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ほぼ同じです。

 さて、何故私がこんな扱いを受ける状況になっているのか。

 それを説明するには話は二週間程前に遡る。


 私と羽崎さんが友達になって三日後。

 私はその日、羽崎さんに放課後空き教室に呼び出された。

 何でも、女の子同士で話したい事があるんだとか。

 『一体何の話だろう?

 女の子同士と言ったらやっぱり………恋バナ!?』


 攻略キャラに関する話だろうか、なんて想像して私は年柄にもなくウキウキしながら放課後空き教室に向かった。

 空き教室にはすでに羽崎さんがいた。



 「ごめんなさい、待たせちゃった?」

 「ううん、あたしも今来たところだよ」



 こんなデート前の定番会話を私から引き出すなんて流石ヒロイン。

 内心ニマニマしながら表面上は何でもない顔をしてそれで話って?と会話を切り出した。



 「うん、あのね?ちょっとお願いがあるの」

 「お願い?何?」

 「あの、あのね?」



 もじもじと顔を赤らめて俯いている羽崎さんはとてつもなく可愛らしい。

 思わず何でもしたくなる可愛さがある。

 しばらくもじもじした後、羽崎さんは意を決した様に私を見上げて言った。



 「あたし、アンタが嫌いなんだ。だから消えてくんない?」



 いきない喋り方と態度が変わってお姉さんびっくりです。



 「………んーと、なんで私が嫌いなのか聞いても良いかな?」

 「アンタ、あたしの逆ハーを邪魔する気でしょ?」



 逆ハー?いやいや、それよりも。



 「邪魔?邪魔なんかするつもりは全く無いけど?」



 友達になったとは言え、羽崎さんとの戯れを邪魔したら反応が面倒くさいから取り巻きがいるときは近付かないようにしていたはずなんだが。



 「へぇ、惚けるんだ?

 大人しく消えてくれるんだったらこんなマネしたくなかっんだけど、アンタがそう言うならこうするしか無いよね?」



 そう言うと何処からか果物ナイフを取り出した羽崎さん。

 すわ斬りかかってくる気か、そう身構えた私を他所に羽崎さんは自分の左手首にナイフを押し当てて引いた。

 うっすらと血が出る。



 「何してんの!?」



 思わず羽崎さんの手首を取り、ハンカチをポケットから取り出した。

 遠目に見た感じ皮膚を少し切っただけだが手首に後なんて残ったら将来苦労する。

 傷跡が残らないように早目の処置が必要だ。



 「止めて!離して!!」



 人が手当をしようとするのに暴れる羽崎さん。

 ええい、じっとしろ!ナイフを投げつけるな、危ないだろうが!!



 「キャー!誰かぁ!」

 「大丈夫か明!」

 「明、無事ですか!?」

 「明、もう、大丈夫だから」



 取り巻きの三人が空き教室に飛び込んできた。



 「丁度良かった、手伝って下さい!」

 「ふっざけるな!」

 「明から手を離しなさい!」

 「………邪魔」



 手当ての手伝いを頼んだが、三人は私を押し退けて羽柴さんを取り囲んだ。

 赤髪ヤンキーに関しては体当たりしようとしてきたのでそれを華麗に回避する。



 「明、一体何があったんですか?」

 「もう、大丈夫……だから」

 「落ち着けって、な?」



 三人は甲斐甲斐しく羽柴さんに話しかける。

 話しかける前に傷の手当てをせんか馬鹿どもが。



 「!?明………怪我、してる」

 「「え!?」」



 やっと銀髪無表情が羽崎さんの手首の怪我に気が付いた。

 そうそう、だから早く手当てを………



 「彼女が………、彼女が『死ね』って言っていきなり斬りかかってきて……うっ、ふぇぇん。

 こ、怖かったよぅ」

 「もう絶対そんな目にはあわせねぇから」

 「よしよし、もう大丈夫ですからね」

 「傷が……残ったら、僕がお嫁さんに…してあげる」

 「誰がお前何かの嫁にするか!明は俺の」

 「傷が残ろうが残るまいが僕と結婚しましょうね、明」

 「俺の台詞とるなよ眼鏡!」

 「こう言うのは言ったもん勝ちです」



 別段命に関わる程ではないが怪我をほったらかしにして騒ぎ始める三人に呆れた眼差しを送っていると羽崎さんがわざとらしく怯えた。



 「ひっ、睨んでる」



 その途端三人が凄い形相でこちらを睨み付けてきた。

 いや、羽崎さんは見ていなかったんだが……。



 「てんめぇ……よくも明に…!」

 「今すぐそこで死になさい、明の綺麗な肌に傷をつけるなど万死に値します」

 「許さ、ない」



 憎々しげな表情にため息が出た。



 「なんですかその態度は?貴女は自分がやったことが分かっていないんですか?」

 「殺す!マジで殺すあいつ!」

 「同じ、目……合わせる」



 ジリジリと近付いてくる三人に私は冷ややかな目を向けて言った。



 「良く傷口を見ろ、血管までは届いていない浅い傷だ。

 清潔に保てば後も残らず綺麗に治る。

 そんなに彼女に傷が残るのが心配ならさっさと保健室に連れて行くのが賢明な判断だと思うが?」



 おっと、呆れるあまりつい三人に対しての敬語が抜けてしまった。

 口調には気が付かなかったのか、三人はハッとした表情を浮かべて再び羽崎さんにまとわりつく。



 「!、そ、そうだ、早く明を保健室に!」

 「ええ!急ぎますよ!」

 「手当て、しなきゃ」

 「良かったら傷口を押さえるのにこのハンカチを使って下さい」

 「いりません、誰が貴女なんかのを使いますか」

 「お前なんかのを使ったら明が汚れる」

 「……汚い」



 腹立つなこいつら。



 人の折角の親切心を拒否して今度は誰が羽崎さんをお姫様抱っこしていくかで揉めながら慌ただしく四人は空き教室を出て行った。

 残された私はとりあえず、取り出したのは良いが使わなかったハンカチでそっと羽崎さんが忘れて行った果物ナイフを拾い上げ、四人が蹴散らかして行った椅子や机を直した。


 やれやれ、生徒会役員なら生徒の見本になる行動を取れよ。









 羽崎さんの自傷行為を目の当たりにした次の日、私は生徒会室に呼び出された。

 今現在、目の前には羽崎さんと九人の見目麗しい男が勢ぞろいしている。


 俺様白髪で生徒会長な白鳥(しらとり)なんちゃら。

 緑髪腹黒双子で会計監査な緑家鳥(りょくやとり)(以下略)。

 茶髪爽やかで保健委員長な茶枝鳥(ちゃしとり)(以下略)

 黒髪根暗で図書委員長な黒魅鳥(くろみとり)(以下略)。

 紫髪チャラ男で生徒会顧問な紫鳥(ゆかりどり)(以下略)。


 ちなみにお馴染みの三人に加え、この六人も羽崎さんの取り巻きと言うか逆ハー要員である。

 生徒会長とかは別に良いとしても最後の紫鳥に関しては教師が生徒の取り巻きになったらいかんだろう。

 生徒に手を出すなってのに。

 あぁ、あれか?ロリコンか?ロリコンなのか?


 そんな無粋な私の考えを察知したのか睨まれた。

 ふむ、勘が鋭いんだな。


 ちなみに生徒会と顧問全員の髪色は白、金、銀、緑、赤、茶、黒、紫と一色足りないが何処ぞの戦隊物かと言いたくなるほど鮮やかだ。

 正直言って目がチカチカする。

 これに囲まれている羽崎さんは目が痛くならないのだろうか。



 「君をここに呼び出した理由は分かっているんだろうな?」



 会長の質問に、明後日の方向へ飛んでいた思考回路を呼び戻す。



 「さぁ?

 私はこの学校に転校してきてまだ少ししか経っていないですし特に問題行動を起こした記憶も無いので思い当たる節がありませんが」

 「なるほど、顔と同じで頭も冴えないようだな」



 は、と鼻で笑いながら言い放たれた言葉。


 ……いや、別に怒らないよ?

 挑発だってことは分かり切っているし、挑発に乗ったらいちゃもん付けられるのが目に見えているもん。

 表情を変えない私に会長は舌打ちを一つして、副会長から何か書類を受け取った。



 「先日、お前が羽崎明に刃物を向けて怪我をさせたと言う事件が起こったそうだが何か申し開きはあるか?」

 「申し開き?それだとまるで私が羽崎さんを切りつけたみたいじゃないですか」



 私の言葉に会長は眉を上げた。



 「実際そうだろう」

 「事実無根ですね。私は無罪です」

 「ふざけるなっ!」



 バンッと勢い良く机を叩いた会長。

 ふむ、手が痛そうだ。



 「明の手を見てみろ!それでもまだ同じことが言えるのか?」



 会長に言われ羽崎さんに視線をやった。

 羽崎さんの左腕は袖口が肘までまくり上げられていた。

 手の平から肘まで包帯で巻かれているのが見える。



 「全治五週間、後少し深かったら命に関わる怪我だったそうだ」



 ……………いやいやいや、ちょっと待て。

 怪我は確かに手首という一歩間違えれば大量出血の危険極まりない場所にあったが傷は浅かったしあんなに包帯をぐるぐる巻くほどの怪我じゃなかった。

 リストバンドの様に数回巻く程度で充分だ。

 ハッキリ言って包帯の無駄。

 全治五週間?馬鹿か。

 あんな切り傷一週間もあれば綺麗に治る。



 「……ちなみにその怪我の報告は一体誰に聞いたんですか?」

 「明本人からだ」

 「……医者の診断書とか見ました?」

 「明が病院に行って聞いて来たんだ、確かな情報に決まっているだろう」



 会長の言葉にこめかみがズキズキと痛んだ。

思わず眉を顰め、気休め程度に指先で右こめかみを揉み解す。



 「……確かに手首と言う危険な場所ですが私が見た限り羽崎さんの怪我は左手首の浅い切り傷、血管には届いていませんでした。

 そして全治五週間?そんな馬鹿な。

 長くて一週間で完治するでしょう」



 私の言葉に会長は眉をしかめた。



 「………何だと?お前は明が嘘を吐いているとでも言いたいのか?」

 「残念ながらそうですね」

 「ふ「ふっざけんな!!」



 会長の言葉を遮って赤髪ヤンキーが怒鳴った。



 「さっきから黙って聞いてりゃ下らないことをベラベラと抜かしやがって、お前がやったってことは分かってんだよ!」

 「そうですよ。何せ、目撃が三人もいるんですから言い逃れは出来ませんよ」

 「観念………しろ」



 赤髪ヤンキーに追従するかの様に眼鏡金髪と銀髪無表情が詰め寄ってくる。


 あぁ、鬱陶しい。



 「おいお前たち、落ち着きなさい。

 彼女が驚いているだろうが。

 大丈夫かい?」



 そう甘いマスクで微笑んでくる顧問。

 だが、目が笑っておらず、その目に蔑みが含まれているのがはっきりと見て取れた。


 やれやれ、生徒が生徒なら顧問も顧問か。

 一辺足りともこちらの話を信用しようとしない。



 「誰も君を責めたりしない。

 だからちゃんと本当の事を言って良いんだぞ?」



 そう言いながらも目が思いっきり非難ごうごうですけど、保健委員長さんや。


 ふ、そこまで言うなら本当のことを話そうではないか。

 羽崎さんに盲目的な君たちは十中八九信じないだろがな。



 「分かりました、正直に話しましょう。

 ですが、その前に一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 「何だい?」

 「この中にいる方々で、羽崎さんの傷口を実際に見た方はいますか?」



 私の質問への回答は無言だった。

 ふむ、やっぱりか。



 「では、羽崎さんが本当に全治五週間と言う怪我を負っていると本人以外誰も証言出来ないのですね?」

 「僕、見た……!」

 「俺もだ!」

 「僕もです!」



 私が羽崎さんの怪我を追及していると、あの場にいた三人が名乗りを上げた。

 だが、視線が明後日の方向を向いているので嘘を吐いているのが丸わかりだ。

 素直か、分かりやすいな、おい。



 「明、血がたくさん……出てた!」

 「出血量ではなく怪我の深さは見たんですか?」

 「それは……」

 「お、俺は見たぞ!結構ふ、深くて焦ったのを覚えている!

 なぁ、眼鏡?」

 「眼鏡とか言わないで下さい!

 た、確かに僕もこの目でハッキリと見ました!

 あああの時の事をハッキリと覚えています!!」

 「お二人の見間違いの可能性は?思い込みが無いと、絶対だと断言できますか?」



 私の確認に、二人は勢い良く頷いた。



 「では、それも踏まえて考えもみて下さい。

 羽崎さんが怪我をしたのは左手首。

 ですが私は右利きです。

 となると羽崎さんの左手首を切りつけるには左手で手を掴んで右手で切りつけると言う状況になりますが、そうするとなると自然と私が腕をクロスさせながら切ると言う格好になります。

 人を切りつけるのに、ましてや血管に届くまでの深い傷の負わせるのにそれでは余りにも不自然だと思いませんか?」

 「でもさぁ、それって」

「君が斬りかかって来たのを」

 「咄嗟に腕で庇って」

 「手首が切れたって可能性も」

 「「あるよね?」」



 双子ならではのユニゾンな会話術。

 別に交互に喋らなくて良いんじゃないかと思ったがそれはおくびにも出さずポケットからあるものを取り出して双子に投げつけた。

 自分たちの顔に向かって飛んできた物から二人は咄嗟に腕で顔を庇った。

 腕にぶつかった物は床に転がる。

 床に転がった物を見て双子は首を傾げた。


 「「……みかん?」」

 「それは差し上げます。

 それよりも注目して欲しいのはお二人の腕の構えです」



 私の言葉にその場にいた全員が双子へと目を向けた。

 双子は手の甲を外側に向け、握りこぶしを作ってクロスさせた防御体勢を取っている。



 「この様に人間は自分の身を守る時、咄嗟に手の甲などの堅い部分、または血管の集まりが少ない所で攻撃を受け止めようとします。

 本能的に急所を守ろうとするんですね。

 つまり、これらを踏まえて私が切りつけたと考えるのには無理があるのでは?」



 私の言葉に素早く顧問が切り返してくる。



 「だが、目撃衝撃に君がさっき嫌がる明の手を無理矢理掴んでいたと言うのがあるが、それはどう言う事だい?」

 「私は羽崎さんが目の前で突然自分の手首を切りつけたので手当てをしようとしただけです。

 暴れられたので押さえようとしたのですが、たしかにそこだけ見たらそう言う風に見えたでしょう」

 「嘘だ!お前は明を無理矢理押さえつけて切りかかろうとしていた!!」



 そう叫ぶ赤髪ヤンキー。



 「では聞きます、私はその時ナイフを手にもっていましたか?」

 「……それは……斬りかかろうとしていたんだから持っていたに違いない!」

 「そうですよ、状況的に持っていたに決まっています!」

 「『持っていたに違いない』?『状況的に持っていたに決まっている』?

 先ほど自分たちが何と言っていたかもう忘れたのですか?

 あなた方は先ほど『あの時の事はハッキリ覚えているの見間違いや思い込みは無い』と、絶対だと断言していましたよね?

 それなのに『持っていたに違いない』や『状況的に持っていたに決まっている』などと曖昧な表現を発するのは矛盾していませんか?」



 私の言葉に二人は押し黙った。

 私は更に言葉を続ける。



 「あの時私は手にハンカチを持っていました、その証拠に親切心で羽崎さんの手当てに使ったらどうかと言って差し出しましたし。

 ……まぁ、それに対する返答は『誰がお前なんかのを使うか』『お前なんかのを使ったら明が汚れる』『汚い』などと言う言葉でしたが。

 生徒の見本となるべき生徒会役員が生徒にその対応は無いんじゃないですか?」

 「…………お前ら、それは本当か?」



 会長の言葉に三人は気まずげな表情を浮かべた。

 それを見て会長がはぁ、とため息を吐く。



 「この三人の非礼は俺が詫びよう、すまない」

 「「「会長……」」」

 「お前たちは黙ってろ、どんな状況であれ親切心を出した人間に対してその対応はないだろう。

 いかなる状況でも人として最低限の礼儀は持て、分かったな?」



 会長の言葉に三人は俯いた。


 なるほど、この生徒会長はまだ見所があるようだ。

 生徒会に対しての評価は駄々下がりだが会長個人に対する評価は若干プラスに修正された。



 「とりあえず後日また呼び出すからその時に詳しい話を聞かせてくれ。

 今は早急にこいつらから詳しく、正確に、事情を聞く必要性が出てきてしまったからな。

 手間をかけるがそれでも良いか?」



 会長の提案に私は頷いた。


 これ以上派手な髪色をした奴らの中にいたら本当に目に痛みを覚えてくるのでさっさとこの場からおさらばしたいところだ。

 まぁ、本当の理由は手札の一枚がまだ準備中だと言うことなのだが。

 まだ時間がかかりそうなので時間があるのはありがたかった。



 「それでは、また後日こちらに伺います」



 一礼して生徒会室を後にする。


 そう言えば図書委員長は一言も喋らなかったな。

 頭に黒髪の少年を思い浮かべるが、特に何の感情もわかなかったので記憶から直ぐに消し去った。

 それはさておき。

 さぁ、どの手札を使ってどう手の平の上で転がしてやろうか。

 いや、まだ料理するのは早いか。

 もう少し泳がしてから………。


 様々な未来を思い描いて私はほくそ笑んだ。















 だが、会長の言った『また呼び出すからその時に詳しい話を聞かせてくれ』と言う言葉が守られる事は無かった。


 私は次の日、朝一から校長室へと呼び出しを受け、弁明の余地なく問答無用で一週間の謹慎処分をくらってしまった。


 調べてみたら、あの後羽崎さんを問い詰めたところ

 『酷い!私のことを信じてくれないのね!!』

 と泣かれて全員が彼女の涙にほだされてしまったらしい。

 曰く、

 『こんなに綺麗な涙を流す子が嘘をつく訳がない!』

 とのこと。


 なんじゃそりゃ。

 綺麗な涙って涙の成分は大抵みんな同じだろうが、濁った涙とかあんのかよ。

 馬鹿じゃないのかあいつら、いや疑ったら駄目だな。

 疑われる辛さは私も知っている。

 断言しようあいつらは馬鹿だ。


 若干プラスされた生徒会長への好感度も地へ落ちた。



 そんなこんなで謹慎空けには私が羽崎さんを切りつけたと言う噂が学校中に知れ渡っており、完璧なアウェイ空間と化していた。


 さようなら平和な学校生活。

 そしていらっしゃいませ心踊るいじめ空間へ。


 机や椅子への落書きや切り込み、トイレで水をかける、下駄箱に虫や動物の死骸を入れると様々ないじめのオンパレード。

 そんなのは可愛い方で、中には暴行を加えようとする過激な人もいた。

 もちろん、返り討ちさせてもらったがな。

 前世では一応武術の有段者だったんだ。

 女と思ってナメないで欲しい。



 その過程で私は様々な協力者を得る事が出来た。

 羽崎さんへのサプライズの準備は着々と進みつつある。


 あぁ、そうそう。

 この学校、机とロッカーに鍵を掛けられるようになっており勝手に他人が開ける事ができなくなっている。

 それなのに嫌がらせをするためだけに鍵穴から注射針で墨を流し入れる強者が現れた。

 そこまでするとはなんたる執念!逆に関心してしまう。


 私は墨だらけになった机からジップロックにいれた教科書を鼻歌混じりに取り出す。


 是非ともこれをやった犯人とお友達になりたいものである。








 そんな感じでいじめの被害者である私が全く気にしていないからか徐々にエスカレートしつつあるこの状況。

 どんどん私好みの展開になってきている。

 何処まで悪化するのかとても見物だ。




 さて、この騒動を煽っているのは悲劇のヒロインを演じている羽崎さんだが、私に全くダメージが無いことを憎々しく思っているようだ。



 彼女の期待通りの効果が出ていないこの状況で、お次はどう出るのか。


 とても、とーても楽しみだ♪


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