキ商会に依頼されてイヤイヤ職人ギルドに職人として登録しに来ただけだし、すでに見本となる馬車があるから今から設計図を売ることはできないと言う前提での早乙女式馬車の登録なんだよ」

と、怒りをにじませるような低いドスの利いた声で吐き捨てるように答える。


俺の中でどうしても職人ギルドに対する信用がマイナスになってるのだ。

俺の貰った知識や経験の中で職人ギルドに登録した商品を職人ギルドの職員が設計図を横流しをして他の人間の商品として登録されていることが”山ほど”あったからだ。

代表的な例が『トイレ』だったりする。


「それはすでに過去の話でありまして・・・」

「過去ねぇ・・・過去って何年前まで横流しが行われていたんだ?」

「ここ10年はありません」

「職人ギルドが設立されたのは何年前なんだ?」

「・・・約1000年ほど前になります」

「じゃあ、990年間は金で売っていたわけだ。10年間”も”真面目にやったんだから信用しろって? それこそふざけるなだな。990年間にやらかした過去の負の遺産は清算される事なく10年で消えるものなのか? どうやって990年間のマイナスを埋めたのか教えてくれ」

「私に言われましても・・・」

「そうやって自分は知らない過去の事ですって今の職員に言われて過去から職人ギルドを怨んでる全ての職人達は納得しているのか?」

「・・・」

「では尋ねるが800年ほど前に転生者によってもたらされた『魔力による水の浄化式水洗トイレ』この発明は発明者じゃない商会に設計図を横流しされて発明使用料は横流しの商会に800年以上もの間支払われてきた問題を解決したのは誰だ?」

「それは私たちが!」

「すぐばれるようなウソをつくなよ。それは8年前にこの国の最高評議会の証人喚問で横流し問題を真偽官が独自に集めてきたデータを使って徹底的に追求したことで、全ての問題が発覚して巨額の賠償金が命じられた判決が出たからだろうが。しかし問題となっていた商会は賠償金の全てをこれから何百年もかけて転生者の遺族に支払って清算作業をしている最中だけど、お前ら職人ギルドは何かしたか? 遺族にすら謝罪すらしてないよな? 横流しした当人の遺族を訴えてトカゲの尻尾のように切り捨てただけじゃん」


実はこの話はおやっさんに聞いたローグ真偽官の武勇伝だったりする。

ローグ真偽官がこの国最高の『正義の真偽官』だと全世界に知らしめたのは・・・まだ30代半ばで正義の鉄槌を8年前の最高評議会での証人喚問でブチかましたのだ。

おやっさんも職人ギルドに所属しながらギルドを一切信用してない側の人で、ローグ真偽官とは旧知の仲だから色々な証拠を協力して集めてたから知ってる事実だ。


「・・・」

「な? 今度はダンマリだろ。冒険者ギルドは過去に起こしていた不祥事に血を流す革命を行ったからまだ信用は0まで戻せた。それからもギルドマスターの青木勘十郎の指導で自らの組織の膿を出し続けて浄化しようと苦労し続けている。でも・・・職人ギルドは負の遺産を清算するつもりもない、過去にやらかした職員も国に逮捕された職員のみ処分してそれ以外は処分するつもりもないのに信用してくださいだって? 冗談でも笑えない」

「では私たちはどうすれば信用に値する組織に生まれ変れるのでしょうか?」

「それを俺に聞く必要はあるのか? 俺はその質問の答えはもう言ってるだろうが!」

流石に興奮して大きな声になって叫んでしまった俺をジュンローが抱き付いて抑えてくる。


「早乙女さん、無理に登録をさせてしまいまして申し訳ございません」

「ジュンローさん、流石にこれは我慢できない。馬鹿すぎるぞコイツは。これで幹部かよ。俺の話をまったく聞いていない証拠だろうが!」

幹部職員が立ち上がってから、俺の目の前に土下座をして頭を下げてから俺に教えを聞く。

「申し訳ありません。自分にはわかりませんので是非教えてください」

「はぁ~、俺が言った事は『過去の負の遺産』と『全ての職人は納得してるのか?』だ。自浄作用がない組織に信用なんて出来るかよ」

「あっ! わかりました。職人ギルドで問題になってギルドを脱退した職人の方たちのところを真偽官と共にこれから全部回ってもう1度話を伺ってきます」

「まぁ、そういうことだ。そこで隠れて耳を澄ましているギルドマスターさん。汚職にまみれたイスの座り心地はどうなんだ?」

「早乙女さん、どういうことですか?」

俺の話の中で急に具体的な人物が登場したことで、ジュンローの顔が真剣な表情に変化して真剣な声で質問してきた。俺はこの職人ギルドに入った瞬間にギルドマスターの脳内をコピーした知識を語りだす。


「簡単なことですよ。そこにいる25%ドワーフクォーターで名前は『アクトハイム・バンス』職業はシーパラ連合国職人ギルド本部ギルドマスターがユマキ商会で過去に自殺した3人の職人が絡む事件に関係しているんですよ」

「なんですって! それは一昨年の話ですよ?」

「ユマキ商会の職人が知りすぎたから、脅迫してきたから自殺に見せかけての殺しなんですよね。バンスさんは付きまとう黒い関係が・・・おっと」


俺が飛んできた5本のナイフを次々とパパっとキャッチしてテーブルに並べた。

「これじゃあ、俺には当たらない。よくもその程度の腕でよく俺に挑みかかってくる気になったな? 俺ってこう見えてもBランクの冒険者なんだぜ? まぁチャレンジ精神だけは買ってやるよ。さすが500年以上も生きてるだけあるな、褒めてやるよジジィ」

「ふん、どこでその秘密を知ったのかわからんが秘密を知ったからにはここにいる全員に死んでもらわないとな。出でよ我がゴーレム『クラッシャーハウンド』よ」

爆発音が響き全員が奥の扉を見た瞬間に俺は20m以上の距離を一っ飛びで詰めて、勢いよく飛び出てきた犬型ゴーレムの頭に手刀を上から振り下ろして完全に破壊し動かないようにした。

後に続いて出てきたギルドマスターの親衛隊10人が俺に次々と飛び掛ってくるが、ヒラリヒラリと全身を竹のようにしならせて、親衛隊の攻撃をかわしつつ俺の左右のジャブが顎先にヒットして全員が土下座するように崩れ落ちる。

パニックになったバンスは人質をとろうと近くの女性秘書につかみかかろうとしたが、女性秘書は俺の横にまで転送魔法で引き寄せられそのまま逃げていった。

残っている職員達は走って盾を持って構える警備員の後ろに隠れる中・・・俺はニヤリと不敵に笑ってしまう。


・・・イカンな。

緊迫感漂う戦闘シーンに少し楽しくなってきているな俺。

最高評議会の元枢機卿が暴れた時も魔法を掻き消した後に、イワノスの見事なボディーブローを見て少し興奮していたのかも知れん。

それと今までの最強評議会の証人喚問でストレスが溜まっていたのかも。

緊迫感で沸騰しそうなほど血が湧きあがってきて、戦いの楽しさで踊るような感覚が俺の中で走り回る。


バンスはアイテムボックスから杖を左右で2本取り出して異なる魔法を連発した。

『エアーカッター10連撃』

『雷撃10連撃』

俺もアイテムボックスからアマテラスから貰った白扇子を取り出して右手で扇子をパっと広げ、そのまま指先だけで上手にクルリと1回転させた瞬間に全ての風と雷の魔法が吸収される。

流石に500年以上生きてるだけあって面白い攻撃をしてくるな。

楽しくなってきたので次を催促する。


「それで? もう終わりなの? そろそろ死んじゃう?」

「風神と雷神の扇子で神器だと! くそがぁ、これでも喰らえ!」

バンスはヤケクソになって四方八方に空弾と雷弾を放つが、俺が扇子を払うように軽く振った一薙ぎで全ての魔法が魔力に変換されて扇子に吸収されていく。

「うーん。最初の魔法攻撃は100点満点で45点だけど今度の攻撃は5点かな。工夫が足りない・・・はっ!」

俺が左手の手のひらに叩きつけるようにして扇子を閉じた時に気合声を発した瞬間にバンスの持っている2本の杖の先にある魔結晶に蓄えられていた魔力が全て扇子に吸収されてしまった。

「なっ!」

「これで杖に蓄えていた魔力は消滅しちゃって魔法が使えなくなっちゃいましたけど・・・さぁ、どうする? 捕まって拷問されちゃう? お前の犯罪は多すぎて最高評議会に怒られるかも知れんな」

「クソガキャ!」

次々と短槍をアイテムボックスから取り出して投げてくるが簡単にキャッチして自分のアイテムボックスに片付けてしまう。

ついでに短槍の合間にファイヤージャベリンや氷槍も混ぜてくるのでちょっと面白い。

無論のことながら魔法は俺の手で払うだけで消滅するだけだ。

「工夫の跡は見られるけど・・・発想がありきたりだな、11点ぐらいかな」


ここは中央行政区内で国軍の中央本部も存在し有名企業や親衛隊ギルドなどの本部も存在する区域なのだ。警備員や軍人がそこかしこに歩き回ってる区域で行われてる戦いに次々と応援の軍属の人間が集まってくる中・・・職人ギルドマスターの狂ったとしか思えない現状に誰もが見てるだけになってる。

対戦相手の俺はもはや満面の笑みを浮かべて満足そうな顔をしてるのだから止めに入ることも話しかける事すら出来ないでいる。

俺は次々集まるギャラリーの軍人達が作る盾の壁の中に職人ギルドの職員達やユマキ商会の人達が隠れているのを見て安心してバンスを煽り続けてる。


「ほらほら、長引くと逃げられなくなるよ。早くとっておきの切り札を出そうぜ!」

「こうなったら!」

アイテムボックスから魔結晶を取り出して床に叩きつけて破壊しながら、魔結晶の中に貯めていた魔力を一度に使って魔法を唱える。

『狂乱乱舞』

お! 闇魔法で周囲にいる全員をバーサーカー状態にさせる魔法だった。

だけど甘すぎる。

俺には効かないし反対の光魔法を唱えて一瞬で沈静化する。

『清き心の聖光』

俺を中心にホントに一瞬だけ周囲に光の洪水が包みこんだ。それだけで終了。


「な! そんなバカな!!」

「これで終わりなのかな? これだと31点だな。全部で平均23点ぐらいかな。レベル低過ぎ」

「・・・なんで、何で今頃になってお前みたいな人間が現れるんだ!」

「俺が知るかよ。さぁ、どうするんだ。全ての罪を背負って自殺するって言うなら見ててやるぞ」

アイテムボックスから大剣を取り出して切りかかってくるが魔法ほどの精彩はない。

何回かかわすと息が切れたバンスが倒れこんだ。

今までの魔法攻撃で全てのMPを使い切ったのだ精神力だけでは大剣の攻撃なんて無理。


その時になってやっと俺の狙っていた本命が現れた。


ギルドマスター室に今まで隠れていた秘書2人から真っ黒の吹き矢から針が2本俺とバンスに向かって飛んできた。

2本の吹き矢を俺がワザと当たって受け止めてからアイテムボックスに仕舞うと瞬時に転移して秘書2人の顎先をかすめる左右のジャブで意識を刈り取る。

また瞬時に元に戻って倒れてるバンスの首筋に手刀を叩き込んで気絶させた。

バンスの手首に装備していた腕輪を解除して取り外す。

俺が話していた幹部職員とは違う幹部職員2人が、俺が腕輪を外したのを見て逃げ出そうとしたところを走って捕まえ、コイツらにも首筋に手刀を入れて失神させる。


『おおおお!』

最後の仕上げに初めて発した俺の気合の入った大声と爆発的に高まる膨大な魔力で俺の全身から光の奔流が周囲を走リ回って腰のベルトに差してあった扇子に集まって音もなく光が爆散する。


戦闘が終わってジュンローが駆け寄ってきた。

「早乙女さんどういうことなんですか。秘書の人と幹部職員はいったい・・・」

「ジュンローさん、急ぐぞ、時間がない。ギルドマスターのバンスは隷属の腕輪をつけさせられた被害者だ! 黒幕は秘書と幹部を2名ずつ、後は親衛隊10名を送り込んできた『昇竜商会』だ。最高評議会に戻って国軍を動かして全ての昇竜商会の関係者を捕縛してもらうぞ。俺のショック魔法でシーパラにいる昇竜商会の関係者全員を失神させて眠らせた。後12時間しか持たないんだからな」

俺の剣幕でジュンローと周囲の人間が黙って固まってしまった。

昇竜商会はシーズではないがこのシーパラ連合国の建国から携わる古参で職人ギルドの暗部に関わると言われてる疑惑の中心にある商会だ。


「早乙女さん、最高評議会を動かすのに足りるほどの完璧な証拠はあるのですか?」

「いま確保した『ギルマス』『秘書2名』『幹部2名』『親衛隊10名』に隷属の首輪を装着させ全ての真実を語らせるか、教会の司祭と真偽官を伴って尋問すればいい。バンスを影から操って私服を肥やしていたヤツラってのが『昇竜商会』だとはっきりわかる」

俺の声で覚醒したジュンローが職人ギルドの職員達に次々と命令を出す。

ユマキ商会の職人には商業ギルドで早乙女式馬車をユマキ商会名義で登録してくるように指示。

俺も何か手伝えることはないかと周囲に集まってくる警備員や国軍の関係者に護送車を手配させて最高評議会に犯人たちを運ぶように指示をする。何人かは最高評議会で受け入れ態勢を整えさせるために先行させた。


それで国軍関係者に走らせて昇竜商会本部ビルを取り囲むように言っておく。

俺の戦いを見ていた人間で国軍の大隊長がいたので彼がジュンローに確認を取り、隊長の受け持っている大隊が今は訓練の途中の休憩中で装備も万全の体制なので今から動かすと言って走っていった。

ジュンローが『もしも間違っていた時は全ての責任をユマキ商会で受け持つ』と言ったのが決め手だったようだな。

1000人を超える国軍が急遽動き出す状態になったシーパラ中央行政区内は少しパニックになりそうになってるが、職人ギルドの職員達や警備隊の人間が走り回ってパニックにならないように、正しい情報を伝わるように話をして回ってる。


俺とジュンローたちも大混乱する最中、職人ギルドに入ってきた囚人護送車の御者席に乗り込んで最高評議会に戻っていく。


アマテラスにまた貸しが出来たけど、これは俺が自分でやりたくてやった事だから貸しといっても請求はしない。

俺の中にある職人ギルドの暗部に対する恨みが膨れ上がってしまって、最初にギルドマスターのバンスの脳内をコピーしたのが始まりだ。

『助けてくれ! 開放してくれ!』

自殺すら許されない彼の魂の叫びが俺に届いて、俺の中にある迫害されて過ごしてきた感情の記憶と経験が爆発してしまったのだ。

昇竜商会の本部にいる関係者1500人以上の人間にショックをかけたが俺の規格外スペックはなんともないってのが怖いな。

扇子に集めた魔力も利用したのでそれを言い訳にしよう。

神器の集めた魔力を使っておこした奇跡の技だと言えば納得できなくても反論は出来ない。


時間はすでに夕方5時をまわっている。

念輪で嫁3人にパーティー回線を繋いで、今日も遅くなりそうだと伝えておく。

家族で最近話が出来ないな。

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