第15話 35階層の総力戦
エルメンヒルトがエアハルトに困ったように言う。
「みんながいるのにベヒモスが30匹近くいるわ。これでは合流できないわよ。」「僕たちが行くしかないよ。エル、動ける?」
「ええ、無理はできないけど持たせて見せるわ。」「僕がエルを守るからね。」
エアハルトとエルメンヒルトはベヒモスの後方から迫って行く。ベヒモスたちはセクメト・クランに集中して2人に気づかない。エアハルトとエルメンヒルトはベヒモスの群れの中を走り抜けようとする。
それにアルノーとアロイスが気づく。
「いましたよ。エアハルトとエルメンヒルトです。」「ああ、生きていた。」
アロイスはエゴンとクヌートに指示を出す。
「攻撃魔法でベヒモスの注意を俺たちに向けてくれ。」「なんだって、ベヒモスを挑発するのか。」
「いや、エアハルトと黒水晶がベヒモスの群れの中をこちらへ走ってきている。」「生きていたかー、やったー」
「早く攻撃しろ。」「分かった。」
エゴンとクヌートは挑発するようにベヒモスに向けてファイヤーボールを打ち込む。ベヒモスにはほとんど効果がないが注意を引くことに十分だった。
走りながらエアハルトがエルメンヒルトに言う。
「気づいてくれたようだ。遠距離攻撃をしてくれている。」「いいけど。ベヒモスがみんなの所に向かって行くわよ。」
「合流したら戦うだけだ。エルは、合流したら、アルマかカミルに回復ポーションをもらってくれ。」「分かったわ。」
エアハルトとエルメンヒルトはベヒモスの群れを追い越す。ここで初めてベヒモスたちは自分たちの下を走る2人に気づく。先頭のベヒモスが口を開けて炎を吐こうとする。
そこへアルノーがベヒモスの眼前に現れる。ベヒモスは突然のことに対応が遅れる。アルノーはベヒモスの眉間を炎のまとった剣で貫く。その後をアロイス、デニス、ディータ、カールが続く。
エアハルトはエルの手を離して言う。
「僕は先にみんなと戦っているからポーションで回復した戻っておいで。」「すぐ戻るからね。」
エアハルトはきびすを返してベヒモスに向かって行く。エルメンヒルトは加速してアルマの所に向かう。エゴンがクヌートに言う。
「俺たちもそろそろ始めるか。」「いいでしょう。」
エゴンとクヌートはファイヤーボールの攻撃をやめて、炎の魔法と風の魔法を詠唱し始める。
エルメンヒルトはアルマの横に滑り込んで言う。
「回復ポーションをお願い。」「心配したんだぞ。」
「いいから早く。」「ああ。」
アルマからポーションを受け取ると急いで飲む。焼けただれた腹のキスが消えていく。エルメンヒルトが行こうとするとアルマが止める。
「その錆びた剣で戦うつもりか。予備の剣を使え。」「ありがとう。」
アルマは荷物の中から新しい剣を取り出してエルメンヒルトに渡す。エルメンヒルトは俊足を使って急ぐ。そして、目を見張る。アロイス、デニス、ディータ、カールの動きが以前とまるで違うのだ。
ベヒモスを相手に優勢に立ち回っている。防御壁のあるベヒモスを強力な斬撃で切り裂いている。エルメンヒルトも負けじとベヒモスに迫ると跳躍して左目を切り裂く。
そして頭の上に立つと首に雷光をまとった剣を突き刺しそのまま自分を体重を使って切り裂いて行く。剣は首の骨を断ち切りベヒモスを仕留める。
ベヒモスの群れの中に突然、火災旋風が起きると後方にいたベヒモスを巻き込み始める。エゴンとクヌートの魔法は威力を増していた。
ベヒモスがエアハルトに向かって炎を吐くがアンチマジックによって無効化される。エアハルトはベヒモスの左前足を一閃する。ベヒモスは足を切られてバランスを崩す。
エアハルトはその隙に下に潜り込んで心臓に剣を突き入れる。ベヒモスは動きを止めて倒れる。後方で見ていたアルマが言う。
「このままだと、俺たちは30匹近いベヒモスを全滅させてしまうぞ。」「これは大儲けだな。俺たちのクランは大金持ちだ。」
カミルが目を輝かせて言う。カミルはアロイスに無駄金を使わせないためクランの金庫番になっている。
アルマはエアハルトとエルメンヒルトがかなり強くなっていることに気づいている。2人はどんな地獄を生き残ってきたんだ。きっと死と隣り合わせの冒険をしてきたに違いない。
戦いは体力の限界を試す様相になるがセクメト・クランがベヒモスを全滅させて終わる。アルマとカミルが魔石を集めると27個あった。
アロイスがエアハルトとエルメンヒルトを前にして、涙を流しながら2人を抱きしめる。
「良かったー、本当に良かったー」「ありがとうございます。きっと35階層に来てくれると信じていました。」「どさくさに紛れて抱き着かないでほしいわ。」
セクメト・クランのメンバーは喜ぶが、35階層にゆっくりしている時間は残されていなかった。




