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ドワーフって偏屈な人が多いってのはマジだったっす。

7・16修正しました。

鬼まんじゅうを待ちながら店主と世間話。

ついでにおすすめの宿を聞く。

少々高くてもいいので居心地いいと評判の宿。飯も美味しいほうがいい。

ここの近くには無いらしい。ヨークルの中心にある巨大な時計塔がある。

ここからも見える。

そこに行く途中にあるようだ。


ホテルの名前は『月と太陽のホテル』

ホテルの目の前に商業ギルド・ヨークル支部があるし、ホテルの門に看板代わりの大きな月と太陽の彫られた大きな石の板があるからすぐわかる。


出来上がった鬼まんじゅうをアイテムボックスに入れる。


ホテルに歩いて行く。

商業ギルドの場所を聞いたらもらった記憶の場所とかわってなかったので、迷わずについた。


ホテルの受付ではスイートルームしかないって言われたが、1泊20万Gで大きな風呂もついてて食事は部屋で2回までは無料。

部屋にあるキッチンで作るのは自由、時間は深夜もOK。

出入りも制限時間なしで自由。

ついでに女も連れ込み自由らしい。


とりあえず3泊することにする。カードでお金を払い部屋に入る。


時間も時間だし今日は夕食を食べて風呂に入って寝ることにする。

ガルディア商会のヨークル支部に顔を出すのは明日でいい。


夕食に味噌汁が出た。

ちゃんと出汁が使ってある。味噌汁の具にワカメも入ってる。

これは良く調べないとな、充実する食生活を今後も送るためにも。


ヨークルはシーパラ大河で海と繋がってるから魚介類も入ってくるのだろう。


いわゆる日本の旅館での夕食みたいなメニューだった。

ご飯・味噌汁・刺身・天ぷら・小さい一人用の鍋・野菜の煮込み・漬物。最後のデザートはメロンだった。さらに頼んだお酒は『骨酒』。


イーデスハリスの世界では成人は15歳でお酒は自己責任。


夕食を頼みワゴンで運んできたのが定番の旅館メニュー。酒のメニューで骨酒を見たときは流石に笑いを我慢できなかった。


おいおいファンタジー、ここって異世界だよな?

高級ホテルに宿泊しスイートルームで食べる夕食メニューが旅館ってのは流石にちょっと引いた。

笑えたけどな。

俺が殺した4人のクソ神どもってギャグセンスはあるみたいだな。


美味しかったのは良かった。明日は食材探しの探検だな。


あと、そろそろ防具を見たいな。

防御力が人間の範疇を軽く超えてるし、神のレベルのさらに先に行ってる。素っ裸で古代龍のブレスをくらっても火傷もしない。


とはいえ・・・

イーデスハリスの世界に転生してきてずっと『たびびとのふく』だ。

ゾリオンの衣料品店で買ったのもデザインが違うだけの『たびびとのふく』だ。

流石に飽きたよ。『かわのよろい』にステップアップしてもいい頃だと思う。


盗賊を退治してぶんどった装備は素材にした。

神の創り手のスキルを使えば凄い防具が作れるけど自作するのはまだ先にしたい。

今はまだこの世界の冒険を始めたばかりの序盤だから必要に迫られてない。

武器はもうしばらくはいいや。


ゾリオンに『天乃村正』なんて名前のチート武器もらっちゃった。

このカタナが『たびびとのふく』に壊滅的に似合わないのだ。

たびびとのふくにカタナを装備すると『貴族のお坊ちゃまが見慣れない武器を装備してる』感が尋常じゃない。

ゾリオンには武器も防具も店が無かった。

金物屋と鍛冶屋はあったが『農器具専門』だったし。


考えてみれば当たり前だけど。

農民しかいない場所で誰が買うんだ? って話だからな。


たまに呼ばれてくる冒険者も予備の武器ぐらい持ってるだろうし、兵士の場合は武器と防具は支給品だろうな。同じ武器と防具をもってたし、ウンコマンとバカ貴族は派手なフルプレートアーマーだったけど他の親衛隊たちとお揃いだったし、あれも支給品だろう。

趣味で武器・防具を集めてるヤツはヨークルに買いに来る。宿屋がなかったのと同じ理由だろう。


そんなことを考えながら眠りにつく。



朝目覚めて朝食を頼む。夕食が旅館だったから納豆とか干物なんかを想像していたのに、朝食は『フルーツたっぷりのパンケーキ』だった。

これだと逆に普通っていうのだろうか。


もうすでにこの異世界のパターンが読めない。

食において変化球が多種多彩で受け取るほうが衝撃を受ける。

昨日の鬼まんといい、旅館系夕食といい。


食事を終えてからホテルを出てガルディア商会に行く。俺の泊まった『月と太陽のホテル』から近いのですぐに到着する。


ガルディア商会にはゾリオンもギルも出勤していたので挨拶。

ゾリオンにはカタナのお礼も忘れずに言っておく。

契約したアイテムの残り分(ミスリル50キロ・オリハルコン20キロ・ヒヒイロカネ10キロ)を裏の倉庫でもらう。


ガルディア商会は鉱石を商品として取り扱ってるし、ゾリオンは武器ヲタ。防具職人に客や知り合いなども多いだろう。

できるだけ腕がいい店を紹介してほしいと聞いてみる。


フィアルカート防具店にいる『ガルパシア・ウルス』という名のドワーフが有名ではないが腕のいい職人だと教えてくれた。ここから少し遠い場所にあるが行ってみるなら、ゾリオンが紹介状を書いてもいいよと教えてくれた。


さっそく行ってみることにする。


カランコロンと鳴るカウベルのようなモノがついたドアを開けてフィアルカート防具店に入る。

店は想像よりも大きかった。

店の構造は店員のいるカウンターまでが皮・木・鉄などの防具やベルトが並んでいる。

カウンターの向こうは高級そうな防具や盾が並んでいるところを見ると、盗難防止でカウンターで仕切っているんだろう。

カウンターにいる店員にゾリオンからもらった紹介状を渡す。


「ガルパシアは奥の工房で接客中ですので少々お待ちください」

と、言われたので店に並んでる商品を見て回る。

皮の鎧を見る。確かに腕は良いな。主要部分には何枚も皮を重ねて固定されてるが、体を動かすときに動きを邪魔しないように上手く遊びを作ってあり、それでいて鎧のシルエットは崩れてなくバランスが取れてる。

・・・もうこれでいいんじゃね。


値段も35万Gと結構するが手は手甲まであるし足は足首と足甲までカバーしてある。

後は皮のブーツを併せて購入すれば終わる。

ただ色が黒一色なんで・・・忍者かよって感じだ。

カタナの色合い的にも、背中に背負わないとダメな気がしてくる。

それはそれでいいんだけど、明るい時間に街を散策できなくなりそうなファッションだな。


店内を見回すと同じような形をした『甲殻鎧』を見つけた。

サソリの甲殻みたいで少し暗い緋色の甲殻が主要部分につけて固定してある。

鎧の形は皮の鎧とほぼ一緒であとはおそろいの甲殻ブーツを買えば全身OKだ。

甲殻鎧の方はサイズがちょうど良さそうだし。


値段は55万Gでブーツも足すと60万Gだ。

店員に試着できるか聞いたら、カウンターの中に試着室があるとのこと。

さっそく鎧・ブーツ・皮のベルトなどを持って試着する。

旅人の服の上から鎧を着ることはできないので、俺に合うサイズのアンダーシャツとアンダーパンツを持ってきてもらう。


鎧を着るのは簡単だった。

俺のもらった記憶でも一緒だった。

体のいたるところに森林モンキーの尻尾が張り巡らされているので、鎧を頭から被り左右の腰の紐を引っ張るだけだ。

それを背中で結んで背中の紐を入れる袋に入れて終わり。

手足の部分も一緒。はめて紐を引っ張って固定して紐を袋に入れる。手足の部分は片手でできるように金具に縛るようになってる。

脱ぐときは紐をもう一度引っ張ると緩むのですぐ脱げる。

ブーツも同じように紐を引っ張るだけでピッタリ装備できる。


試着室から出て鎧を装着した状態で体を動かしたりひねったり飛んだり跳ねたりしたが、カチャっと音もしない。甲殻が体を動かした時に当たらないように上手く加工されてる。

嫌な締め付け感もまったくない。

これは素晴らしい商品だ。購入決定する。

アンダーのシャツとパンツは春秋・冬・夏の3種類を3枚、あわせて購入しておく。


腰に帯剣用のベルトをつけてアイテムボックスから取り出したカタナを腰に装着。

試着室にある全身鏡を見ながらカタナの鞘が鎧に当たらないようにベルトを調節する。


俺は少し興奮していた。

鎧を着てカタナを装備してるのだ。

やっとファンタジーの中にいるってことを実感してるのだ。

少し武者震いしてくる。


ふと我に返るとそんな俺を微笑ましそうに見ている3人がいた。


やべぇ、感動でちょっとトリップしてた。

しかもニヤニヤしてたと思う、凄く気持ち悪いな、俺。

と、ちょっとあわてる。

「お金払います」

これしか言えなかった。バツが悪すぎる。


俺を微笑ましく見ていた3人は女性。

一人はフィアルカート店員で背が低く見た目40代の女性『おかみさん』と説明したい風貌をしている。是非おかみさんと呼びたい。


あとの二人は冒険者だろうか。

大柄な女性戦士だ。20代中盤ってとこかな?


一人は真っ赤な燃えるような赤髪のショートカットで大きな体と対照的な優しくて柔らかい笑顔で俺を見てる。瞳の色は黒。

フルプレートアーマーで肩の後ろに1メートル以上の長さで幅が30センチほどの細長いホームベース型シールドを左右に二枚ずつの計4枚ついてる。盾のマントみたいだ。

両手にも直径30センチほどの丸い盾がついてる『シールダー』だろう。盾で自身と仲間を守り盾で敵を殴って攻撃する。


もう一人は長い茶髪でポニーテールにしてる紺色の瞳の女性だ。少しタレ目。彼女も優しそうな表情をして微笑ましそうに俺を見てる。彼女は『ランサー』だな。2メートルほどの短槍を右手に持ってる。防具は素早い動き重視なんだろうハーフプレートアーマーだ。


それにしてもデカイ。確かに身長も二人とも確実に180センチを超えてるだろうが、それだけじゃない。

・・・爆乳だ。

二人ともの胸部装甲がありえない角度で盛り上がってるほどだ。

茶髪の方は谷間が凄いことになってる。

けしからん、まったくもってけしからんってレベルの大きさだ。


異世界で爆乳に初エンカウントだ。


爆乳コンビは時々チラッと胸を見て顔を赤らめる子供に、少し意地悪そうな顔をしてニヤニヤしてみてる。

彼女達にしたらかわいいお子様なんだろう。

今は15歳となってしまった俺だし、ただでさえ東洋系の顔は西洋系から見れば幼く見えるだろうし。


レジのカウンターに行って合計金額65万4000Gをカードで支払う。

アンダーのシャツも足首まであるパンツも1枚3000Gだった。


着替え用のアンダーは袋に入れてもらいアイテムボックスに。今まで着ていた旅人の服もアイテムボックスへ。


すると赤髪が話しかけてきた

「君は冒険者? アイテムボックスをもってるの?」

「あ、ハイ。冒険者ギルドに登録してあります。」

「「それなら話g」」『バン!』

と二人に同時に言われたときに奥の扉が開いた。


ドワーフがいた。髭がボーボーでムッキムキの全身が赤黒い親父だ。

オッサンではない『親父』だ。俺はそう呼びたい。

「アイリ、ミネルバ、お前達まだいたのか。いくらお前等でも情報は渡せんよ・・・お! お前が早乙女か? ゾリオンの坊主がよろしく頼むと紹介状に書いてあったぞ」

「ゾリオンの坊主?」

坊主? 俺の知ってるゾリオンはオッサンだ! ハゲだけど。

この世界にはハゲにならなければいけない方の坊主はいないはずだ。

そっちの宗教はない。存在してない。

ちがう。


「ん? あぁ、俺はこう見えても300歳を超えてるんだよ。俺からすればお前もゾリオンもみんな坊主だ」

とガハガハ笑ってる。

「と言うと貴方が『ガルパシア・ウルス』さんですか?」

「おう、そうだ。ドワーフは家名が前で名前が後ろなんだ。だからウルスと呼んでくれ」

「はじめまして、ドワーフ流に言うなら『早乙女サオトメ真一シンイチ』です」

「よろしくな」

「よろしくお願いします」

ウルスと握手をする。ドワーフって身長は150センチぐらいしかないけど手はごつくてデカイ。俺の手よりも2回りほどデカイ。

「ん? もう防具を買ったのか? でも、さすがだな。俺が隠してた目玉商品を買ってる」

「隠してた? けっこう目立つ場所に置いてありましたよ」

「その甲殻鎧はサソリオオクモの甲殻を使っているから、くすんだ赤色だ。だから良さそうには見えないし、手にとって見やすいようにワザと目立つ場所に置いてあった」

「・・・」


「派手な鎧が好きな連中はこのカウンターの中の目立つ場所にある『プラチナアーマー』を選ぶ」

と、ウルスは派手なフルプレートアーマーを指差す。確かにあれは目立ちたがり屋には最高の防具だろうな。プラチナがピカピカで眩しい。

「ただ、あれは硬すぎて衝撃を分散して逃がせないんだ。ある一定までの衝撃にはプラチナアーマーの方が優れているが、限界を超えるとすぐに壊れる。鉱石と甲殻の特性としての違いなんだけどな。鉱石であるからプラチナは限界が時間経過とともに下がってくるんだ。甲殻も下がるが下がり方に違いがありすぎる。だからこの店の顧客はプラチナアーマーは親衛隊とかの儀礼用で、実践では違う防具とか使ってる」

「へー、なるほど」

「あれは金持ちのカモから金を稼ぐ用の防具だ。金額もちょっと高めに表示してある」

とにやりと笑うウルス。

「早乙女が買った甲殻鎧はその真逆だな。よその店で買うと100万G以上するぞ。その甲殻鎧と近くにあった皮鎧の二つは俺の遊びだ。手間をかけて材料も選んで丁寧に作ってある。売値は半額ぐらいに抑えてある。わかるヤツにはわかる、見る目がある人への俺からのサービスだ」


やはり俺の予想通りのこの偏屈さ・・・オヤジじゃない親父だ。ウルスの親父って呼びたい感じだ。


「早乙女が装備している武器はカタナか? カタナを使えるのか?」

「ええ、一通りは」

「ッてことは『剣客スキル』を持ってるのか? ではカタナを使った動きを見せてくれないか? その鎧は『細剣』や『槍』用の鎧だ、それをカタナ用に調整したい。費用はサービスする」

「いいですよ」


ウルスの親父に案内されて奥の扉の工房をさらに奥へと進んだフィアルカート防具店の裏庭。


俺の後ろをなぜか二人の女性戦士の冒険者もついてきた。おかみさんは店番で残った。


ウルスの親父は裏庭に『製造魔法』を唱え倒れていた丸太を立てたり、魔法で丸太に錆びた鉄鎧をかぶせたりした。簡単な訓練場ができる。


「じゃあ、たのむ」


その言葉を合図とし俺は腰を落として5メートルほど先にある丸太を袈裟懸けに一閃する。

居合いだ。

直径30センチ以上の丸太が斜めに切断される。

俺以外の3人は俺の一閃の速さに、俺はカタナのあまりの切れ味に驚いた。


「早乙女、スマン。俺にはまったく見えない。これでは動きの検証がまったくできないので、すまないがもっとゆっくり動いてもらえないか?」

「わかりました」


俺はイメージトレーニングのようにゆっくりと体の動きを確認するように動く。

相手の攻撃をイメージしてかわしては切り、かわしては突く。


俺がもらった知識と経験では・・・


カタナの防御は『かわすこと・よけること』

カタナで相手の攻撃を受けるのは最終手段。

攻撃できなくなるからだ。

カタナは防具ではなく武器だ。


だから重要なのは足運びにある。無理な体勢にならないこと。

神速をもって敵に迫り攻撃して安全に離脱。離脱も神速。

だから『剣客』のスキルをマスターすると『神脚・カタナ』という称号を得る。

速さが命。

足を止めてカタナを振り回すだけなのは初心者。

カタナの刃と刃をぶつけ合うのは道場だけで、実戦ではよけきれないと判断した時だけの最終防御になる。


こんな知識と経験が詰まってる俺の体は、滑らかに動くことに終わりがない。


「早乙女、ありがとう。大体の動きがわかった。俺が想像する以上に関節の可動域が広い。少し手直しさせてくれ」

いつまでも動きを止めない俺にウルスの親父がストップをかける。

「手直しするなら鎧は脱いだほうがいいですか?」

「いや、装備したままの方が良い。実際に動きながらでないと調節が面倒だ」


手・足・腰など『防具調整』と防具スキル魔法をかけ、俺が動き、また調節を繰り返しする。


それから最後に甲殻鎧全体に魔糸溶解液で3度ほどコーティングして終了だ。

ウルスの親父も満足そうだ。俺も嬉しくてニコニコしている。


「「あ、あのー」」

置いてきぼりにされてた二人の女性が声をかけてきた。

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