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任侠ギルドの決勝トーナメントでの壮絶な戦いっす・・・暇つぶしですることがなくて大変だったんだ。

8・14修正しました。

試合終了の声が掛かる前の一瞬を利用して、たった今俺が殺害した卯月要市朗のステータスカードとアイテムボックスの中身を抜き取って、本当のトドメの1撃となる瓦割りのような上から下に叩きつける軽いジャブを卯月の死体の背中にポンと叩き込んで魂を消滅させる。

俺がアマテラスとゴッデスに頼まれた仕事の半分はこれで終わった。


魂が消滅した卯月要市朗の死体を闘技場の試合会場に放置して控え室に帰る。

控え室の大部屋に俺が帰ってきたときに、優勝の本命だったAランク冒険者の卯月を全くの無傷で返り血も浴びずに戻ってきたのでどよめきがおこる。

参加者の何人かが俺に話しかけてきたり挑発してきたりするが、すべての雑音を一切を無視してイスに座る。

控え室の備え付けテーブルの上にある食事やドリンクには手をつけずに、アイテムボックスからつまみの芋の3種盛りを取り出してポリポリ食べて、アイスコーヒーを取り出してグビグビ飲む。


別にコソコソ隠れて行動するつもりもないのだけど、コイツラに気を使う気もないので控え室では自由気ままに過ごすことにした。話かけすらしない。

俺が戻ってきてから5分後には1回戦の第2試合に勝利したサトシが戻ってきた。

任侠ギルド決勝トーナメントの試合後には料金を支払えば治療してもらえるみたいなので、サトシは治療も済ませてきたみたいだ。1戦勝利するごとに賞金が小額入るので、それが治療費になる。

俺はどうせ優勝するので優勝賞金と一緒に最後に貰うことにしてある。

サトシは試合が始まる前よりも明らかに傷が減ってるな。予選でできた傷が全部消えていた。

2回戦の第1試合で俺が呼び出されるまでに2時間近くかかった。


呼び出されたので闘技場に行って決勝トーナメント第2回戦がスタートした。

サトシは双剣のショートソードを2本腰と背中から抜いて構えてる。

サトシはバカ親とバカ弟とは違って格闘のセンスがあるとアマテラスから聞いてはいるが、構えを見る分には我流だが・・・意外とサマになってるな。


サトシの動きを観察していたが・・・俺の動きを警戒してサトシが近寄ってこないので俺から歩いて近寄っていく。

無造作に近寄る俺の姿を見て後ずさってうめきながらサトシが小さな声をだしたので俺も小さな声で会話を始める。

「ぐぅ・・・これはこれは。強いだろうとは思ったが・・・ここまでとは」

「『サトシ・シーズ・ユマキ』さん、アマテラス様から御神託を受けましてこのトーナメントに参加しました早乙女真一です」

「・・・なぜ、その名前を」

「説明は俺が優勝してからにしますよ。殺さずに手加減してあげますからサトシさんは明日の朝までお休みくださいね。明日の朝にでも任侠ギルドでお話しましょう」

「くっ、・・・うがっ」


サトシは俺が話が終わった後に超スピードで突っ込んできたのを目ではまったく追いきれずに、本能で感じた危険に対して左右の手に持つ剣を反射的に使って薙ぎ払ってきた。

俺は難なく屈んでかわしてからサトシの顎先にショートアッパーを放って意識を刈り取り、崩れ落ちたところで俺にとっては試合終了。

観客から歓声があがるヒマすら与えずにタンカを呼んで試合を終了させる。

1回戦と2回戦は俺にとってはアマテラスに依頼された仕事だ。

こんな場所での人気なんて本気でどうでもいいと思ってるし、観客に媚びを売るつもりも微塵もなかったので魅せるなんてことは考えてない。

腰に帯剣した『天乃村正』すら抜かずに・・・ちょっと違うな。

鯉口を切ることすらなく2勝した。


そのまま歩いてまた控え室に戻る。これでベスト8なんだけど感動も何もないな。

次の準々決勝で俺が呼ばれたのは俺が控え室に戻ってから1時間後だった。

控え室に戻ってきたヤツらの中に俺を笑った連中はいなかった。ウンコマン増産の手間が省けたな。


準々決勝で俺が対戦した相手は狼獣人の身長2mを軽く越してる大剣使いだった。

俺がアイリに作ってあげた大剣のように使用者にだけ『重量軽減』の魔法が封入されているんだろう。

刀身だけで俺の身長の170cmぐらいある巨大な大剣で重量は40kg以上はありそうなんだが、軽々と振り回して俺に切りかかってくる。

周囲の空気すら切り刻むような暴風を伴って大剣が前から突かれ、上下左右から切りかかられて襲い掛かってくるが、巻き起こる風すら全てを悠々とかわしていく。


流石に5分以上続いた敵の猛攻を傷ひとつ負うことなくかわし続け、体勢すら崩すことない俺の剣客独特の防御にスタンドやVIP席から歓声があがる。

呼吸を整えるために敵が1歩引いて俺に声をかけてくる。


「ハァハァ・・・坊主、そのまま避け続けるだけではワシには勝てないぞ?」

「それじゃあお言葉に甘えさせていただきます。これからは俺からも攻撃させていただきますね」

左右に足を大きく広げて腰を沈めて立ち、左手で腰の天乃村正の鞘を握り鯉口を切って右手をカタナの柄に添えて居合い斬りの姿勢となった。

7mほど離れた場所から石畳の上をすり足でジワジワ近づく俺の剣客の完成された動きに狼獣人が感嘆の声をあげる。


「ぐぅ・・・凄まじいな。その若さでこれほどまで完成された動き。300年以上もの時間を戦いの中で生きてきたワシが味わったことがないプレッシャーだ。坊主がアマテラス様の神託の相手かな。ありがたい」

「・・・アマテラス様の神託だって?」

「ああ、ワシがアマテラス様に日々願っていたのよ。ワシの鍛え上げてきた全てを賭けて戦える相手がほしいと」

「そういうことならまずは俺の名前から名乗らないとな。『早乙女さおとめ真一しんいち』だ。悪いが今まで聞いてなかったオッサンの名前から聞こうか」


「ふっ、ワシに今まで興味すらなかったか。ワシはヴァンパイアと狼獣人とのハーフで名前は『マナガルム・ブラム・アバルニア』だ」

「真祖ヴァンパイア一族アバルニア伯爵家で狼獣人のハーフだって? ブラムの名前を持ってるということは・・・あの変態女科学者の真祖様が魔力を持ってる獣人を生み出すとはな」

俺の持つコピーされた知識の中にあるイーデスハリスの世界の南の大陸に生きる『ヴァンパイア』。そのヴァンパイアの中にいる頂点で不老不死の究極の生命体『真祖』が当主を勤める『アバルニア伯爵家』。

アバルニア伯爵家は初代の女性『ミラッシュ・ブラム・アバルニア』が当主をしている。

不老不死だが退治はできる。

るびの達の聖獣にちかい生命体だ。退治されても復活の場所となる自国領地のお城にある地下室に地脈や周囲の生命体の魔力を吸収して復活する。

るびの達と違って早く復活できるように準備を怠らずに用意してあるので、1年ほどで復活するところが自分たちで『究極生命体』と呼んでるだけある。


「変態女科学者・・・坊主はワシの母であるミラッシュ様の事を知ってるのか?」

「俺は知ってるけど、向こうは俺のことを知らない・・・『知識』として知ってるだけですよ」

「知識として・・・か。変なことを言う坊主だな。まぁ今はそんな些細なことよりも、ワシの鍛え上げてきた技術の全てを受け止めてもらおうか」

その言葉を合図にマナガルムは右手に握る大剣を肩に担ぎ、左手のミスリル製の腕輪を光らせてファイヤージャベリンを3本一気に放ってきた。

俺は腰の天乃村正を抜き放って居合い斬りを1閃させて3本の魔法を消滅させた。

また瞬時に天乃村正は腰の鞘に戻っていく。


俺以外にはカタナを視認することすら出来ない居合いの速度だ。

休む間もなく俺も真下の地面から突き出る10本の『地槍』を後ろにバックステップして避け、またも居合いで1閃して地魔法の槍を消滅させる。

今度は天乃村正を鞘に戻さずに下段に構えて、今までは居合いのためにスタンスを広げて落としていた腰を上げスタンスは肩幅にまで戻す。

そしてマナガルムの全ての攻撃を出し切らせるためにカタナの峰を返した。


「素晴らしいな。では・・・これより本気のマナガルム・ブラム・アバルニア参る!」


マナガルムの吼え声のような掛け声の後の攻撃がまさしく押し寄せる津波。

怒涛のような猛攻だった。

大剣の攻撃の合間に魔法が飛んできて、掻き消された範囲魔法の上から大剣の攻撃が降り注ぐ。

避けられる攻撃は避けて避けられない攻撃は受け流し、または打ち消していく。

10分ちかい猛攻の最後に今までで最高のスピードで同時魔法と大剣の攻撃を避けて凌いだ後に、返したカタナの峰でマナガルムの胴を峰打ち。

腹を峰打ちされてうずくまったので20分も続いた試合に終止符をうった。

膝を付いてうずくまるマナガルムが崩れ落ちながら力を振り絞って声を出してくる。

「グググ、完敗だな。ワシの生涯最高の攻撃を軽くかわして、それ以上の速度の攻撃か・・・お見事」

「あと1時間は寝てるから。じゃあ、トーナメントが終わったら任侠ギルドで会って話をしよう」


マナガルムは直感で『もう少し話がしたい』と思ったので生かしておくことにした。

また任侠ギルドの人間にタンカを要求して試合を終わらせてから控え室に戻る。

流石に3試合を経過して俺は傷一つ負わないし攻撃も数えるほどしかしてないので、闘技場のスタジアムから歓声が上がってる。

俺に金を賭けた人間も多少はいるのだろうし。

俺が無傷で勝ち残ってるというのは1回戦から賭けた場合の倍率7.4倍で大金を賭けてる人達には嬉しくてたまらないのだろう。


それから準決勝までは1時間以上待たされた。

ベスト4からは賞金が付くのだがベスト8までは参加賞と僅かな勝利者手当てしかつかないので予選落ちとほとんど変わらないから・・・俺以外の全員が死力を尽して戦っているんだろう。


控え室にいて待機している俺に2度、麻痺薬付きの吹き矢で攻撃されたが・・・吹き矢で飛ばされた針が俺の皮膚に全く刺さりもせずにポトリと落ちていく様子に勝手に驚愕して恐怖している。

ゾリオン村で捕獲した護衛隊の副隊長みたいなヤツらがいる。

1人は次の準決勝の相手だった。


準決勝は今までとパターンを変えた。

『試合開始!』

の声と共に大きく踏み込んで敵との距離を一瞬で詰めるとボディーに抜き手を突きこんだ。

背中から俺の右手が突き出てくる。

敵が抜こうとしていたロングソードも防具も胸骨も背骨も、全てを突き抜けて俺の手刀が突き抜けている。

腕を突き刺したまま、驚愕で目を見開き死に行く敵に語りかける。

「クソバカが。吹き矢なんて腐った真似をしなけりゃ、生きてここから出られたのにな。バイバイ」


敵が『ゴバァ』と口から血を吐き出した頃には俺は突き抜けた腕を引き抜いて、腕にいつもの3点セット魔法で浄化してから離れているので、俺の防具にすら血のあともない。

ぐしゃっと崩れ落ちた敵の亡骸からアイテムボックスに入ってる全てのアイテムを俺のアイテムボックスに移動させて、ステータスカードを抜き取る。

卯月もコイツもどうせ普段こんなことばかりしているような連中だ。

『賞金首』などで国から指名手配されたヤツだろう。

冒険者ギルドにステータスカードを持って行けば退治した賞金になるだろうしな。


またも俺が無傷で戻ると流石に残っていた2人も俺の不気味なまでの圧倒的な存在感に気付いたみたいだ。4戦して防具に傷一つ残ってないのだ。

俺に吹き矢を飛ばした男が呼ばれて出て行くときに静かに睨んできて俺の隣の誰もいないイスに躓いて転びそうになっていた。

控え室に1人なった俺はアイテムボックスから玄米茶とおはぎと安倍川モチを取り出して深夜のデザートタイムだな。

控え室に吹き矢男の落としまくった呪い付きの小石を全て拾っておく。

俺には魔法の精神攻撃も呪い系統のアイテムも一切効かないので、馬鹿には説教という名前の『オ・シ・オ・キ』をしてあげないとな。


吹き矢馬鹿が定位置のイスの目の前に全部の小石と吹き矢を並べておいた。

帰ってきてからどういう反応をするのか確認してみる。

吹き矢馬鹿は目の前のテーブルに置かれた石と吹き矢を見て、一瞬だけ目を見開き決勝戦のために呼びにきた任侠ギルドの係員が来たときにチクってる。

「このクソガキが俺の目の前にこんなにたくさんの呪い付きのアイテムを置いている。こいつは失格にしてくれ」

「・・・」

俺は係員を見てるだけだ。係員は無表情で面倒臭そうに軽く返事をする。


「私は『鑑定』の魔法が使えるんで、バレバレのウソは言わないほうが良い。それにここはマヅゲーラの裏社会を束ねる任侠ギルドのトップを決めるトーナメントなんだ。この程度のアイテムに引っかかるヤツはお守りが面倒なんで帰って欲しいぐらいだな」

「貴様! 俺がコイツに勝ったらお前はイビリ殺してやる」

「出来ないことは言わないほうが良い。俺程度でもここの幹部なんだ。それに『鑑定』の魔法って知ってるか? あまりにレベル差があると名前以外を見ることが出来なくなる。俺にはこのアイテムがお前の持ち物だって所有者の名前欄に書いてあるのが見える。それにガイアンって名前のお前の得意技も犯罪履歴も何もかもが見える。だがこちらの早乙女さんは名前しか読めない。ガイアン、貴様も鑑定の魔法が使えるんだろうが・・・年齢すら読めないんだ・・・その意味を考えろ」

「フフン・・・思わず鼻で笑ってしまったな。オシオキどころか説教で死んじゃいそうだな」

「ガキが!」

「おっと、せっかくの決勝戦なんだ観客の前でみっともなく無様をさらして、お前の体を張ったギャグで入場料分ぐらいは笑わせて観客を楽しませてあげないとな」

殴りかかってきた馬鹿を軽々と避けて、係員が歩いていくのに俺は後をついていく。


前を歩く係員に話しかけてみた。

「おいおい、何であの程度のカスが決勝戦の相手なんだ?」

「まったくもって申し訳ございませんとしか言いようがないです。ガイアンはクジ運が物凄く良かったみたいで、死力を尽して戦った相手としか戦ってません。予選も本命のギルド幹部と2人のCランク冒険者の三つ巴の死闘の後のラッキーで潜り抜けました。でも・・・私に言わせると『決勝で早乙女さんにバカやらかした後で対戦することになったことが運の尽きで最大の悲劇』としか言えないのですが」

「わっはっは。確かにな。そう考えると運がいいとは言えないな。俺にちょっかいをかけなければ生きて帰れたのにな」

「ではボス、ここで待ってます。この後は勝者はこのギルドを自由に出来る権利が発して、それの宣言がありますので考えておいて下さい」

「ああ、わかった」


もはやギルド職員も俺の勝利を疑ってないみたいだな。

吹き矢バカの連戦で少しムカついていた俺はバカと遊ぶことにした。

馬鹿は鎖鎌を使っている。そこそこぐらいの腕だろう。

レベルの高いチームに入ればCランクぐらいにはなれそうな腕ぐらい。

俺は終始ニヤニヤと薄く笑いながら、バカの攻撃を避ける。呪い付きののアイテムをいくつかと罠も使ってくるが全く効果ないのに遊んで乗っかったりした。

バシンと音が鳴って地面の魔方陣がはじけ飛ぶ。


「ハッハッハ、お前が今通った場所は隷属の罠を仕掛けたところだ」

「ぐああぁあ、なんだとくそっ、貴様、はかったな!(棒読み」

「フッフッフ、まずは俺に土下座しろ!」

「イヤに決まってるじゃん。ゴミが油断するなよ」

そういって油断してるバカにデコピンしてあげた。

手加減を誤った。


ちょっとダメージが多かったみたいで失神してしまったので、覚醒用のショック魔法を使って強制的に目覚めさせてやる。

もちろん演技は続行中だ。

「はっ! あれ? ・・・まだ罠に掛かってるな。ほら早く土下座しろ。これは隷属の手枷だ」

「ぐああ、二つも・・・くそぅ(もっと棒読み」

「そのまま死ねぇ」

蹲る俺に鎖鎌の鎌で斬りかかるガイアン。蹲ったままガイアンの攻撃を全て避ける。

「し、死んでたまるかぁ!(もはやバレバレの棒読み」

「なぜだ! なぜ当たらない!」

「なぜって? もちろん効いてないからだな」


すくっと立ち上がるとデコピンして始末した。今まで爆笑していた観客も飽きてきていたみたいだし。


・・・ガイアンは今後語り継がれるであろう。

ラッキーだけで勝ち残って決勝まで這い上がり、デコピン2発で死んだ男として・・・。

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