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 ちょっと色々あって学校に来るのが遅くなってしまった。


 廊下を早足で歩き、教室へと向かう。

 チャイムがなる寸前に教室に滑り込むと僅差で教師がやって来た。


 ふー、良かった。

 ギリギリセーフか。


 皆勤賞を狙う者としては遅刻は致命傷なのでしたくない。


 あ、この間祖父母の家に行くのに休んだから皆勤賞逃したのか。

 いや、でもあれは不可抗力と言うやつだし大丈夫なのか?

 後で調べてみよう。


 そう思いながら自分の席に向かう。


 うん、見た感じ机に落書きや仕掛けはない。

 取りあえずHRが始まるから座ろうかと椅子を引いてみたところ、椅子には画ビョウが置かれていた。


 それだけ聞くとわりかし普通の仕掛けだが、今日のは一味違う。

 画ビョウが、一つなら良いが見る限り隙間無くびっしりと並んでいるのだ。


 剣山か。


 思わずこれの仕掛人にそうツッコミたくなった。


 一つ触るが椅子から外れないことから接着剤か何かで貼り付けてあるであろうことが伺える。

 私の椅子をこのように加工するために一体どれ位の時間を掛けたのだろうか。

 これを仕掛けた人は余程の暇人に違いないと確信を持って言える。


 いつもなら少し早く来て空き教室、もしくは仕掛人の物とトレードするのだが今日は時間が無かったので出来なかった。

 さて、どうするか。


 「何している。

 早く座りなさい」


 椅子を前に思考していると教卓に立った教師に声を掛けられた。

 私は椅子を右手で持ち上げて教師に見せる。


 「これに座れと?」


 教師は椅子を見てから教室の中心部あたりの方向へ視線を向け、でれっとしただらしない表情を浮かべた後、顔を引き締めてから再び私の方を見て言った。


 「そうだ」

 「……失礼、もう一度聞きますがこの画ビョウだらけの椅子(・・・・・・・・・・)に座れ、と?」

 「そ、そうだと言っている!

 良いからさっさと座れ!!」


 教師は目を泳がせながら怒鳴るように私に言った。

 私はにっこり微笑みながら教師に向かって挙手をする。


 「せんせー、私はこんな特殊な椅子を見るのは初めてなので座りかたが分かりません。

 ちょっとお手本見せてくれませんか?

 勿論見せて貰えますよね?

 だって生徒の疑問に答えるのが教師の仕事何ですから」

 「うっ……いや、その」


 私の提案に動揺し、しどろもどろになる教師。


 「HRが始まってしまうので早く教えて下さい」


 だめ押しとばかりにさあ、と椅子を教師に向けると教師は顔を赤くして怒鳴った。


 「普通の椅子と同じように腰掛ければ良い!!

 これ以上ゴタゴタ言ってると内申点がどうなっても知らないぞ?!

 良いからさっさと座れ!!!」



 逆ギレされてしまった。

 私はため息を一つ吐き、手にしていた椅子を床へと下ろす。

 そして左手に持っていた鞄から今朝の朝刊を取り出した。

 4Aサイズに畳んであったそれを一つ開いてから椅子の上に敷く。

 そしてその上に腰を落とした。


 全く。

 折角読もうと思っていたのに穴だらけになってしまうではないか。

 そう心中で毒づきながら鞄を机の横に引っ掛ける。


 私の行動を見てひきつった顔をした教師を尻目に鞄から教材を取り出して机の鍵を開ける。

 中に教材を入れながらちらりと羽崎さんを見ると憎々しげな顔をしていた。


 こんな人目の多いところでそんな表情を浮かべない方が良いと思う。

 あ、ほら。

 君の左隣の男子生徒がギョッとした後、必死に目を擦っているよ。

 大丈夫だ少年。

 幻覚じゃなくてリアルだから。

 ちゃんと君の目は正常だ。


 銀髪無表情は位置的に羽崎さんの顔は見えないが、そんな彼女をじっと見つめていた。


 「起立、礼」


 日直の号令によりHRが始まった。

 話を聞くにどうやら今日は我らが担任のおじいちゃん先生は所用でお休みらしい。

 その代理で今日一日だけ今教卓の前に立っている教師がこのクラスを受け持つとか。

 なるほど。


 出欠をとる際、羽崎さんの名前を言う時は糖度高めの甘い声でキメ顔であろう笑顔で羽崎さんに笑いかける。

 一方で私の名前は読み上げられず、飛ばして次の人の名前が呼ばれた。

 皆勤賞を狙う者としてはそれで欠席扱いされてしまっては堪ったもんじゃない。

 直ぐに指摘すると舌打ちをしたそうに苦々しげな表情で睨みながら嫌々読み上げてくれた。


 やれやれ、羽崎さんの毒牙がとうとうここまで来たのか。

 と呆れつつ教師を良く観察する。

 髪は黒髪短髪で顔は中々整っている。

 例えるなら朝のニュースの爽やか安心イケメンアナウンサー風の外見だ。

 その上教免取りたての出来立てほかほか新人教師 (=若い)なのでミーハーな女子生徒に人気だ。

 授業も良い感じに砕けてわかりやすく、他の先生とは違って話が分かる奴だと男子生徒からもある程度は人気なので良い教師になるのだろうなと思っていた。


 ………実際は、まぁ、一女子生徒に骨抜きにされる程度の人物だった訳だが。

 生徒会顧問と言いこの教師と言いこんなのが教職者をしていて良いのかと少し日本の将来が心配になった。


 HRが終わり、一時間目の授業まで少し時間があったので取りあえず今のうちに空き教室の椅子と交換することにした。








 昼休み。

 新聞を読みながら昼食をとっていると机の前に誰かが立った気配がした。

 誰だか知らんが今、丁度連載小説が良いところなのだ。

 しばらく待っていて貰おう。


 手はご飯を口に運びながらも目は一心に文字を追う。

 連載小説の内容を一言で言うとこんな感じだ。

 『女と目が合ったら死ぬ』

 この題材をこんな感じに料理するのかと感嘆するほど良く考えられた小説で毎回楽しみにしているのだ。

 前回はこの事件を追いかけていた刑事の向井むかいがついに一連の事件に関係して女の正体を知る寸前で終わっていた。

 私の読みでは今日の新聞で女の正体が明かされると思っている。


 『―――そして向井は震える手でノートを捲った。

 そこには女の正体は』

 「無視してんじゃねぇよ!!!」


 誰かの足が新聞を切り裂き弁当箱へと突き刺さった。


 唖然と新聞と弁当箱を見つめる。

 弁当箱には誰かの上靴のかかとが埋まっている。

 弁当箱は大破したが不幸中の幸いで粗方食べ終わっていたので中身を浴びることは無かった。

 それは良い、買い直せば良いのだから。

 いや、まぁ本当は良くないけど今はそれは置いとくとして、それは良いとしておく。

 だが、問題は新聞だ。


 新聞は連載小説の丁度女の正体が分かる部分で裂けていた。

 綺麗に縦に裂けていたらまだ読めただろうが、運が悪かったのか今回は結構細かく裂けているので再生は難しそうだ。

 その事実に私は愕然とした。


 なんたることだ。

 小説の醍醐味とも言えるオチが読めなくなってしまった。

 畜生、三ヶ月先の新刊発売まで待てと言うのか!?


 ………目の前にあるこの足首に思いきり箸を突き立てることは許されるだろうか。


 じっと箸と足首を見比べていると目の前の足の持ち主が怒鳴りだした。

 今すぐ相手を力の限り殴り倒したい気持ちを必死に抑えつけ、視線を新聞から目の前の足の持ち主へと向ける。


 「よぉ、やっと聞こえたみてぇだなクソ女。

 あんだけ呼んだのに聞こえないたぁ手前の耳は飾りか?

 なら切り落としてやろうか?あぁ?」


 殺気を目に宿らせた獰猛な笑みを浮かべた赤髪ヤンキーがいた。

 初っぱなから随分な態度である。


 あれか?喧嘩売ってるのか?

 そうだろうな。

 この態度はそうとしか考えられない。


 深く息を一つ吐き、精神の安定を図る。

 そして真っ直ぐに赤髪ヤンキーを見つめた。


 良いだろう。

 その喧嘩、買ってやる。


 「男子三日会わざれば刮目して見よと言いますが貴方は刮目する価値の無い位成長していませんね。

 むしろ退化していません?

 大丈夫ですか?そのうち猿人にまで戻るんじゃないですか?

 そこまで戻ったら何処かの研究所に入る事をお勧めしますよ。

 何の人の役にも立たない貴方が初めて人の役に立てること間違い無しです」

 「………てんめぇ……!

 第一声が人への暴言とか本当にクズだな!」

 「その言葉、そっくりそのままお返しします。

 人への第一声が暴言の人がクズと言うことは貴方は自分がクズだと認めたんですね。

 素晴らしいです。

 ようやく自分の本質を理解出来たんですね」

 「手前はクズだが俺はクズじゃねえ!!

 見た目が悪けりゃ中身も腐ってるとかお前最低の人間だな!!」

 「そうですか。

 人間は見た目ではなく中身ですのでご心配なく。

 その点、貴方は見た目は良くても中身はゴミクズ……いえ、それではゴミクズに失礼ですね。

 ゴミクズでもまだ人の役に立つこともあるのですから何の役にも立たない貴方は救いようがありませんね」

 「なっ……!」

 「それで?ご用件は何ですか?

 まさかただ暴言を吐きに来ただけじゃないですよね?

 それといい加減弁当箱から足を除けたらどうですか?

 人様の食べ物を踏みにじるとか世界中にいる恵まれない子供たちに土下座すれば良いと思います」


 呼吸をするように赤髪ヤンキーを貶める言葉を吐く。

 女は口から産まれたとも言うし、失言の多い赤髪ヤンキーに口では負ける気がしない。


 足を机から下ろした赤髪ヤンキーは私の言葉に顔を怒りで赤く染め、体はぶるぶると震えている。

 


 「ベラベラと腹立つ事を……!」

 「止めなよ火鳥」


 思わずと言った感じで腕を振り上げた赤髪ヤンキー。

 ほう、殴るのか?


 そう思い若干身構えたが、その腕を掴んで止めた人物がいた。


 赤髪ヤンキーに集中して気が付かなかったが、一緒に保健委員長の茶枝鳥ちゃしとりがいた。

 会うのはあの生徒会室呼び出し事件以来だ。


 「ごめんね、火鳥は直ぐカッとなるタイプなんだ。

 未遂だし悪気は無いから許してやってくれないかな」


 悪気が無ければ何でもやって良いのか。

 そんな言葉を今は飲み込んでおく。


 疑問系では無く有無を言わせない命令口調でそう言って少し困り顔で笑い掛けてくる保健委員長。

 だが、相変わらず目は笑っていない。


 可笑しいなぁ。

 ゲームではもうちょい作り笑いが上手い人だった気がするんだが。


 「ええ、もちろんです」


 今は別にこれ以上何かをしてもメリットは無いので大人しく引き下がる。


 「それで、用件は何でしょうか」


 早く言え。

 そしてさっさと帰れ。


 「ちょっと聞きたい事があるんだ。

 放課後に生徒会室に来てもらえるかい?」

 「すみません。

 放課後は用事があるので無理です」

 「じゃあ、明日の昼休みは?」

 「すみません。

 昼休みは用事があるので無理です」

 「じゃあ、明日の放課後は?」


 ……どうあっても私を生徒会室に呼び出したいようだ。

 生徒会室に良い思い出はないので出来るだけ近付きたくないのだが。

 と言うか何か仕掛ける気なのが丸わかりだ。


 のらりくらりとかわすのも良いがそれだとそのうち強制的に召喚されそうだ。

 それなら自分で行く日を決めた方がまだやり易い。


 そこまで考えてふと思った。


 ここらで生徒会役員たちに羽崎さんに対する疑惑の芽を植え付けたら面白いのではないか?

 銀髪無表情には既に植え付けは完了している。

 今日見た限りではまだ不信感は拭いきれていないようだった。

 その証拠に今日はあまり羽崎さんと絡んでいない。


 はてさて、もしも生徒会役員全員が羽崎さんへの不信感を抱いてしまったら?

 疑惑の芽が育ったら?

 羽崎さんの逆ハー集団は一体どうなる?


 シミュレートしてみる。


 表面上では今まで通り羽崎さんをちやほやしながらもふとした拍子に羽崎さんへの不信感を思い出す。

 羽崎さんに盲目的な彼らはそれを否定するが心の奥底では不信感を拭い切れず、それは少しずつ心に沈殿していく。

 そして彼らは彼女を信じたい気持ちと彼女を疑ってしまう気持ちに悩まされる。


 その様を想像して体が震えた。


 それ、すっごい面白そう。


 リコールまでは出来るだけ何も仕掛けない予定だったが手札の一枚は早ければ早いほど効果がある。

 彼らの盲目具合を確かめることも出来るし逆ハー関係を引っ掻き回せるしで良いことずくめじゃないか。


 そこまでの計算を二、三秒で終わらせ、保健委員長に明日の放課後ならば大丈夫と返答した。


 「そう、ありがとう。

 じゃあ明日の放課後生徒会室で待ってるよ」


 そう言うと保健委員長は赤髪ヤンキーを引きずって教室から出て行った。

 後に残されたのはビリビリに破れた新聞紙と大破したお弁当。


 うん、謝って行けよ赤髪ヤンキー、と思った私は全く悪くないだろう。


 面倒臭いと思いながら床に散らばった新聞紙の紙片を拾い集める。

 時々手を踏もうとする輩がいたがそれらを華麗に回避しつつ片付けを完了した。


 さて、新聞も破かれてしまったし何をしようかと考えていると私宛に校内放送がかかった。

 何でも、借りっぱなしの本を直ぐに返却しろとの内容だった。


 ちなみに私は悪戯されて汚したくないので図書室では何も借りていない=図書委員長からの呼び出しとなる。

 ………一瞬、無視しようかと悩んだがそれはそれで面倒臭そうなので嫌々ながら図書室に向かう事にした。








 図書室に入り、カウンターへと向かう。

 そこでは一人の男子生徒がカウンター業務をしている。

 話し掛けてクラスと名前を告げた。


 「黒魅鳥様がお待ちです。

 後ろの司書室へどうぞ」


 手で指し示された方を見ると木のドアがあった。

 あぁ、入りたくないなぁとため息を吐きながらドアを開く。

 そこには、予想通り図書委員長がいた。

 予想外なのは床に正座して期待に満ちた目で見上げてきていたことだ。


 「………」


 無言でドアを閉める。


 私は何も見なかった。


 そう言い聞かせそのまま回れ右をして離れようとした。

 が、それは後ろから伸びた手に手首を掴まれ阻止された。


 「ちょ、待って!行くな!」

 「離せ変態」

 「っ!良いから入ってくれ」


 いくら変態であろうとやはり男と女。

 踏ん張ったが、結局力負けして中に引きずり込まれた。


 中は結構広かった。

 入り口付近に机が三つばかりあり、その上に本が積み重なって置かれている。

 その奥には高そうなソファーセットとテーブル。

 テーブルの上にはティーポットなどの茶器一式と美味しそうなクッキーが置かれていた。


 「さあさあ、座った座った」


 案内されたソファーに座るとティーポットから入れたばかりの紅茶が手渡された。

 良い茶葉を使っているのか上質な香りが鼻孔を刺激する。


 「良い香りですね。

 何て言う茶葉ですか?」

 「アールグレイだ。

 君の趣向がわからなかったから無難な物を選ばせて貰った」

 「そうですか。

 いただきます」


 少し口を付け、飲んだフリをする。

 私が飲んだのを見た後に図書委員長は自分の紅茶を飲んだ。


 ふむ、毒は入っていないか。


 今度こそ紅茶を飲む。

 うん、美味しい。


 「って、こんなことしている場合じゃなかった。

 わざわざ呼び出して一体何の用ですか?」


 カップをテーブルへ戻し、本題に入る。

 だが、私の質問に図書委員長はきょとんとした表情を浮かべた。

 え、何その表情。


 「特に用はないんだ。

 強いて言うなら君が俺に何か言うことあるかなぁと思って」


 キラキラと、上目遣いで何かを期待する目で見つめてくる図書委員長。


 何故上目遣いか。

 それは、彼が私が座るソファーの近くで正座しているからだ。

 誤解の無いように言っておくが別に私は強要はしていない。

 彼が勝手にそこに座ったのだ。

 端から見たらあたかも説教する側とされる側の図なので勘弁して欲しい。

 何故そこに座るのかと聞いても気にするなとの返答しか帰ってこないので結局、気にしないことにした。


 「で、言いたいことは?

 ほら、例えば置き土産に関してとか」


 図書委員長の言葉にハッと我に帰った。

 どうやら現実逃避していたようだ。


 と言うかやっぱり置き土産(盗聴機)のことかい。

 私の家では無いのに何故わざわざ祖父母の家に仕掛けて行ったのか疑問だったのだが今の図書委員長の言葉で完全に理解できた。


 大方、私に罵って欲しくて仕掛けたのだろう。

 気付かれなかったら今ネタバレして祖父母好きな私に罵られ、フェイクが見つかっても私に罵られあわよくば本命で何か聞こえないだろうかと一回で二度美味しい的な何かを狙っていた。


 こんなところだろう。


 こいつの思う通りの反応をしてたまるか、と心に固く決める。


 「さて、何のことですか?

 置き土産なんてありましたっけ?」

 「くっ……!そう来たか」

 「特に用も無いみたいだし帰りますね」


 腰を上げると慌てて手を掴まれた。


 「ああ!用はある、あるぞ!」

 「何ですか?」


 さっさとしろよ。

 若干、苛立ちを覚えながら図書委員長を見ると頬を赤く染めやがった。

 しまった、視線だけでも駄目だったか。


 やり辛くてたまらない。


 「その、り、リコールの件についてだ」

 「………ふむ」


 図書委員長の言葉にソファーに座り直す。

 私が座ったのを見ると図書委員長はほっとした顔で話を続けた。


 「署名を集めて欲しいんだ」

 「……署名、ですか?」

 「あぁ。

 リコールをするには最低でも生徒全体のうち三分の二の署名が必要だ。

 今のところ協力者によって中立派や君に好感を持つこちらよりの人の署名を集める事によって全体の四分の一程度は集まったんだが表立って集める訳にはいかないから中々の進まないのが現状だ」


 へぇ、私に好感を持っている人何て居たのか。

 てっきり波崎さん派かことなかれな中立派しか居ないと思っていた。


 「俺も手伝いたいんだがいかんせん怪しまれるから余りあの女から離れたり単独行動はできない。

 そこで、君に協力して欲しいんだ」

 「私に人望があるとお思いですか?

 私に頼むよりさっきカウンターにいた彼に頼んだ方が良いかと。

 彼も協力者なのでしょう?」

 「あぁ、そうなんだが、彼は彼で頼んでいる仕事があるし、他の人もみんな何かと忙しくて署名集めが余り進まないんだ。

 その点、君は部活にも入っていないし時間は多いと思ってな。

 手段は任せるから頼めないか?」

 「……本当に手段は私の自由で良いんですね?」

 「あぁ、ただし無理矢理は無しだ」

 「分かりました、では署名用の用紙と生徒会役員が所属しているクラスを教えて下さい。」

 「用紙はこれだ。

 所属クラス?別に良いがそんなのどうするんだ?」

 「手段は私の自由ですよね?

 なら、余計な事は聞かずに教えなさい」

 「っ!あ、あぁ、分かった!!」


 図書委員長を見下しながら有無を言わさない態度で手を差し出すと直ぐにメモをくれた。


 何となく図書委員長の操縦方法が分かってきた気がする。



 「それじゃあ、用件は終わりですね?

 お茶、ご馳走様でした。

 失礼します」

 「あ、ちょっと待ってくれ!!

 せめて一蹴り」

 「黙れ変態が」


 どさくさに紛れて足にすがり付こうとした図書委員長を避けてさっさと司書室を後にした。










 がやがやと騒がしい居酒屋の一角で私は話を続ける。


 「では、その方向でよろしくお願いします」

 「ああ、分かった。

 だが、私に出来るのはその場を用意することまでだ。

 そこから先は全て君の力だけで何とかしないといけない」

 「はい、分かっています。

 それにこれは私の戦いですので」

 「すまない、ここまでしかできなくって」

 「いえ、その場を設けて頂けるだけでとてもありがたいです」


 私の言葉に目の前にいる人物は微笑んだ。


 「とにかく、これからも何かあったら出来るだけ手を貸そう」

 「ありがとうございます。

 その時はよろしくお願いしますね?」



 握手を交わし、私は店を後にした。


とある方に図書委員長が盗聴機を仕掛けた動機を先読みされてしまいました。

ちょっと悔しいですね(笑)

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