第13話 死闘
エアハルトは呼吸を整えるとエルメンヒルトに声をかける。
「エル、大丈夫。」「大丈夫なわけないでしょ。体中が悲鳴を上げているわよ。」
「ははは、僕と同じだ。」「笑うことないでしょ。」
「ポーションを飲もう。」「そうね。」
エアハルトとエルメンヒルトは無理やり体を起こして、回復ポーションを飲む。これで体のキズや痛みは消える。しかし、スタミナまでは回復しない。
エルメンヒルトがエアハルトに言う。
「回復ポーションの手持ちが切れたわ。」「僕もだよ。後は死体からもらった回復ポーションが2本だけだよ。」
エアハルトはエルメンヒルトにポーションを1本手渡す。
「効果があればいいけど。」「贅沢は言っていられないよ。あるだけましだよ。」
2人は保存食を少し口にすると岩の割れ目の道を奥へと進んで行く。エアハルトとエルメンヒルトは魔物たちの気配を探知する。
「エアハルト、この先に魔物がたくさんいるわよ。」「僕もそう思う。見つからないように様子を確認しよう。」
割目の道は広いホールに繋がっていた。そして、ホールの反対側に上に登る坂道を見つける。しかし、ホールは魔物であふれている。ミノタウロス、オグレス、シルバーグリズリーなど何種類もの魔物がいり乱れている。
エルメンヒルトは運命を呪う。これじゃ私たちに死ねと言っているのと同じじゃないの。こんなところを進めと神様は言うの。
エアハルトも再び襲い掛かる困難に困惑する。やっとベヒモスたちから逃げられたのにこれはないよ。あの魔物の中に血路を開かないと上の階層に行けないじゃないか。
もう疲弊しているのにあそこを突っ切ることが出来るのか。いいや、やるしかない。僕たちの生きる道は前にしかないのだ。
エアハルトは覚悟ができるとエルメンヒルトに言う。
「エル、進もう。」「あの魔物の群れの中を進むつもり。自殺行為だわ。」
「ここにいても助からないよ。自分の足で進まないとダンジョンに殺されるよ。」「そうかもしれないけれど・・・・・」
「大丈夫、僕たちここまでうまくやってきたんだ。」「あの魔物たちを見てそういうの。」
「そうだよ。」「エアハルト、どうかしているわ・・・・・でも、最後まで一緒にいるのは私なんだから付き合うわ。」
エアハルトはエルを抱きしめる。エルメンヒルトはエアハルトが震えていることに気づく。誰だって、あの魔物の群れに立ち向かうのは怖いのだ。
2人は手をつないで魔物の群れを見る。そして、互いの目を見るとうなづいて剣を抜く。エアハルトとエルメンヒルトは俊足を使って魔物に迫る。スピードを落とさず突っ込む。
エアハルトはミノタウロスを横一閃すると返す刀でシルバーグリズリーを袈裟切りにする。エルメンヒルトは剣に雷光をまとわせてオグレスを2つに切り裂く。さらにケルベロスを一閃する。
2人は魔物の群れの中を進んで行く。彼らの周りでは血吹雪が吹き荒れ、あとには血のわだちが出来上がる。
エアハルトとエルメンヒルトは一方的に魔物を切り殺しているが、これは一時的なものだと知っている。まだ、魔物は敵の存在に対応できないでいる。
そして、2人の体力が最後まで続く可能性は低かった。エアハルトとエルメンヒルトが群れの中央まで来た時、オグレスが大剣で襲って来る。
エアハルトは剣で受け流して、オグレスを下から切り上げる。エルメンヒルトにもミノタウロスが大剣を振るう。エルメンヒルトは大剣を受けると雷光を使ってミノタウロスを感電させる。
エアハルトとエルメンヒルトに次から次へと魔物が切りかかって来る。それでも2人は前に進む。エアハルトが短剣を抜いて、切り結んだミノタウロスの右腕に短剣を突き刺す。
ミノタウロスが思わず大剣を落とすと袈裟切りにする。オグレスと切り結んだエルメンヒルトの剣が折れる。エアハルトはすかさず死体からもらった剣を投げ渡す。
エルメンヒルトは受け取ると鞘に収まったままオグレスの首にたたきつける。オグレスは首の骨が折れて倒れる。
魔物たちの向こうに上の階層へ上る道が見えてくる。もう少しだ。エアハルトの心の隙をつくようにミノタウロスが大剣を振り下ろす。
エアハルトの防具の胸の部分が切られて血が噴き出す。それでもかまわずミノタウロスを切り伏せる。そのエアハルトにオグレスが後ろから大剣を振り下ろす。
エアハルトの防具が切られる。エルメンヒルトがオグレスを一閃する。エアハルトは急激な出血で目の周りが暗くなる。それでも剣を振るってシルバーグリズリーを袈裟切りにする。
この後、エアハルトは意識を失う。エルメンヒルトが声をかける。
「大丈夫、あと少しよ。」「・・・・・」
返事はないがミノタウロスの大剣を紙一重でかわすと横一閃する。エルメンヒルトはオグレスとシルバーグリズリーを切り裂くとエアハルトの手を引いて道に逃げ込む。
エルメンヒルトが足を止めるとエアハルトは崩れ落ちる。




