表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/214

もふもふ天国シーパラ店の購入。スキル魔法で一気に作り上げるっす。

御祓い2件を終わらせてから俺が良いなと思った4つ目の物件に商業ギルドのゴーレム馬車で連れて行ってもらう。ゴーレム馬車の操縦は商業ギルドシーパラ本部不動産部門の責任者のマリス・シュガート。

俺はあくまでお客さんなので座ってるだけでいい。


こんかいの御祓い2件は始めは面倒極まりないと思っていたが蓋を開けてみると魔結晶が大量に手に入るし、希少金属も大量に手に入ったので最高だった。

気分が良くなりすぎて余計なことまで口走ってしまう。

「御祓いがここまで美味しいとは思ってもみなかったな」

「良かったですか? できればまだ御祓いの必要な物件がいくつかあるのですが・・・」

「それは『要相談』ってことにしましょう。俺がその時に欲しいと思うものを用意してくれるのであれば、相談して御祓いしてもいいですよ」

「わかりました。ちなみに今欲しいものはありますか?」

「今欲しいのはないね。欲しいものがあったらマリスさんに相談しに行くって事で」

「わかりました」

・・・危なかったな。何回も依頼が来ても困るし、俺は俺で好きなことをしたいからな。御祓いをするためにこの世界に来たわけじゃない。

俺の今したいことは『この世界の蒸気機関車に乗って旅がしたい』と『海でも川でも池でもいいから釣りがしたい』ぐらいだな。

・・・言わないけど。


今から視察する物件に到着した。

店舗の敷地に掛けられている封印結界をマリスが解除してからゴーレム馬車を敷地内のゴーレム馬車駐車場に乗り入れて停車させる。

住宅街とは少し離れているが近くには工房が数多くあるので出勤前と退社後の職人さん達が狙いになるだろう。それに南の食料品市場がそこまで遠くなくて、シーパラ飲食店激戦地区の少しだけ離れた場所にあるので・・・言い方は悪いがおこぼれ位はありそうだな。

食事は提供しないので違う問題が出てきそうだけどな。


食事で思いついたのだけどここの店は駐車場がかなり余裕があるので、屋台で軽食の販売ならいけそうだな。場所がヨークルと同じで工房の多い場所なので食事の時間が取れない人達用に『おにぎり』を駐車場の屋台で販売させれば一大ブームを起こせそうなほど流行りそうな気がする。

フォレストグリーン商会にも話をつければ『梅干のおにぎり』や『シソ混ぜご飯のおにぎり』もできそうだな。

1度ゾリオンとグレゴリオに話をしに行ったほうがいいのかな?

ただ・・・自分で屋台を経営するのは面倒なので誰かにやってほしいだけだったりする。


ゴーレム馬車駐車場は10台駐車可能で、早乙女商会の専用駐車スペースまであるのはありがたい。

10台停車してもまだ余裕があるところがいい。

建物の中にも階段はあるが外階段と2階にも玄関がもう一つあって外から店舗の中に入ることなく出入りしやすいのがいいな。

外から見た感じ少し建物が傾いてきてるのは基礎工事が必要っていった意味がそのままだろう。中に入る気が失せるっていうよりもちょっと怖いけど、中に実際に入ってみて必要な素材を計算してみないことには新しく作り変えることは出来ない。


まずは1階の店舗の部分の内部を見てみる。図面じゃ中の雰囲気まではわからないからな。

ここはヨークルのもふ天よりも広くかなりのスペースがあるんだけど、玄関はスペースを少し広げる必要がある。下駄箱と出入り口のレジ&ゲートをつけると・・・ほんの少し狭くなりそう。

だけど、キッチンはこんなに必要ないので半分以下に削れば客の入る部分は削らなくてもいけそうだな。レイアウトが少しだけ変わることになる。

キッチンを削って広げた部分でトイレの個室を4つほど増やせそうだ。

キッチンカウンターも必要ないから邪魔なのでついでに削ろう。

部屋の奥に上にあがる階段があって階段の下は倉庫になってるが全く必要ない・・・予備のトイレにでも・・・うーーん、もしもの時用のシャワールームにでもするかな。

2階にあがって事務所&応接室&従業員用の休憩スペースになってる。

床が明らかに傾いてきてるのでここに長時間いると不快感が凄いな。

早乙女商会の場合は従業員に休憩は必要ないのでサブの応接室・・・保留だな。他に使い道が出てくるかもしれん。

3階はオーナーの夫婦2人用の住居スペースになってるが・・・狭いな。寝室・リビング・キッチン・ダイニングとベランダしかない。1LDKって所だろう。寝室とリビングだけはそこそこの広さでベランダが半分近いスペースをとってる。ベランダといってもガラス窓で覆われていてこの時間はメチャクチャ暑い。


隣に立っているマリスに聞いたらこのベランダを使ってハウス栽培の野菜を作っていたそうだ。裏庭でも手作りの野菜を作れるようにスペースがとってるのがレストランの名残になってるな。

建物の外に出るのに外階段を使って降りていく。金属製で少しきしんで音を出してるが100年を越す築年数を考えるとこれでも良く持ってるほうだろう。

これだけ俺が思い描いていた理想の物件は早々ないだろうし、シーパラ店はここに決定してこれから購入の手続きをする。

ゴーレム馬車に戻って中で契約書を作成してもらい確認してからサイン。

マリスの取り出した魔水晶に早乙女商会のカードから1億Gを払って購入完了。

更に早乙女商会で飲食店をシーパラで出店する為の届出を作成する。

これがあれば駐車場に屋台を作ってモノを売ることも可能なんだそうだ。簡単すぎる手続きだな。

会計用の魔水晶も4つ貰っておいた。

マリスと握手してマリスはゴーレム馬車に乗って帰っていった。


これでもふもふ天国のシーパラ店の行政的な部分の下準備は完了した・・・後は俺が店舗の内装をを作れば明日にでも開店可能になった。


工事を始める前に、まずは敷地全域に封印結界を幻影魔法を施す。

今から同じ形に作り直すけど、中身は素材から全部変更になる。

ヨークルの店舗の建物も100年以上の歴史ある建物だったが、こっちの建物はヨークルのレストランみたいに作りこんでいないので見た目以上に基礎からガタガタになってる。

地盤も強化した方がいいだろうな。

早乙女邸の隣の倉庫のように外からの見た目だけ同じで中身は総とっかえになるので、誰にも見られないように幻影の魔法で誤魔化しておいた。

まずは崩す前に探査魔法で今現在の正確な建物の図面を脳内に入力。

色なども寸分も狂いがないように全て入力しておく。

それが終わると今度は建て替えの設計図を作る。3階部分は居住スペースは必要ないな転送部屋があればいい。

転送部屋は厳重に封印結界が施されて家族と俺の作ったゴーレム以外は入れないようにしておかないと。


青写真が出来上がったので建て替えに必要な素材の計算に入る。持ってる素材とここの建物の素材を精製しなおしたもので充分に足りる。カーテンなど布の部分は龍布に交換する。

それで必要な素材を正確に測って地面の上に並べる。

解体スキル魔法で今の建物の基礎部分から全部解体して、崩した素材も精製し直してこれも並べられている素材の横に並べていく。

まずは土台となる全ての部分に土魔法で強固な地盤に作り変える。これで300年ぐらいは楽にもつだろうってぐらいに頑丈に作っておいた。

周辺の土地を見ると、ここシーパラは頑丈な地盤の上にあるのに・・・所々に地盤が弱い場所があるみたいだな。元々が大草原にたくさんある池とかで埋め立てた土地なのかもしれない。


『邸宅建築』のスキル魔法を発動させて完成。


見た目は寸分の狂いもなく全く同じ外観だけど外から見た感じが一緒なだけで中身は完全に生まれ変わった。土壌や基礎から完全に作り直した新築になってる。


玄関から店舗の中に入って靴を脱いで下駄箱に入れて3点セット魔法が使われているのか確認をする。

歩き回ってみるが1階部分はレイアウトと部屋の形が微妙に違うだけでもふもふ天国ヨークル店に非常に似てるな。この店舗の形が今後のもふもふ天国の店舗基本形になりそうだ。

店舗の客室部分のフカフカじゅうたんで寝転んでみるが気持ちが良いなこれ。

これならお客さんも寛げるだろう。クッションも大量に作って補充してあるので取り出して寝転んでみるが快適だ。テーブルももふもふ天国と同じ大きさのモノを30個ほど作ってストックに補充した。

トイレも全部出入りしてみるが出入りはしやすいな。同時に開け閉めしてドア同士が当たる部分には森林モンキーの尻尾でクッションを作って大きな音がならないように工夫した。

混んでいる時はどうなるのか・・・こればかりは実際に混んでる時にお客が感じる事だから、俺にはわからないが個室が6個と数はあるので何とかなるだろう。


アイテムボックスからまずは事務所専属のクマ型メイドゴーレムの『シロ』を取り出す。

グリーンウルフ型メイドゴーレムの『グリーン』『ブルー』『シルバー』の3体を取り出して、愛玩ゴーレムの『おーとま』『クマ』『コー』『ウルフ』『パンダ』『レッサーパンダ』『コアラ』『タヌキ』『キツネ』『ウサギ』『柴犬』『三毛猫』『リス』『オスライオン』『ペルシャネコ』の15体も取り出しておく。

ここで気付いたんだけど拠点防御用のユーロンドを作っていないな。

上空監視用ゴーレムの忍も作っておく必要があるだろう。


靴を下駄箱から取り出してキッチン裏から裏庭に移動して5体のユーロンド11号~15号までを作る。

もはやゴーレム製造は慣れてきてるのでサクサク進んですぐ出来る。

武装は1~5号の繰り返しになる。肩の階級章の部分に号数を書いてわかりやすくした。

11号はシールダー。12号は双鞭。13号は棍。14号がトンファー。15号が万力鎖。

忍は3体作るが・・・これは登録しない。置物のように屋上で見張ってるのが忍の仕事だし。

今は敷地の防衛は忍とメイドゴーレム達に任せてユーロンドを登録するために商業ギルドと冒険者ギルドの両方に登録しに行かないとな。

作ったテーブルとクッション・会計用の魔水晶などをメイドゴーレム達にアイテムボックスからアイテムボックスへの移動で渡し、小麦粉やコーヒーなどの素材も大量に送ったのでついでに開店準備としてクッキーなどを作って置くように命令しておく。


商業ギルドはマリスがいるからいいとしても、冒険者ギルドはシーパラ本部の方は少し信用できないと言うか・・・知り合いが全くいないので少し疑心暗鬼になってる。

ゾリオン村の冒険者ギルドは対応が良かったのに、ヨークルの冒険者ギルドはギルドマスターから対応がアレだったしな。

俺のゴーレムは特殊なだからなぁ・・・まぁいいか。ユーロンド11号~15号の5体をアイテムボックスに入れて店を出る。


店舗から歩いて商業ギルドに向かいながら今度は午後のシーパラの町を歩く。

人の通りはそこそこだろう。何しろ今は中途半端な午後3時半。

仕事が終わるには早いし主婦が買い物から帰ってくるぐらいの時間なんだがそこそこの人通りがある。

営業の人間が疲れて一服してる時間かな。

場所が工房の多い場所だけに営業や業者の人間が移動しているのが目立ってるぐらいだな。

ヨークルは『盾職の本場』という都市の関係で防具職人の方が多く防具の工房が数多くあったが、首都シーパラは工房の数は多いがこれという特色はなく様々な職人が様々な工房で働き特色が消えている。


先に商業ギルドで登録しておきたかったので、シーパラの中心にある商業ギルドに向かって歩いていく。

中に入ってまた会議室を借りてマリスを呼び出してユーロンド5体を登録させてもらう。

「さっき別れたばかりですぐに呼び出したりして済まない」

「私はすでに早乙女さんから信頼を受けられたみたいなので、専属窓口になると申請を提出しておきますか?」

専属窓口契約について簡単に説明を受けた。年間契約で俺が金を払うと言うことはないが、マリスにボーナスがつくだけらしい。契約しておけば専属カードがもらえるんだと。

俺が儲けて商人ギルドが儲かればボーナスの金額が跳ね上がるということだ。

「ああ、俺は儲かるかどうか判らないんだけど。マリスの専属はぜひお願いします」


専属窓口としての契約書を作り専属カードを貰う。今後はこのカードを窓口に見せるだけでマリスを呼び出してもらえるようになった。

「これで安心したよ。ところでマリスは甘いものは好き?」

「私は甘いものは少し苦手ですね。柑橘系の甘酸っぱいのは大好きなんですけど」

「じゃあ・・・これをあげる。専属契約もしたし今後もよろしくってことで」

アイテムボックスからオレンジを取り出してシャーベットを作る。果肉ゴロゴロで甘酸っぱくてマーマレードのように少し皮を入れてアクセントの苦味も入れた。

美味しいと嬉しそうな顔で喜んでいたので魔道冷蔵庫があれば簡単に作れるレシピをあげると更に嬉しそうに笑ってくれた。


「マリスにちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「どうかしたんですか?」

「今から冒険者ギルドに行ってゴーレムを冒険者ギルドにも登録しておこうかと思ってるんだけど・・・俺のゴーレムって特殊だから・・・このシーパラに住んでるマリスが、口が堅くて信頼できると紹介できる人ってのは冒険者ギルドにいないかな?」

「冒険者ギルドの本部の窓口対応と秘密保持は商業ギルドよりもしっかりしてるよ。いつも上司の目が光ってるって噂があるぐらいだよ。対応で相手から苦情が出るとすぐに真偽を確かめられて交替させられるって噂もあるね。両方ともウソなんだけど」

「それなら安心かな。いきなり変なことを聞いてごめんね。いい情報をありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」

「ついでにシーパラの冒険者ギルド本部ってどこにあるのかな?」


マリスがシーパラの案内図をアイテムボックスの中から取り出して渡してくれた。

商業ギルドで配っているのもらしい。ありがたく受け取る。

それから雑談をしてからまたマリスと握手をして別れる。

冒険者ギルドは商業ギルドからそこまで離れていなかった。地図を見てビックリしたがさっき商業ギルドに歩いてきたときに通った道沿いにある。

冒険者ギルド本部とかの看板がまったくなかったので凄く分かりにくいな。前を通ったのに気付かなかったよ。


冒険者ギルドの入り口を通る時に警備員から魔水晶を使用したチェックを受けるのだけど、俺がBランクの冒険者だとわかると警備員が背筋を伸ばして姿勢を正していた。

別にだらけていたわけじゃないから姿勢を改める必要はないのに。


・・・世間一般的の冒険者の認識はBランクになると一流の冒険者と言われている。

Aランクだと『超一流』になるがBランク以上はギルドや国家への貢献度を多く溜めないとなれないといわれている。俺自身ランクにこだわってるなんてことがないので早乙女遊撃隊が全員Bランクになった今は元々何も考えてなかったからもっと上にあがろうなんて野心もない。

Dランクで一人前と言われてCランクだと腕利きと言われてる。アイリとミーがCランクにいたので一緒のランクになろうとしただけ。

後でチーム早乙女遊撃隊に合流したクラリーナもCランクにまであげることしか考えてなかったしな。


窓口で冒険者カードを見せて『小会議室を借りてゴーレムの登録をしたい』と申し出ると小会議室に通されてすぐに登録させてもらう。

ここは窓口の数も少なくて依頼表も一切貼り出されていない。

光で明るいんだけど、どこか冷たくて役所のような雰囲気をかもし出してる。


ゴーレムの登録をしてくれた人に聞いたら・・・ここにくる冒険者は揉め事が起こったときに呼び出されたり、冒険者ギルドに相談事を持ち込む時、そして冒険者ギルドに依頼を出す商人とかしか基本的に人は来ない場所。

依頼などが貼り出される本来の冒険者ギルドっぽい場所はシーパラの北の駅近くにある出張所があって、普通の冒険者は呼び出されない限りここには来ないし、出張所にしか行かないんだと。

出張所は敷地面積もこの国の冒険者ギルドで1番広くて、様々な武器の訓練場や教官なども複数いて初心者用の学校もあり施設も整っているし、冒険者が探す依頼書がそもそもここにはなくて出張所にしか貼り出されていない。


俺はしばらく依頼を受けるつもりもないし、ゴーレムを登録するには誰もいなくて静かな雰囲気のこちらの本部の方がありがたい。

ここなら脳筋バカみたいなヤツラに絡まれることもほとんどないだろうし。

ユーロンド達のネームプレートを貰ってそれぞれの首輪につけて完了した。

そろそろ帰ろうと席を立とうとしたときに会議室に来客がきた。

俺に伝言があるみたいなので・・・まずはゴーレムをアイテムボックスに片付けてから封印を解きドアを開けさせた。

明らかに冒険者ギルドの幹部っぽい人がやってきて挨拶をしてくるが・・・ダークエルフだった。


「早乙女様、初めまして。私の名前は『ペスカト・ビッタート』です。ペスカトと呼んでください」

「初めまして早乙女真一です。早乙女と呼んでください。・・・ビッタート卿の関係者ですか?」

「はい。見た目はほとんどお爺様と変わりませんが、これでも孫です」

「一目でわかるってぐらい似てますね。髭がないだけかも」

「それは良く言われますね。私は先祖がえりでダークエルフの血が濃く出てきてますが、本来はダークエルフのクォーターなんでダークエルフの血は25%だけで75%は人間なんです。でもおかげで魔法が生活魔法の少しだけですが使えますし、魔装術もお爺様直伝で使えるようになりました」


「それでペスカトさんはどういう用件でここに来たのですか?」

「・・・失礼しました。用件は冒険者ギルドシーパラ本部のギルドマスターの青木勘十郎が早乙女様にお詫びして話がしたいと聞いてるのですが、後日都合の良い日はありますでしょうか?」

「うーん、今からでも1時間以内なら可能ですよ」

「それはありがたいです。ではギルドマスター室に案内させていただきますでこちらにお越しください」

ペスカトに案内されてギルドマスター室に入る。

俺がこのイーデスハリスの世界に来て初めて対面する『SSランクの冒険者』になる。


ギルドマスター室の応接室に入っていくと青木が立って俺を出迎える。

身長は180cm弱ぐらいある。横幅もかなりあるゴツイ体をしてるな。威圧感は上手く抑えられていて魔力も隠蔽されているが、流石のSSクラスだ。実力者だというのが俺にはハッキリとわかる。

俺の佇まいを見て青木は一瞬目を細めるが瞳の光を消すためだろう。

青木も根っからの冒険者なのだ。闘争心というのは持っているだろうし、まだ枯れてしまうほど耄碌もしてないだろう。実力者にしか実力者の雰囲気は理解することは出来ない。

上手く隠蔽しても肌で感じてしまうのだ。


「ワザワザ呼び出しをして申し訳ない。どうしても以前の事をお詫びしたくて、ここに早乙女君が来たときは話がしたいと何人かの職員にお願いをしておいたのだ。ノラギス・サザールの件はこの冒険者ギルドを健全な組織にするためにはどうしても避けて通れなかった事とはいえ、君に面倒なことを押し付けてしまって申し訳ない」

俺の目の前で背の低い俺よりも頭を下げる青木とペスカトに頭を上げるように促す。

「もう気にしてないので大丈夫ですよ。2人とも頭を上げてください、青木さん達の謝罪は受け入れます。それにその後のあらましはラザニードさんに聞いてます。それと青木さんってギルドマスターをやめたがっていたって言うのは本当の話なんですか?」

「ふふふっ、間違いなく本当の事だよ。今回の件で上手くギルドマスターを引退することが出来たからその意味でもありがとうと御礼を言いたいな。まぁ立ち話でも何だし、そちらに座ってくれ」


俺は薦められた応接室のソファーに座るとペスカトにコーヒーか紅茶かのどちらかを問われたのでコーヒーをお願いする。

応接室をコーヒーの良い香りが充満してくる。貰ったコーヒーをすするがかなり美味しいので入れ方が上手なんだろうな。

「今日は短時間という話なので単刀直入に話すことにするが冒険者ギルドのノラギスが絡んだ不正で早乙女君に最高評議会での証人喚問への出席が求められている。もちろん証言をする側で。もう1つも参考証人としての出席で『枢機卿のエクストラヒール偽装疑惑』の話。これはすでに枢機卿は今朝にドルガープの街で確保されていて、告発者のグレゴリオ・シーズ・フォレストグリーンさんとゾリオン・シーズ・ガルディアさんと一緒に参加を要望されている」

「日程は決まっているのですか?」


「どちらも早乙女君の要望次第で日程が決まる形になる。早乙女君が日程を自由に決めてかまわないそうだ。グレゴリオも早乙女君に合わせるとすでに決まっている状況だ」

「そんなことでいいんですか?」

「それはもちろん最高評議会までもが早乙女君の要望に沿わせると、すでに会議で決定しているからな。君が参加しないことにはこれらの喚問は進まないから今は君を待ってるだけだ。日程的に要望があったら教えて欲しい」

「俺は明日以降なら今のところは予定はないですが、早めに終わらせたいですね」

「それでは明後日の朝9時にこの冒険者ギルドに来てもらえないか? 明後日の午前と午後に両方の証人喚問を振り分けしてもらって1日で終了するように予定を組んでもらうよ」

「わかりました。よろしくお願いします」


それからは雑談しているとコーヒーもなくなり時間になったので俺は御礼を言ってギルドを後にする。

夕陽でオレンジ色に染まりつつある街並みの中をそのまま歩いて購入した店舗に戻っていく。


1人乗りで街乗り専用のキックボードぐらいの大きさの簡単な移動手段が欲しいな。

街乗り専用だからゴーレム馬車の速度時速10km出ればいいから簡単だろう。

ホバーボードみたいに浮かせれば故障は少ないだろうし安全かな。

キックボードみたいに手で操縦すれば簡単だろう。ブレーキも作ることは出来る。

こういうときに魔力パワーボートとホバーボードを作った経験が生きてくるはずだ。

嫁たちの分も製作してみよう。


歩きながら考えてるとクラリーナから念輪が入る。

「しん様は今、どちらにいらっしゃいますか?」

「俺は今は購入した店舗間で歩いてるところだよ。もしかしてもうみんなはクラッシック・グリフォンズホテルに戻った?」

「はい。すでに部屋に帰ってきました。夕陽がとても綺麗です。しん様、店舗は購入されたんですか?」

「うん。購入してすでに建て替えも終わった。今は外観以外は完全に新築になったよ。今まで外に出かけていたのは店舗防衛用にユーロンドを5体作ったから登録してきたところ。店に帰ってから転移するからホテルのバスルームを空けといてね」

「わかりました。では待ってますね」


クラリーナからの念輪を切る寸前にるびのからの念輪が飛び込んできた。

俺の別の思考回路で同時にでも会話が出来るので便利だな。

「ねぇとうちゃん、待ちくたびれちゃったから、ご飯の前にお風呂に入っててもいいかな?」

「そうだなぁ、俺もホテルのベランダから夕陽が見たいからちょっと時間がかかるかもしれない。だからゆっくり入っててもいいよ」

「わかったー」


そうこうしてる間店舗に到着したのでユーロンド達をアイテムボックスから取り出して店舗の防衛任務に入らせた。

ここシーパラにはまだ面倒を起こすバカタレがたくさんいそうなのでユーロンド5体と忍3体の完全防御体制。更に遠見の魔法を完全にシャットアウトするために結界も厳重に追加で張っておく。

これで防御力は早乙女邸に匹敵する敷地になった。

後はゴーレム達に任せて俺は靴をアイテムボックスに入れてホテルのバスルームに転移魔法で飛んだ。


バスルームを出てホテルの部屋に戻ると夕陽がきれいに沈んでいってる時間帯で、西側のベランダはオレンジ色に染まっていた。

俺もベランダのイスに座ってシーパラ半島の丘に沈み行く夕陽をを眺める。

最上階の一番高い部屋だけあってここから見える景色は凄くきれいだ。絶景と言ってもいいな。

シーパラ半島の丘がオレンジ色から日が当たらなくなって色を失い黒く染まっていく様子は、なぜか少しだけ悲しい気持ちになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ