サトシの説得とユマキ家の話っす。
任侠ギルド本部から外に出た瞬間から『隠者』スキルを使って闘技場に向かって歩いていく。
マヅゲーラの街を歩いてるとヨークルや首都シーパラではなかった不思議な感覚をおぼえる。
深夜3時をまわってるのに街の賑わいは衰えることなく街灯のように明るく光っている。
流石は『夜の街マヅゲーラ』だな。
酔っ払いが道を奇声を上げながら徘徊して街娼が所々に立っている。
夕方に街を歩いた時にあれだけ道を賑わしていた売春婦達のほとんどは姿を消しているがまだ残って客を探している人達もいる。
看板の魔石は光を放ってカジノや賭博場などの店の名前を浮かび上がらせている。
ヨークルとはまったく違って深夜の暗闇と魔石の街灯の明かりが街を活性化してる。
どこもかしこも猥褻なのになぜか情緒をどこかに感じてしまうという不思議な街だ。
日本にも似たような街があるからこそ、俺にはこの街の猥雑な部分にどこか情緒を感じてるだけかもしれないけど・・・
闘技場に到着して任侠ギルドカードを警備員に見せて中に入っていく。
この闘技場は任侠ギルド所有の施設なのでギルドの人間しか自由には出入りすることは出来ない。
俺は治療室にはトーナメント中は行くことがなかったので場所を警備員に聞いて教えてもらおうとしたら案内用の地図を無言で渡された。
闘技場内に入ってから探査魔法で施設内を探りとって俺の脳内のMAPに闘技場の場内も入力された。
治療室には15人ほどがベッドに寝ている。
トーナメントの試合でまったくの無傷だった俺を除いて、怪我の軽い人はマナガルムとサトシだけ。
6人ほどは治療費を払って回復魔法で治療してもらって外に出ていってしまったので、既にここにはもういない。
今寝ている15人は治療費を払うことが出来ない10人と、ここにいる人間では治すことができない重傷者が4人とただ寝てるだけのサトシ。
10人の怪我人は治療費を払うために隷属の首輪を付けて、治療にかかった費用に応じて奴隷期間は変化するが借金奴隷にさせられる。
4人の重傷者はここで治療することが出来ないのでトーナメント出場の契約どおりに殺処分だ。
重傷患者4人の顔を見て俺が治療することにした。
先に隷属の首輪を付けさせてからメガヒール1人1回の計4回で治療完了。
治療費は1人3000万Gの足元を見たボッタクリ価格にしておいた。
この部屋にいた任侠ギルド職員に借金奴隷の契約書を作成させる。
衣食住は任侠ギルド持ちで年棒300万Gで10年の奴隷の借金返済契約。
4人とも俺と卯月が話をしてる時に笑っていたウンコマン(予定)だったので、殺処分より奴隷にした方が面白そうだったから治療しただけだったりする。
俺は話がしたかったので隣の空き部屋を準備してもらっている間に、サトシに気付けがわりに『ショック』『ヒール』の2つの魔法を同時に叩き込んだ。
サトシが目を覚ましたので別の部屋へ連れて行く。
別室で封印をかけて外に声が漏れないようにしておいてから話しかける。
「サトシ・シーズ・ユマキさんですね。俺は早乙女真一。早乙女と呼んでください。アマテラス様からの神託でサトシさんを勧誘にきたんでウソは意味ないですよ」
「早乙女さん、アマテラス様の御神託とは・・・勧誘とはどういうことなんでしょうか?」
「今から順を追って説明します」
今までの経緯を説明する。
サトシの弟に俺が作ったゴーレム馬車の事でいちゃもんをつけられたので決闘を使って5人の親衛隊も一緒にまとめて殺害したこと。
サトシの弟のユマキ家の正式次期当主を殺害してやると、目の前で大事な息子を殺された恨みでおかしくなったサトシの父親に切りつけられ『正当防衛』で父親を殺害したこと。
俺がユマキ商会の現在の代表と公式な跡継ぎを合法的に殺害したので、先代のサトシの祖父『マツオ・ユマキ』は自身の弟でユマキ商会の執事をしている『ジュンロー・ユマキ』と手を組んで、騒動の発端である本妻の心神喪失状態で心が弱っている隙を狙って、後を追って自殺したように見せかけて密かに殺害したこと。
マツオは病死だと知らされていたサトシの母親を毒殺した黒幕が本妻だとアマテラス様に聞いて、遺恨をなくすために本妻はただ追い出すだけでなく自殺に見せかけた殺害に至ったこと。
全ての障害を取り除いてからマツオはユマキ家当主をサトシに譲り渡すためにサトシを本気で探していること。
その全てをアマテラス様から御神託で聞き俺がサトシを救うために、このマヅゲーラの街に来たこと。
「とまぁ、俺が起こした騒動の尻拭いでサトシさんをユマキ商会に引き渡しにきたんだ。マツオとジュンローの依頼が冒険者ギルドを通してそろそろ俺に来るって前もってアマテラス様から御神託がきた」
「前もってとはどういうことなんでしょうか?」
「今回俺がアマテラス様から受けた御神託は2つ。卯月要市朗の抹殺とサトシさんの連れ戻し。俺がこのトーナメントに参加しないとサトシさんは2回戦で卯月に殺されていただろう」
「俺だって早乙女さんには遅れをとったが腕には覚えがある。そう簡単には殺されませんよ」
「両方共と直接戦った俺にはわかるけど、卯月にはサトシさんは絶対に勝てないよ。卯月はあれでもAクラスの冒険者で高レベルの『転生者』なんだ。サトシさんは逆立ちしたって敵わないし、どう抵抗したところで卯月が喜ぶだけで最終的には殺害されるだろう・・・卯月は『快楽殺人者』なんだ。途中でギブアップして逃げる事は絶対にさせない。卯月は自分の趣味を満足させるためだけに合法的に殺害して賞賛されるこのトーナメントの出場をしたんだ」
「転生者の快楽殺人者・・・確かにそれなら俺は生きてあの闘技場は出て来れなかったな・・・」
「理解が早くて助かるよ。それでサトシさんが受けた勘当は既にマツオとジュンローによって撤回されている。サトシさんが結婚するためにこのトーナメントに参加したってことは俺はアマテラス様に聞いたので既に知ってる。サトシさんの子供を身篭った女性と一緒にユマキ商会に戻るための障害は全て取り払われたから俺と一緒に戻ってくれないかな? サトシさんがユマキ商会に戻れば俺のアマテラス様に頼まれた作業は完了するんだ」
「・・・しかし、俺の愛した女は水商売の売春婦だからユマキ商会の当主の嫁には相応しくないと追い出される可能性が・・・たとえお爺様といえども無理だろう。俺はあの女とこれからの人生を過ごしていくと決心したんだ」
「追い出される心配は全く必要ないよ。ユマキ商会先代代表のマツオの継母で育ての親であり、マツオの弟のジュンローの母親は元売春婦だとアマテラス様に聞いてる。マツオもジュンローも元売春婦に育てられた人間なんだから少しの抵抗も偏見ももってないよ」
「・・・え? お爺様を育てたのが元売春婦の女性だったのですか?」
「ああ、アマテラス様がおっしゃっていたのだから間違いないよ。マツオもジュンローもむしろ『世話になった自分たちが恩返しする番だ!』ってぐらいにしか思わないだろうとのことだ。サトシさんが他に問題だと思うことってある?」
「俺の妻になることを了承してくれた『ミサキ・アンデント』の説得と、彼女の働く店の説得・・・いや、彼女を買い取るための資金が必要なぐらいです」
「それは早く行ったほうが良いな。今からミサキさんが働いている店に行こう。彼女を買い取る金が必要ならば、いくらでも俺が立て替えておくよ」
「俺には早乙女さんに金を返すアテがまったくないから、借金を返すことは出来ないのですが」
「サトシさんがユマキ家に戻ればすぐに戻るからそんな心配はいらないよ。さぁ、時間も時間だし早く済ませよう」
「わかった。済まない」
俺はこの部屋に掛けた封印魔法を解除して部屋の外に出て行くと任侠ギルドの職員が作成した1人3枚ずつのサイン入りの奴隷契約書を持ってきた。
契約書の中身を全て読んでから俺のサインを入れて4人の借金奴隷契約が完了する。
奴隷の事は職員に任せて4枚の契約書を貰ってアイテムボックスに入れてからサトシの案内で一緒にミサキの働く店に行く。
今度は気配を消して行く事が出来ないので腰に天乃村正を帯剣する。
店に行く途中で1人のオッサンが俺とサトシの前に立ちふさがった。
「良い所であったなクソガキ、任侠ギルドのトーナメントはお前が優勝したんだってな。クジ運が良くて命拾いしたな。俺がお前を殺してギルドのトップにさせてもらう。決闘だ!」
「決闘? 了解だ。サトシは決闘立会人を頼む。時間がもったいし面倒だからお前の後ろにいるお仲間の8人も一緒にかかってきてくれないかな? 9対1程度じゃあハンデにもならないけど、運が悪かったと思って諦めな」
「クソガキのクセに調子に乗りやがって! ゴパァ」
時間がもったいないので、決闘を宣言した叫んでるオッサンの腹にフルプレートアーマーの上から掌低を叩き込んだ。
卯月にも使った俺の新必殺技・・・名付けて『ウンコマン製造掌』
殺さないが社会的なプライドを抹殺する技だな。
9人のウンコマンを作るのに1分もかからなかった。
全員のアイテムボックスから全てのアイテムを奪い防具と武器も取り上げ身包みを剥いでいく。
ウンコまみれのアンダーパンツと治療費を払った後だからなんだろう、ほとんど持っていない所持金だけ残してやった。
防具は全部皮膚を傷つけることなく天乃村正で斬って剥ぎ取る。
この9人の中の6人は治療費を払ったトーナメント出場者で俺を笑ったウンコマン(予定)の人間だったので少しのためらいもない。
レベル差も判らないウンコマン9人も闘気を開放して少し殺気を叩きつけながら身包みを剥いでいく俺の姿に言葉も出ないようになった。
俺がカタナで防具を斬る腕を目の当たりにしたからだろう。
これだけでは済ませるつもりもなくウンコマン9人衆(9人臭?)を脅しておく。
「9人でかかってきてここまで手加減されても判らないバカなお前らには理解するのは時間がかかりそうだから言葉じゃなくて体に叩き込んでおくけど、お前らウンコマンと俺には絶望的なまでの差が広がっていることは少しは理解できたかな?」
腹を抱えて蹲りながらガクガクと首を上下させる9人。
「文句があるなら今度は任侠ギルドの本部で待ってるからな?」
1人ずつに確認しながら叩きつけるような殺気だけで失神させていって今回の決闘を終了させた。
碌なアイテムや装備品を持っていなかったがどこで拾ったのか不明だが質も良くて大きめの魔結晶を10個も所有していたのと、ウンコマン予定者だったから公衆の面前で辱めてやりたかったので、決闘を受けただけだったりする。
全員のアイテムボックスに自身が装備していた頭部の兜を天乃村正で真っ二つに切ったものだけを入れて残しておく。
兜には売却したり捨てたりできないように呪いを掛けておいた。
一生忘れることが出来ない俺からの『置き土産』だ。
俺が施した今回の呪いは強烈な呪いなので大金を払って教会で祈ってもアマテラスの神力では呪いを浄化することは出来ない。
浄化することが出来るのは俺とゴッデスのみだ。
周囲の観客とウンコマン9人衆をこのまま残して俺とサトシは移動をする。
サトシの恋人のミサキ・アンデントが働いている売春宿に到着して、彼女を説得し終わったのは深夜というよりももはや早朝の4時をまわっていた。
店に入って挨拶をして店長に話を通してから、今日の仕事を終えて仮眠していたミサキを呼び出してもらう。
ミサキを鑑識の人物鑑定を使って深層心理まで鑑定したが不審な点はなかったので、安心して説得を開始する。
サトシがシーズの人間だと聞いてビックリしてユマキ家の嫁入りを頑なに拒んでいたが、先代のマツオとジュンローの生い立ちとサトシの家庭環境を聞いて態度を軟化させて、最後はやはりサトシに惚れた弱みもあったし子供も生みたかったのだろう・・・OKしてくれた。
ミサキは25歳のサトシよりも5歳年上の30歳。
子供を安全に生めることに対してやはり心の奥底で『安心』を求めていたのも影響しているかも。
危険の多い冒険者や任侠ギルドの人間ではなく今後はユマキ家の商人になるというサトシに少しホッとした笑顔を見せた。
後は店とのミサキを払い下げる為の交渉なんだけど・・・今、俺の隣に座っている店長は店のオーナーでもあったので交渉はスムーズだった。
ミサキは店に借金が既に残っていない状態だったのでミサキを買い取る必要はなく、逆に結婚の祝い金として長年この店に貢献してくれたので500万Gほどの退職金を店からミサキに払うことになった。
話がここにきてミサキからサトシにお願いがあるとの事で詳しく聞いてみる。
「サトシに1つお願いがあるんだけど・・・昨日から店に下働きにきている6歳の男の子を私の使用人として引き取りたいんだけど・・・」
「ミサキ、どういうことなんだ?」
清掃人ギルドから派遣されているベッドメーキングや掃除係をしている男の子が数日前に入った。
6歳の男の子で名前を『マークタイム』というのだが家名すら判らない。
とある冒険者に別の場所で拾われてからこのマヅゲーラの街に流れ着いて育てられていたのだが半年ほど前に姿を消して戻ってこない。宿屋の主人も伝手を使って探したが発見できないので・・・冒険者のお荷物になって人の良さそうな宿屋に捨てられたのだろうということだった。
冒険者は宿賃だけを半年分を支払っていたが10日度前に期限が切れてこの年でも安全に働くことが出来る清掃人ギルドに売られてしまっていた。
健気に一生懸命働くマークタイムは店長やお店のお姉さん達に働き始めた初日に気に入られて、この店との専属契約を結んで昨日からこの店の宿直室で暮らしている。
彼を一緒に夜の世界から救ってあげたいというミサキの願い。
ミサキの思いを無視する訳にはいかないが簡単にシーズの家に身元不明者を連れては戻れない。
葛藤するサトシに俺が助け舟を出す。
俺が人物鑑定してやるから男の子を一目みたいと言ってマークタイムをこの事務所に連れてきてもらう。
眠い目を擦りながら連れてこられた男の子を見て、さらにマークタイムの浮かび上がった情報を見て俺が驚愕の声を上げた。
「おぉー! マジかよ」
「早乙女さん、いきなり大きな声を出してどうしたのですか?」
「これはこれは・・・サトシ、ちょっと説明は待っててくれ。店長さん、質問があるんだけど7年前にこの街を襲った騒動の『国軍の税金の取立て&違法行為の粛清』そしてその1年後、今から6年前に起こった『逆恨みと血の報復』って事件の事を知ってるか?」
「え? 早乙女さん、若いのによくそんなことを知ってますね。私は20年前から既にこの店のオーナーでしたので全部知ってます』
店長が俺も知らない情報を詳しく話してくれた。
7年前にこのマヅゲーラの街ぐるみの脱税と全てを把握することすら出来ないほど多くの違法行為に、業を煮やしたシーパラ連合国最高評議会と評議会が国軍5000名と国の軍船を大量に投入して電撃的に突然マヅゲーラの南北の街を包囲&封鎖。
街の代表者5名と任侠ギルドの代表と最高評議会のメンバーが10日間も話し合って決めた年間15%の税を任侠ギルドが代わりに収める事と目に余る違法行為の粛清。
粛清されたのは誘拐してきた奴隷を使っての殺人行為など、命を使った行き過ぎたサービスを行っていた店と、その情報を使って個人的に脅迫行為をしていた任侠ギルドの幹部3人。
幹部は奴隷にされ粛清されたが店の従業員などは罰金等で済まされていた。
甘い評議会のお情けを受けて最高評議会がおれただけだった。
脱税と違法行為の繰り返しで儲けた金を全て吸い上げられて逆恨みした馬鹿が、同じように粛清された奴隷商人と手を組み、1年の潜伏期間を経て奴隷になっていた幹部を解放させる。
たまたま街の査察に来ていた何人かの評議会の委員について来ていた家族を、戦闘用奴隷と一緒に逆恨みの報復を『正義の鉄槌』などと言って襲撃を仕掛けて評議会委員の家族を3人殺害させた。
奴隷となっていた元任侠ギルドの幹部3人はその場で殺されてしまったので、解放させた馬鹿商人達は闇から闇へと逃れて逃走しようとしていたところを任侠ギルドのギルドマスターの機転で関係者が全員捕縛されて国軍に引き渡され拷問を受け・・・全てが明るみになった。
国家の運営をサポートする評議会の人間の査察中に、一緒に来ていただけで何の関係もない家族が逆恨みで殺害されてしまったのだ。
国軍の指揮を取ってその後の報復合戦に変化して大きな問題となるところを沈静化させるために、最高評議会が送り込んできたのが、水商売に寛容で理解があり売春婦との関係性が水商売関係者の間で有名な『マツオとジュンローのコンビ』だった。
カリスマ性もあり冷静沈着さは評議会の人間にも評判は高く信頼もされている。
マツオとジュンローは20日ほどをマヅゲーラの街に滞在して問題を解決させるのに奔走した。
マツオとジュンローの2人はこの街では血で血を洗う報復を寸前で双方を説得。
双方を納得させて騒動を終結させた英雄となってる。
ここからは俺が人物鑑定で知り得た情報をみんなに話す。
ここで滞在している時にジュンローは自分の世話をしに来ていた女性に亡き妻の面影を見て、1度だけ過ちを犯した。
女性の名前は『マーサ・バーミリオン』マークタイムの母親だった。
マーサは誰が父親なのかすぐにわかったが沈黙を守って1人でマークタイムを育てることを決意。
首都シーパラで飲食店をしていたようだった。
それでマークタイムをこの街に連れてきていたのは拾った冒険者カードを複数使用している詐欺師。
マーサは既に詐欺師によって殺害されているみたいだった。
詐欺師はマークタイムをマヅゲーラの宿屋に捨ててヨークルに辿り着いたところで警備隊に捕まって既に処刑されていた。
・・・凄いな人物鑑定。ここまでわかるのかよ。
俺がここまで説明したらサトシは大声を出す。
「もしかしてマークタイムの父親って・・・でも、マークタイムの年齢がおかしい」
「サトシさんの考えたとおり間違いなくマークタイムの父親はジュンローだ。マークタイムの年齢は5歳。詐欺師が言ってた年齢が違っているだけだ。今すぐにでもマークタイムのステータスカードで確認した方が早い」
売春宿の事務所のソファーに座ってウトウトしているマークタイムにステータスカードを出してもらい、全員で確認。
マークタイムに起きててもらう為にマークタイムにポテトチップスと甘めのハーブティーをあげると、ニコニコの笑顔でモグモグ食べてゴキュゴキュ飲んでくれた。
この輝くような笑顔で店長さんと売春婦のお姉さん達をイチコロにしたのだろう。
自分の分のコーヒーを出すついでに、店長・ミサキ・サトシのみんなにもコーヒーを出して飲みながら会話を進める。
ステータスカードからマークタイムは間違いなくジュンローの血を持つ子供と判明した。
「間違いなくマークタイムは俺の親戚でユマキ家の一員です。ジュンローさんが喜ぶだろう」
「喜ぶ? サトシさん、血の繋がるマークタイムがここで現れて今後は財産分与などの問題で揉めたりしないのか?」
「早乙女さん、ジュンローさんは俺の二刀流の師匠で優秀な元冒険者で商人としても優秀な人物ですが、全くと言っていいほど家庭運に恵まれない人で・・・最初の奥様は病で妻とお腹にいた子供を一度に失いました。その後の再婚相手は間男の詐欺師に騙されて子供と金を持って逃走。詐欺師は妻子共に誘拐したたと偽って金を強請っていました。解決したのは詐欺師が別件で逮捕されてジュンローさんの妻子は死体になって発見されました」
「マジでか。それならマークタイムがいきなり行っても可愛がって貰えそうだな」
「逆に溺愛して甘やかしそうで心配ですね。俺の父親が甘くてワガママな人間になったのは、ジュンローさんの事件があったので、お爺様も叱ることなく甘やかせて育てるジュンローさんにキツク言えなかったのが原因だと聞いてます」
「うーーん。それは心配だなぁ。俺はその失敗作2人の処分をした人間だからな。サトシさんとミサキさんに目を光らせてもらうしかない」
「早乙女さん、それは俺にお任せください。マークタイムと一緒にユマキ家の中に戻る条件に『俺とミサキとマークタイト3人一緒に生活すること』を入れさせてもらいます」
「それにしても、サトシが任侠ギルドのトーナメントに出るためにたまたま偶然に思いついた偽名がバーミリオンなんて・・・凄い偶然だな」
「ですね。バーミリオンって考えることもなく偶然思い浮かんだだけの偽名なんですが・・・」
ミサキは店長とマークタイトを引き受けるために直接話をしている。
店長との話はすぐに終わったみたいだった。
店でマークタイトと専属契約をするために払った半年分の前払い金の半額100万Gをミサキが払うことになり、ミサキに支払われる結婚祝い金から100万G引かれて400万Gを店長はミサキのステータスカードに支払った。
清掃人ギルドにもマークタイムを貰い受ける契約をしてこないといけないので、店長に別れを告げてそのまま清掃人ギルドに4人で出かけることにする。
30mほどの離れたところにある清掃人ギルドでは話は金の問題だけだった。
宿屋からマークタイトを買い取った金額は350万G。既にミサキの働いていた店から半年契約で200万Gも貰っているので、あと150万Gとベッドメーキングなどの仕事を数日間で教えた謝礼金10万Gの合計160万Gをミサキが即金で支払って終了になった。