第0話
【0】
「おもしれーな、お前。」
目の前の男が言う。壁ドンされて顔がとても近い。
こういう時、妹ならば馬鹿みたいに興奮してるシチュエーションだろうな、俺の頭は冷静だった。否、妹だけでなく、顔の造形が素晴らしく整った男に攻められ、何と言われれば世の女子は顔を赤くして言葉を失うだろう。
「は?何言ってんだあんた。」
あ、思わず。
間。
─少女漫画。恋愛を中心に登場人物の繊細な気持ちや人間関係を上手く表現して描いた女性向けの漫画ジャンル、らしい。妹もそれに魅了された一人だ。面の良い男に言い寄られるのが堪らないんだそうだ。俺からしたらそんなのカツアゲかと思う。そんなんだから彼女ができない言われたが、気にしない。俺には彼女(二次元)がいる。なんとでも言え。
ある日、リビングの机の上に妹の漫画が置いてあった。絵と共にタイトルが目に入る。
『すき!好き大好き♡』
・・・。
部屋に戻ろうとするといきなり俺は謎の光に包まれたのだ。
次に見た景色は知らない場所だった。これがかの有名な異世界転生ってやつか、本当にあるんだな。なんて他人事のように思う。
どうやら女の子の部屋のようだった。ふと鏡が目に入る。そこには─。
目が顔の半分ある化けm・・・女の子がいた。
俺は心の中で叫んだ。
よく見なくても妹の好きな漫画の絵に酷似している。ということは、俺は妹の漫画に異世界転生したということになる。
あの謎の光、そういえば妹の漫画から光ったような。そして、あの漫画の絵とタイトルが思い起こされる。『すき!好き大好き♡』
・・・。
俺はこれからどうなるのだろうか。
間。
「唯名ー!本屋寄っていい?」
「いいよ!」
放課後、友達と寄り道、最高だ。
本屋か、新作この間買ったばっかりだしどうしようかな、なんて店内をまわる。
青年漫画コーナー。私の兄が好きなジャンル。特に女の子がいっぱい出てきて、ちやほやされる作品がお好みのよう。私は当然横切って少女漫画コーナーに向かう。・・・・はずだったのに。
気付いたら知らない部屋にいた。
「え、どこ?」
自分の発する声が低く、知らない声に聞こえた。
「唯名?!」
知らない声が私の名を呼ぶ。
そこには知らない男がいた。




