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絶望の森のもふもふ製造工房  作者: 凪瀬夜霧
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【番外編】クソ上司のせいで異世界がピンチです

 突然闇落ちした神の穴埋めって、無茶言ってくれるよクソ上司!


 決して面と向かって言えない愚痴を脳内で回しながら、異世界の神ネオは草陰に隠れて辺りを見回す。それと同時に溜息だ。

 煎餅食べながら「忙しいから任す」と言った上位神に口をパクパクさせながら抗議の目を向けるネオを見て、流石に可哀想だと言ってくれた他世界の神々がいた。地球の神もその一人だった。


「あの人、無責任ですからね」


 と、綺麗な顔に青筋浮かべていた姿は相当煮え湯を飲まされていたに違いない。

 いつかこんな神々に尻蹴り上げられるといいなと、ネオは思ってしまった。


 何にしてもネオの世界は危機的状況だ。

 前任者が神界の規律を破り自身の世界とはいえ、もの凄く滅茶苦茶な事をした。そのせいで世界は千年後の存続が危うい。

 人の感覚ではまだまだ余裕だろうけれど、神の感覚では一年後くらいのものだ。歪みが大きければ大きい程、修正には時間がかかる。なにごとも「急激」というのは歪みが大きくなるんだ。

 今手を打たないと確実に世界は危険。そこにある多くの命が消滅しかねない。そうなれば……責任はネオにかかってくる!


「マジ勘弁して……胃が痛くて吐きそう……」


 なんて人間に聞かれたら一発アウトな容姿で呟くくらい、ネオは参っていた。

 マニュアルも破棄され、何を弄ったのかログまで改ざん&修復不可。しかも運営の権限で一番深い部分の修正が出来る鍵は彼女の世界の何処かに隠したらしい。

 マジで止めてくれストレスで死ぬ。


 ネオに課せられた事は二つ。

 現状の回復。主に凶悪化と異常繁殖状態の魔物の早急な討伐。

 そして、彼女が世界に隠した根本の世界運営の鍵の捜索だ。


 後者はネオしかできないとして、前者を誰かに託したい。

 その為に地球に来て、才能のある人物をスカウトするのだ!


 と、意気込んでこの一週間。巡り会えていない。

 しかも姿がこの世界でありふれた、影響を与えにくい姿となる。今のネオは茶トラの野良猫。雨風を凌げる場所もなく、食うにも困る。世知辛い。


 そんな事でフラフラしていた。注意力も散漫だった。

 それでも感覚として勇者の気配を感じて歩いていって、草むらから路上へと出た所で酷い殺気が伝わった。

 見れば大きなトラックがノンブレーキで近付いてくる。そこに、ネオは神として尋常ではない悪意を感じ取っていた。


 あっ、終わった。


 例え神でも自分の世界でなければ死ぬ。ここは地球、ネオの世界じゃない。


 なんだよ、あのクソ女神。そんなに愛した男が大事かよ。そいつを神にするのに何万人殺して、世界ぐちゃぐちゃにしたんだよ。いい加減狂ってるだろ。ボクも殺すのかよぉ。


 覚悟と後悔と悪態が滲む。もうトラックは目の前まで迫っていた。

 そこで、誰かがふわっとネオを抱き上げた。


 あっ、こいつだ。


 何か確信めいたものが胸に広がる。今自分を抱き上げている存在が、あの世界を救ってくれる。そんな予感がした。


 次に走った衝撃は酷いものだったけれど、庇った人が受けとめてくれた。体が頑丈だ。でも、それでも……。


 路上に転がり、ヨタヨタしながらも倒れた青年に近付いたネオは、彼を見て決めた。

 この人こそが、異世界の勇者だと。


「待っててね」


 小さく、聞こえていないだろうけれど呟いて頬を舐めて姿を消す。

 この優しく温かく、でもとても強い魂を自分の世界へ召喚すべく、準備を整える為に。

本編更新は月曜日の21時となります!

相棒、完成するみたいですよ。

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