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日刊ランキングで2位になりました!

見た瞬間あわあわしました。


実は投稿したその日は、家に財布を忘れて出掛けたりトイレに手帳をダイブさせたり、眼鏡が吹っ飛んだりと散々な1日だったのですがこのためだったのかと気分が浮上しました(笑)

ありがとうございます。

 昨日はわくわくし過ぎて眠れなかったので、結局寝ることができた時には朝方だった。

 お陰で物凄く眠い。

 折角の休み何だからと昼過ぎまで寝ようとしたが母親に叩き起こされた。

 何でも、私に客だと言う。

 誰だ一体。

 ワリと本気で殺意を覚える。



 とりあえず手短に身支度を整え、客間に向かうと丁度お盆を片手に祖母が部屋から出てきた所だった。

 何やらテンション高く話し掛けきた。


 「あんたいつの間にあんな顔の良い男捕まえたんよ!

 中身はともかく顔は凄いじゃないのさ!

 流石私の孫ね!!」

 「顔の、良い………男?」


 頭の中で警報が鳴り響いた。

 何となく検討はつくが即座に脳内で私の居場所を知っており、この時期に私の所に来そうな人物を検索する。

 結果、中身は残念、顔の良い男と言うキーワードから生徒会役員共の誰かと言う推測が立った。


 「………その人、どんな髪色していた?」

 「え?黒髪の人よ?」


 あぁ、図書委員長か。


 黒髪は図書委員長しかいないのでまず間違い無いだろう。

 ふとここで、話の通じない眼鏡金髪碧眼や赤髪ヤンキーじゃなくて良かったと思うべきか図書委員長が来たことにがっかりすべきか悩んだ。

 が、どちらが来てもはた迷惑ということに変わりは無いので結局はどうでもいいと言う結論になった。

 と言うかどうせ羽崎さんの事だろうが何で休日にわざわざ新幹線に乗る距離を移動してまで私に会いにくるんだ。

 平日でも良いじゃないか。

 むしろ平日にしろよ。

 休日は大抵の人が昼過ぎまで寝てだらだらするものと言うのが世間一般常識だろうが。


 と心の中で毒づきながら客間には入らず一体自分の荷物が置いてある部屋まで戻る。

 自分の鞄を漁って目的の物をズボンのポケットに入れる。

 今日は偶々カーゴパンツを履いていて良かった。

 ポケットがたくさんあるので物を隠し持つのに便利だ。


 そしてようやく客間に入ると、私服姿の図書委員長が茶を啜っていた。

 私の姿を見ると直ぐにテーブルに茶器を起き、一礼する。


 「こんにちは。

 すまない、こんなところまで押し掛けて来てしまって」


 本当にな。


 そんな心中はおくびにも出さず私は図書委員長の前に座る。


 「いえ、お気になさらず。

 それで、図書委員長様がわざわざ私の様なごく普通の一般生徒に会いに来るとは一体どのようなご用件で?」

 「…ごく普通………?」

 「何か?」


 にっこり微笑むと視線を逸らされた。


 「それで、ご用件は?」

 「あぁ。

 先日は迷惑をかけた様で申し訳なかった。

 お陰で、この通り何事も無く日々を過ごせる。

 一重に君のお陰だ。

 どうもありがとう」

 「そうですか。

 それは良かったですね。

 用件は終わりですね、玄関まで案内します」

 「まぁ、そうつれないこと言うな。

 むしろ本題はこれからだ」


 面倒なことになる前にさっさとお帰り願いたかったのだがどうやらまだ居座る気のようだ。

 本題はこれからとか嫌な予感しかしない。

 と言うかあんた、無口キャラじゃなかったのか。


 「最近、学校楽しいか?」

 「さぁ?」

 「さぁ、とは?」

 「図書委員長様の目から見て私の学校内における生活はどの様に感じますか?」

 「質問に質問を返すな」

 「それは失礼しました。

 それで、どの様に感じますか?」

 「だから質問に質問を返すなと…………まあ良い。

 どの様に、か。

 そうだな、とても楽しそうで、学校生活をエンジョイしている様に感じる」


 図書委員長の返答に警戒レベルを最大レベルまで上げた。


 確かに私は今の状況を思う存分満喫してエンジョイしている。

 だが、それを誰か………誰かって言うか羽崎さんとかに知られると楽しさが半減する可能性があるので態度には出していない。

 それこそ我ながら完璧だと自画自賛するくらい。



 そんな私の学校内における扱いを見て楽しんでいると感じたとは………。

 こいつは、ただの無口キャラじゃない。


 前世での医者としての技術や今世で得た知識を総動員して相手を観察する。

 眼球の動き、息遣い、顔色、体の震えなどの細かい動きやちょっとした身振り手振り、声の調子、体勢。

 ありとあらゆる箇所を僅かな動きでも見逃さないよう気をつけながら口を開く。


 「図書委員長さんがそう感じたのならそうなのでは?」

 「そうか………お前は強いな」

 「はぁ?」


 いきなりしみじみと頷きながら言われた言葉に思わず怪訝な表情を浮かべる。


 「だってそうだろう?

 あんな理不尽な事をされても学校を辞めたりしないでちゃんと来て、しかも学生生活を満喫しているんだ。

 お前は凄いよ」

 「そうですか。

 それはどうも」


 その状況になった要因筆頭の生徒会役員が言うと嫌味にしか聞こえない。

 本人もそれに気付いたのか苦笑いを浮かべる。


 「すまない、俺が言うべき言葉ではなかった」

 「いえ、別に気にしていないので気にしないで下さい図書委員長さん」

 「………………その『図書委員長さん』と言うの止めないか?

 他に黒魅鳥くろみとり君とか、何なら優夜とかでも良いんだぞ?」

 「図書委員長は図書委員長であり、図書委員長以外にはなり得ないので図書委員長のままで呼ばせて頂きます」

 「いやしかし……」

 「お話がこれだけならそろそろ……」

 「分かった、図書委員長で良いからそんな追い出そうとしないでくれ」


 図書委員長が諦めたので上げかけていた腰を再び落とす。


 ふー、危ない危ない。

 図書委員長の呼び方はイベント誘発のキーワードだ。

 危なく好感度アップイベントが勃発しそうになったが何とかフラグを折ることに成功した。


 図書委員長などお呼びでないのだ。

 攻略する気は更々無い。


 ……それにしても何だろう、ちょいちょい図書委員長攻略ルートに入れさせようとするこの感じ。

 かなり面倒臭い。


 「呼び方はどうでも良いとして本題は何ですか?

 まさかわざわざ私の学校生活を確認するためだけに家庭訪問紛いの事をした訳ではありませんよね?」

 「あぁ。

 では、君も気になる様だし本題に入るとしよう」


 ごほんっとわざとらしく咳をする図書委員長。

 勿体ぶるな、早くしろ。

 そしてさっさと帰れ。


 一度、ちらりと下に視線をやってから図書委員長は話し出した。


 「君は、今の生徒会の現状を知っているか?」


 はて、いきなり何を言うかと思えば生徒会の現状とは。

 良く意味が分からない。


 「と言うと?」

 「あの羽崎明と言う女子生徒が転校して来てから俺以外の生徒会役員全員が彼女に掛かりっきりで仕事に支障が出てきている。

 最初は言えば渋々ながらもみんなはやってくれたが、今となっては始終ベッタリで全くと言って良いほど仕事をしない。

 したとしても書類をきちんと確認もせずにただ機械的に判子を押したりサインをするだけだ。

 そんなのそこいらの小学生でもできる」

 「まぁ、確かに」


 ただ押すだけなら誰にでもできるからな。



 「そんな訳で最近ではどうしても各担当の判子やサインが必要な物以外は俺が肩代わりをしている。

 本来なら八人で分担する仕事を一人でやるのも、今は良いが学校祭など大きな行事がある場合は流石に無理がある。

 だが、俺は一人しかいないし出来る仕事量にも限界がある。

 このままだと、いつか倒れる可能性が高い。

 ………この間みたいにな」


 せめて会長だけでも働いてくれたら、と大きくため息を吐く図書委員長に哀愁が漂っている。


 あれだな、上司が無能だと部下が困ると言う典型的なケースだな。

 こいつは将来中間管理職についてストレスで毛根が可哀想な事にやるタイプだ。


 まぁ、頑張れと生暖かい目を頭部に送っておく。



 「と言うか実際俺が休んでいる間にも全く仕事をしなかったようでかなりの書類が溜まって業務が滞っていた。

 ここできちんと仕事をしてくれていたのなら俺も少しは考えたのだがもう会長達は駄目だ。

 このままだと他の一般生徒たちに迷惑が掛かってしまうし、実際に一部の生徒には掛かっている。

 だから俺は彼らをリコールしようと思っている」


 ほう、リコールか。


 図書委員長の言葉に目を細める。


 使えないばかりか他の人間の足を引っ張っている邪魔者は切り捨てる。

 確かに人の上に立つ人間として正しい判断だ。

 図書委員長に対する評価を少し見直した。


 だが、私的にリコールはとても困る。

 何としてもリコールが起こる前に全ての決着を着けなければならない。

 丁度、舞台が良い感じに整ってきていて良かった。

 後はここぞと言う時に手札を晒すだけなのだから。


 「そうですか、リコール頑張って下さいね。

 いつ頃やる予定何ですか?」

 「取りあえず学校祭が近いからその一ヶ月前までにはリコールしたいと思っている」

 「………一ヶ月前って、あと二ヶ月で学校祭じゃないですか」

 「ああ、だからここに来た」


 ちょっと待て、嫌な予感しかしない。


 そして私のその予感は正しかったと次の図書委員長の言葉で証明された。


 「新しい生徒会に入ってくれないか?」

 「お断りします」


 コンマ0秒も掛からず断った。


 そんな私に断られると思っていなかったのか図書委員長は固まった。

 しばらくしてから掠れた声を出す。


 「な、何故?」


 いや、だって面倒臭そうだし。


 私は無言で茶を啜る。


 「今の状況から君が生徒会に入る事を反対する人がいるからと思って断っているのなら大丈夫だ。

 君がきちんと成果を出せばそんなのは直ぐに払拭される。

 だから生徒会に入ってくれ」


 断られるはずがないと自信満々に言ってくる図書委員長にイラッとした。

 その自信はどこからくるんだ。


 悪い奴では無いのだろうと思っていた彼に対する評価が下がり始める。


 大体、何なんだお前は。 若干上から目線で何様のつもり何だ?


 苛立ってくる気持ちを抑えながら茶を一口飲み、図書委員長を真っ直ぐ見つめて言った。


 「お断りします」

 「何故なんだ!?俺が、こんなにも頭を下げて頼んでいるのに!!」


 下げてないじゃん。

 折角抑えようとしていた苛立ちがピークへと達した。

 ふむ、私は自分で思っていたより沸点が低い様だ。


 深いため息を吐きながら湯飲みをテーブルに戻す。

 思ったより大きな音がなり、図書委員長はぴたりと開いていた口を閉じた。

 私は少し声の音量を小さくして話す。


 「私は、私がこの人の下に就きたいと思えた人物の下にしか就く気はありません。

 まぁ、そんなの社会に出れば否応なく自分の意思とは関係なく上司は決まりますが。

 でも、だからこそ学生である程度我が侭が通る今だけはこの気持ちを貫きたいと思っています。

 確かに貴方は他の生徒会役員の仕事を一挙に肩代わり出来る程有能な人物かも知れない」

 「だったら!」

 「だけど貴方は私が下に就きたいと思えるに足る人物じゃない」

 「……何、だと」


 私の言葉に図書委員長が顔色を無くす。


 「先ほどの貴方の言葉一つ取ってもそうです。

 『今の状況から君が生徒会に入る事を反対する人がいるからと思って断っているのなら大丈夫だ』 でしたっけ?

 その現状を作り出した大きな要因とも言える一人が何をぬけぬけと言っているのですか?

 『君がきちんと成果を出せばそんなのは直ぐに払拭される』?

 確かに私の力で成果を出さなければコネがどうとか取り入ったなどと言われるのでその言葉は分かります。

 ですがそこに『こんな状況を作っておいてすまないが』とか『出来る限りでサポートはする』とか言う言葉とかが入っても良いんじゃないですか?

 状況を作り出すだけ作り出して放り出すなんて人としてどうなんですか?」

 「ぐっ………だ、だが、俺はあいつらとは違って君に対して何か危害を加えるような行動は取っていない!!」


 そう叫んだ図書委員長を冷たい眼差しで見つめ、言った。


 「そうですよね。

 貴方は、ただ見ていただけ(・・・・・・・・)ですよね。

 そして自分が大変な目に合ってから初めて動く様な人ですもんね。

 ええ、とても素晴らしい人だと思いますよ。世渡り上手で。

 私としては同じ職場で働いたりするのは願い下げですがね」


 私の言葉に図書委員長はカッと頬を赤く染める。


 「だから私は貴方の下に就かないし生徒会には入らない。

 ご理解頂けましたか?」


 図書委員長は俯いて大きく呼吸を繰り返している。

 自分の中の怒りを鎮めようとしている様だ。

 ここで怒りに任せて行動を取る人物だったら彼の評価は地へ堕ちただろうが落ち着こうとしている辺りあの生徒会役員共の中ではまともな人物だと思う。


 「………俺の下に就きたくないのなら、新しい生徒会になったあかつきには君を生徒会長にしよう。

 それでも駄目か?」


 図書委員長の言葉に目を見張る。


 「それ、本気で言っているんですか?」

 「あぁ、本気だ」


 重々しく頷いた図書委員長。

 それに対して私は呆れた感情しか浮かばない。


 「貴方は馬鹿ですか?

 私は貴方より立場が下だから入りたく無いわけでは無いんですよ?

 だから私が貴方より立場が上になるからと言って生徒会に入る訳ないじゃないですか。

 大体、学校祭と言う大きな行事が迫っているのに私の様な素人がトップに収まってどうするんです。

 見当違いな指示を出して場の混乱招くに決まっています。

 そこは現在生徒会役員を務めている貴方が会長をすべきでしょう」

 「君が会長になったらそこはちゃんとサポートする」

 「サポート?例えば?」

 「そ、その……仕事のノウハウを仕込んだりとか、し、書類に間違いがないか確認したり、とか」


 しどろもどろになる図書委員長。

 だが、私は追求の手を緩めない。


 「書類の確認?

 何故そんなわざわざ二度手間になることをするんですか?

 それなら貴方が会長になった方が手間が掛からずに済むでしょう。

 そんな面倒な事をする位なら貴方が会長になりなさい。

 ………前生徒会役員の方々が補佐をするのならまだ話は違ったかもしれませんが現状を見る限りそれは難しそうですしね」

 「………………分かった」


 やっと分かって貰えたか。

 さぁ、今度こそご退場願おう。


 「君の言う通り俺が会長になることにしよう。

 そして、君の指摘通り前生徒会役員が新生徒会役員の補佐にしばらくは就くように検討する」

 「そうですか」


 じゃあ話は終わりだな、帰れ。


 「他に問題点はあるだろうか?」

 「それは私ではなく貴方が考えることです」

 「うっ、た、確かにそれもそうだな………。

 ところで、君に提案があるのだが」

 「お断りします」


 何かを言われる前にきっぱりと拒絶した。

 図書委員長は頬を赤くし、顔を歪めるが深呼吸をして自分を落ち着かせる。


 「これを受けてくれれば君に生徒会に入らないかと勧誘するのをこれっきりにする。

 受けてくれないのならこれからは毎日休み時間ごと勧誘するために君に会いに君の教室を訪ねよう。

 そして毎日君の登下校の送り迎えをさせて貰い、休みの日には君を外出に誘おう」

 「で、提案は何ですか?」

 「………少しは悩んで欲しいんだが」

 「良いからさっさと言え」

 「あ、はい」


 さっき図書委員長の言葉を聞いたとたん鳥肌が立った。

 こう、物凄くぞわぁっとした悪寒が走った。


 「リコールをする準備と、リコールをして新生徒会が正常に機能するまでの間を手伝って欲しい」

 「………ふむ」


 それは私にも益のある話だった。

 リコールが掛かるまでの正確な時間を知ることができ、しかも私が思い描いていた結末よりも更に面白い結末にすることが出来る。

 その上さらに私の行動が人のためになると言う一石三鳥。

 これは願ってもない提案だ。


 「……分かりました。

 貴方の提案を受けましょう。

 微力ですができる限りは手助けします」

 「ありがとう。

 何か問題点があったら直ぐに指摘してくれ、むしろ殴ってくれても構わない」

 「いや、殴るのはちょっと」


 それで傷害罪で問われたりしたくない。


 「じゃあ罵倒でも良いからとにかく厳しくしてくれ」

 「指摘はしても罵倒はしませんよ」


 何かのミスに対して罵倒するのは馬鹿がやることだ。

 何かあったら懇切丁寧に何故そのようになってしまったのかを説いて良く問題点を理解させた方が部下の成長に繋がる。


 「じゃあ、何も無くても良いから罵ってくれ」

 「………何ですかその提案は」


 あれ、雲行きが怪しくなってきたぞ。


 「実はこの間君が生徒会室に来たときに気付いたんだ……………俺は……蔑まれるのが好きだと!!」

 「……は?」


 唖然とする私を他所に図書委員長は熱く語る。


 「あの反論を許さず正論をこんこんと説く容赦の無さ!

 冷たい鋭利な氷のような声!!

 まるでゴミを見るかのような蔑んだ目!!!

 君が火鳥たちと話している時、俺は例えようのない興奮をこの身に覚えた。

 そして思ったんだ『俺に対して君にあの目と態度をされたらどれだけ快感なんだろうか』……と。

 そしてその言葉を受けているあいつらに嫉妬した」


 うっとりと空を見つめる図書委員長。

 見た目がイケメンなだけに熱を帯びたその姿の色気が半端ない。

 その姿を見て私は思った。


 こいつ、ヤバい人種だ!!!!


 もしかして、祖母が言っていた『中身は残念』ってこう言う意味なのか!?

 流石人生の酸いも甘いも噛み分けたお方だ。

 ただ、私にもその恩恵を分けてほしかった!!!


 図書委員長の提案を承諾したが、ちょっと早まった感が半端ない。



 「と、とにかく!

 話は終わりですね?ではそろそろお帰り願いたいのですが」

 「ああ、確かに余り長居をしてもあれだろうしそろそろ帰るよ。

 手伝いの件、引き受けてくれてありがとう。

 期待している」


 一瞬、働きを期待されているのか罵倒を期待されているのか判断に迷ったが前者だと信じることにした。

 むしろ前者であって欲しい。


 「それじゃあ、失礼する」


 荷物を手に立ち上がった図書委員長。


 「はい、玄関まで案内します。

 ……ですがその前にその荷物の中にある物を置いて行って下さいね」

 「っ!!

 な、何のことだ!?

 俺は別にやましい物など持っていない!!」

 「疚しくないのでしたら見せられますよね?」

 「ぷ、プライバシーと言うものが」

 「じゃあ、見せなくても良いのでその中のボイスレコーダーだけ出して下さい。

 ありますよね?その中に」


 そう言いながら手の平を差し出すと観念したのか渋々荷物からボイスレコーダーを取り出した。


 やっぱりか。

 かまかけて正解だった。


 再生させると先ほどまでの会話が録音されていた。


 「何でわかったんだ?」

 「図書委員長は心配性なんですね」

 「ん?」


 私の返答に図書委員長は首を傾げた。

 私はつらつらと種明かしを始める。


 「最初に私と会話を始める際、一度下を向いて荷物を見ていました。

 それから話の間がある時とかも何度かチラチラと荷物を見ていたので『あぁ、これは何かあるな』と思ってかまをかけさせて頂きました」

 「………何故ボイスレコーダーだと?」

 「ボイスレコーダーだと思ったのは声が小さくなると一瞬心配そうな表情をされたのでそうかなと」


 後は私ならボイスレコーダーを持ってきていると思ったからだがこれは言わない。


 「と言うわけで消しますね」

 「そ、それだけは………!

 帰ってから君の罵倒部分を繰り返し聞く予定なんだ!!!

 後生だから止めてくれ!!!」

 「消す」


 問答無用で消して他にその手の類いが無いか確認してからお帰り願った。


 図書委員長が帰ってから彼の座っていた付近を調べると小型盗聴機がテーブルの裏側に貼り付けてあった。

 何でこんな分かりやすい物を残して行くんだと呆れながら指紋が付かない様に気をつけて取り外しジップロックの中に厳重に保管する。

 そしてポケットの中に入れていた機械を取り出し、電源を切った。


 この機械は特殊な電波を発して盗聴機などの通信を妨害する物だ。

 初めて使ったので少々不安だが、多分上手くいっただろう。

 念のため盗聴機感知機で調べると掛軸の裏側にもあった。


 なるほど、分かりやすい方はフェイクか。

 少し感心すると同時に図書委員長へと警戒を忘れないことを心のメモに記入しておく。



 全ての作業が修了してから自分の荷物がある部屋へと戻る。


 さて、計画を練り直すか。





 ………変態への対策も含めて。


エンディングに迷ってます。


補足、図書委員長が俯いたり顔を赤くしたり歪めているのは全て主人公の言葉に快感を覚えているだけです(笑)

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