第5話 玉の輿婚女は敵!
「あらラビットちゃん、久しぶり」
彼女に声をかけたのはサンチェスちゃん。
「あ、サンチェスさん。今日も若々しいですね」
精一杯の嫌味を言うラビットちゃん(27)。
「大統領報道官のお仕事、頑張っているわよね」
上から目線で対抗するサンチェスちゃん。
「大統領をおとしめようとする、民主党系のメディアには手を焼いています。ドナルド閣下がそのうち潰しにかかってくれると思います」
『サンチェスちゃんの働いている放送局も危ない』と匂わせ恫喝するラビットちゃん。
「私は放送局は卒業してフリーになったの。ついでに永久就職が決まったわ」
得意満面のサンチェスちゃん。
「結婚ですか。それはおめでとうございます。お相手はどんな方なのですか? 赤ちゃんの顔を早く見たいです」
またもサンチェスちゃんの年齢を揶揄するラビットちゃん。自分はついこの前出産したばかりなのでマウントを取りにいっている。
「ダーリンの名前はシェフ・ベゾス」
サンチェスちゃんの言葉に思わず耳を疑うラビットちゃん。
「えっ、あのアマソン会長の?」
「式は6月だから。出席していただけるわよね?」
「よ、喜んで…」
本当は喜んでいないラビットちゃん。
白いお家の報道官控え室に戻ったラビットちゃん。一人悶々とする。
「アマソン。あのマグネット8の一角。会長のシェフ・ベゾスの資産は30兆円と言われるわ」
なぜか円建て。ドルじゃないのか。
因みにMAGNET8とは世界の大企業8社。(作者のオリジナル)
M マイクロソフト、メタ(フェイスブック)
A アマゾン、アップル
G グーグル
N エヌビディア
E イーライリリー
T テスラ
「何かあのビッチをぎゃふんと言わせる方法はないかしら」
ネットでゴシップ記事を検索するラビットちゃん。
ふとアマソンの通販サイトに目が行く。
「ふっふっふっ、これだわ」
後日、サンチェスちゃんを呼び出すラビットちゃん。
「あなたの新しい旦那は、通販サイトにみかじめ料を別に表記しているわね。これは政治的敵対的行為だわ!」
ラビットちゃんのいつもの言いがかりに冷静に反論するサンチェスちゃん。
「我々米国民が、どれくらい関税を負担するのかを皆にわかりやすく明示しているだけなんだけど」
「うるさい、閣下に言いつけるんだからぁ!」
早速閣下からベゾス君に直電が入る。
「金持ちケンカせず」で、あっさりみかじめ料の表記をやめたアマソンのシェフ・ベゾス君。
「やったわ。あの女にちょっとだけぎゃふんと言わせた」
そう言いながらスマホのネット記事をブラウズするラビットちゃん。
ふと目立つ記事を見る。
『みかじめ料、現物支給』
の見出し。
カタールがドナルド閣下にプライベートジェットをプレゼントしようとするのを妨害する記事。
『大統領が外国からみかじめ料を受け取るのは合衆国憲法違反』
と書かれている。その署名付きの記事を書いたのは……サンチェスちゃん。
思わず携帯を握り潰すラビットちゃん。
「閣下をおとしめる記事を書くとは! サンチェス……いつか潰す! 子供を産めない体にしてやる!」
いや、サンチェスちゃんはもう年齢的に無理だから安心してくれ、ラビットちゃん。
つづく
サンチェスちゃんが記者活動をしていて署名記事も書いている、という辺りはフィクションです。
サンチェスちゃんは共和党寄りのFOX TVで主に仕事をしていたので、反ドナルド閣下的な報道というのは無いはずです。